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87 小雨

我は小雨の命

異世界からのダンジョンと言う通路が開いたため、位相の世界から地上に顕現した神である。


シューティングのRタイポをプレイしていた所だった。


黒電話からチリリリンと連絡が入り、アリエノールの次元から進行の予兆ありとの報告を受けた。

もちろん音にビクッとしてチュインチュインチュインと、機体は惑星デブリとなったが。


そうそう、脳みそデバイス設定の流言の元祖だ。

その昔、脳みそデバイスが流行ったな。直接、脳みそにコネクターを繋ぐのだ。

人の想像は未来へ行っても完全な電脳にならないのだ。 肉体の部分がどこかある。

フロントのカレンデバイスとか、鉄MAXのブラド博士とか、ロボット的お巡りさんとかだな。

肉体へのアンチテーゼが流行ったのだ。 『完全な電脳は、人間なのか?』 甲殻でやったよな。

でも、性格と人格、魂を作るのは胃腸の働きであるそうだ。最初の遺伝子の 『食う』 と言う衝動が影響しているそうだぞ。

まぁ、栓無き事か。


――


報告の後に思案を巡らせる。


魔族連中は、長野ダンジョンで様子見をしているのだろう。

前回、音信不通のミンチ肉の全滅と見せかけて霊薬で全てが治ったからな。

定期的に魔族とやり合ってるとはいえ、前回に何が起こったのか様子見ぐらいは、してくるだろうか。

アリエノールの部隊が本当に無事に帰れたか、良く分からないが。

誰も死なない優しい世界だといいな。

そう考えると捕まったのは、アリエノールぐらいか。


白銀の髪、蒼い目の魔族ロング。

恐ろしいほど整ったスタイルと美形。人類もコンプレックスと嫉妬を持ってしまうだろう。

契約後は、忠義の塊の様な魔族だ。

冷血に見えて義に厚い。文官気質で能力値も高い。

文化の違いで驚くこともあるが、本当によい拾い物をした。

住む場所が悪いと侵略者の蝙蝠的な差別の扱いが無いといいきれない所があるから、普段我の余っている部屋で暮らしている。

食べ物と身に付ける物は、高級な物が好きなようだ。


そして、呼び出したアリエノールに聞いた。


「このまま行くと、お主の故郷の魔族と当たる事なる。 世界も変って、ショウタ殿とネコ殿の協力とか、次元を繋ぐのが得意な唯一神の協力得れるから。始まるとカウンターで次元侵攻する事になると思う。今の地球だと制裁神と破壊神がフルパワーで出れるし、マジに今回の魔族侵攻とか無謀すぎる」


アリエノールは端正な顔立ちで表情に変化無く、そのまま聞いている。


「やりあう前ならなんとか出来る。敵対次元へこっちから繋いで侵攻できる今、リアルに人権的にヤバイ事になると思う。次元全体が占領中の支配下に置かれると思うぞ。今なら、我の力で地球との話し合いに持っていける。アリエノールどうだ、何とかできそうか。説得の最後のチャンスだと思う。和平を結びにいくぞ?」


相変わらず、冷たい表情と青い目で我を見つめてくる。


「私もそうだと思います。ですが小雨様、なぜここまで私にしてくれるのです? 私は契約社員、そこまで気をかけてくれる価値がある者か分かりません」


ふむ? 評価が低いぞ。


「今や、我が腹心だと思っていたが。違うのか? お主が命を張って我を守ろうとした事、我は忘れてないぞ。 その疑問は、肯定と言う事だな。ならば、行こうか。 説得のチャンスは一度だと思う。 見事に己が命運を手にして見せよ」


返答を聞く前に我は風呂敷を翻し、出口の黒檀のドアへ向かう。


あっさりと 「ありがとうございます」 と言ってついてくるかと思ったが、聞き返すとは乙女な所があるではないか。


そして、静かに


「ありがとうございます」


と、そんな声が聞こえた。


――


アヤメ達と合流し、ヘリに乗り込み長野の現地に向かうと、舞の出迎えとスーツ姿のショウタ殿、リザ殿が既についていた。


この舞、どっちの舞だったか。


「小雨様、お待ちしておりましたー! 情報の通り、長野ゲートの視認とショウタさんとリザさんの協力を頂けましたよー!」


ヘリの風圧が残る中、こっちに駆けてきた。

舞がとても可愛いと思う。

こう長く生きても、心とはどう動くかか分からんものだ。


そして協力の取り付けは、助かる。

この時点で魔族の次元は、詰んだな。

おっと我は、侵攻の協力に強制なんてしてないからな。

自主的に来てもらえるとは、何たる僥倖。

今後とも贔屓にさせて頂こう。


「戦闘前に、魔族軍団の説得を任せたいのだが。最後の話し合いのチャンスだと思う。魔族の無謀な突撃をやめさせたい。もちろん事が始まったら徹底的にやる。二度と侵攻出来ないようにな」


アリエノールの説得の件を伝えると、それで良いとなった。


誰かが 「お任せ下さい」 と言っただろうか。

リザ殿が大剣を顕現させ、一瞬で長野ダンジョン周りが廃墟と化す。

人々を避難させてたとは言え、言われなき破壊の嵐がダンジョンゲートを襲う。


綺麗にゲート前だけが残っている。

破壊の後には、哨戒していた魔族が、ぼろ雑巾の様に転がっていた。


えーと、なんだ。

我は、説得とか話し合いと言ったはずだ。


アヤメがヘリに乗り込み帰ろうとするリュウナの襟首を掴み、確認を取ってきた。


「あ、小雨様やっちゃいます? やっぱり先に分からせてからですよね。伊織、リュウナちゃん、いきますよ! ダンジョン内に陣営を張っていると思われる、蝙蝠モンスターをやっちゃいますね! 戦意を無くしたものから、捕虜にしましょうか~!」


「アヤメ、天才か。アリエノールさんを捕まえ放題だと!? そうだ、私の国を魔族領に作ろう!」


古代バイキング達がいるんだが。〇して、奪えとな。

だが、こうなるよな。今まで、向こうから侵攻されてたし。始まったら、星一つ隷属させる事になるな。


だが、奪った分だけ英雄になれる時代じゃないぞ。

生まれるのが遅かったな。この近代、そうもいかんだろう。

体裁だけは、人権を与えないといけない。平等、平等だよ。便利な言葉だよな。


「小雨様、私の星はもう・・・、もう、ダメですね。 そうですね、地球に魔王が多すぎます。 小雨様、ショウタ殿の支配が悪くないように思えるのです。仕事をしていくうちに、情があると言うか、お願いすれば自治権まで頑張れば確率できそうです。 アヤメさんとか、リザさんに私の星への突撃は、勘弁して欲しいと言うか。ゴリゴリの蛮族です。 小雨様、何でもします。私の星をお頼み致します」


アリエノール諦めるなって、誤射だぞ誤射。

そうだな? 誤射だな?

よりよい未来をその手で掴めよ。

そして、舞。我の隣に来い。

これ危ないぞ、身内に巻き添え食らいそうだ。


そして、この惨事を巻き起こしたリザ殿がショウタ殿にキレられている。

リザ殿が、泣きながら発狂している。


「あああああ! ショウタ様どういうことですか! それ! 呆れた顔! それ嫌いです! 怒ってますよね! どうしてですか!? 怒ってますね?! 帰れ?! 帰りません! 帰りません! 何万年を旅して、ショウタ様の所へ来たと思ってるんですか! いやああああああ! いやです! ああああああ!」


力による支配型の為政者か、中々に難しい。


さて、この始末どうしようか。


ショウタ殿が焦ったように、畳みかけて来る。


「小雨様! あの~! 手違いでして! まさか、説得しようとする相手に息も絶え絶えにさせてから話し合いをしようとする、下の下の手を打つとは思いませんでした。 商談の席に着く前に、これはどうかと。小雨様の心意気の品格を下げると同じです。 あの、10分ほど二人で席を外しますね! すいません! ちょっと失礼します」


ショウタ殿がリザ殿を捕まえシュポンと消えて行った。


責任は、追及するけどな。

許すけども。


――


破壊により見通しの良くなったダンジョン方向に、足を進める。


護衛にアヤメ、伊織、リュウナ。

我の隣に、舞とアリエノール。

まずは話し合いから行こうか。


ぼろ雑巾の様に倒れている魔族二人の男女の前に立ち、ポーションをジャバジャバとかける。


光が包み魔族達は回復した。

装備はボロボロで半裸の状態だが。


ここで、この惨事に対してすまないとは謝れない。

会話のマウントを取られるからな。


「いつもご苦労な事だ。また、この星への侵攻か。こっちから侵攻できないのをいいことに、よくやってくれているな。さて・・・、我は、小雨の命。ここの管理筆頭の神である」


起き上がった二人は、手を前に出してきた。

そこから魔力が練られている。


「馬鹿が! それは、絶対にダメだ! 未来を捨てる気か!」


アリエノールが飛び出し二人の手を掴み上げ、光弾が天に発射される。

その刹那、アヤメと伊織が我の前に立っていた。

舞が我の隣に、舞の後ろにリュウナが舞の裾を掴んで隠れている。

ん? 一人おかしいな?


ご挨拶な魔族が口を開く。


「ん? アリエノールか。強くなったな。生きていたとはな」


「おや、アリエノール。私の光弾を退けるとは。やるようになりましたか」


アリエノールの知り合いか。

掴んでいた手を離し、スッと礼をする。


「お二方お久しぶりです。交渉をしにきました。 首相か大将軍クラスが中に居るのでしょう。私は使者です。交渉の段取りをお願いします」


「そうですか。アリエノール。しかし人と契約を交わすとは、冗談にしては笑えますね」


「攻撃もこれが限界なのだろう? 本隊の準備が出来たら防ぎきれる。そして、先ほどの気配も感じぬ。人間ごときに、この度の大侵攻を防げるとは思えん。我々の支配下の元、人間たちは暮らすと良い。まぁ、取り次いでやるか。 命乞いで扱いが変るかもしれんからな」


アリエノールが目をつぶり、珍しく表情を表す。顔が苦い。


「ファーストコーンタクト。昔のアリエノールさんにそっくりですね~。次に非礼があったら斬っていいですか?」


「小雨様、もう、ショウタさんと神々ご一行呼びませんかー? 話し合いとか無理そうですよー」


「アヤメ。私はいつでも行ける。 女性の方を任せて欲しい。 今すぐに契約の神様に連絡とるからな。 アリエノールさんは、冷たそうで取りつくしまも無い感じだったが、こういう素敵な契約もあると言う事だな。そうだ。法が届かない異世界へ連れて行こう」


「舞殿、ドッペルと暮らしてるのじゃな? わらわとも暮らさぬか? アイドル候補と暮らせるのじゃぞ? どうじゃ? ヴィチューバー好きじゃろ? 付き合いたいとか思っていて夢みていたじゃろ? 現実にしてみんか? このサイコパス達からわらわを引き取ってくれんか?」


やっぱり一人おかしいのがいるよな。誰だ?

まぁ、話を進めよう。

相変わらず、アイテムを使った時の我々の脅威が加味されていないな。

感じる気配が全てなのか。

なぜか、アヤメと伊織の気配が分からぬのだな? 我も分からん。

この二人、スカウター振り切ってるだろ。


「一応話し合いは、出来るのか。 懸命だな」


「「ククク、人間の神よ。 勇気があるなら、ダンジョンに入るがよい。 運が良いな、我が帝国の首相がいらっしゃる。 そして大軍もだ。 滑稽な交渉で皆を笑わせれるなら、たしかにマシな扱いになるかもな。期待しているぞ」」


護衛の二人と舞の行動が読める。

我は、風呂敷を翻し 「やめよ」 と先手を打つ。


大人しく獲物をしまってくれた。

よかった。


二人の魔族が半裸のままダンジョンゲートに入っていく。

アリエノールも着いて行く。

アヤメがこの状況を楽しそうにしており、伊織が舌なめずりをしている。


「舞、非戦闘員に怖い思いをさせるかもしれない。それでも来るか?」


「?? もちろんですー。あれ、小雨様。私を非戦闘員扱いしてくれてたんですかー?」


「?? それもそうだな。 我の隣にいるがよいぞ」


さて、虎穴に入るとするか。


「小雨殿、わらわ帰っていいのかの。非戦闘員じゃよ。大軍の中に交渉じゃろ? わらわ、民間の神様なんよな。許してくれんか?」


許しません。

我、今バズっている、リュウナの絶望 【許しません】 スタンプ好きだぞ。


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