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第3話 ペット屋に捕まった

 巣に影が覆いかぶさったと思った途端、俺はそれに鷲掴みにされた。俺はギャーギャーと喚き散らしながら必死にもがき、それから逃れようと嘴で噛み付いた。


「痛ててて、じっとしてろよ!」


 よく見るとそれは鱗に覆われてはおらず、鋭い爪も無かった。それより驚いたのはそれが人の言葉を使っていた事だ。思わず俺は抗う力を抜いてしまった。


 おーい、俺はここに居る。人間だ!


 いくら叫んでも俺の口から吐き出されるのはとても言葉とは言えない雑音だけだった。


「よしよし、大人しくしてれば痛い目に合わせたりしないからな~」


 俺は人間の手に掴まれ、巣から引きずり出された。


「へへっ、雛が居たぜ。こりゃ高く売れそうだ」


 髭面の男が俺に顔を寄せ、歯抜けの笑顔を向けた。息が臭い。


 そして麻袋に突っ込まれたと同時に鷲掴みから開放され、その色濃く日焼けした腕は袋の中から出ていった。腕が出ていった袋の口はすぐに閉ざされた。その後、乱暴に扱われているのか、優しく扱われているのか判断できないが、衝撃を受けながら俺はどこかに運ばれた。その長い時間、ずっと麻袋に詰められっぱなしだった。


 俺はこっちの世界の人の言葉が理解できている。落ち着いた俺はそのことにようやく気づいた。


 長い長い時間が経過した後、横向きに置かれた麻袋の口が開く。そして麻袋の底が俺をその口に向かって押し出し始めた。


「ほら、出ろ。出ろ」


 袋の底を押して俺を袋の外に出そうとしているのだ。なされるがまま袋から押し出される。


 そこはみすぼらしい檻の中だった。粗く編み上げた細い紐で各所を縛った、少しひね曲がった木の棒から作り上げられている。ぎりぎり直方体を形作っているそれは、鳥かごなのだろう。床には藁が敷かれており、とまり木がその空間を横切っていた。


 その鳥かごの中から周囲を見てみると、俺とは羽の色が違う鳥や、四足の哺乳類、猿や爬虫類が居た。


 ペット屋? 野生の動物を捕まえて売るのだろうか……。


 俺は少し安堵した。ペット屋なら、野生フィールドのガチのサバイバルから抜け出せたという事だから。


 愛玩動物ライフ万歳!! これからは人間に媚びて生き延びるぞ! 目指せペット王。


 俺が心の中で生きるモチベーションを高めていると、


「お前は変な癖が付く前に早く売らなきゃな。値がどんどん落ちちまう」


 俺を捕まえた髭面の男が、鳥かごの中に穀物と果物が入った容器を入れながら言った。


 その食事、ありがたくいただきます!


 俺は食にありつける喜びと一緒に、その餌を噛み締めた。


 うん、旨い!


「お、食いが良いな」


 その男は火が付いた灯明皿(とうみょうざら)を近づけてきた。


「それに毛艶も悪くない。さっそく移送するか。おい! ブーカ! 明日こいつも運んでくれ!」


 部屋の開口部に向かって髭面の男が大声を出す。


「へーい。わかりやした」


 部屋の外から別の男の声がした。


「良い買い手が見つかると良いな」


 良い飼い主が見つかります様に。


 男の言葉と俺の思考がシンクロした。


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