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11-10 希望の先

 ――辿り着いた帝国の門の前

 しかし今、その巨大な門の前を守るように、氷雪の巨人が立ちはだかる。

 氷の巨人は、出現するとともに何もかもを凍らせた。門の周囲や、クラァヤミィに、ノジャイナリィ。

 その中から、【炎聖】の熱で、かろうじて凍結をまぬがれた俺とフィア、それにチビ。


「フィ、フィア、ありがとう」


 ともかくも、フィアから体を離し、そのことに礼を言えば、


「――嘘でしょ」


 フィアは俺の後ろへと視線をやって、ただ呟く。だから振り返ってみれば、


「……え?」


 凍り付いていたのは、俺達の周りだけじゃない。

 道のりだ。

 瓦礫の街が、そして、人間が、フロスティの冷気で凍り付いてる。

 俺をここまで運んできてくれた人達が、Fクラスのみんなが、

 ――なんで


「……あっ、ああっ、あああっ!」


 なんで、と思いながら、

 なんで死ぬべき俺が助けられて、

 助かるべきみんなが死んでしまうんだと、

 メディにかつて、助けられた時と同じことを思いながら、

 俺は、


「――【炎聖】スキル!」

「えっ! お兄ちゃん!?」


 悩みながらも心を燃やし、フィアの目の前で彼女のスキルを使って刀を抜き、

 そのまま門前のフロスティ(氷の巨人)へ、


「〈フレイムブレイド(火中の剣)!〉」


 刀ごと、自分の体を燃やしながら突っ込んだ、けど、

 ――その火がふっと消えた


「えっ」


 炎の勢いを得られなくなった俺の体は失速し――そこを狙い澄ましたかのように、氷の巨人が俺の体を蹴り上げる!


「ぐはっ!?」

「お兄ちゃん!」


 フィアの足下に転がる俺、体が軋む、意識が揺れる、

 ま、【○○】スキルが、使えない、どうして、


「無茶をしないでお兄ちゃん!」


 フィアが俺を覗き込んで、


「お兄ちゃんの体、あの聖女様と戦ってボロボロなんだから!」


 体がボロボロだから、【○○】スキルが使えない。

 ……違う、違うんだフィア、

 ボロボロなのは体じゃなくて、心の方なんだ。

 セイラ様が言ってた、スキルの強さは心の強さだって、

 なのに、ここで戦えない俺は、

 ただみんなに助けられるだけの俺は、


「戦わなきゃ――」


 もう一度、【○○】に、


「心が、壊れても」


 【炎聖】を、火を燃やすようにスキルを、


「俺の心が燃え尽きても!」


 仰向けのまま使おうとした時、


「いやそんなのだめっしょ☆」


 声が、した。

 急ぎ、体を起こして振り向けば、


「あー気温も気分もマジサゲだし~☆」


 そこにいたのは〔血吸い少女のチスタロカミラ〕、俺達と同じく体は凍り付いてない。


「カ、カミラ、どうやって」

「どうやって助かったって?☆ リーぴょんが助けてくれた☆」

「リーが」

「うん☆ 隠れてろって、瓦礫の下に穴を掘って☆ いや~ギリギリ凍らずにすんだのマジヤバくね☆」


 この文字通り空気まで凍り付くような場所で、相変わらず、太陽のように笑いながら、


「とりあえずアルっちはさぁ、戦うんじゃなくて外へ出なきゃいけないっしょ☆」

「で、でもみんなが、みんなが」

「――ライジの言うこと信じなよ☆」


 カミラは、


「何もかもがなんとかなるってライジは言ったっしょ☆」


 そう言って、俺達にウィンクして、


「だから絶対、生きてここから出なよ☆」


 たった一人、氷の巨人へ走って行く。


「ま、待って、カミラ! あんた今、何を【吸血】してるの!?」


 チスタロカミラの【吸血】スキル――血を吸った相手のスキルを一時的に使用出来る文字通りの万能(コピー)スキル、フィアの【炎聖】スキルに似たものなら戦えるかもだけど、


「【一撃】スキル☆ リーぴょんからもらった☆」


 その答えに、俺達は言葉を失い、そして、


「だ、だめだよカミラ!」

「【一撃】スキルは、鍛え抜いた体じゃないと扱えないってリーが言ってた!」


 すぐさま俺とフィアは叫ぶ、カミラの細い体じゃ、リーのスキルは使えない、それに、


「カミラがそのスキルを使っても、こいつを倒せるなんて限らない!」


 そうだ、理屈的に考えて、例え同じスキルでも、

 カミラじゃ、リーと同じ威力を出せない――


「リーぴょんから聞いてる☆」


 カミラは、


「だから努力したっしょ☆ リーぴょんとトレーニングしたし、筋トレもしたし☆」


 臆すこと無くフロスティへ、氷の巨人へと走って行く、


「それでもまだ撃っちゃダメだって言われたけど☆」


 巨人はカミラに気づき、カミラを踏み潰そうとして足をあげ、


「――友達を助ける為だったら☆」


 その足を重量ままに落とす――だけど、

 その足の裏に彼女はいなく、ギリギリで躱したその結果、

 その足のすぐ横にいて、


「腕の一本くらいくれてやるっしょ!☆」


 その足へ向かって放つのは、


「【一撃】スキル!☆」


 友からもらった彼女の最大火力、


「〈イチゲキ(一撃)〉☆!」


 ――カミラの放ったその一撃は

 巨人の足を確実に砕き、その巨体を倒れさせる、

 だが巨人の目は生きていて、

 フロスティは倒れながらも、血まみれの腕を抑える彼女へ殺意を向け、

 再び、全てを凍らせようとした時、


「リーぴぉんッ!☆」


 彼女の叫びに呼応するように、


「やっちゃえぇッ!☆」


 ボンバ・リーを覆っていた氷が振動し、

 ――一気に割れた


「嘘!?」

「マジ!?」

「ピキャー!?」


 こ、凍らされた状態で、内側からそれを打ち破った!?

 驚く俺達と対照的に、そのまま静かに佇むリーに、氷の巨人は反応し、倒れ込みながらその拳でリーを殴ろうとして、

 その拳へ、


「【一撃】スキル――」


 本物のスキルが、リーの力が、技が、

 その全てが、

 注がれる。


「〈イチゲキ(一撃)〉」


 氷の巨拳を貫くリーの一撃、

 衝撃は亀裂となり、手から腕へ、そして全身に到達し、

 一瞬の静寂の後、爆ぜるように崩壊した。

 ――砕けたフロスティの体が雪のように降り積もる


「や、やった」


 壊れた氷がバラバラになって落ちていく、その光景に俺は笑顔を浮かべた、だが、


「――えっ」


 すぐにその笑顔は消えた。

 砕け落ちた氷の破片が、地面へと落ちた刹那から、


「――魔物に」


 ビシリビシリと音をたてながら、砕けた氷に手足を生やし、顔を作って、

 砕けた氷のそれぞれ全てが、何も鴨を凍らせる最強の魔物へと再生していく。

 それに動揺する俺だっったけど――


「行けぇ!☆ アルっちぃ!☆」


 カミラが叫んだ、


「アルっちがここから出れば、あーし達の勝ちだからぁっ!☆」


 カミラは、無事だった腕をあげて、

 俺にピースサインを送って――

 だから、俺はフィアに視線を送って、


「フィア、行こう!」

「うん!」


 二人並んで、走り出す。互いに疲れ切った体の、気力をどうにか振り絞るように。

 欠片が魔物へと変貌していく中で。

 その途中、肩で息をするリーの横を通りすがった時、

 リーが俺に、こう言った。


「――希望」


 二字熟語でしか喋らない男のその言葉、

 だけどそれは、俺がみんなにとってどういう存在なのか、とてもわかりやすく伝えてくれて、

 悩み続ける俺だけど、どうしてと思う俺だけど、

 それでも、その気持ちは裏切れないと、

 だから俺は、凍てつく魔物達が降り注ぐ中で、門がその魔物の冷気で作られた氷でふせがれていく中で、

 俺とフィアは、その氷に飲み込まれる前に、門を、フィアと一緒に、

 ギリギリで――超えた。


(やった)


 その一瞬で、疲弊しきった体に達成感が満ちて、


(――やった!)


 踊り出すのはなんの変哲も無い平原、けれどここが、帝国の外(勝利条件)

 凍てつき、氷で入り口が塞がれていく門から、20メートルほど離れた場所で、俺は走る速度を落としながら、自然と夜空を見上げた。

 この夜空に浮かぶのは、ここが異世界であることの証左、

 大きい月と小さい月、寄り添うように浮かぶ親子月――

 その暖かな輝きに、視線を奪われた時、

 ドォン! っと、


「……え?」


 音が、聞こえた。

 ……俺は、自然と立ち止まり、そして、

 振り返る。


「フィア」


 フィアが、仰向けで倒れていた。

 胸から血を流して倒れている。それは、

 俺がさっき、銃で撃たれた時とそっくりで、

 ――フィアが銃で撃たれた

 そのことに悲鳴をあげるよりも早く、


「賭けはうちの負け♡」


 声がして、

 視線を正面に戻せば、そこには、

 ――左目を♡に輝かせるセイカ様が宙に浮いていて


「セイカ、様」


 左手には、銃が握られている。

 宙に、俺の身の丈一つ分を少し超えるくらいの高さで、双子月を掲げるように浮かぶ彼女。

 そんなセイカ様の手から、何かが俺へと投げられた。

 小さいモノが、三つ、

 ――サイコロだ

 地面に落ちて、転がるそれは、俺の足下で止まり、

 ――123の目を出したサイコロは、

 真っ赤に染まっていた。

 血で、染まっていた。


・更新情報

毎朝7:00に投稿させていただきます!

ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!

https://www.neopage.com/book/32218968911106300

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