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エピローグ アヤメ

アヤメ


異空間に吸い込まれた私。

気がづいたら、全く覚えが無い砂嵐の世界に私は佇んでいた。


吹きすさぶ砂嵐の中、足を進める。

視界が悪く、街道とも呼べるか分からない獣道を進んでいる。


体から出る、魔力、覇気と呼べばいいだろうか。

その力で皮膚にあたる事無く、風と砂が避けていく。

いつもの配信装備の学生服に似た装備で、私達は行く当てもなく彷徨っていた。


「アヤメ、さっき何でもするって言ったのじゃよ? 何でもするって言ったのじゃ」


と、恐ろしい事を聞いてくるリュウナちゃん。


頭に龍の角の様な可愛い少女で、露出が高い巫女服を着ている。

エルフが管理する異世界で拾ったリュウナちゃん。


あざと可愛いです。

竜神様らしいですが、どうみてもロリ巫女ですよね~。


そうです、

経緯が龍神との激戦の果てに開かれた世界の扉、そして道連れにされて闇雲に金の鎖に掴まれた私の身体。

一人の異世界への放流は寂しいと感じてしまい、そして掴んだリュウナちゃんの手。


放流中も一切離す事無く、なんなら手を引き寄せ抱きしめて道連れにしてしまいました。

全力で謝りましょう。


「リュウナちゃん、本当にごめん! 突然吸い込まれたから、あの~、良くわからない事を、口走ったかもしれないですぅ~! あの~、その時は必至で、通常な思考じゃなかったんです~。って、言ってくださいって、小雨カンパニー法務部に何かあったらそう言うようにとなっていて~! あの、リュウナちゃん。あの~、愛してます。 あの、ごめんね! やっぱり何でもしますぅ~!」


リュウナちゃんが少し顎に手を当てて考えて返してくれた。


「何でもしますは、アヤメの世界の方言みたいなものかの? 普段、ただ当然で超贅沢させてもらってるしの。 異世界ハイクオリティ旅館で贅沢三昧、ネットも使えて賽銭もジャブジャブ。信仰もバンバン。マジに十分じゃよ、何でもはしてもらわなくてもいいのじゃよ。 ただ、戦闘と神様の仕事関係をもうちょっと楽にしてもらえるかの~?」


あれ? もしかして普段、甘やかしすぎてましたか?

なんか、イライラしてきました~。


「許しません~」


「アヤメ何言っておるのじゃ? 今までの流れは、何だったのじゃ? 何でもするんじゃろ??」


うるさいです~。

急な異世界転移で、通常の判断が出来なかったんです~。

だから、『何でもします』 に責任がありません~。 無罪判決のはずです~。


そんな会話を他所に生意気なリュウナちゃんを抱き上げ。

ギュッとして、お人形さんの様に抱えて歩き出す。


そして、そろそろ休憩の時間でしたか。


「あ、リュウナちゃん。地球のアイテムを無駄にできません。お水をお願いしていいでしょうか~」


「わかったのじゃ~」


キャンプ用品とお茶セットをアイテムボックスから取り出す。

ポットにお水を入れ、魔石コンロを使いお湯を沸かす準備をする。

地球産の紅茶をサラサラといれて、お茶を入れた。


あたりの砂嵐が落ち着き、休憩のタイミングもいい。

小さいチェアを出して座りお茶とお菓子と一緒に休憩をする。


この荒野の中、お茶のカフェインが活力をくれる。

リュウナちゃんは焼き菓子をバクバクとやっている。


「中世基準の異世界と物が違うのじゃよ、焼き菓子のバニラの香り、ヤバすぎじゃ。 地球万歳じゃ」


「喜んでくれて良かったです~。おいしいの共有って嬉しいですよね、遺伝子に刻み込まれてますよね。人の本能ですか~」


あれ? 私、地球のアイテム節約するのでは?

つまり普段の暮らしの質を下げる事と言う事ですか? 何のためにいつも命をチップにして働いていると思っているのですか?

そんな節制なんて事、出来ませんよ~!

贅沢ってヤバイです。


リュウナちゃんとワイワイとやっていた所、人の気配を感じる。

10人だろうか。集団だ。 第一異世界人の感知。

向こうからこっちに来てくれている、とてもありがたい。

まずはこの世界の情報と集落を見つけ、帰還手段や文明のレベル、ダンジョンの情報を集めなければ。


「リュウナちゃん、分りますよね。 人ですね。 アハハッ、悪意を持って乙女達を囲む必要あると思いますか?」


「伊織が大好なゲームの様にするには、必要じゃの~。 あれは登場人物が全員女性じゃったか。業が深すぎるのじゃ」


いつのまに、伊織の家でゲームプレイをしていたのでしょうか。

健全な恋愛ものではないと思います。恋愛ものだとしても10人相手ですか? 倫理観とか大丈夫ですか?


ゆっくりっとお茶を片付けながら、人間の気配に大人しく囲まれる。


そして浅黒いターバン風の大男が近づいて来た。


「この荒野を女二人の旅とは、危機感が足りないんじゃないか? 奇妙な服装だが上玉だな。金も持ってそうだ。 乱暴されたくなければついてこい。これから、きっちり教育してやるからよ」


「「「グハハハッハ」」」


大男の後ろに4人、残りの5人は少し離れて囲んでいる。

私達が逃走した時の備えだろうか。


「リュウナちゃん、自信があるから乙女二人で旅してるんですよね。この人達にそれが分からないものですかね~? 私達、自信の塊みたいな格好してると言うのに、良く絡んできますよね~。 私だったら、ヤバイと思うんですけど」


「その通りじゃな。わらわ達、荒れ地で肌出しすぎじゃ。はたから見てもイカてると思うのじゃ。 その理解できる脳が無いから、これらは盗賊をやってるんじゃろ。しかし、アヤメに当たるとは持ってないのじゃ。これから起るお主らの惨劇を想像すると、同情するのじゃ」


思わぬ口上に、一歩引く盗賊たち。

私は、続ける。


「貴方達が逆上して、襲い掛かってきて全員ブチ転がされる前に一応、お聞きしますね~。 聞きたいことがあります。まず武装解除してうつ伏せになって話を聞いて頂けますか?」


紫剣を両手に交差させ構える


大男が手を上げ 「こいつらやるぞ! 全員全力でかかれ!」 と号令を頂きました。


良い感覚です。

そして、大人しくして下さい。


「うぉおおおおおお! 「「「ゴフッ」」」」


瞬きもしない間に、気配で感知した全員の肺を片方刺し、その場に転がす。

紫剣をピッピッと振り払い、血糊を取った。


大男だけ肺を押さえ、片膝を付く。


「グハッ」


そのまま大男に近づき、もう片方の肺も前から刺す。


空気をもう吸うのも命に直結しますよね。

さて、お話しましょう。


大男を転がして、その隣で息を何とかしようとヒューヒューゴボッとしている、方の肺をサクサクと5回ほど刺す。


「リュウナちゃん、この方の傷治してもらっていいですか~?」


「もちろん喜んでやるのじゃ。 やりすぎではないかの、そ、その辺でいいのではないかの? ここに転がっている奴ら、恐怖の虜じゃよ。 お主らもアヤメに当たるとは運がないのじゃ~」


リュウナちゃんの回復の光が包み、穴の開いた肺が修復されていった。


「さて、貴方は、行っていいですよ。今の肺の痛み忘れないでくださいね? 他に助かりたい方はいますか~? 聞きたいことがあります」


――


「アヤメ、今水を出すからの、か、顔についている返り血を落とすのじゃ」


ちゃぱちゃぱと、顔を洗い。刺し転がした方達から、本拠地場所を聞き出した。

やっぱり、盗賊だった。

最初に逃がした一名以外、ヒューヒューと息をしながら転がっている。


もしも良い人達だったら、後で治しましょう。

悪い人達だったらこのままですね。

自分で治すのもよし、そのままなりゆきに命運をまかせてもよしです。


「リュウナちゃん。 即日現金収入の高額闇バイトといきますかぁ~! 本拠地に行ってみましょう!」


「アヤメ流の冗談のつもりじゃろ? その不謹慎なネタに笑えんのじゃ。その本拠地にため込んだ現金を全部頂くつもりじゃな?」


そうですが~?


リュウナちゃんをスッと抱きかかえ、走り出す。

高速移動により、景色が遅れて後ろに流れ進むと、一息もしない内に小高い丘の中に窓の様な穴がある洞窟があった。

そこの入り口には、ガラの悪そうなターバン男性が立っていた。


「ここでしょうか~」 「そうじゃろうな、見張りがおるのじゃ。盗賊たちの命運に祈るとするかの」


私達に見張りが気づく。


「な!? なんだ貴様ら?! 普通じゃねぇな。なんだその格好は!? いったい何だ?!」


この星の人たちも大きく感性が離れているわけじゃないですね~。

良かったです。

感情を胸の内に収め、ニッコリと城に引き入れユリユリしてくる鬼畜次元じゃなくてよかったです。


学生服とロリ巫女服で極悪盗賊のアジトを訪問されたら、普通驚きますよね。

でも、センスを馬鹿にされた様に感じたので、余計に刺しますね~。

でも、まず降伏勧告はしましょうか。


「盗賊さんですよね~? 全員ブチ転がしに来ました。降伏をお勧めします~。 構えた場合戦闘の意思ありと見て、後はやっちゃいます~!」


と、大声を出す。

洞窟内に敵意の気配がぽつぽつと沸いた。


「国の手の物!? やっちまえ! ゴフッ」


目の前の人の肺をサクサクと差す。

身体のおこりを見せないで動いたので、紫剣だけが刺さった感覚があるでしょう。


「さて、リュウナちゃん。洞窟内の敵意やってきますね。 この方を治すか任せます~。情報を聞き出しててもいいです」


「お主、一番先に刺されて良かったのじゃ。助かるかもしれんぞ。 うん? 良かった? あれ?わらわ流血沙汰に慣れて来てる、怖いのじゃ」


崩れ落ちた見張りさんの前に立つリュウナちゃん。

説得が上手くいきそうですね。


瞬時に、洞窟に入り込み敵意をブチ転がす。

入り口を越え、テーブル越しの盗賊さん達を刺し、さらに洞窟を進み奥へ行くと、鎧を着込んだ衛兵みたいな方の肺をサクサクと刺すとうめき声と共に敵意が消えた。


さて、ため込んだ財宝はどこでしょうか。現地通貨調達といきましょう。


洞窟内の階段を降りると、大きな扉があった。


ギギっと開け中に入ると、ランプの光に照らされた先に目隠しをされ手足と縛られ転がされている子女風の女性と、同じく転がされている付き人っぽい服装の方が転がされていた。


そして、再度ギギッと扉を閉め、大きい扉前に顔を両手で押さえその場に佇む。


異世界、こんな事ばっかりです。

この可能性を忘れていた、私が悪いのかもしれません。

これ、また私達、お城か領地に連れていかれるパターンですよね??


私、普通に異世界の流通を調べて、異世界と交流がなかったらダンジョン99F探索して地球に帰りたいだけなんですが??

これは、いけません。助けを呼びましょう。


即座にリュウナちゃんの元に戻り、助けを呼ぶ。

先ほど転がした見張りの人は既にいなかった。


「アヤメ早かったの~。 見張りから町の情報聞いて逃がしたのじゃ、ここから暫くこのボロボロ街道を行くと分かれ道が合ってそこを右らしいのじゃが・・・? なんかあったかの?」


「リュウナちゃん大変です! 人が転がってます! 私には助けられません! 助けてください~!」


「何言っておるのじゃ? マジに何いっておるのじゃ? アヤメに助けられないなら、わらわも無理じゃよ??」


「いいから来てください~!」


リュウナちゃんの襟を掴み、一瞬で大きな扉の前に移動する。


「この中に、異世界を象徴する見事な転がりっぷりが・・・。なんて恐ろしいんでしょうか~」


顎に手を当て少し考えたリュウナちゃんが恐る恐る中に入っていく。


なんて勇気があるのでしょうか。後の対応はお任せしました。

前回の異世界体験のトラウマが蘇ります。

リュウナちゃん、気をつけて下さい。やつらは、足首を狙って逃がさない様に掴んできます。

ホラーゲームのゾンビを撃つゲームと一緒です。


扉の中から声が聞こえてきます。


「お主ら大丈夫かの? 回復だけかけてやるぞよ。 その代わり聞きたいことがあるのじゃが」


あ~、リュウナちゃん。異世界経験が豊富なのに、そんな感じですか?

オーソドックスですよね~。 これでは、この先の展開が見え見えですよ。

私達は、地球に帰りたいんです。 イベントをこなしている暇より、異世界ダンジョンの情報を集めですね・・・


「「お助け下さりありがとうございます! 何と可愛らしいお方。まずは、領地まで如何でしょうか! ぜひ一緒に参りませんか。 何でもお答えいたします。ぜひ歓待させて頂きたい!」」


ほら、リュウナちゃん! ほら! そうなるでしょう! 

悪手ですってぇえええええ!

また、いつもの強制イベントですか?


この展開にいたたまれなくなり、扉の中にバン!と飛び入る。


「リュウナちゃん! なんてことを~!」


「アヤメ?? 倫理観、大丈夫かの?? なぜ助けんのじゃ? 折角じゃ、異世界の歓待受けてみようとするかの。 どんな食事の文化なんじゃ。 アヤメも気に入るかもしれんのじゃぞ?」


ぬぬぬっ!

確かに、ご飯食べてから帰還方法の模索をしていいですよね。

異世界経験が豊富なリュウナちゃんを掴んで正解でした。



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