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10-1 夢の花火と聖女様の手紙

 ――学園祭

 そう、それは学校生活におけるビッグイベント、それが前世ではなくこの世界にもあることを知ったのは、つい一週間前のこと。

 前世の俺にとっては、中学の時には母から参加を禁じられ、高校の時には、……その、色々いからはじまることとかあって、休むしかなかったもの。

 そんな華やかなイベントに、転生したことが切っ掛けで、参加することに、なった、の、だけど、


「だからよぉ、学園祭のだしもんは!」


 1-Fの教室に響くギャンブライジの声は、


「最強のエンターティメント、カジノで決定だろうがよぉ!」


 未だに俺達のFクラスが、何をやるか決まっていないことを示している訳で。

 ……まぁ、それもしょうがない、


「ギャンブルさんせー! |ここはあえての逆バニー《モニーン》見たぁい!」「学び舎ってことを考えてください兄さん!」


 と、双子の意見も分かれるくらいな上に、


「同じギャンブルなら競馬にするべきひひん!」

「客達を奈落(アビス)へ引き込むお化け屋敷……ふひ……」

「え、演劇はいかがでございましょうか!? 脚本は(わたくし)が書きますわ!」


 ウマーガァル、クラァヤミィ、ロマンシアも、てんで違うことを提案する。そう、ここは問題児ばかりが集められたFクラス、32人いれば32個の提案があって、そしてそれを譲ろうとしない。実際、俺の従者であるメディクメディも、


「なぜ皆様は、学園祭の定番(ハナ)であるメイド喫茶を開かないのでしょうか!」


 と、主張する。うん、それはいいのだけど、


「私が話した、ご主人様の黒髪ロング(ウィッグ)メイド姿の、実物を披露するチャンスですのに!」

「それをモチベにするのはやめてくれないかな!?」


 天下一メイド会以来、やたらとメディは俺にメイド姿をさせようとしてくる――というかここ3ヶ月の間で、1回だけ、二人きりの状況で着替えさせられた。その時のメディの昂ぶりっぷりはとてもひどくて、この世界にスマホやカメラ(風景保存用機械)が無いことに、本当に感謝した。

 メディの目的がそう(主人の女装)じゃなかったら、俺はメディのアイディアにノッていたところだけどなぁ、とか、考えていると、


「それで、クラスの問題児のアルテナッシ?」


 書記(チョーク)長である、俺達の担任、チョーコ先生は、


「あなたは何かしたいことはないの?」


 と、言ってきた。


「え、俺?」


 その名指しに、俺は自分を指差したが、


「そうよお兄ちゃん、この1週間、ず~っと黙ってたでしょ」

「ピキャー」


 って、フィアが言ってチビが鳴いて、


「確かにフィアちゃんの言うとおりだね~」

「なんかやりたいことないの?」

「とりま言っておいたら?」


 って、他のクラスメイト達も騒ぎ始めた。


(――学園祭でしたいこと)


 それは本来、からっぽな俺には、到底思いつかないこと。仮に何かを言うにしても、たっぷりと時間を掛けたあげくに、ようやくひねり出せるような物であったはずのだけど、

 それは俺が考えるよりも先に、


「花火、とか」


 言葉として、零れた。

 ……途端、クラスが5秒ほど静か(シーン)になったあと、


「ハナ、ビ?」


 スメルフが――相変わらず、途切れ途切れの言葉で疑問を呈した後、


「ハナビってなんですか?」

「聞いたことないな~」

「スキルかなんか?」


 と、他のクラスメイト達もざわつきはじめて、俺は自分のミスに気づく。


(や、やばい、転生バレ発言してしまった!)


 俺の口から"花火"が飛び出た理由は、それこそが、俺がこの異世界への転生を望んだ理由だからに他ならない! けれど、それは今文字通りの"爆弾発言"へ進化して、周囲を燃やし尽くそうとしている!

 そうならないように取り繕わなければならないけど、全く言葉が浮かばない俺、


「そ、その、花火は」


 わたわたして冷や汗をかき、どうしよう!? と、惑う俺、だったが――


「花火とは文字通り、空に咲く火の花のことです」


 ――メディが


「色の付いた火薬をつめた玉を、筒状の大砲で打ち上げて空で炸裂させて円状に広げ、それを夜空に咲く大輪の花として愛でるもの」


 淀みなくすらすらと、まるで詩を語るように、……そう、メディが語り終えた後、


「ああ~! 大和出身の祖母から聞いたことがあるのじゃ~!」


 ノジャイナリィが、


「夜空にドカーン! と派手に咲いた後は! 切なく儚く散っていく! インパクトとエモーションのいいとこどり! 大和の祭りではほぼマストな、文字通りの"祭りの花"と聞いておるのじゃ!」


 と、発言。こ、この世界の日本っぽい国、大和にもある文化だったのか。俺はそれに驚くばかりだったけど、


「ええ、その通りでございます。確かご主人様はその花火を、かつて書物で読んだことがあると言いましたね?」

「あ――そ、そうなんだ、実は!」


 メディはすぐにその言葉を、俺の疑いを無くすためのピースにしてくれた。

 ――俺が転生者であることを告白した相手

 ……ああ、本当に、助かるし、メディとこの秘密を共有できているというのが、とても、安らぎを覚える。隠し事がなくなって、本当の意味で友達になれた気がして、

 いや、今は、もっとそれ以上の――

 と、メディのことをみながら、考えていると、


「花火か、僕もぜひ見てみたいな」


 と、ハクバオージェが言ったのを皮切りに、


「空に花が咲くなんてロマンチックー!」

「いいじゃん、いいじゃんスゲーじゃん!」

「誰もそんなことやったことないよね!」


 と、一気に俺の提案に、皆が賛同していく。ただそんな熱狂の中でも、


「でもでも、そんなのあーし達に作れないっしょ☆」

「無理」


 カミラ(ギャル)ボンバリー(武人)、冷静な指摘もしっかり刺さる。


 そう、本来花火なんてものは、職人さん達が1年をかけて作り上げていくもの、……だけど、


「あの、もしかしたら」


 俺はおずおずと手をあげて、


「俺のスキルで、なんとかなるかも」


 と、言った。

 ――○○の中に花火という言葉をあてはめられるのなら、もしかしたら

 そんな俺の発言に、


「うおおお!? 【適当】スキルってそこまで適当にできんの!?」

「アル氏の能力はやばすぎですよ!」

「やっぱ何も無しじゃなくて何でも有りだねぇお前さん!」


 と、クラスメイトも盛り上がってくれて。


「ま、まだ、出来るって確定した訳じゃないけど、……それでも」


 ……前世どころか、この世界の来たばかりの俺だったら、けっして生まれなかったはずの前向きな発言、

 それは、俺自身が叶えたい夢っていうのもあるけれど、


「それでも俺は――」


 俺はクラスの皆と、そして、

 メディをみつめながら、


「皆と一緒に、花火を見たいな」


 と、言った。


「――ご主人様」


 そう、メディも、俺に笑みを返してくれた時、


「水を差すような言葉とともに、お邪魔するよ」


 突然、クラスの入り口から聞こえてきたのは、


「果たして、学園側が"火薬"を使うような催しに許可を出すだろうか」

「アンナさん!?」


 かつての学園生徒である、元、聖騎士団長、今はこの国の防衛機構のトップである、平和の守護者の団長である、ソーディアンナさんだった。


「お、お久しぶりです、妖精国事件以来でしたっけ」

「おつかれさまっすーアンナさぁん!」「兄さん、もうちょっとかしこまって!」


 今から1ヶ月程前に、アンナさんに協力を請われて、俺と双子とスメルフとロマンシアで、小さな妖精達が住む、小さな国の大冒険があった。俺達自身もちっちゃくなったもんだから大変で――と、頭の中に物語(思い出)が流れ出すのを、一時停止して、


「やっぱり、難しいですか?」


 と、アンナさんに問いただす。


「うむ、火薬はスキルが関係無く使える危険物だからね」


 この世界においての火薬というのは、スキル(魔法)の方が強力な効果を出せることが多く、あるこちゃあるけど需要が少ない。けれどそれでも確かにある危険物。

 アンナさんの判断は至極真っ当、盛り上がっていたクラスの雰囲気は、ええー? と言った、落胆に包まれていく。

 だけど、


「――ただ、それでも花火というものをあげたければ」


 アンナさんはそう言って、懐から、


「火薬と同じくらい、強力な後ろ盾(パトロン)がいるだろうね」


 手紙のようなものを取り出して、俺に渡す。俺はその宛名を見て、目を丸くし、そして、


「お、お兄ちゃん、これって!」

「聖女、セイントセイカ様!?」


 フィアとメディが送り主の名を告げた後、


「「また!?」」


 と、声を揃えた。

 ……うん、二人がそう言うのもよくわかる、だってセイントセイカ様ったら、


「おいおい、また聖女様から手紙?」

「頼りにされてるってことだろうけどさ~」

「ただお茶をするために誘ってる噂もあるらしいぜ」


 って、かなりの頻度で俺と接触するようになった。そしてそのことに最近は、フィアもメディもなんか複雑そうな表情を浮かべている。


「まぁ聖女様からお願いなんて断れないのは知ってるけどさぁお兄ちゃん」

「最近は、ただご主人様に会うことこそが目的のような」


 う、うう、鋭い。……実際、セイカ様は俺への恋心をはっきりと隠していない。それが"恋に恋する"ものかもしれなくても。

 フィアとメディだけでなく、なんだかクラスの視線もじと~っとする中で、


「ともかく、私はメッセンジャー、内容までは知らない」


 アンナさんが、


「中身を確認してくれまいか?」


 そう促したから、俺は封筒を無造作に開く。


(事件の依頼か、それとも遊びの誘いかな)


 どちらなんだろうと思いながら、俺は封筒を開けて、髪を取り出し、

 そこに書き記された言葉を見た。


 大大大好きなアル君へ♡

 学園祭で、イチャイチャラブラブデートしてください♡

 あなたの運命の人♡ セイントセイカより♡


 ――ハート()がアロマのように香りそうな程のそのラブレターに

 俺が、言葉を失う代わりに、


「お、お兄ちゃんが!」

「セイカ様と、学園祭デート!?」


 って、宛名を読んだときのように本文を読んだ物だから、

 クラス中はパニックに陥り、その結果、チョークコクバン先生のチョークが、クラス中の生徒の額に着弾することになった――ソーディアンナ(【英傑】スキル)さんすらかわせなかった。

・更新情報

毎朝7:00に投稿させていただきます!

ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!

https://www.neopage.com/book/32218968911106300

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