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第44話 デビュトの街を出発した

  *  *  *


 幾つものクエストを達成したシャルとファングは、デビュトのクエスト斡旋所から登録記章を得る事ができた。シャルは裁縫や工作の腕を各所から認められ引き抜きの声も上がっていたらしいし、ファングはルーラルとシムからの口添えもあったので信用を得るのに有利になったと、受け付けのタタがこっそりとモモに漏らしていた。デビュトの街ではルーラルとシムは五本の指に入る有力な冒険者だったのは後で知った話ではある。それを上回る実力者のモモがデビュトの街を出ていく際には、当然の様に引き止められていた。


「やっぱり出立するのか?」


 シムを傍らに伴ったルーラルが言った。


 街門の外側に俺たちは居た。人の姿のファングは、通行の邪魔にならない様に荷車を街道の横に停めていた。シャルは荷車の車体や車輪をチェックしている。俺はモモの右肩に止まっていた。


「もちろんよ。世界が私を待ってるの」


 モモのその台詞を聞いたルーラルとシムが顔を見合わせていた。


 まぁ、何を言っているか分からないよな。その気持は分かるぞ。


「そ、それなら仕方がないな。また戻ってくるんだろ? デビュトの街は君達をいつでも歓迎するぞ」


 まるでこの街の代表者かの様に話すルーラル。


「すぐじゃないけど必ず戻ってくるわ」

「すでにこの街じゃぁ『鬼殺しのモモ』の異名で囁かれているからな、君は。他の街でも鬼退治の専門家として名を馳せるんだろ?」


 ルーラルのその言葉にほんの僅か眉をひそめたモモ。


「そうね。その噂がこの街に届くのを楽しみにしておいて」


 モモはそう言ったが、鬼退治じゃなく鬼化を防ぎたいと思っている事は間違いない。こいつはそういう奴なんだ。


「モモ、頼まれていた情報の事なんだけど」


 シムが言った。


「ありがと。何か面白そうな情報はあった?」

「セカルドの街の冒険者団(カンパニー)が最近積極的に特殊能力を持っている人を集めているらしいわ。冒険者団(カンパニー)じゃなくクエスト斡旋所だったかしら? その辺は曖昧な噂だったわ」

「そう。他に能力者に関する噂は無かった?」

「他は無いわね。能力者はなかなか居ないから……。あなたが能力者だって知ったときはとても驚いたわ。まさかこんなに身近に能力者が居るなんてね」


 実際はファングに加え、スーサスとチシャも能力者だったのだがそれはモモと俺ぐらいしか知らない。


 モモは黙ってウィンクしながら自分の口元に人差し指をそっとあてた。


「わかってる。私とルーラルしか知らないモモが能力者だって秘密は守るわ。ね?」


 シムはルーラルの左腕を引き同意を促す。


「ああシムの言うとおりだ。俺も口外しないさ」

「お願いね。じゃあ、行くわね」


 踵を返したモモはシャルとファングに出発の合図を出して街道を歩き始めた。


「モモよりもっと身近に、スーサスって能力者が居たけどな……」


 ルーラルと十分距離が離れた時、俺はモモの耳元で囁いた。


「それを彼らが知る必要は無いし、教えるつもりも無いわ」

「まあな。スーサスは何で鬼化したんだろうな?」

「あんた、本気でそれを言ってるの? あれを見てみなさいよ」


 モモと俺が振り返ると、ルーラルの左腕にしっかりと抱きついているシムが居た。二人は俺たちが振り返るのを見ると手を振って応えた。それに応えたモモは再び前を向いた。


「スーサスを含めて三人は幼馴染みなんでしょ。あんなのを見せつけられたら……。詳しいことは分からないし起こってしまった事は変えられないわ。そもそも私の知ったことじゃないわよ!」


 モモが手を伸ばしてきて、俺を肩から押し出す。俺は羽ばたきながらモモの周りを飛んだ。


「何だよ突然」

「あんたが、くっだらない事を言うからでしょ! そんな事より新しい技を教えなさいよ!」

「ああ、考えておく」

「今度は絶対に()めてみせるんだから……」


 モモは自分自身に言い聞かせる様に静かに言った。


「……で、次は何処に行くんだ? あ、『ここではない何処かへ』ってのは無しだ」

「何よそれ、変なの」


 いや、お前の決め台詞だろ。


「もちろんセカルドの街を目指すわ」

「それはこの方向なのか?」

「さぁ? シャルが地図を手に入れてたわ。だからシャルに聞いて」


 俺はシャルが乗り込んだ荷車に向かって飛んだ。さすがに人前で変身できないファングは人の姿のままその荷車を引いている。


『エコー、ちょっと伝えておく事があるんだけれど』


 その時、パイラからの念話が届いた。


『なんだ?』

『今から七日間、音信不通になるわ。もちろん緊急事態なら連絡するし、逆に連絡してもらっても良いわよ』

『え? なんでだ?』

『ダーシュが自分の部隊を引き連れて野外演習に行くのよ。それに同行するから』

『野外演習ってなんだ? なんでお前が同行するんだ?』

『野外演習は学園とは関係ないわ。ダーシュの軍の、騎士団の仕事みたい』

『だったらなぜお前が?』

『学園内では使えない魔法を見せてくれるんですって。それに道々魔法のことを教えてくれるって』

『そうか。まぁ気をつけろよ。編集窓(エディタ)のことは話しても良いが、管理窓(ファイラー)の事は一切話すなよ』

『ええ、分かったわ。戻ったら連絡するわね。ところでモモに変わったところはない?』

『相変わらず前向きに突っ走ってるぞ。相変わらずな』

『そう……』

『つまり問題無いって事だ』


 問題はないが心配ではあるんだが。パイラ、お前もな。


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