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第115話 追い剥ぎを尋問した

  *  *  *


 ラビィを襲おうとしていたリーダーの弓使いが地面に胡座をかいて座っている。ラビィが足を撃ち抜いたので、逃走していた仲間に置いて行かれたのだ。右肩と足の傷は、自らの魔法の羊皮紙を使って既に治癒済みだ。ラビィがマチェットガンの狙いを定めた状態でそれをさせたのだった。俺はラビィの左肩に止まってその様子を見ていた。


「じゃあ、そろそろ尋問するけど準備はいいかい?」


 ラビィが物騒なことを言い出した。


「何でも話すが、その後は本当に見逃してくれるんだな?」


 完全に観念しきった様子の弓使い。


「もちろんさ。見逃さないつもりなら傷の治療もさせるわけないだろ?」

「……。何を聞きたい?」

「君の名前は聞かないでおくよ。ボクが何かの情報を漏らしたときに、君の名前が連なってると困るかも知れないからね」

「……助かる」


 そうは言ったが、おそらくラビィはこいつの名前を知っている可能性がある。仲間三人の会話の中でその名が出てきているのであれば、それを地獄耳のラビィが聞いていない訳がない。


「ガベートの街を牛耳っている組織は何処だい? ああ、もちろん領主じゃなく庶民側でだよ」

「ヒリオ一家だ。いや、ヒリオ一家だった。今は内輪揉めで警備隊の抑制も効かないぐらいに街が荒れている」

「内輪揉め? 詳しく聞かせてくれるかい?」

「ああ……」


 弓使いの男の情報に依ると、ヒリオ一家は船乗りや港の人足斡旋を生業としていた、いわゆる地場の市井無頼(しせいぶらい)のまとめ役だ。そのヒリオ一家を取り仕切っていたダイヒが病気で急死したらしい。ダイヒの長男ジッソと、旧来からダイヒの右腕だったガリーム、ダイヒの二人目の妻となったリンサの三人が跡目を争っているのだ。ジッソは荒事担当でクエスト斡旋所もやっている。ガリームは組織運営と表の商い担当、娼館出身のリンサは裏の商い担当とのことだ。まぁ、ラビィは興味有るのかも知れないが俺は全く興味がなかった。


「ふ~ん。その三人のうち一番勢力があるのは誰だい?」

「分からん」

「君はジッソの手下ってことかな?」

「……。まぁ、そうだ」

「そして冒険者でもある。違うかい?」

「ああ、一応斡旋所には登録している」

「ボクを襲ったのは、……そうだな、変わった武器を持っていたり財力があるよそ者が、自分たちの以外の陣営に(くみ)するのを嫌ったのかな? 他陣営に協力されて不利になる可能性がちょっとでもあるんだったら、襲ってしまえと。ボクの考えではそうだけど正しいかな? よく考えて答えてよ」


 おそらくラビィはその地獄耳でそこまで聞いている筈だ。だからこいつが正直に話す気になっているかを試しているのだろう。


「ああ、そうだ。三陣営は互いに直接行動を起こせていないが、裏では相当やばいことまでやっている。裏社会の諸事はリンサが秀でているな。それにガリームは財力でそれを補っている」

「でも君らのジッソはあまり上手く行ってない様だ」

「まぁな。だが純粋な戦闘力では一番上だ」

「冒険者を囲っているからね。ただ権謀術数(けんぼうじゅっすう)は得意じゃないらしい。君も慣れないことをさせられたもんだ。じゃあさ、バーバラって名前の冒険者を知ってるかい?」

「バーバラ? どんなヤツだ?」

「かなり特徴的な人だからひと目見たら忘れないよ。素手で戦う冒険者なんだ」

「ふむ、ガベートの街では見かけないな。少なくとも俺は知らん」

「そうか、じゃあ、モモという名前の冒険者は知らないかい? 赤に近いオレンジ色の髪の剣使いなんだ。ちょうどボクと同じくらいの歳の女さ」

「ふ~む、どこにでも居そうだが……」

「剣の腕はずば抜けているよ。おそらくガベートでも五本の指に入る冒険者だろうね」

「腕の立つヤツか、だとしたらそいつも見かけないな」

「そっか。そう言えばガベートの街は交易で栄えてるんだよね?」

「ああ、海を越えて各地から色んなモノがやってくる」

「どんな物品が値上がりしているかい? って君に聞いても知らないか……。じゃあ、入出港する船乗りの噂話でなにか風変わりな話題は何かあるかい?」

「それはガリーム陣営の管轄だ。船乗りなんざ陸に上がったら、酒と博打と女の話しかしないだろ」

「まぁ、冒険者の君にそこまで期待はしなかったけど……。ふ~む、これぐらいかな。ところで君から何かボクにとって有益な情報提供はできないかい?」

「わざわざこっちから言うかよ。聞きたいことがあればそっちから質問したら良いだろ?」

「じゃぁ、聞くことはないや。もう戻っても良いけど、次は無いからね」


 ラビィはマチェットガンを弓使いに向けたまま言った。


「後ろから撃つなよ?」

「その気があるなら、今やってるさ」

「……」


 弓使いはラビィが何かしないか恐る恐る立ち上がり数歩後ずさった。両手を上げゆっくりとさらに後ずさる。ラビィは弓使いが十分離れるとマチェットガンを右太もものホルスターにしまった。


 その様子を見た弓使いは、くるりと振り返りガベートの街に向かって走り出す。


「じゃあね、ログ!」


 ラビィがそう言うと弓使いはピタリを足を止め、ラビィに振り返る。ラビィは右手を軽く振った。


 やっぱり名前を知ってたな。


「くそっ!!」


 ログはそう言うと再び振り返って、ランダムにジグザグに走りながらガベートの街に向かっていった。


「警備隊に突き出さなくてよかったのか?」


 俺はログが居なくなったのでラビィに聞いた。


「面倒くさいし、ボクにはモモの姉貴の様な正義心は無いよ。それにまたこの街に来た時にログは何かの役に立ってくれるかも知れないじゃないか」


 何かを企む様に笑うラビィ。


「そうか。お前が聞きたかった情報ってのはモモの行方だったんだな?」

「一応ね。親父が消えて、姉貴が消えてから訪れる先々で尋ねてるのさ。もう、ハーネスを着た白いオウムについては質問しなくても良くなったけどな。さてと、行こうか?」

「野宿じゃなかったのか?」

「少し飛んで、見晴らしのいい高台を見つけたらそこで休もう。魔物や獣から寝込みを襲われるのは嫌だからね」


 それから街道の脇の森に入り凧を組み上げたラビィと俺は、月が照らす明るい夜の空を飛んだ。


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