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11-7 ずっと見てきた

 瓦礫が転がり燃えさかる、破壊された祭りの会場で、

 俺の頬を両手で挟んでいたセイカ様が、転がった三つのサイコロ(111)と、その向こうにいるギャンブライジに気を取られた瞬間、


「【炎聖】スキル!」


 ――死角からの攻撃が


「〈ファイアースターター(文明開火の火花散り)!〉」


 フィアが振るう炎のハンマーが、セイカ様の顔面をぶっ叩き、


「〈ロケットブースター(その火は今や宙目指す)〉!」


 叩く面と反対部分から、ジェット噴射のように炎を噴き出させ、そしてハンマーの柄を離して、

 ――ハンマーごと奇跡の聖女をふっとばした

 会場の中心、打ち上げ花火の用意があった場所まで、吹き飛ばされたセイカ様、突然のことに驚く俺に、


「しっかりして、お兄ちゃん!」

「ピキャー!」


 フィアと、頭の上のチビが俺に声をかける。武器を失った手で、力の入らない俺を抱き起こす。

 フィア、無事だったのか、それに、ライジも、


「すまねぇ大将、遅れちまった!」


 ライジが、


「勝つ算段に手間取っちまってよ!」


 笑顔で俺に叫び言う、そして俺へと歩いてくる、その途中で、サイコロを拾った。

 そして俺は――自分の心と体に、力が戻るのを感じて、


「みんな、無事だったの?」


 と、聞いた。


「あたりめぇだろ、爆発事故が起きた時の安全対策はしてたんだからよ」

「で、でも、バリアが壊れるほどで」

「ああ、もしその時は、打ち上げ現場の俺達(Fクラス)を【転移】させてくれって、トベッキーさんに頼んどいた」

「い、いつ?」

「今日の昼」


 そこでライジはニカっと笑って、


「なぁんか嫌な予感がしたからよぉ、俺の勘って当たっちまうんだよなぁ」


 そ、そうなんだ、相変わらずライジって、いくつも先を読んでくれて、

 みんなが助かって、俺を、

 ……あれ?


「ライジ、さっき、何て言った?」


 ライジの【賽子】スキルは自分の言ったことを、三つのサイコロを振って111(ピンゾロ)が出た時、実現させるスキルだ。

 これが、事象を確定させる壊れ(神越え)スキルなのか、ただ賽の目を操るだけのクズ(Eランク)スキルなのか、いやそもそも本当にライジのスキルが【賽子】なのかもハッキリしてない。

 ただ、ライジは言ったことを、サイコロを振って全て叶えてきた。

 その上で、ライジはこう言った。

 ――アルテナッシは、帝国の外へ逃げ切れる


「なんで」


 違和感、いや、


「なんで、俺だけ?」


 不安。

 笑みを失った俺に、相変わらず不敵な笑みを浮かべるばかりのライジ、そんな彼に、


「本当にこれでいいの、ライジ?」


 フィアが――どこか悲しげに、聞けば、


「これでいいの? じゃなくて、これしかねぇんだよ、フィアルダ」


 そう、ライジは答えて。

 ……ダメだ、ダメ、

 それは、


「ダメだよ、ライジ」


 ハッキリとしない、いや、ハッキリとさせたくない、

 だけどライジが今から何をするか、

 俺を逃がす為に、どうするかをわかってしまった。

 そんな俺にライジは、


「生きるのに必死だった」


 笑ったままに語り始める。


「生きる為にゃ命を賭けなきゃならねぇ、そんな生き方をしてきた俺が、どうにかここまで辿り着いた」

「ライジ、ダメだよ」

「いいや、他にねぇんだよ、大将もメディから聞いて知ってるだろ?」

「――ライジ」

「幸せの正体は悩みなんだよ、悩んで、悩んで、悩みまくって」


 ライジは、


「最悪の中から最善を選ぶのが、生きるってことなんだからよ」


 笑ってるけど、ああこの笑顔は、


「ダメだ」


 全てを覚悟して、


「――死なないで」


 俺がそう願った瞬間、


「左目を――」


 後ろから声がして、振り向けば、


「ピンポイントで狙うて、焼き潰す」


 自分の左目を、左手で抑えたセイカ様が、それでも尚、笑みを浮かべながら立ち上がった。


「もうこれ治すん時間かかりそぉ、ライジ君、ひどいことフィアちゃんにさせるんやねぇ」

「いやぁ、その(ハート)ぶっ潰せば、パワーダウンするんじゃねぇかって賭けただけだよ」

「賭けた?」


 セイカ様の体から、透明な粘液がしたたり落ちる。

 それは、ゴブリンやスケルトンといった、魔物達に変じていく。

 自分の手駒を増やす中で、


「解ってた、の間違いやないの?」


 そう、尋ねた。

 けれどライジはセイカ様には返事をせず、俺に向かって、


「大将、多分だが左目()が開いてる時だけ聖女様はあっちの世界とやらの武器とやらを持ってこれる、左目を閉じてる時、スタンガンってぇのはポケットから取り出したが、左目()が開いてる時、大将の心臓を撃ったもん(マグナム)は、その手に直接現れた」


 長々と、淡々と、


「それに【奇跡】とやらも劣化してるし、弱点が左目なのは間違いねぇ、今後のために覚えときな」


 そんなことを俺に伝えて――


「ライジ」


 俺がまた、名を呼びかけた瞬間、フィアが俺の体を担ぎ上げた。


「フィ、フィア」

「行くよ、お兄ちゃん」


 ――待って


「ま、待って! そんな、俺も戦う、だから!」


 俺は力の入らない体、いや、心から、なんとかスキルを絞りだそうとする、

 だけどライジは相変わらずに笑って、


「馬鹿野郎、大将を逃がす為の足止めに、大将が残ってどうすんだよ」

「で、でも俺のスキルなら、俺のスキルは本当は!」

「そんなこたぁ知ってんだよ」


 ――ライジは


「大将のスキルが、【適当】なんてもんじゃねぇくらい、ずっと見てきたんだからよ。だけどここからは、俺の博打だ」


 そう言ってライジは、手に握ったサイコロを、宙に投げ、それをまた掴みまた投げて、いつも教室でやっている仕草を見せた。

 そんなライジに、


「ああ、ほんま、君だけはわからへん」


 セイカ様は笑う、


「うちの【奇跡】を超えるスキルなんか、本当ダメダメなEランクスキルなんか、それとも」


 その笑みは、


「スキルそのものすら、持ってへんのか」


 怖気がする程、凶悪だった。

 だけど、


「知りたきゃてめぇも命を賭けな」


 ライジは何時も通り、ひょうひょうとした様子で、セイカ様に言った後に、俺を抱え上げるフィアに視線を移す。


「そろそろ行け、フィア」


 フィアは、躊躇いを隠せずにいたけど、


「……【炎聖】スキル!」


 その気持ちを振り切るような声をあげた後、


「〈ランナーズファイ(聖火の走者)!〉」


 足回りに炎を纏わせ、その熱を加速に使い駆けだして、

 ああ俺は、フィアに担がれた俺は、

 どんどん遠くなっていくライジに、手を伸ばして、


「ライジ!」


 ただ名を叫ぶばかりで、そんな俺に、

 ライジは、


「あばよ、大将」


 それだけを言い残して、

 宙に高く放り投げたサイコロを、しかと握って、

 セイカ様と、彼女が生み出した魔物の群れへ、走って行く。

 ああ、遠くなる、遠くなる、

 ライジの姿が、小さくなって、そして、

 ――ライジがモンスター達の群れに接触して

 どんどん、遠ざかっていくうちに、やがて建物が影になって、

 ライジの姿は、見えなくなった。

 フィアに運ばれる俺の心から、

 大切なものが、一つ、消えた。

・更新情報

毎朝7:00に投稿させていただきます!

ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!

https://www.neopage.com/book/32218968911106300

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