10-9 花火の待ち人
円卓帝国学園祭広場、花火大会及び大和祭り会場。
認識阻害の為に使ってる【奇跡】スキルを、俺の知っている人達相手、限定的に解除した途端、
「ああ、お兄ちゃんとセイカ様!」
「ピキャー!」
まず一番に、ハンマーの代わりに御柱を担いだフィアが気づいて、チビと一緒に駆け寄ってきて、
「うおおお聖女様、サインいいっすか!」「何をもらおうとしてるんですか兄さん!」
って、ダンスバトルから戻ってきたらしい、アニィとオトォは相変わらず兄弟漫才みたいな会話をするし、
「ふへ……どうぞ聖女様……"業火の螺旋階段"を捧げるわ……」
って、クラァヤミィが聖女様に|くるくるになった揚げ芋をオススメしてくるし、
「ようこそお越し頂きました、セイントセイカ様」
「お越し頂きましたヒヒン!」
オージェが貴族として優雅に、ウマーガァルが元気はつらつな声で挨拶をする。
俺とセイカ様は、ひとまわり屋台を楽しんだ後、会場に用意されているベンチに座って、それをFクラスのメンツの多くが輪になるように囲んでいる状況――認識阻害の能力は働いてるから、周囲からは、"無名の生徒を囲む"って一体どういうイベント? 的な目で見られてる。
「にしても、本当に俺達以外にゃ、アルと聖女様に見えてねぇのか、すげぇスキルだな」
と、ライジがまじまじと、ポテトをかじっているセイカ様が見れば、
「それはそっちもちゃうんかなぁ、【賽子】スキルのライジ君」
「え、俺のスキルについて知ってるんすか!?」
「知っとるよぉ、サイコロ三つ振って111の目を出したら、言ったこと全部現実にする壊れスキルなんやろ?」
確かによく考えれば、ライジのスキルってセイカ様のスキルと同格、いやそれ以上かもしれない。
ただし勿論それは、ライジのスキルが本物だったらの話だけど。……未だに、言ったとおりのスキルなのか、ただ111の目を出すだけのスキルかもしれないしなぁ。
でもとりあえず、
「いやぁ嬉しいっすわ! 俺が天下の聖女様に知られるなんて、人生何が起こるかわかんねぇ!」
と、心の底から笑うライジを見て、俺も笑顔を浮かべる。セイカ様とのデートの途中だけど、いつもの級友達と話していると、リラックスする。
……いつもの級友達、
いや、そういえば、
「スメルフと、ロマンシアがいないけど」
試験の時に俺を助け、入学初日から俺に壁ドンしてきた獣人と、色々と夢見がちなお嬢様がいないので、聞いてみたら、
「逢引」
「えっ」
ボンバリーの一言に、俺は度肝を抜かれた。
「あ、あ、逢い引き!?」
あ、逢い引きってあれ? 男女が人目を避けて密会、ランデブーするって奴?
確かに二人は良く一緒に行動するようになってたけど、そこまで進んでいた?
「いやいや、ただのデートだし☆ リーぴょん語彙少な過ぎっしょ☆」
あ、カミラが補足してくれた。……ボンバリー、どういうこだわりか知らないけど、二字熟語でしか喋らないからな。
そっか、あの二人もデートか、正直、入学したばかりの頃は、考えられない組み合わせだったけど、今じゃなんだかんだでお似合いな気がする。
とかそんな風にほのぼのしてたら、
「うーん、一応聞いてええかな?」
いつのまにか竜巻ポテトをたいらげて、残された棒をくるくると回しながら、セイカ様は、
「――メディちゃんは?」
そう、この場にいない俺の従者について聞いた。
――ほんの一瞬だけ静寂が満ちたけれど
「えっとね、あいつ、メディは」
複雑そうな表情で、フィアが、
「露店経営でミスしまくってたから、早めに切り上げさせたわ」
え、ミス?
あのメディが?
俺が疑問に思ってると、次々と、クラスメイト達が、
「わたがしをうっかり3メートルサイズで作っちまうし」
「射的でお客さんが発射した弾を、うっかり反射的に手で受け止めて握りつぶしちゃったし」
「くじ引きで"この中には一等がありません"ってうっかり言っちゃうし」
あ、あのメディが、そんなに失敗し続けたんだ。……いや最後に関しては、普通にやっちゃいけないことだけど! そんな所まで再現しなくていいから!
……でも、メディがそうなった理由は、
「そうなったのは、お兄ちゃんだって解るでしょ」
「……うん」
フィアの言うとおり、流石に鈍感な俺でも気づくし、そして、
「多分だけど、もう、あそこに行ってるんじゃないかしら」
そう言った後の、フィアの頭の上のチビがピキャーと鳴く中で――今、メディがどこにいるかも、解る。
そしてそれは、
「そっか、メディちゃんは」
セイカ様もだろう。
「約束の場所に、もうおるんね」
……今度こそ、この人の輪の中だけど、しん、とした静寂が満ちる。
だけど、間もなく、またセイカ様が口を開いた。
「おおきにね、みんな」
それは、
「うちの我が儘を、見守ってくれて」
感謝だった。
「い、いやいや、そんなことないし!☆」
「我が儘とかとんでもないひひん!」
「噂通りなら300年生きてきて初めての……初恋……」
カミラ、ウマーガァル、クラァヤミィが、慌ててそう告げる。でもそれに、セイカ様は首を振る。
「普通に考えて、仲良うしてる二人に、割って入るようデートを申し込むなんて、いくらなんでもエルフリダ過ぎるやろ?」
あ、森王様が略奪愛の動詞みたいに使われてる。
「でもそれをみんな理解してくれて、感謝しとる、ここにいる皆にも、……メディちゃんにも」
「……セイカ様」
聖女様の言葉に、みんなはまた黙る。けれどさっきの静寂と違って、どこか暖かいものがあった。
……俺はそれを聞いて、立ち上がり、そして、
座るセイカ様に、手を差し伸べた。
「アル君?」
ちょっと戸惑うセイカ様に、俺は、
「デートの続きをしましょう、……まだ、巡りたい場所、ありましたよね?」
その言葉に、セイカ様は、一瞬無表情になった後、
「うん!」
すぐ、はちきれんばかりの笑顔を浮かべて、俺の手を握って立ち上がる。
俺はそのことに少し顔を赤くしながら――それじゃ行くねと、みんなに言おうとした時、
「ちょちょちょ~い、待つのじゃ待つのじゃアルテナッシ」
あれ、どうしたの? 居たけどず~~~っと黙っていた、〔狐火見たりノジャイナリィ〕。
「お主、メイドの女装をしたのじゃろう? その様子を【眼聖】スキルで見ていたドロウマナコ先輩が、創作意欲をかき立てられたと、お主の女装姿を絵にして売りまくっとったが、あれは許可をとっていたのじゃ?」
「ドロウマナコせんぱぁぁぁい!?」
このあと俺は、セイカ様に頼み込んで【奇跡】スキルでテレポート、ドロウマナコ先輩の無許可販売の現場に飛んだのだけど、
「悪いが親友の為、ここは通さないよ!」
って、何故か〔何者でも無いソーディアンナ〕さんが立ちはだかるし! そのまま戦うことになって変な盛り上がりになっちゃうし! 俺のAランクの【○○】スキルを、Bランクの【英傑】スキルは次々攻略してくし、その間にセイカ様がドロウマナコ先輩から、俺の絵を買っちゃうし!
――アンナさんとの戦いの中で俺は悟った
黒歴史は滅ばずに、どんな終わりにもついてくるということを。
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