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第7話 がっしり捕まれ連れ出された

「おかしいわね? 使い魔として使役する契約呪文であって、他の付与効果は無いハズなんだけど……」


 モモの姉が独り言の様に言う。しかし慌てた様子はなくゆっくりと話している。


「それにしては俺は意思を持って喋っているってか?」


 俺は答えてやった。


「ええ、そうなのよ」

「まぁ、そう思うのも無理はないんだがな」

「えぇ? どう言うことかしら?」

「お前は俺を単なる鳥だと思ってるんだろ?」

「ええ。この契約呪文は私とあなたの魂を結ぶだけの呪文なのよ、でも単なる鳥であるあなたが意思を持っている様に思える発言をしている。そこが不思議で仕方がないの」

「ちょっと!! 姉さん、いい加減にして!」


 モモが俺と姉との会話に割って入ってきた。


「姉さんの一人芝居に私を巻き込んでるんでしょ? 使い魔を使った腹話術は良いから本題に入りましょうよ!」

「腹話術って言われてもねぇ」「腹話術って言われてもなぁ」


 俺と姉の声が重なった。互いに目を合わせ、そしてゆっくりと二人共モモに視線を移した。


「な、何よ」

「契約したばかりで混乱しているんだ。ちょっと整理するために姉さんと話をする時間が必要だ」


 そう言った俺の言葉に、モモの姉は頷いていた。


「……分かったわよ。ほんと、一体いつまで腹話術を続けるつもりよ……」


 そう言うとモモはかまどのある方に移動して何やら作業をし始めた。


「さてと、一つずつ整理していく必要があるな」


 俺は姉に言った。


「そうね……」


 そして俺とモモの姉との対話が始まった。


  *  *  *


 モモの姉はパイラと名乗った。そして俺がかけられた魔法は、俺をパイラの使い魔にするためのものだ。普通は動物などに使うらしい。命令するのはパイラで命令されるのは俺、だったはずなのだが……。


 俺はパイラに右腕を上げるように念じてみた。


「あら? どうして勝手に腕が上がるのかしら?」


 俺の中の大事な何かが失われそうなのを察してそれを咄嗟に止めた。


 それと使役者は使い魔の見聞きする事を感知することができるらしい。つまり俺の見聞きする事をパイラが認知出来るのだ。だが試してみたところ、俺が許可するという意思が必要だった。さらに逆も可能だった。つまり俺もパイラが見聞きする事を感知できた。それはパイラの許可を得ずともいつでも可能だったのだが、そのことはパイラには伏せておいた。その事を応用して俺たちは念話が出来ることを発見した。


『俺が念じて話そうとしているのは伝わっているか?』

『ええ、こちらの方はどうかしら?』

『ああ、伝わってる』


 念話で対話した後、俺は自己紹介を始めた。すっかり忘れていたのだ。


「俺の名前はキジマエイコウ。この世界とは別の世界から生まれ変わってきた転生者だ」

「へぇ、転生者って設定なのね? 姉さん、この子の名前を決めたんだ。でも呼びにくいからエコーって呼ぶわよ。魔女の前で本当の名前を名乗るべきじゃ無いしね」


 いつの間にかかまどから戻ってきていたモモが言った。


 魔女だと?


「いや、それよりパイラの腹話術の相手の設定じゃなく、本当に俺は転生者だ」

「え? そうなの? あんた店で売られてたじゃない」

「パイラとモモ、まぁ、聞いてくれよ……」


 俺はバグ女神に会ってからペット屋に捕まるまでを掻い摘んで二人に話した。


  *  *  *


「……という訳なんだが、あの女神は何なんだ? お前ら知ってるか?」

「もちろん知らないわ」


 モモがそう答える一方で、パイラが考え込んでいる。


「あと、これまでほとんど人間の様子を観察できていないからこっちの世界の文化が全く分からないんだ。そういえば、この世界では人身売買制度が普通に有るのか?」

「そんな訳無いでしょ。人が人を売買するなんて有り得ないわ」


 腕を組んだモモが半分怒りながら言った。


「そうなのか? 見間違いかもしれないが女の子が檻に閉じ込められていたのを見たぞ?」


 突然モモが両手でテーブルを打ち、立ち上がる。


「それはどこでっ!?」

「あ、ああ。俺を買った店が有るだろ? その近所の――」


 俺が言い終わらないうちにモモは俺の首を鷲掴みにして玄関の前まで駆け出した。


「姉さんごめん! ちょっと行ってくる」

「え、モモ――」


 パイラが半分立ち上がり何かを言おうとしている姿が、閉められたドアで見えなくなった。



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