11-1 終わりの中心
爆ぜる、爆ぜる、
何もかもが、弾けている。
――円卓帝国学園催し広場
そこにあった、Fクラスの出し物である、祭りの屋台と、花火の打ち上げ場所は、
「あ、足が、足があぁぁぁ!」
「気絶した奴を運び出せ!」
「爆弾が降ってきたぁ! 離れろぉ!」
全てが崩れて、その瓦礫の隙間を満たすように悲鳴があがり、
――どかぁぁぁん! っと
その悲鳴すら壊すように、空を行く複数の爆撃機から爆弾は落ちてきて、そして、
「ぎゃあ、ゴブリンが!」
「ご、ゴースト、誰か、浄化系スキルもってるやつ!」
「ゾンビには絶対噛まれるなぁ!」
そんな中で中心地――花火の打ち上げ場所だった所から、あふれ出すモンスター達が、容赦なく生徒や客達に襲いかかっていた。
当然、魔物達は俺にも襲いかかってきて、刀でどうにか応戦したけど、それで随分足止めされて、
それでもどうにか時間をかけて
「みんな!」
俺は中心地までやって来たのだけど、
誰もいない。
ここに居たはずのFクラスのみんなは、俺の呼びかけに応えることはなかった。屋台は全て崩れ落ちて、お面や綿菓子など祭りのピースが、無残にそこら中に散らばっている。
(みんな、逃げたのか、逃げ切れたのか?)
爆発の中心にあって、そんなことがあるのだろうか――そう思っていると、
「ひ、ひいい! た、助け!」
声がして、そちらを向けば、
フロスティ――俺の世界では氷の妖精、雪だるまみたいな小さな体に、愛嬌のある顔をしたモンスター、
けれどこの世界では、絶対零度の氷をもって、人間達を凍てつかせ死にまで至らしめる存在、
そのフロスティに、足下を凍らされた男子生徒がいた。
そして身動きがとれない彼に――フロスティは氷のランスで男を刺し殺そうとしてたから、
――刀を一度鞘に納めて
「【灼熱】スキル!」
俺は全身を、熱で覆って、
「〈ヒートボックス〉!」
思いっきりフロスティの横っ面をはたき、こちらへ視線を向けた瞬間、
「ららららららぁっ!」
その絶対零度で鉄のように固まった氷の体を、湧き上がる血潮のたぎりのリズムにのって、何度も何度も叩きまくって、
「らぁっ!」
拳の一突きで、叩き砕く。
フロスティは完全に崩壊して、周囲にダイヤモンドダストを舞わせた。魔力由来の氷だった所為か、男子生徒の足下を縛る氷も霧散した。熱せられた俺の体にそれが積もる度、じゅう、っと音をたててとけていく。
その熱もようやくおさまってから、
「だ、大丈夫!?」
俺は、助けた相手に慌てて駆け寄った、だが
「お、お前がやったのか」
「え?」
「Fクラスの、お前らが!」
男は、爆発の中心地、崩壊した花火の打ち上げ場所を、
いまだ爆煙から、モンスター達が溢れてくる場所を指差して、
「学園を、こんなにしたのか!?」
――男の人の俺への様子は
怒りとかじゃ無く、純粋に俺を恐れているようで、
「ち、違う、俺達じゃないよ!」
俺は咄嗟にそう叫ぶと、
「ひ、ひい!?」
って、相手が身を縮めるくらい怯えてしまった。
――差別の根本は"怖い"から
そんなことを、今この状況で知ってしまって、俺は悲しい気持ちになったけど、今はその感傷に浸ってる暇はなくて、
「と、ともかく、逃げて」
精一杯、それを告げた時、
――背後から強い光を感じて
「え?」
振り向けばそこにいたのは、ウィスプ、
青白い光を帯びた火の玉は、その輝きをより増していきながら、
俺達へ向かって突撃しようとして――
「【英傑】スキル!」
その光が、
「〈|オクトパスニードラー《八足転がし〉!」
――八本の針が
ウィスプへ全て突き刺さり、そしてウィスプは強い白光と共に消滅した。
カランカラン、と、地面へと落ちる針――こ、これってたこ焼き作り専用のピック?
戦場にあるもの全部を使うこの戦い方は――
「アルテナッシ!」
声をした方へ振り向けば、
「ソーディアンナさん!」
そこにいたのは、平和の守護者の団長、ソーディアンナさん! 勇ましい様子のアンナさんは、怯えている男へ向かって口を開き、
「ともかくそこの男、お前はあちらへ走れ! 私の団員が平和の守護者本部の避難所まで誘導する!」
「わ、わかりました!」
アンナさんの言葉を聞くと、男はバネ仕掛けのように飛び上がって、そのまま去って行った。
そしてアンナさんは、俺に話しかける。
「私も今来たところだが、状況はどうなってるかな」
「あ、あのこれは」
「君が、君達が意図的にやったことだとは思ってない」
アンナさんは、
「だが、誰かの企みであることは確かだ。そうでなければ、あの鉄の鳥の説明がつかない」
「て、鉄の鳥」
俺は言われて、空を見上げる。
――学園上空を飛び回る爆撃機
……確かに、あの鉄の飛行機は、誰かがあらかじめ準備していたようなものにしかみえない。
「意図的だとすれば、この事件は君に――君達に責任を押しつけるような行為だ」
俺達の――Fクラスの所為に?
「だってそうだろう、打ち上げ花火の場所から、モンスターが溢れてきてるのだから、誰だってFクラスの仕業だと勘違いする」
「で、でも、それこそ誰が、そんなことを!?」
「……Fクラスという、庶民の存在を疎ましく思うものはいくらでもいる、だが」
そこでアンナさんは空を見上げ、
「モンスターを呼び出すだけでなく、あの鉄の鳥のようなものを用意する存在なぞ、私は聞いたことがないよ」
鉄の鳥、何度もアンナさんはそう言うけれど、あれは飛行機、この世の中に存在しないもの。
勿論、誰かのスキルで【飛行機】みたいなものがあれば使えるかもしれなけど。
「どちらにしろこの事件の首謀者は」
アンナさんは、目を細めながら、
「強力な存在かつ、君に恨みを持つ者ということになる」
そう、言葉を終えた瞬間、
「――ちゃうよぉ」
声が、した。
「うちがアル君を恨んでるなんて」
声がする方へ振り向けば、そこは中心地、魔物達が這い出る爆煙、
それが声と共に、晴れていく、
そこに居たのは、
「そんな訳ないんよ」
聖女、セイントセイカ様と、
「だってこんなに」
――{ヴォイド}
祭りの中心、打ち上げ花火の場所だったそこには、
巨大なスライムが鎮座していて、
――この世界最強のモンスター
そして、
「愛してるんやから」
スライムの頭頂部には、
その最強すらイス代わりに座る、聖女がいた。
――セイカ様の左目は閉じられている
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