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第15話 心配事が二倍になった

  *  *  *


 いや、本当に困った。モモがあんな状態になるとは……。


 モモたち一行は、石壁で守られている街を歩いていた。石畳も敷設されているし比較的大きい街だった。荷車を引いているファングに行く行く人が興味を持っている。一部の女性は駆け寄ってきて触っても良いかとモモに尋ねたりしていた。


 ただのなんとかウルフだぞ? 触りたくなる程のものか?


 メインの通りの両サイドには店や露天が多く並んでいた。この街の名物の食べ物や特産品が数多く並んでいたり、呼び込みが大声で自分の店が一番質が良いだの一番安いだの叫んでいたりする。


 しかし二度だぞ、二度。初戦の緊張で動けないと言っても二度目は無いだろ。普段は堂々としているし、剣捌きも問題ない。あるとしたら精神的な問題か? ソフトウェア開発者だったら、多忙や不条理に責任を負わされるなどでメンタルを壊す事はあるだろうが、モモにはそんな不条理なプレッシャーは掛かっていない筈だ。ちゃんと目標に向かって行動しているし……。


 どうしたものか……。


 俺はファングが引く荷車の前縁に止まって辺りをぼんやりと見ていた。


「あっちもこっちも美味しそうなのです」


 シャルがぽそりと背後で言った。


 旅に慣れていない人間には誘惑が多いのだろうな。まあ、人の事は言えないが。露店を開いている連中もそんなお上りさんを騙そうと躍起になってることだし。ほら見てみろ、なんか怪しげな薬まで売っているぞ。まさかあの薬は万病に効ってことは無いだろうな……。いや、こっちの世界では有るのか?


『エコー、今ちょっと良いかしら?』


 パイラからの念話が来た。


『ああ』

『暫くこっちもバタバタしてて連絡しなかったけど、そちらの旅は順調?』

『まぁ、大きな問題が一つある』

『そう、そっちも……』


 そっちもって、パイラの方でも問題が起こっているのか?


 俺はこっそりパイラの感覚を共有した。


 そこは魔法学園の庭園の一角の様だった。パイラの視線は足元の石畳に向けられているが、視界の端からは石造りの建屋や木々が整然と並んでいるのが見える。ベンチにでも座っているのだろうか。遠くの方から若い女性の談笑が聞こえた。


『モモがな――』


「あらあら。こんなところで落ちこぼれさんが休憩しているわ。必死に机にしがみついてなくて大丈夫なのかしら?」


 パイラが聞いだ声だ。パイラの感覚を共有している俺には、まるで俺が学園に居るかの様に鮮明に聞こえた。パイラの視線が声の主の方を見る。そこには転生前の俺の世界で言うところの、絵に描いたようなお嬢様が立っていた。その左右後方にはそのお嬢様と同じ制服を着た女子が控えている。


「……」


 何も言わないパイラは、視線を再び足元に落とした。


「魔女上がりが魔法を習おうなんて一万年ぐらい早いことよ! さ、行きましょ皆さん」

「「はい、シャーロット様」」


 お付きの二人の声が続く。


 なんだなんだ? パイラが魔女と知っての嫌がらせか?


『なあパイラ。こっちは何とかするさ。んで、そっちは魔法の習得の調子はあまり良くないのか?』

『……ええ、少し』


 ……元気がないな。


『なあ、他人に教える事によって理解が深まるって知ってるか?』

『そうなの?』

『ああ、だから前にも言ってた様に、俺に魔法を教えてみてくれよ』

『うん、分かった』

『今日の宿が決まってからまた連絡する』


 俺の体の方に感覚を戻すと、目の前に串に刺さった団子の様なものを食べているモモがじっとこっちを見ていた。


「あんた、目を開けたまま寝てるの? ほら、これ美味しいわよ、食べる?」


 食べかけの団子の串をこちらに差し出してくるモモ。


「いやいい。お前は気楽だな」

「え!? 何? 私が落ち込む理由がこの世にあるの?」

「……」


 なんか、別の意味でパイラよりこっちの方が心配だ……。


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