10-8 迷い心、お祭りと
円卓帝国学園祭の賑わいの中、再び、【奇跡】スキルでの認識阻害で正体を隠し、一般生徒に交じって歩いてる俺達。
セイカ様は元気いっぱいだけど、その隣の俺は、顔が赤いままで、その理由は、
「ねぇ、聞いた!? アルテナッシ君とセイカ様のデート!」
「二人ともメイド姿って聞いたんだけど!」
「なにそれ!? マニアック過ぎない!? そういうプレイ!?」
とか、ついさっきの俺の痴態が、既に学園中の噂になってることで。うう、恥ずかしい……。
そんな訳で、いくらスキルで身を隠してるとはいえ、羞恥心には苛まれて、結果、縮こまるようにうなだれて歩いている訳だけど、
――そんな俺に
「とう!」
「うわっ!?」
セ、セイカ様が飛びつくように、俺と腕を組んできた!?
左腕に抱き枕のようにしがみついたセイカ様は、そのまま俺を見上げてくる。
「もうアル君、いつまでひきずってるんよ? あんなにかわいかったのに」
「か、かわいかったって何を、と、というか腕!?」
「あ、顔がもっと真っ赤になった! うちにひっつかれてドキドキしとる?」
そ、そりゃ当然する訳で、こんな風に女性に腕を組まれるなんて初めてで。
「おかしな話やねぇ、メディちゃんをいつもおんぶしとる癖に」
えっと、メディのスキル、〈オールレンジテレグラフ〉のことを言ってる?
「あ、あれはあくまで、【紫電】スキルでバフがけしてもらう為に必要なだけで」
「ふうん、とりあえずその様子やと、腕組みはお初やんね?」
そこでセイカ様は、にこっと笑って、
「アル君のはじめて、もーろった」
と、楽しそうに言った。
――うっすらと、顔を赤く染めながら
「セ、セイカ様」
「あぁ、ドキドキする、胸のリズムがとくんとくん、凄い気持ちいいんよ」
浸るようにそう呟き、俺へと更に身を寄せる。
それを見て俺は今更ながら思う、
――この人は、本当に俺のことを好きなんだって
なんで俺なんかを、という卑下の気持ちは薄れていって、純粋にそのことの喜びが増えていく。
想われるって、嬉しい。
……だけどやっぱりそう思う程に、強くなるのは、
メディのこと――
彼女の笑顔が浮かんだ瞬間、
「まぁた他の女のこと考えてるんねぇ」
「あ、いや、その」
い、一瞬で見透かされた。最早心の中を覗かれている気分。
「ええよええよ、もともと、いくらでも考えてええって言ったんはうちやし」
笑顔を浮かべ、更にひっついてくるセイカ様、そして、
「せやけど、一つ、聞いてええ?」
「え?」
「アル君にとって、メディちゃんって何?」
――その言葉は
「主従関係のメイド? かけがえの無い友人? それとも」
俺の中にずっとあった問いかけを、
「恋してる人?」
ハッキリと、言葉にした。
――俺は固唾をのむ
……メディは俺にとって、恩人だ。
前世から引き続いて、ずっとからっぽだった俺の心に、熱を灯してくれた人。
あの頃からメディは、俺にとってかけがえのない友達、
けれどそれが明白に変わったのは、クリスタルレイクで、俺が自分の前世を告白した時。
――あの時から続く胸の高鳴りは
……あの時から続く、今日までの道のりは、
「俺は……メディを……」
ただ傍にいてくれるだけの人じゃ無くしていて、けど、
その答えはまだ俺の迷いの中にあって――
「あ、着いた着いた!」
「あっ」
なんか物思いに耽りそうになっていたら、目的地へ到着している。
ここは学園の中央の広場、そして繰り広げられている催し物は、
「――うわぁ」
セイカ様が、片目をキラキラ輝かせる、
「ほんま、大和のお祭りがある!」
そうここは、俺達1-Fクラスの出し物、花火大会兼大和のお祭り再現スペース。中央には、俺が作った沢山の花火玉と、それを打ち上げる為の発射筒。それを中心に円形に屋台が展開している。
わたがし、お面や、リンゴ飴、俺の知識と同じような店が並んでいて、生徒達は勿論、カップルや家族連れ、それに子供達が楽しんでいる様子が見られた。
「すごいすごい! ようここまで再現できたねぇ!」
「エンリ様の協力もありましたし、それに」
「それに」
そこで俺は、少し笑って、
「前世の知識がありましたので」
と、他に聞こえないように言った。
「あ、そっか、アル君の住んでた場所って、大和に近いんやったけ」
「うーん、大和は江戸時代っぽいから、正確には違いますけど……」
「せやねぇ、でも、そもそもの話」
そこでセイカ様は、
「――この世界の言葉が、アル君の世界の言葉とほぼ同じなんは、なんでやろうね」
と、言った。
「それは……」
それは俺も気になっていたこと、……普通、スキルに都合良く、前世の言葉、それも二字熟語をあてはめられるという時点で、特別すぎる。
ただ、異世界というものは沢山あって、転生の女神のテンラ様は、その中から俺の為の世界を選んでくれたってこともあるんじゃないかって考えて、それはつまり、
「奇跡、みたいなものかもしれませんね」
と、一応の結論をつけていた。
その言葉に、一瞬、呆気にとられたようなセイカ様だったけど、
「そやね」
そう言って、また強く、俺の腕に絡む。
「うちとアル君の出会いも、奇跡みたいなもんやもんね」
その笑顔に、また顔が赤くなる。
「ほな、お祭り巡ろっか!」
「あ、はい! 皆にも挨拶を――あ、でも、認識阻害」
今の俺達は、他の皆から見たらただの一般生徒、このままじゃFクラスの皆とお喋り出来ない、と思ってると、
「大丈夫大丈夫、ピンポイントでアル君の顔なじみには、うちらのことわかるように、【奇跡】スキル調節するんよ」
「エ、エンリ様のスキル、完コピしてますね」
「ふふーん、アル君のおかげでうちの奇跡、超絶パワーアップしとるよってに」
そこまで言ったセイカ様は、俺を引っ張るようにして歩き出して、だから俺もそれに伴って、
だけどその時、
「さっきの質問やけどね」
「さっきの?」
セイカ様、
「アル君はメディちゃんを、どう思っとるかって話」
「あ、……はい」
「もしメディちゃんに会いに行くんやったら、必ず答えを出してから行って」
「……」
「お願い出来る?」
さっきまでと打って変わった、真摯なその問いかけに、
「わかりました」
俺も、真面目に、強く返した。
その言葉を受け取ったセイカ様は、嬉しそうににこりと笑い、【奇跡】スキルピンポイント解除~、と、大げさに宣言する。その途端、Fクラスのクラスメイトや知人達が俺達に気づき、
「え、アル君とセイカ様!?」
「ちょっとちょっとまずい、パニックになるって!?」
「あれ、でも、俺達以外気づいてねぇ!?」
状況判断素早く――|周囲の人達を混乱させない《慌てず騒がず落ち着いて》ように、俺達に近づいて歓迎してきて、そして、
「「「メイドの女装をしてたってマジ!?」」」
一斉にそのことを聞かれた俺は、やめて~!? っと、反射的に叫んでいて、セイカ様はその様子を見てにまにまと笑うのだった。
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