9-end 胸の鼓動は明日へ旅立つ
――クリスタルケイブドワモフ族ワクモフサンニート化事件、
それから、三ヶ月後。
「うぎゃあ!?」「うわぁ!?」
双子の兄と、双子の弟のやられ声が、学園の空に木霊する。
「のーじゃのじゃのじゃ! 儂の狐火を甘くみたかぶへぇ!?」
「ああ、ノジャイナリィが!?」
「背後からスメルフのタックルでふっとばされたぁ!?」
円卓帝国学園スキル演習場。フットサルコートの半分くらいの広さになるよう、白いラインを丸く引いた場所で繰り広げられているのは、Fクラスの実践形式のバトル授業。クラスメイト総勢32人、場外有りのサバイバル形式の乱戦の中で、
「あ、スメルフがそのまま!」
「アルテナッシへ突っ込んでいった!」
コート外の脱落者の声の通り、スメルフが、その巨躯の体を矢のようにして、俺へと突っ込んできた。
その中で俺は、
「【跳躍】スキル――」
――狼の姿で突撃してきたスメルフの攻撃を
「《|ジャンピングヘブン《アルテ君のジャンプ天国》〉!」
スキルを使って、飛んでかわした。
「うわ、高っ!?」
「どこまで飛ぶのよアルテナッシ君!?」
地上にいる人達の声が響く、だけど俺の視線は、コートに注視する。
――何故なら俺の攻撃をスカされたスメルフが
「【一撃】スキル――」
俺がスメルフを避ける事を予想していたかのように、待ち構えていたボンバ・リーに、
「〈イチゲキ〉!」
渾身の一撃を食らう様子を、そして、そのスメルフの巨体を、空に飛ぶ俺へと飛び道具のように吹き飛ばしてくることを!
俺も予想していたから、だから!
「【反射】スキル!」
空中で俺にぶつかろうとしたスメルフの体を、
「〈ダブルザペイバック〉!」
体に当たるギリギリ直前で、スキルを発動することで、飛んできた速度の倍の速さで、ボンバ・リーへ跳ね返す! 流石に反応出来なかったのか、ボンバ・リーは、スメルフごとコート外へふっとんでいった。
そのまま落下した俺は、地面に対してもスキルを使ったが、
「うわっ!?」
コンマ1秒タイミングがずれた所為で、うまく地面の衝撃を返すことができず、そのまま、コートの外までふっとびそうになったけど、
「ご主人様!」
既に脱落していたメディの声が聞こえて、なんとか、ギリギリのラインまで踏みとどまった。
(あ、危なかった!)
そしてコートを見回して、誰もいないことを確認して、
(俺の勝ち――)
そう、心の中で思った瞬間、
「【暗闇】スキル――」
ぞっとする声が、背後から聞こえて、
いつのまにか、俺の背後の影に潜んでいた、〔暗く伏したるクラァヤミィ〕が!
「〈|シャドウメリーコール《今あなたの後ろにいるの》〉……!」
コートと俺の間、ギリギリから這い出てきて、そのまま俺を背後から、手のナイフで首をかっきろうとして!
――頭の中が真っ白になった俺は
姿を消した。
「えっ……!?」
必然、クラァヤミィの攻撃は空振りになる、たたらを踏んだように前へとこけそうになって、それでもなんとか踏みとどまるクラァヤミィ。そして、
「どこよ……!? どこへ行ったの……!?」
俺を探すように、辺りを見回す彼女、けれど、俺の姿はコートのどこにも無い。さっきの俺の【跳躍】スキルのことがあってか、空をも見上げる彼女だけど、そこにも俺はいない。
そこまでして彼女は、
「まさか……!」
俺がしたことに、気づく。
「私の……【暗闇】スキルを使った……!?」
そう言って、振り返る彼女の前で、
俺は刀の柄に手をかけて、
「【居合】スキル――」
目を閉じて、息を吸い、心を落ち着け、脱力して、それらの動作を一瞬でこなした後に、
――抜き放つ
「〈ライフショーダウン〉!」
身と影すらも分かつような一閃は、
クラァヤミィの体を斬り裂いて、あたりに血の華を咲かす、……ということは無い。入学試験やダンジョンレースでも使われた、皇帝陛下のスキル、〈ブラッドレスエクササイズ〉が発動しているから。
ただそれでも、高速の一撃は、
「――ふへっ」
彼女に確実にダメージを与え、そのまま、
「ふへぇぇぇぇ……!?」
滅多に聞けないレアな断末魔と一緒に、その場へ倒れさせた。
……、
……え、えっと、サバイバルで、俺が最後の一人になった。
ということは――
「お、お兄ちゃんが、はじめて勝ったー!?」
「ピキャー!?」
コート外から聞こえてくる、フィアとチビのリアクションに、俺は、その事実を確認する。
「うわぁ、とうとう勝ち抜いちゃった!」
「運任せだっていう【適当】スキル!」
「そんな力でクラスのナンバーワンになるなんて!」
クラスメイトからの言葉に、ゆっくりと実感が沸いてくる。
――3ヶ月前
しりとりのお題を失敗したはずの俺、だけど、セイントセイラ様が俺に与えてくれた結果は、
レベルアップだった。
【○○】スキル -ランク レベル4
スキル解説[ ]
レベルアップ特典1[【○○】固定]
レベルアップ特典2[Aランクまでのスキルを使用可能]
レベルアップ特典3[各スキルのインターバルは1週間]
とんでもない大盤振る舞い、今までの不自由さは全く無い、それに、
今後のアップデート情報その1[Lv5でS、Lv6でSSSを解禁]
今後のアップデート情報その2[Lv7で最強で最高のスキルを修得]
こんなロードマップまで用意してくれていた。
……正直、3ヶ月前にこれを見た時は、喜びよりも戸惑いの方が大きかった。分不相応じゃないかと、俺みたいな人間には、もったいなさ過ぎる力じゃないかと。
だけど、そんな俺の傍には、
「ご主人様、おめでとうございます!」
――メディがいた
……駆け寄ってきてくれたメディは、あの時のように、笑顔を浮かべてくれる。
「ありがとう、メディ」
それはとても安らぎを与えてくれて、
……そして、
胸の高鳴りも、覚えさせる。
3ヶ月という、夢のように過ぎ去っていったけど、思い出すことが沢山な時間が、
俺に、この感情が何かを、教えてくれていた。
――それは
と、思った、瞬間、
――俺の額に何かが当たった
「いたぁっ!?」
「ご主人様!?」
こ、このおでこに対する馴染み深い痛みは、
「チョークコクバン先生!?」
「え、きょ、教室で無いのに、必中効果が!?」
曰く、教室の女王、支配者。
私語やいねむりをする生徒に対して、容赦なくチョークをダーツにして、必ず当てるスキルを持つ俺達の担任。けれどそれは教室内の話でここは屋外なのに、と思ったが、
「何を言ってるのかしら教え子達」
チョーコ先生は、持ち運びキャスター付きの黒板をバンッと叩いて、
「黒板があるところ、全てが教室でしょうが!」
と、そう高らかに言い放った。いやそれって強すぎない!?
「黒板さえ持ってきたら、どこからでもチョークを当てられるんだ……」
「それって、やりようによってはとんでもない気がするひひん……」
ハクバオージェとウマァガールが、俺の気持ちを代弁する中で、チョーコ先生は、
「いいから、サバイバルが予定より早めに終わったのなら、余った時間を有効に使うべきよ」
と言ったので、
「感想戦でもすんのか?」
「そうですわね、私の【夢想】スキル、今回も使いこなせておりませんでしたので是非」
って、ギャンブライジとロマンシアが答えるけど、
「そんなくだらないことじゃ無いわよ!」
と、チョーコ先生は一喝して、黒板の真ん前に立って俺達に背中を向けて、
え?
な、なんか懐から、沢山の色々な色のチョークを取り出して!?
「【黒板】スキル――〈ブラックグラデュエーションアート〉!」
す、凄い勢いで黒板に絵を描き始めた!? こんなスキルを隠し持ってたの!?
……そして30秒もしない内に、
黒板に描かれたのは、
「――学園祭」
その文字がでかでかと真ん中に踊り、生徒の笑顔や祭りの出し物などが描かれているアートを前に、先生は、
「最高の青春のお祭りで、どんな出し物をするか決めるわよ!」
そう、発言した瞬間、
「やばー!☆ テンションアガるー!☆」
チスタロカミラの言葉に続いて、クラスメイト達は、一気に盛り上がった。
――学園祭
……前世じゃ、クラスにいてもいなくてもいい扱いをされた俺にとっては、ただ無為に時間が過ぎるのを待つだけだった時間、
だけど、
「――楽しみですね」
今の俺には、仲間達と、
「ご主人様」
メディがいる。
「――うん」
俺がそう笑顔で答えると、メディは、
「……ご主人様、一つ、誓わせてください」
「え? 何?」
「――ずっと今まで秘めていた私の過去を」
メディは、俺にだけ聞こえるような小さな声で、
「学園祭の日に、告白します」
そう、言った。
……俺はそれに、言葉は返さなかった。
だけど、微笑みを浮かべた。
そうするとメディも笑い返してくれた。俺達は少しみつめあったあと、そのまま、盛り上がるクラスメイト達の様子を眺めた。
――1ヶ月後の学園祭
俺の胸が高鳴るのは、それだけが理由じゃ無いことを、
今の俺は、この世界に生きる俺は、
心から、理解していた。
――からっぽな心を満たすのは
【○○】スキル -ランク Lv4
スキル解説[ ]
アルズハート
[【笑顔】【賞賛】【真実】【未来】【自由】【○○】【○○】]
・更新情報
毎朝7:00に投稿させていただきます!
ネオページ様の方で最新話を先行公開中! よろしくお願い致します!
https://www.neopage.com/book/32218968911106300




