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10-7 初恋時間

 ――帝国学園の学園祭

 セイカ様の【奇跡】スキルで、認識阻害をすることによってのお忍びデート(正体隠し)、つまり今の俺達は、ただの一般人として学園祭を楽しんでいて。

 そう、楽しい。

 ――露天で買い食いをすることも


「アル君、アイスクリーム買ってきたんよ!」

「あ、ありがとうございま――20段重ね!?」


 ――占いの館で未来を見てもらうことも


「わぁ、相性抜群やって!」

「わわ、ちょっと、ひっつかないで!」


 ――脱出ゲームにチャレンジするのも


「やったー! クリアー!」

流石ですセイカ(さすせか)様!」


 ――展示物を巡ることも


「あれこれ、"オーガニ族の遺跡の再建レポート"やって」

「書いてるのは――ゴッドフット先輩!」


 ――アシモチャンのロボット(リベンジ)と戦うことも


「ロ、ロボットに乗っとるの、アシモチャンだけやのうて!」

「ドワモフ族のゴルリ君!? やば、【改造】スキルが!?」


 ――ドッカンカザンのマグマ石を使ったサウナでととのうことも


「あー……」

「あー……」


 ――ただ二人で歩くことも


「うわぁ、あそこでダンスバトルしとる」

「オトォとアニィと、……ヤンスとシタパ!?」


 その全てが俺にとって新鮮で、その全てが俺にとって楽しくて、


「あ、あそこにあんの、メイド喫茶のオープンカフェやねぇ」

「本当だ」

「楽しそう~、わぁ、メイド服の貸し出しもやってるんよ!」


 ……勿論、その道中でも、


(……メイド喫茶か)


 本当は、考えちゃいけないだろうに、


(メディがやりたがっていたな)


 その思いは止められなかった。

 セイカ様とのデートは、とても楽しくてドキドキする、

 だからこそ、罪悪感みたいなものが募る、

 ――こんなことをしていいんだろうかって

 でも、


「えいっ!」

「わ、わわっ!?」


 セ、セイカ様が、急に俺の腕を組んで、ひっついてきた。そして片目で俺のことを見上げながら、ニヤリと笑う。


「メディちゃんのこと、考えてたやろ~」

「す、すみません!」

「謝ることちゃうんよ、最初から言ったとおり、いくらでも考えてええからね」


 そこでセイカ様は、


「いっぱい悩んでから、答えを出してくれたら嬉しい」


 って、言った。


「……いっぱいって言ったって、制限時間、短すぎますよ」

「まぁそれはそやね、うちもはよ勝負を決めへんと、んー」


 と、悩んでるセイカ様――貸し出し用のメイド服一覧を眺めて、


「とりあえず、メイド服を着よっか!」

「セイカ様が?」


 メイド服姿のセイカ様。

 ……それはちょっと、見たいかも、とか思ってたら、


「お、アル君もお望み?」

「は、はい、よかったら」

「おっけー、ほな、二人で着よ!」

「二人!?」


 ちょっと待って、俺も着るの!?


「メディちゃんと森王様から聞いとるんよ、アル君のメイド(女装)姿、めっちゃかわいいって」

「い、いやあれは【メイド】スキルでそうなってただけで!」

「かまへんかまへん、二人で思い出を作るんよ!」

「それは思い出じゃなくて、黒歴史ですよ!」


 そう抵抗したのだけど、セイカ様のテンション(圧し)に勝てなかった俺は、

 ――15分後


「うわぁ、めっちゃかわいい!」

「う、うう……」


 スカートの端をおさえながら涙目で、あの日と同じ姿をセイカ様にさらしてしまった。

 いや、正確には同じじゃない、なんかこのメイド服のスカート、凄くミニ。

 うう、改めて、スカートってスースーする、下半身がなんか凄く頼りない。

 黒髪ロングウィッグに囲まれた顔を、赤くするセイカ様は、ひとしきり俺の姿をもてはやした後、


「それでどう、アル君、うちのメイド姿」


 そう言って、くるくる回る。

 セイカ様のメイド服は、メディみたいにクラシカル(胸元あいてるけど)でなくて、ミニスカ、フリル付き、露出多めという(萌え)仕様、すくなくとも聖女様がするような格好ではけっして無い。

 だからこそその姿は、正直なところ、


(か、かわいすぎて、やばい)


 かなりの破壊力(ダメージ)を俺に与えていた。あれ、俺ってこんなにメイドが好き(フェチ)だったけ? もしかして、メディと過ごしているうちに……。……ん?


「ふっふぅ~ん」


 セ、セイカ様、なんですかそのあざとい笑顔、そして俺の前で軽く屈んで見上げて、

 ――やばい

 来るぞ! でも、避けられない!


「ご奉仕するんよ、ご主人様♡」

「はぐうぅ!?」


 うわ、うわわ!? うわわわわ!?

 や、やばい、心臓が凄いドキドキする、顔が熱くなる!


「そっかそっか、アル君ってメイド好きなんやね~、初めて自分の心を満たしてくれた人が、メイドやったから当然か~」


 う、うう、反論は出来ないけど、だからってここまでドキドキしちゃうのは――

 あ! さっき浮かんだ俺の心の中のメディが、"軽蔑しました"みたいな目で俺のこと見てる、違うのメディ、俺が君を想うのはメイド(記号)だからじゃなくてメディ(中身)だからであって!?


「うちと付き合ってくれるんやったら、毎日メイド服姿でおってもええのに」

「聖女様がそんなことしたら、大陸中がパニックになるからやめてください!」

「別にええんよ、うちはアル君とだけ幸せになれればええし」

「そんな訳には――」


 俺はただただ、慌てながらセイカ様と話していたが、


「――本気よ」

「えっ」


 セイカ様は、開いた右目でしっかりと見据えながら、笑顔を、強い意志を込めた笑顔を浮かべた。


「アル君と一緒になれるなら、うち、聖女の立場なんていらへん、うちにはアル君だけおればええ」

「せ、セイカ様」

「だってアル君は、生まれて初めて、うちが恋した相手やから」


 ――セイカ様の言葉は

 ……俺の心を、震えさせた。

 そんなにも、こんなにも、想ってくれていること。……いや、セイカ様は俺に会うたびに、それくらいの強い気持ちをもって、俺に接していた。

 けれど、こうやって言葉としてハッキリすると、意識する。

 ――胸がズキリとした

 ……これは罪悪感からの痛みなのか、

 それとももっと単純な、

 ときめき(高鳴り)か、


「ごめんごめん、困らせてもうたね!」


 ――それに悩むよりも早く


「今はただ、二人のデートを楽しむんよ!」


 セイカ様は、俺の両手を握った。そして、眩しいくらいの笑顔を見せる。


「初めて好きになった人との、最高のデート!」


 その笑みを見て、思い出す。いや、改めて気づく。

 セイカ様にとって、今日という日は、

 ――ありきたりじゃない奇跡の日


「……わかりました、行きましょう」


 今は、それに全力で応えよう。

 悩みながらでもいい、迷いながらでもいい、

 それでも、こうやって、


「うん、行こう、アル君!」


 ――セイカ様の笑顔の隣にあれたらいい


「ほな、アル君のメイド姿、全学園生徒におひろめターイム!」

「え」


 とか、思ってたら、


「【奇跡】スキル、ちょっとだけ解除!」


 解除、何言って――


「ああああああ!? アルテナッシとセイカ様がいるぅ!?」


 えっ。


「メイド二人がアルテナッシとセイカ様になった!?」

「もしかして噂通り認識阻害系のスキル使ってたんじゃ」

「というか二人とも――」


 ええっ。


「「「メイドじゃん!」」」


 ええええええええ!?


「ちょ、情報量が多い情報量が多い!」

「聖女様がメイドって、これ、罰当たりにも程が無い!?」

「すみませんあの黒髪ミニスカメイドのプロマイド(イラスト)ってありません!?」


 さっきまで使った認識阻害スキルを限定解除!? 何をしてやがってくれるんですかこの聖女様!?


「な、なんでこんなことするんですかセイカ様!?」

「いや、うち、思ったんよ」


 そう言ってセイカ様は、右目を薄く、薄く細めて、


「女装は堂々としとるのもええけど、やっぱり恥じらってこその女装やって」

「そのために俺をさらし者にしないでください!?」


 とか言っても|後の祭り《学園祭終わってないのに》、俺とセイカ様のメイドカップル姿は、そのあと3分間たっぷり晒されて。

 その上、通りすがりのエルフリダ様お付きのメイド、青年メイドのヨジゲンカバンさんまでが加わり、俺と絡み出した(百合の造花)ことで、騒ぎが暴動レベルになる直前、【奇跡】スキルでテレポート、認識阻害を再び起動した後、これまた【奇跡】スキルでメイド服から制服に着替えることになって、

 全てが元に戻った(原状回復)あとも、俺の中の恥ずかしさは消えずに悶えて、セイカ様はそんな俺をうっとりとみつめるのだった。

 羞恥心、俺の心に、羞恥心。

・更新情報

毎朝7:00に投稿させていただきます!

ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!

https://www.neopage.com/book/32218968911106300

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