9-11 はじめての友達、はじめての
俺が自分が異世界転生者であることを告白してから、数十分後、クリスタルレイクのほとりにて。
「ご主人様の心の中には、転生の女神様とスキルの女神様が同居してると」
「転生の女神様はどっかいっちゃったみたいだけどね」
「私達の世界の女神様が、ワンダー中毒になってるとは」
俺はより詳しく、異世界転生についての詳細を解説していた。前世の世界のこととか、女神様の存在も含めて。
情報共有、っ理由もあるけど、何よりも俺自身が話したかったから。
ずっと胸の中に抱えていた、秘密を。
「……それにしても、ご主人様」
ある程度聞き終えた後、メディは、
「ご主人様の母親は、とてもひどい方としか思えません、……それでもご主人様は、お母様を恨んでないのですか?」
「……恨めないというか、なんというか」
確かに客観的にみれば、母さんは”毒親”と言われる類いの存在、それはわかっている。
それでも俺にとって、母さんは、
「たったひとりの家族だったから」
恨むことも、疑うことも、出来なかった。
……もしかしたらそれこそが、俺の罪なのかもしれなくても。
「どんな母だろうと、子は恨まない、それが、普通なのでしょうか」
「……そんなことはないよ、俺が、弱かっただけだから」
「……そうじゃなくて、優しかったからです」
……メディの言葉に、何か、返事をしようとしたけど、やめておいた。
きっとここからは、弱いだけ、優しいからの、押し問答。だったらここで区切った方がいい。
しばらくの静寂のあと、また、メディが口を開いた。
「ひとつ尋ねてもよろしいでしょうか? このことを知っているのは、私だけになりますか?」
「あ、いや、その、……セイントセイカ様も知っている」
「セイカ様も」
「いや、俺から話した訳じゃないんだけどね、セイカ様も俺と一緒の転生者で、スキルの女神様の血も引いてて、それでバレたというか」
異世界転生と同世界転生だと、雲泥の差はあるけれど。
……まぁそれに、
「正直セイカ様って、底知れぬところがあるから、最初から全てお見通しって可能性もあるけど」
俺がそう考える理由は単純、彼女こそが本物のチートだから。俺への想いでパワーアップしてるとか言ってるけど、そもそも、何度も転生出来ることそのものが強すぎるし。
とか思っているとメディが、
「つまり、ご主人様自ら秘密を告白した相手は、私だけということになりますね?」
「え、そ、そうなるね」
「――そうですか」
「……どうしたのメディ、なんか、嬉しそうだけど」
「嬉しそうじゃなくて、実際に嬉しいのです」
「なんで?」
その言葉に、メディは俺のことを、
「なんででしょう、私にも解りませんが――でも」
少し熱っぽい表情で、みつめた。
「とても大切な気持ちだと思います」
その瞬間、
――ドキッと
(え?)
俺の胸が一瞬、何か、……高鳴りを覚えた。思わず自分の胸を抑える。
入学試験前のドキドキとは違う、フィアルダイグノアー相手のスキル無双での高揚感ともまた違う、
もっと何か、なんというか、甘酸っぱいような――
「そ、それでは私、帰り支度の為に、離れますね」
「え、あ、うん」
俺が自分の気持ちに戸惑っていると、メディはそう言い残して走り去っていった。
……彼女が湖の辺から消えた後も、胸はまだざわついている。
「なんなんだろう、この気持ち」
とか、そう思っていると、
「なぁカバンよ、こやつに助言はすべきと思うか?」
「要らぬ世話でしょう、当事者同士ゆっくり育むべきかと」
「そうさな、実ったところで収穫するか」
「全力で阻止させていただきます」
……は、背後から、聞き慣れた女性の声が聞こえてきて、振り返れば、
「しかし、くだらなすぎて面白い奴とは思っていたが、貴様」
いつも通りのメイド姿のヨジゲンカバンさんと、
いつも通りじゃない――金ビキニでもない、メイド姿でも無い、
ギリシャの哲学者が羽織るような、右肩を露出した絹衣、その美貌と共に、為政者の風格を如実に現しながらも、豊満な肉体を布の上からしっかりと主張する、
「俺様と実質同い年とか! 失笑を通り越して爆笑するわ!」
などと言いながら、心底呆れたような表情で、女性のエルフリダ様が立っていた。
「エ、エルフリダ様!?」
メイドを引き連れて、突然登場した相手に、
「いつからそこに!?」
真っ先に聞きたかったことを聞けば、
「貴様が"これがクリスタルレイク……"と言ったところからよ」
「一番最初からじゃないですか!」
「当然であろう、カバンと共に後を付けておったのだから」
「盗み聞きする気満々で!?」
偶々じゃ無くて確信犯であったことに驚くが、すぐに、そういえばこの人そういう我が儘をする暴君だったと、改めて思い出した。
「すみませんアルテナッシ様、止めようとしたのですが、【支配】スキルで抵抗も出来ず」
「は、はぁ……」
カバンさんが謝る中、エルフリダ様は悪びれる様子も無く、俺へと無造作に近づいてくる。
……金ビキニとかメイド服とか、おかしな姿とは違う、神聖すら覚える姿からか、王の風格というのがひしひしと感じる、その威圧感に思わず怯みそうになった時、
「ほれ」
「えっ、わわっ」
と、エルフリダ様は、俺に何か投げて寄越した。慌ててキャッチすると、これは、ゲーム機?
「ワクモフサンからぶんどってきた、元凶のスライムが化けたアイテムである」
「え?」
「七大スライムが一つ{ディペンデンス}よ、さっさと貴様のちんけな願いで無害化せよ!」
「ええええ!?」
無造作に渡されたものに、俺は雄叫びを上げていた。
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