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第19話 硬直問題を解決した

  *  *  *


 数日後、モモ一行は街道から離れて水場を探していた。野営の準備をするためだ。日が傾き、白かった雲が灰色になっていた。さらに空の端が薄オレンジ色に染まり始めている。すると遠方の藪の中から、きょろきょろと辺りを物色しているゴブリンが八匹現れた。その中の一匹は他のゴブリンとは雰囲気が明らかに違っていた。


 出たな!


「モモ! 発気だ!」


 はっとしたモモが腰の袋からキビナッツを一つ取り出し口に放り込んだ。そしてすぐに歯を食いしばってしまう。


「違う! 噛みきってしまわないことに集中するんだ! 目をつぶっても良い! まずは発気(はっき)の微妙な力加減に集中しろ! 抜剣はそのついでだ!」


 こちらに気づいたゴブリンたちが駆け出し、向かってきた。雰囲気が違う一匹のゴブリンだけがその場に留まり、抜身の剣を俺たちに向かって突き出している。


 シャルが荷車からファングを解放しようとしている。モモは腰の袋からキビナッツを取り出し再度口に放り込む。そしてやや体を丸くして前かがみになり目をつぶった。右手は鞘に納められている剣の柄に添えられている。


 頼むぞ!


 どんどん間を詰めてくるゴブリンの群れ。


 数秒の間……。


 駄目なのか――


 そう思ったその刹那、鋭い金属同士の擦過音が響く。と同時に抜剣したモモがそこに居た。しっかりとゴブリンを見据え、その右手の剣が夕日を反射して薄オレンジ色に光る。その瞬間、モモの周囲の気の圧が一気に跳ね上がった。


「参る!!」


 その場から弾き飛ぶ様に目の前のゴブリンに向かって駆けてくモモ。右後ろにファングを引き連れて。


 完全武装のモモ。右手には抜き身の剣。

  攻撃 6

  技  7

  速度 6

  防御 6

  回避 5


 モモのその様子と鑑定結果に俺はひとまず安堵した。


 全力で駆けるファングはすぐにモモを引き離し右側からゴブリンの群れの後方に回り込んだ。モモは一直線にゴブリンに迫り剣を振るう。一匹目を袈裟斬り、二匹目を逆袈裟、三匹目は突進と同時の突き。ファングが一匹を屠ったので一瞬にしてゴブリンの数が半分以下になる。遅れてシャルも一匹射抜いていた。そしてその数がゼロになるには三十秒も必要なかった。


 雰囲気の違うゴブリンがゆっくりとモモに歩み寄ってきた。


「ファングはあいつの後ろで待機、むやみに攻撃しないで。やつは強いわ」


 雰囲気の違うゴブリン。体格が良く身長がモモに匹敵している。

  攻撃 5

  技  8

  速度 7

  防御 6

  回避 5


 これはマズい!


「モモ! 気をつけろ!」


 ゴブリンの初撃をモモは剣で受け止めた。直後に薙いだモモの剣は空を切る。そいつはバックステップして身を翻していたのだ。


 再度ゴブリンがモモに斬りかかり、剣と剣が打ち合わされる音が連続二回響く。その直後にはゴブリンはモモとの距離を離していた。


 モモは剣を左手に持ち替えると同時にゴブリンに飛びかかった。迫るモモに対してゴブリンがまっすぐに伸ばした剣先とモモの剣先が触れ合い、甲高い音を立てて刃と刃が火花を散らして互いの鍔近くまで擦れ合う。急接近するモモとゴブリン。


 モモはゴブリンの足を踏むと同時に右肘を喉元に打つ。怯むゴブリン。いつの間にか右手に握っていたクナイをゴブリンの胴にねじ込んだ。


 左手で腹を抑えながら剣を振り下ろすゴブリン。その緩慢な斬撃は空を切った。モモは既にそこには居らず、剣の切っ先をゴブリンに向けて突進し始めていた。そしてその直後にはゴブリンの喉から後頭部を剣が貫いていた。


 モモはゴブリンの胸を蹴り、その体から剣を引き抜く。ゴブリンは派手に後方に倒れた。


 ゴブリンがそれ以上動かないのを確認すると、モモは剣を血払いした。ギフト能力を使ったその剣の軌道はとても速く複雑だった。そして納剣の小気味良い金属音がその戦闘の終止符を打った。


「ふぅ」


 一息つくモモ。俺の視線に気づき、右腕をまっすぐこちらに向け親指を立てた。俺もつい両羽を大きく上方に広げてしまった。


 そんなモモに近寄り、じっとモモを見るシャルとファング。そして動かない。


「ん? どうしたの?」


 二人に問うモモ。


 二人共モモが戦闘できるようになったことを喜んでいるんじゃないか?


 シャルとファングは黙って口を開けた。


「え?」


 え?


「何か忘れているのです」「ブヮフ」

「あぁ、ごめんごめん」


 そう言ってモモはキビナッツを一つずつシャルとファングに与えた。


 いや、それはご褒美用じゃなく、戦闘準備のためのものだぞ?


 ……まぁ、偽物だけど。


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