表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/151

第28話 クエストを請けた

 デビュトの街に着いた翌日の朝、モモとシャルとファングはクエスト斡旋所に来ていた。シャルとファングのクエスト実績を積むためだ。俺はいつものポジション、つまりモモの左肩に止まっている。俺たちがクエスト斡旋所に入るとそこには誰も居なかった。入り口から入ってすぐのロビーの奥の一面を占めるカウンターの向こうには、暇そうな受付おばちゃんのタタがモモ達を見て手を軽く振っていた。


「何か手頃なクエストは無いかしらね」


 モモが掲示板の一つに近づきながら言った。シャルはファングを伴って別の掲示板の方に向かった。


「ファングは討伐クエストに向かわせるのか?」


 俺はこっそりとモモに尋ねた。


「フフフ、そうすると私も同行しなきゃならないじゃない? そうするとシャルが一人で非戦闘系のクエストを請けることになるからちょっと心配なのよね。できれば私はシャルと同行して、ファングが別行動の方が良いと思うんだけど、あんたはどう思う?」

「まぁ、そうだな」

「とするとね、ファングには力仕事の雑用が良さそうなんだけど」

「何か雑な扱いだな」

「ウフフ、エコー、くすぐったいったら」


 肩をすくめるモモ。


「いい加減慣れろよ」

「フフ、それは無理。ファングに同行してくれる冒険者が居れば良いんだけど。都合が良い冒険者は居ないのかしらね」


 モモは他の掲示板に移動しながら言った。


「ここに居たら見つかるんじゃないか?」

「そうね。ところで、はい、これは何と書いているでしょう?」


 突然モモが、掲示板に貼られている一枚の紙の上部に書かれている文字を指して言った。


「まだ文字を習ってないから分からん」

「フフ、まったくしょうがない子ねエコーは。この文字は、穴掘りよ。犬にはぴったりね」


 そう言うとモモはその紙を掲示板から引っ剥がした。


「犬じゃなくファングって呼んでやれよ」

「じゃあ次、これは何て書いてる?」


 モモはまた別の紙の上部の文字を指して言った。


「だから、俺は文字を――」


 そこには先程と同じ文字が書かれていた。


「……穴掘り」

「すごい! あんた、ちゃんと読めるじゃない」


 その紙を掲示板から引っ剥がし、次の掲示板に移動するモモ。


「じゃあ、これは読める?」


 新しい掲示板の紙を指差すモモ。


「穴掘り。ってモモ! ここのクエストは穴掘りばっかりか!?」

「フフフ。そんな事言われても私が知るわけ無いでしょ」

「全部同じクエストってオチじゃ無いだろうな」

「そんな訳無いでしょ。地下室を作りたいからとか水路を作りたいからとか理由は色々よ」


 三枚目の紙を掲示板から引き剥がすモモ。


「そ、そうなのか?」

「そうよ」

「……なるほど。ところでなモモ、一つ言っておきたいことが有る」

「何よ。不平不満は受け付けないわよ」

「俺、穴掘りって文字を覚えたぞ」

「いつ使うのよ、そんな言葉」

「……」

「ねぇシャル、手頃なクエストは見つかった?」


 シャル達の居る方に振り返ってモモは言った。


「いくつか有ったのです」

「それはよかった。ねぇ見て、犬にピッタリのクエストが幾つか有るわよ」


 モモはシャルに近づきながら言った。


「狼だ」


 そう言いながら手を出すファング。モモが持っている紙をよこせと言っているのだろう。


「お手?」


 とぼけるモモ。


「……」


 モモをじっと見たまま、動かないファング。


「はいはい。どうぞ」


 モモは掲示板から剥ぎ取った紙をファングに渡した。


「モモ、街の外でする作業を請けても良いのですか?」

「別にいいわよ」

「お嬢、外に行くなら俺も付いていくぜ?」

「犬は穴掘りよ! あんたもちゃんとクエストを遂行するの!」

「いや、しかしお嬢を――」

「ファング、お願いなのです」

「お嬢の仰せのままに」


 背の低い女の子に、深々とお辞儀をするガタイの良い犬耳族(カニス)がそこに居た。傍から見たら忠実な家臣の様だ。ちょっとイケメンなのが、やっぱり少し腹が立つ。


「目ぼしいクエストは一つだけなの? シャル」

「宿でもできそうなのが幾つか有るのです。でもそれは後回しにします。まず街の外でのクエストを終わらせたいのです。でもそのためには宿屋に置いている工具を取りに戻らないといけないのです」

「分かったわ。で、私が選んであげたクエストはどうなの?」


 モモはクエストの内容を吟味しているファングに聞いた。


「ふむ、多少は体を鍛えられそうだ。モモ、いいセンスしてるな」

「……だとさ」


 ファングの意外な言葉に対して何も言わないモモに、俺は言った。


「さてと、カウンターに行くわよ」


 すたすたとカウンターに向かうモモ。シャルもその後に付いてくる。


「こんにちは、タタ。クエストを請けたいんだけど。あと、ルーラル達はここに来た?」

「はいはい。ルーラルちゃんはまだここには顔を出してないわよ」


 そう言うとタタはカウンターに置かれた何枚もの紙を受け取りながら言った。


「じゃあ、このクエストは請け負い済みにしておくわよ。これはあなた達が持っておいて」


 カウンターの奥で何やら探りながら、


「これと、……これ、これ、これ、これも……」


 と言いながら一枚ずつ紙をカウンターに置いていくタタ。紙には文字やら図やらが描いてあった。


「これはシャルの分、これは犬、犬、犬……」


 モモは出された紙を一枚ずつ見ながら左右に控えるシャルとファングに振り分けていった。


「じゃ、ここで一旦解散。シャル、宿に戻りましょ」

「ファング、暫しのお別れなのです」

「お嬢、お達者で!」


 クエスト斡旋所を出たモモ一行は二手に分かれてそれぞれの目的地に向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ