11-6 ありのままの
「「「あああああああ!」」」
――破壊された学園の催事広場の中心
そこを埋め尽くすように、セイカ様から溢れるモンスター達に向かって、【分神】スキルで"俺を増やした俺達"は、
「【斧聖】スキル!」
「【槍聖】スキル!」
「【槌聖】スキル!」
それぞれが手に取った武器に合わせてのSランクスキルを使用して、そして俺自身も、
「|【剣聖】スキル!」
手に取った、【神造】スキルで作り出した剣を振りかぶって、
「〈ブレードバーズ〉!」
飛ぶ斬撃を無数に放つ、ゴブリンやスケルトンなどは倒していくが、実体をもたないゴーストが、俺に襲いかかってきた瞬間、
「〈ライトニングアロー〉!」
【弓聖】スキルを持った俺が、悪霊を浄化の矢で貫いた。
(――いける)
モンスターの大群も、押し返せると思ったその瞬間、
ブツリと、何かが切れる音がして、
……鼻から何かが垂れているのを感じて、ぼたぼたと落ちるのを手のひらで受け止めれば、
「えっ」
手のひらが、赤い。
鼻血だ――
ドクドクと溢れるそれを見て、俺は呆然とするけれど、
«おにいちゃん、むりしないで!»
気付けのように響く、セイラ様の声、
「Sランクのちから、つかいすぎ! 13にんもどうじだなんて、こわれちゃうよ!」
その言葉と共に、目眩を覚えた、
体に重さを感じ、
神経に痛みが奔って。
ああ、駄目だ、耐えられていない、Sランクの力に、俺の強さが追いついてない。
無理はしないでって言われたのに、
……けど、
だけど、
「あああああ!」
無理をしないと、止められない。
セイカ様の愛を、止められない。
「あは♡ あはは♡ あはははははは!♡♡♡」
さながら壊れた蛇口のよう、哄笑と一緒に魔物達を俺へ向けて生み出していくセイカ様、その攻撃の苛烈さに、俺の分身は、一人、二人と倒されていく。
「そもそもの話、女神様達ってひどない!?♡」
それでも、巨大化した盾でゾンビを圧し潰し、
「幸せにしたいんやったら、なんで幸せそのものやのうて、転生させて、スキルなんかあげるんかなぁ!♡」
«――えっ»
杖から放たれた光熱の魔法は、ゴーストとフロスティも同時に倒し、
「答えてよぉテンラ様!♡ なんでこの世界に転生させたん!♡ なんでスキルをあげようと思ったん!♡ なんで、ねぇ、なんで!?♡」
«そ、それはこの世界が、アル君の元の世界と親和性があったからデス!»
«ス、スキルをあげることの、なにがだめなの!?»
スケルトンを、【槌聖】のハンマーが砕く中で、セイカ様と女神達の会話が響き、
「結局二人とも、アル君を幸せにしたいんやのうて!♡」
ゾンビを【鋸聖】のスキル、チェーンソーがバラバラにした時、
セイカ様は、
「アル君が幸せになっていくのを"見たい"だけちゃうん!♡」
そう、言った。
「なにそれ!?♡ アル君は物語の主人公やないんよ!♡ 成長を神様視点で眺めて満足するなんて、悪趣味過ぎて笑えてくるんよ!♡」
«そ、それは違いマス! セイカちゃん!»
«そ、そうだよ、だって、しあわせをさいしょからなにもかもよういしたら、それはじぶんのじんせいじゃないもん!»
「自分の人生やあらへん? 自分達で線路を敷いといて、良く言うんよ!♡」
セイカ様は、
「そんなの、アル君が母親にやられたことと、何が違うのかなぁ!♡」
断言する。
俺達が減っていくにつれ、魔物達の群れも少なくなっていく、
«確かに、私達はアル君を助けてきマシタ! でも!»
«アルおにいちゃんがしあわせに――メディちゃんにたどりついたのは、おにいちゃんががんばったから!»
「――そんなことない♡」
やがて、俺達は俺になり、
【剣聖】の俺が、ボロボロの体で走って行くのは、
同じようにただ一人、佇むセイカ様、
彼女に向かって、俺は剣を振りかぶり、
「あああああああ!」
もうスキルの名前を叫ぶ力もなく、ただただ一太刀を浴びせる為に、
――剣を振り下ろす
「今のアル君は♡」
その瞬間、からっぽだった彼女の右手に、
何かが握られて、それは、
「女神様達に作られた、薄っぺらな偽物よ♡」
大きな拳銃で、
――鼓膜を破らんばかりの轟音と共に放たれた銃弾は
神造の剣を容易く折って、そして、
俺の心臓を、打ち抜いた。
「がはっ」
衝撃を受けて、俺は仰向けに倒れる。
«アル君!?»
«アルおにいちゃん!»
女神様達が声をあげる、その呼びかけが、ギリギリで俺の命を保たせる。
痛みよりも、苦しい、息が、溺れたように出来ない、
そんな俺に、ゆっくりとセイカ様は近づき、俺の体にしゃがみこんだ。
銃を後ろへ投げ捨てれば、その銃はどこかへと消えてしまう。
そして、からっぽになったその白い手を、俺の胸へ翳した。
「【奇跡】スキル」
そして彼女は、
「〈チートフルデイズ〉」
俺の傷を、無かったことのように治した。
……え?
「えっ」
治されたことの感謝よりも、あまりの呆気なさに戸惑いを覚える、
なぜ、なんで、どうして、
「なんでって、簡単よ♡」
セイカ様は、にこりと笑って、
「うち、チートやもん♡」
――ゾッとした
奇跡と、チートと対峙するとは、こういうことか、起きたことが理解できても俺の心は、
――理不尽への恐怖でいっぱいだ
治された体が動かない、力が全く入らない、
俺の心が、縛られている。
そんな身動きできない俺を、抱え上げるように座らせて、俺の顔の頬を、両手で挟むようにして、
「――好き」
その左目で覗き込む。
「アル君には、スキルなんかいらへん♡ 努力なんかいらへん♡ 神様もいらへんし、友達も恋人もいらへん♡ そして、この世界もいらへんし――」
ああ彼女は、どこまでも俺を愛して、
「元の世界もいらへんよ♡」
俺を、そのままの俺を、
「世界を殺すのは憎しみやのうて♡」
からっぽな俺を愛する為に、
「愛よ♡」
――全てを壊そうとして
……ダメ、ダメだ、
こんな風に愛されることを、認めてはダメだ、それは俺をここまで助けてくれた、全てへの冒涜だ、
――なのにどうして俺は
それを言葉にして、否定出来ないんだ。
「……テ、テンラ様、セイラ様」
出来たことは、子供のように助けを求めることばかり、でも、
「ごめん♡ うるさいからちょっと黙らせたんよ♡」
なんでもありの彼女の前では、それすらも出来ないみたいで、
だんだんとセイカ様は、
「キス、まだよね♡ ファーストキス♡ うちも初めて♡」
俺に顔を近づけて、
「愛しとる♡」
そのまま、
「大好き♡」
唇を、重ねようとして――
――カツンっと
地面を叩くような、軽い音がした。
そちらの方へ目をやれば、小さい何かが三っつ、コロコロと転がってきて、
それは、
四角い、三つのそれは、
「――【賽子】スキル」
――サイコロの目が
「〈ワ|ンフォーオールフォーワ《1/216の純粋な運命》ン〉」
全部、赤い1の目で。サイコロから顔をあげればそこには、
「アルテナッシは、帝国の外へ逃げ切れる」
ギャンブライジが立っていて、
――次の瞬間、俺のそばにいたセイカ様に
炎を纏ったハンマーが直撃した。
・更新情報
毎朝7:00に投稿させていただきます!
ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!
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