表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/95

エピローグ 小雨

小雨様の伊織が現地へ突撃している少し前


我は 『カマイン達の夜』 をプレイしている。

小説風サウンドノベルというやつだ。

雪山のロッジで起こる殺人事件がベースとなっている。犯人は姿形分らぬまま、ロッジの宿泊客を次々にソーセージにしていく。犯人を突き止めなければ、次々ソーセージにされるのだ。

選択肢によりリアルタイムで進んでいく。

思えば、クイックタイムイベント(E.T.Q) の走りだろうか?

我は初見プレイなのだ、ネタバレはダメだぞ。宜しく頼むぞ。


「閣下殿、この選択どっちだと思う? もう主人公の彼女が犯人だろう? ほかの宿泊客が全員ソーセージになっているし、我の推理外しようが無いだろう? 彼女とは言えども、他人だ。仕方のない事だったのだ」


「小雨大神様、最初から誰か隠れていた可能性があります。推理小説で言う所の、ラスト10分で現れ来る謎の新規キャラクターの可能性ですな。 ここまで迫真にせまりながら、クソゲーの可能性がありますぞ」


魔族の次元と盟約を結び、友好使節として我の部屋に暮らしている閣下殿。

地球との盟約を結んだ瞬間から、別人と思うぐらい魔族達の態度が軟化した。

アリエノールも契約後、律儀に契約を守った。

契約が文化か遺伝子の問題なのだろう。


不思議に思い、この前アリエノールに聞いたら 「契約は絶対です。その契約の中でそれ以上の信頼を与えられると、脳が幸せで焼かれる事に最近気づきました。 そうです。小雨様、まだ巫女はいませんよね? どうしてなのでしょう? 貴方様に心の底から、尽くしたいと思える存在を巫女にしませんか?」


と、人で言ったら 『結婚はまだか?』 と言う事だろうか。

うるさいな、余計なお世話だ。

小柄な可愛い、赤メッシュの赤メガネのダブルボディ持ちが、巫女になりたいと言うなら考えないでもないが。


だが、年齢差が問題だ。現代では、年齢差は厳しいと聞いている

全てを小娘に捧げる覚悟が我には無い。

世界の有数の富豪が 「自分がソーセージになったら、すべての遺産を譲る、結婚してくれ!」 と言えた富豪達が意外にも幸せになっている。 奴らは、人生経験と成功体験で人を見る目がある。

そういう事だろう。


そして、ゲーム画面では彼女に刺された。

もう犯人はどっちかの自分か彼女の二人しか居ないしな。犯人だと思われたか。

この主人公にこちらから刺すぐらいの気概が欲しいものだ。


「小雨大神様。納得いかない結末です。もう一度プレイですぞ」


後の結末は、お主達でプレイして欲しい。


なぜならエピローグに向けて進みそうだ。

誰かが部屋の扉を叩く音がする。


――


そんなこんなで、トントンと我の部屋の扉が叩かれる。

アリエノールと舞が入ってきた。


我は、職務中に一緒に閣下殿と楽しくプレイなんてしていない。

最近、二人は 「入れ」 の確認無しに入ってくる。

これは、まずい。


「小雨様、またゲームしてたのですかー? これでは世界最高神の示しがつきませんー。アリエノールさん、棚に積んであるソフト全部没収してください。閣下様、弊社の邪魔をするならペナルティは、きついですよー? それは望む所ですかー?」


「そうなりますね。 そして、閣下。小雨様の品位を落とすのなら、契約に基づき詰めざるをえません。 つまりだ。おい、使節と称した飾りは邪魔せずに大人しくしていろ」


そうなのだ。

我は、同じタイムスケールで楽しめる閣下殿を人質に取られている様なものなのだ。


いつもの角の服装では無く部屋着の閣下殿が我の後ろに隠れる。


「まぁ、そう怒るな。それで要件は? 棚のソフト没収しても買い直すからな。落ち着いて欲しい。話せばわかる」


我は佇まいを直し、二人に向く。


「この異世界周辺にアヤメ殿が沸くと言う予測のもと、伊織さんの異世界の拠点確保が終わりました。 確保した砂の村は、物資全て足りていません。 好都合です。ここを足掛かりにし、小雨様の威光と意思と物流で異世界を満たし、小雨様の次元を作りましょう。まさに偉業であり神の御業。全ての者が小雨様にひれ伏すでしょう」


「重機6台あれば、インフラ整備からすぐに入れますー。インフラ物資と人員の手配を致しました。それとですね、食料は小雨様が好きな物を選んでおきました。 小雨様の降臨、異世界が望んでいますねー。 小雨様の意思で次元を満たしましょうー。異世界開拓ですー」


なんて言うか、ニュアンスがおかしいよな?

魔族っぽい言い回しなのか?

いいじゃないか、異世界開拓か。舞は我のツボを知っているな。

乗り気になってしまう。異世界開拓をしてみようか。


「小雨様、お手数かけて申し訳ないのですがー、降臨の際に重機とインフラ物資の収納お願いしていいでしょうか。私達だと重機を持っていく容量が足りませんー。申し訳ないですー」


「了解した」


さて、アヤメが戻って来た時、異世界ですれ違うとまずいからな。

宣伝も兼ねてランドマークを作るとしよう。 アヤメの巨大銅像を見たものが誰もが気づくだろう。

そして、前から作ってみたかったのだ。

本当のアイドル(偶像フギュア) と言う物を!


――


閣下殿を部屋に置いて、我々はショウタ殿のダンジョンに向かう。

我々を見送りながら、マリカーの記録を詰めると言っていた。

まさに閣下の夏休み。なんて有意義な時間の過ごし方だろうか。


喧騒を通り抜け、ダンジョンの中に入る。

何となくだが、入るときに手を繋いでしまう。

習慣になってしまっているな。


ダンジョンに入ると、ショウタ殿が沸いていた。

スーツ姿の66F支配。弊社の協力関係会社である。

アヤメの漂流事故もあり、今は99Fまでの道のりを繋いでくれている。


「小雨様。どうも~、お世話になっております。 ようやくアヤメさんの回収の目途が立ったみたいで。ですが、本当に自分がついて行かなくて大丈夫ですか? 秒で世界を開拓してみせますよ。小雨様の意思の元、全てがひれ伏せばいいと思います。慣れてない人々の統治より、よっぽど効率的だと思いますが」


「「さすが、ショウタさん。発想が素晴らしいです」」


なんかハモっているが、もちろん連れて行けない。

チートコードの入力は良くないと思うのだ。

だが人々よ、忘れないで欲しい。

上上下下のチートコードを入れる前提でゲームバランスが出来ている事がある。

やっぱり、いざと言う時は連れて行こう。


「そうだな、機会があったらお願いすると思う。宜しく頼むよ」


ニッコリとショウタさんが微笑むと話を続ける。


「どうしますか? まず旅館へ行きましょうか。 99Fに唯一神ダリアがゲートの確認で来ていますが、どうせなので待たせましょう。 イライラする所が見たい」


今では、有名なイベントだ。

位相世界の神々や権能持ち、異世界旅館利用者全てが知っている。


(この二人を会す事なかれ)


天変地異クラスのイベントが起る。

会うたびに我が、間を取り持たなければならない。

マジに勘弁して欲しいぞ。


「ショウタ殿とまた世界クラスの喧嘩になるからそのまま行くとする。次も地球で暴れたら、神々のメンツと見せしめで、経済制裁するからな。一応、伝えておく」


「承知致しました。異世界の進展ありましたら連絡お願いしますね。 さて、これで猫さんとポムさんの派遣が終わりですか。 弊社に仕事があるわけでないのでもう少し、出向してても・・・、いえ。いきましょうか」


そのままシュポンと99Fに飛ぶ、そしてすぐにショウタ殿を帰らせた。


99Fの星の海を背景に奥に進むと、ドーガ服の黄金の気を纏う蒼の女神、唯一神ダリア殿がゲートの前に佇んでいた。


女神はゆっくりとこっちに振り向いた。


「早かったわね。あの男、ギリギリまで引き留め、私がキレるまで待たすと思っていたけど。この前、お客と称して高位ゴブリンを旅館に突撃させたのをまだ根にもっているのかしら」


お主ら、憎しみ合うために存在しているのか。


「小雨神、いつもお世話になっているわ。 お望み通りゲートを開けておいたわよ、ここの次元に沸く可能性が高いわ。半年程の時差があるけど、早めに行って探した方が効率いいわよね。いってらっしゃいまし~」


「協力に感謝する。また伝手で高級調度品を集めておくので、舞の方から連絡させてもらうよ」


「お願いするわ~」


高級インテリア大好き女神。

散財を好む性格と同時に長い時を享楽で過ごす、唯一神である。

永遠の存在、永遠の力。つまり、全能の憂鬱。いいかえると、超、暇であろう。

気位の高さゆえ、熱を注げるのが人の魂がこもった高級インテリアや、人が起こす運命のエントロピーが好物なのだろう。

後、ショウタ殿への憎しみか。


全能の二人にも困ったものだ。


挨拶をそのままに我らは砂で出来た異世界ゲートの中に手を繋いで入る。


――


ゲートを抜けると、砂の世界についた。

まず目についたのは、土壁とレンガ作りの家々だろうか。

そして、伊織、猫殿、ポム、啓示神、後、村の人々が出迎えてくれた。


「おぉう、ご苦労様・・・『『控えろ! 小雨大神様のご降臨であられる!』』


アリエノール、怒りにも似た大声が、耳を貫く。

号令により全員が地面に片膝を付き、かしずく。


舞が我を掴み、アイテムボックスから出してきた黄金の椅子に座らされる。

この趣味悪い椅子、ショウタ殿から借りただろ。


ぬっ、お主ら打ち合わせてたな!!

所で何が始まるんだ?


「皆様お聞きくださいー。小雨大神様がこの地と友好の盟約を結びたいとおっしゃっております」


補給物資、水、食料、ポーションのコンテナを舞が取り出していく。


「友好の証です。お受け取り下さいー。見ると、水、食料、インフラに難があると思われます。まず、ここの生活基盤を安定させましょう。後で、診療所を設置しますので、皆様お越しくださいねー。健康あってこその暮らしですよー」


舞が耳元で 「重機もお願いします」 と、言われるがまま重機を取り出す。


ドンドントンと土ほこりを上げ、重機が展開される。


「皆様ー! これが、小雨様の力ですー。まずは、インフラ整備と、水路を確保しましょうかー」


村人のテンションは、爆上がりだ。


「「「「うおおおおおおおお! 神が降臨なさったぞおおおおお!」」」」」


アリエノールと舞が満足そうに頷く。


「「さて、聖地の出来上がりです。ここの地から小雨様の威光で世界を照らすのです」」


と、さらりとアリエノールと舞が覇権主義的な事を言う。

性格だろうか。

そして、この性格。この舞、複製体の方だな。


激しいファーストコンタクトを終わらせ、伊織、猫殿、ポム、啓示神を労いに行く。


ここで、伊織以外の猫殿とポム、啓示神の派遣仕事は終わりだ。

ショウタ殿の支払いで、アヤメの補填金額分を労働派遣で補ってもらっている。


「拠点確保と周辺の平定ミッション、お疲れ様! 後は、アヤメを待つだけだな。アヤメとすれ違わない様に、ランドマークを建てる必要がある。後は、我らに任せると良い。 アヤメの銅像とリュウナの銅像をランドマークとして建てておけば、観光名所となりアヤメが気づくだろう」


我は礼を言う。


「えぇっ、明日から旅館でご主人様と一緒ですか。気が重いです」


「気づいたにゃ~。吾輩、世界を回り弱きを助けるこういう仕事の方があってるにゃ~」


『異世界の動画まとめて荒稼ぎするわよ~』


集団にまとまりが無い。

伊織もこの集団をリーダーとしてまとめていたとか、さすが世界有数の冒険者だな。

見直したぞ。


その伊織は、何も喋らず。ニコニコとこちらを見ていた。

我は、話を続ける。


「本当にご苦労様。舞、3人と一度本部に戻り、今後の打ち合わせを宜しく頼む。伊織はすまないが、引き続きアヤメが来るまでここでの対応を頼むぞ。異世界だからな、お主の判断で動いてよい」


伊織がニッコリと頷く。

そして、舞が一礼し、3人をアテンドしていく。


「承知致しました。皆様お疲れ様でしたー! 一度、弊社で打ち合わせますか? 旅館に戻りますかー?」


チーム旅館組が地球に戻って行く。

我も、ここでの打ち合わせが済んだら、一度、地球に戻る。

周辺の諸国の挨拶は明日だな。


ここには、アリエノールと伊織が残った。

そして、先ほどまで大人しかった伊織の口が開く。


「よし、舞も行ったか。やっと自由になれるな。ポムの束縛がきつくて、禁欲生活が長かった・・・。独占欲が強いのは嫌いじゃないが。スマホの無い世界だから良かったものの、スマホ、パソコン全て閲覧して削除してくるタイプだな。 さてと、これで憂いは無いな。おっ、そうだ、アリエノールさん。契約の履行を果たしてもらおう。まずは、着ている物を脱いでこれを来てもらおうか。伊織王国の正装だ」


我は、センスを疑う。

伊織は捻じりふんどしと、さらしを渡して来きた。


制服がニッチすぎないか?

伊織の少女時代の祭りエロの思い出が未だに心で燻っていて、再燃したと言う事か。


そうだ、伊織を見直したと言ったな。あれはウソだ。

だがアヤメが居ない今、伊織が世界最高の探索者だ。機嫌を損ねるのはまずい。

まさか、アヤメより扱いにくいとは。

マジに早く帰ってきてくれ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ