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第119話 ラビィと魔法学園を訪れた

  *  *  *


 セカルドの街を出発して数日後、ラビィと俺は古めかしいが立派な門の前に立っていた。立派な石造りの柱が両側にそびえ立ち、その表面に掲げられているタペストリーが風に揺れていた。その色鮮やかな布地には、学園の威厳と魔法の力を象徴するかの様な紋章が織り込まれている。


「さて、中に入ろうか」


 独り言の様にラビィが言った。単なるオウムを演じている俺はその肩に止まったまま何も言わない。


 ラビィは真っ黒なライダースーツの様な飛行服ではなく、要所を革で補強した動きやすい軽装だった。右太ももに取り付けたホルスターにはマチェットガンを収めている。俺とラビィは、ラマジーの街の手前でいつもの様に飛行凧でのフライトを止め、徒歩で宿屋に向かった。今は折りたたんだ凧を宿に預けてあるのだ。


 ラビィはその立派な門扉を押し開く――、訳ではなくすぐ横に開かれている開口部に向かった。


 あ、そっち?


 その開口部の内側は中庭に通じる通路になっていた。その通路の右側には受け付け窓口があり、そこには何の特徴も無い事務屋っぽい中年男が居た。


「こんにちわ」


 ラビィが話しかける。


「ご要件はなんですか?」


 丁寧な対応をする中年の男。


「ここで学んでいる学生に会いに来たんだけど、面会はできるのかい?」

「こちらで取り次いで、本人が望めば出来ますよ。学生のお名前、そしてあなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」

「もちろんだよ。ボクが会いたい学生はパイラ。ボクの名前はラビィだ。パイラ姉さんには妹が来たって伝えてくれれば伝わるはずだよ」

「少々お待ち下さい」


 受け付けの男は一旦カウンターから離れ奥の方に引き上げたが、暫くして厚めの冊子を持って戻ってきた。


「お待たせしました。残念ですがパイラさんはこの学園には居ません。退学されてますね」


 何!?


「退学? いつ退学したんだい?」

「五年前ですね」


 カウンターの内側でぱらぱらと冊子を捲りながら答える受け付けの男。


「退学して何処に行ったか分かるかい?」

「少々お待ち下さい。……、特に記載は無いですね」

「そうか……。じゃあ、パイラ姉さんと懇意にしていたシャーロットって学生に合うことは出来るかな? 退学したパイラ姉さんの行方を知ってるかも知れないから話をしたいんだ」

「そうですね……」


 受け付けの男が冊子を捲る時間が過ぎていく。


「あ、有りました。シャーロットさんも退学されてますね。パイラさんと同じ日付です」

「二人が同時に退学したって言うのかい?」

「その様ですね……。シャーロットさんの方は詳しく書いてますよ。退学してこの学園を出ていったのではなく、学園からシャーロットさんの実家に外出して、その後学園に戻ってこないままに退学届が提出されている様ですね」


 シャーロットの実家ってことは、クロスコン家か。……確か、エクリプス領だな。そこに行けばパイラ、最悪シャーロットには会えるのかも知れない。


 俺は予め決めていた引き上げの合図をラビィに伝えた。


「あはは。くすぐったいよ」

「……」


 突然のラビィの悶えに、怪訝な様子の受け付けの男。


「あ、ああ。この子が突然くすぐって来たんだよ」


 受け付けに向かって手をひらひらと振りながら説明するラビィ。


「そうですか」

「いや、ありがとう。どうやら姉さんの居所は此処では分からなそうだから、退散するよ」


 ラビィと俺は魔法学園を後にした。


  *  *  *


 その日の夜。ラマジーの宿屋の食堂でラビィは小さなテーブルを一人と一羽で占領していた。


「ラビィ、エクリプス領って知ってるか?」


 周囲の喧騒に紛れて、俺はラビィに小声で聞いた。


「ああ、最近交易に力を入れている少し田舎の領地だな。シャルからトレジャーハンターの仕事を振られる事があるよ」

「トレジャーハンターじゃなく、交易な。次はそこに行くぞ」

「クロスコン家ってその地の領主じゃないのかい? 親父には伝手はあるのかい?」


 ラビィが皿に残っている最後の肉を口に運びながら言った。


「無い。お前は有るか?」

「……。無いね」


 咀嚼し終わった肉を飲み込み、ラビィが応える。


「道中で考えるか……。シャーロットが居るなら直接俺が飛び寄っても良いだろ? じゃあ、お前が野菜を食い終わったら部屋に戻るぞ」

「親父は此処で徹夜をする気かい?」


 野菜しか残っていない皿にナイフとフォークを置いたラビィは、俺をじっと見ながら言った。


「……、良いから早く食べろ」


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