オープニング:静かなる推理のはじまり
(照明が暗転したスタジオに、徐々に光が差し込む。背後には荘厳なゴシック調のバナー《歴史バトルロワイヤル》が掲げられ、中央のテーブルには、白と黒を基調にしたクロス。重厚な空気と共に、司会者が一歩前に出る。)
あすか(ナレーション調に)
「――歴史の闇に、少年の影が浮かび上がる。
1828年、ドイツ・ニュルンベルク。
言葉も知らず、文明も知らず、まるで森の中からそのまま現れたような青年が、街の片隅に立っていた。
名は、カスパー・ハウザー。
彼は一体、どこから来たのか。なぜ人々を惹きつけ、そして、なぜあのような最期を迎えたのか。」
(ライトがあすかを照らし、ゆっくりと笑顔で客席を見る)
あすか
「みなさんこんばんは。歴史バトルロワイヤルのお時間です。
司会を務めます、“物語の声を聞く案内人”、あすかです。
今回のテーマは、"時代を超えて心を揺さぶるミステリー"、カスパー・ハウザー。
この謎に挑むのは、時空を越えて集った四人の名探偵たち。
論理と観察の申し子から、心に寄り添う共感の名手まで、バトルロワイヤルならではのラインナップですよ。」
(テーブルにライトが灯り、探偵たちが次々に紹介される)
あすか
「まずはこの方。言わずと知れた名探偵。
ロンドン・ベーカー街221Bの主、シャーロック・ホームズさん!」
ホームズ(背筋を伸ばしながら軽く会釈)
「このような不可解な事件には、いつだって、真実と嘘が入り混じっている。
我々の仕事は、そこから“事実”を切り出すことだ。」
あすか
「ありがとうございます。いつも通りの論理重視ですね。…さて、次は東洋の知性派。
数々の難事件と怪人を追いつめた紳士探偵、明智小五郎さん!」
明智(柔らかく微笑んで)
「お招きいただき光栄です。カスパー・ハウザー……
私は、彼を“演じる少年”ではなく、“生きたひとりの人間”として見たいと思っています。」
あすか
「なるほど、優しき視点が光ってますね。
では続いて、“灰色の脳細胞”で数々の事件を解き明かしてきたエレガンスの化身、エルキュール・ポアロさん!」
ポアロ(小さな咳払いをしてから、上品に手を挙げる)
「メルシー、マドモワゼル。
真実とは、感情に左右されない秩序の中に宿るもの。
そして私は、その秩序の番人でございます。」
あすか
「今日も完璧主義が炸裂しそうですね。…最後に登場するのは、行動派の若き探偵!
アメリカの少女探偵、ナンシー・ドルーさん!」
ナンシー(明るく手を振りながら)
「こんばんは、あすかさん! この番組、前から見てたから出られて嬉しいです。
カスパーのこと、ずっと不思議に思ってたんです。私、彼にちゃんと向き合いたいな。」
あすか(にっこり)
「おぉ、フレッシュな風が吹いてます。ポアロさん、若い世代の勢い、どう思います?」
ポアロ
「マドモワゼル・ドルーは情熱的だ。しかし…秩序を忘れぬよう願いたいですね。」
ナンシー(ちょっとむっとして)
「私は秩序も好きですよ! でも、それだけじゃ足りない時もあるでしょ?」
ホームズ(片眉を上げて)
「若さは貴重だ。だが、情熱だけで真実に辿り着けるとは限らん。」
明智
「ですが、若さが真実に風穴を開けることもある。ねえ、ナンシーさん?」
ナンシー(嬉しそうに)
「はいっ!」
あすか
「おおっと、早くも火花が! でも、仲良くお願いしますね?
それぞれの視点があるからこそ、この番組は面白いんです。
では、ここで改めて――本日のテーマを申し上げましょう。」
(ライトが少し暗転し、背景スクリーンにカスパー・ハウザーの肖像画が浮かび上がる)
あすか
「“カスパー・ハウザーとは何者だったのか”
それが、今宵のミステリー。
王族の血を引く謎の子供か? それとも、巧みに仕立てられた幻か?
みなさんには、“自分なりの真実”を見つけていただきたいと思います。」
(探偵たちがそれぞれ真剣な表情でうなずく)
あすか
「さあ、それでは――推理と対話の饗宴を始めましょう。
歴史バトルロワイヤル、開幕です!」
(音楽が流れ、ラウンド1「出自の謎」へと舞台が切り替わる)