10-6 聖女様とイチャラブデート!
円卓帝国の中心部は、皇帝が住む居城を中心に、以下のような施設が並んでいる。
Sorcery 魔法院
Peacemaker 平和の守護者
Institute 研究所
Regency 摂政機関
Academy 学園
Labyrinth 迷宮
ロッピーチーズのように分割されたこの国の中枢機関、そのひとつである帝国学園、
今、この場所は、いつもと違う熱気に包まれていて、そして、
『ただいまえーえむ9時よりぃぃぃ! 皇帝エンペリラ様の名の下にぃぃぃぃぃぃ!』
エンリ様のお付きの騎士、デカヴァイスさんの【大声】スキルで、
『円卓帝国学園の、学園祭を開始するぅぅぅぅぅ!』
お祭りの開始が宣言された。その途端、学園の入り口の生徒や客達は、うわああああ! っと、歓声をあげる。
『たった一日の祭りではあるが――え、な、エルフリダ様ぁぁぁ!? 一体何をしに、へ、学園祭を二日開催に延長ぉぉぉ!? 皇帝陛下の許可は得ているぅぅぅ!?』
……歓声は一気にどよめきに変わった。相変わらず傍若無人な森王様。
とりあえず俺が今いるのは、広大な学園の敷地、その入り口。多くの人が行き交う中で、
「そういえば、お前、デートの話は知ってる?」
「アルテナッシとセイントセイカ様のやつ?」
「庶民と聖女の恋愛なんて、世界のバランスが崩れるぞ……」
そんな風に、俺とセイカ様のデートは、当然のように話題になっており、
「でも凄くロマンチックよね~!」
「けどさ、あいつにはメディって従者がいて、そっちが本命とも」
「はぁ!? 主人とメイドが恋愛ってお前――推せるじゃん!」
俺とメディの関係まで取り沙汰されていて、
「どっちにしろ今日ここでデートすんだろ?」
「ああ、遠くから見守り隊に入隊したい!」
「普通に近くで寄って見たいですが」
と、話題になっている。
で、ここで疑問点――なんでそんな条件で、俺が一切目立ってないか、
真っ先に思いつくのは、正体隠しのエンペリラ様のスキル、〈エンペラーホリディ〉。
だけどあれは皇帝陛下だけが使えるものなので、俺が今、エンリ様のスキルと同様の効果を得られているのは、
(セイントセイカ様のスキル、〈チートフルデイズ〉)
攻撃を反らすとか、テレポートとか、誰かの為になら、割と出来る万能スキル。今回の場合、"デートの為の姿隠し"という【奇跡】を使用中。
正直、俺の【○○】スキルも色々と出来るけれど、セイカ様の場合そういう次元じゃない、願ったとおりの出来事を起こせる規格外。
「まぁともかくアルテナッシって!」
当然そのスキルは、他の生徒達も知ってるから、
「文字通り、【奇跡】に愛されてるよな!」
そんな噂にもなる訳で。
……うん、本当にそれは嬉しいこと、
前世じゃ考えられなくて、求めても得られなくて、
セイカ様が聖女とか関係なく、それは俺にとって、奇跡のように嬉しいこと。
こうやって好意を寄せてもらったなら、それに応えなきゃいけないと思う。
……だけど、
それでも、
そう踏ん切れないのは――
「アール君っ!」
「うわっ!?」
か、考え事してた時に、後ろからの不意打ちみたいな声! 俺は慌てて振り返れば、
「――あっ」
そこにいた彼女――セイカ様の姿に、驚きの声は一瞬で感嘆に変わる。
「へへ、どうやろ?」
この時、セイカ様の姿は、
「かわええやろ?」
俺達と同じ、学園の制服、つまりブレザーの制服だった。
いつもの聖女としての、白い修道服のような厳かさを纏っていない、白いシャツの上に空色のブレザーを重ねて、足もあらわなスカートをふわりと翻す――真っ白な神秘さの上に、活動的なレイヤーを重ねた姿、
それを見て、俺は素直に、
(かわいい)
と、思った。
で、暫くの間、セイカ様は、くるくると自分の姿を披露していたのだけど、やがて、
「……ちょっと、アル君!」
「わ、はい!」
黙ってた俺に業を煮やしてか、ちょっと怒った感じで声をかけてきて、
「かわええやろ?」
「に、似合ってます」
「似合ってるじゃなくて、ちゃんとかわいいって言って、ほら、ほら!」
「わ、わわわ」
そう言って、左目を閉じたまま、片方の右目を目一杯開けて、ぐいぐい顔を近づけてくる。
俺は顔を赤くしながら、観念して、
「か、かわいいです」
正直な気持ちを、吐露した。
その瞬間、
「うわぁぁぁ……!」
セイカ様の顔がぱぁっと輝く、だけでなく、俺みたいに顔を赤くする。
「す、すごいすごい、言われることは解ってたのに、うちの胸、めっちゃドキドキしてるんよ! こんなん、300年生きてきてはじめてなんよ!」
も、ものすごくキャーキャー騒いでいるセイカ様、……そしてその様子を、
「なんかあそこ、凄いかわいい子いるな」
「いや、めっちゃバカップルだわ」
「え、学園祭デートってリアルに存在するものなの!?」
周りが囃し立ててくるのだけど、彼等は俺をアルテナッシと、そして彼女をセイントセイカ様と認識していない。
「凄いですね、【奇跡】スキル」
他人のスキルをそのまま使うのは、俺の【○○】スキルもだけど、こっちには一応、○の中を埋めなきゃいけないという制限がある。
それに比べてセイカ様のスキルは――と、感嘆していたのだけど、
「これは、今日一日だけのスキルやから」
と、言った。
「そう誓いを自分にたてたんよ、もう2度と、【奇跡】スキルをこんな使い方せーへんって」
――それが
セイカ様のスキルの、制限、
「アル君との学園デートなんて、どんだけ生まれ変わっても、たった一度のことやから」
……そんなスキルとの約束を、俺の為に一心に願ってくれる相手、
その気持ちを嬉しく思う程に、
「セイカ様」
俺の心の中の彼女が、笑顔をみせてきて、
それを、
「メディちゃんのことも、いっぱい考えてあげて」
と、言った。
俺の心の中を、見透かすように。
「うちとデートしてる時も、メディはこういうの好きだなぁ、とか、メディはお化け屋敷苦手そうとか、いくらでも思うてええよ? うちは別に、”デート中に他の女のことを考える”ことに文句いわへん」
「え、で、でも」
さ、流石にそれは失礼なんじゃ、とか思ったら、
「むしろ、望むところなんよ!」
「望むところ!?」
なんか仁王立ちになって、変なこと言い出したぞこの聖女様!?
困惑する俺に向かって、聖女様が指をビシィッと突きつける――その指の先は、俺の心臓。
「アル君のからっぽな心を満たすメディちゃんよりもうち!」
そして高らかに叫ぶのは、
――宣戦布告
「うちの方がええ女って証明する、最高最強のデートにしてみせるんよ!」
その姿は、威風堂々としてて、一切の迷いの無い姿で――
……あ、でも、だんだん顔が赤くなってきた、そして、ぷるぷると震えてる! 今更恥ずかしくなってきたの!?
「せ、セイカ様、大丈夫ですか!?」
「羞恥心、うちの心に、羞恥心」
「何を言ってるんですか!?」
こうして、【奇跡】スキルで正体隠しをしてるとはいえ、校門前での俺達のやりとりは、おおいに注目するのだった。
羞恥心、俺の心にも、羞恥心。
・更新情報
毎朝7:00に投稿させていただきます!
ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!
https://www.neopage.com/book/32218968911106300




