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83 続小雨

続小雨


魔王ショウタ殿が倒され、世界に平和が訪れた。

世界侵攻による破滅を前に、かつて憎み合っていた人と魔は協力し破滅を退けることに成功した。

人々は、アヤメと啓示神のいい所までの配信による切り抜きにより世界に安寧が訪れるはずだ。

世界中の人々が破滅に立ち向かいそして、この世界の主幹者が破滅をもたらす魔王ショウタを退ける啓示となっているだろう。


人は、真実を知ることなく。

作られた平和の上で、未来を信じ発展していくのだ。


めでたし、めでたし。


――


・・・? 気いらないのか?

人よ、なぜ深く知ろうとするのだ。


「黒子」 という者を知っているか、人形を動かす演者の事を指す。

そのキャラの事を操作する中身は、居ない者として扱う。

それでいいじゃないか。


時代は変わり、声優、Vチューバ―の中身が気になってしょうがないのだな。

「黒子」 と言う属性も変ったものだ。

つまり、この世界のからくりを知りたいと思うのか。

幸せは、そこに無いと思いながらなぜ知りたいのか。


不思議だな。

知った所でそこには、幸せは無いのが分かっているのに。

そうであろう? 夢から覚めてしまっては現実が待ち受けるだけだぞ。


だが!

よし、分った。 話の続きを始めよう。

我も知りたいのだ。

舞の事が。


――


黒く渦巻く終焉ゲートが破壊され、龍人が出てきた。

装備している、大剣と緑のビキニアーマーっぽい服装、雰囲気が尋常ではない。


ビキニアーマー存在していたのか。

自信がなければとっても着れないものだと思う。


どう考えてもショウタ殿の関係者だろう。

いきなり 「ああああああああああああ!!」 と叫び出す精神状態。

我がゲームをしている時に身に覚えがある声だが、誰もがあの龍人の歴戦の雰囲気に言葉が出ない。


地球ご一行が、我の方を見ている。

我に行けと言う事か。

分った、やばそうな異世界人とファーストコンタクトを決めてみよう。

初めて未知と遭遇した時、人はこんな感じだったのだろうか。


さて、ショウタ殿の所に行きたいのか? 連れてってやるぞ。

意外にも、あの男と貸し借りがあるのだ。

どんな過去があったか分からんが、我の紹介なら話ぐらいは聞いてくれるだろう。


「もしもし、そこのお方」


遠くのゲート前にいた龍人が言葉を発すると同時に我の前に居た。

超スピードとかでなく、時空の捉え方の感覚がおかしい。


「動くなと言ったはずだ」


龍人が、剣を構え間合いから我を威圧する視線を送る。

次の言葉を発したら斬られてしまうのが分る。


即座にアヤメ、伊織、舞、アリエノールと神々ご一行が察したかの様に、中華コースの机をひっくり返しまき散らしながら、我の援護に来た。


我の中華の好物のエビが宙を舞う。


アヤメは、瞬時に紫剣を構え刺し違えるように龍人に肉薄する

伊織がアリエノールと一緒に我の前に出て、ガードをする。

舞が震えながら銃を構え、我の少し前に立つ。


後の地球神々とご一行が、神気を陽炎の様に揺らめかせ龍人を囲む。


「貴方との力の差は分かりますが、刺し違えても成すべきことがありますね~」


「他世界の存在が小雨様を害する事なんて、あってはならないな。何としても身を挺して逃げ時間を稼ぐぞ」


「この職場と待遇を逃す事なんてありえない。 死ななければ安い。この命を賭ける価値がある。全力でいきます」


「小雨様、ここはおさがり下さいー。後はアヤメさんと皆様にお任せくださいー!」


そして龍人を囲むように、地球ご一行が構える。


不思議な事に、我はこの状況に嬉しく思う。


さて、やってやるか。商談の時間だ。

個人の暴力で出来る事なんてたかが知れている。

ショウタ殿も協力の力を知っていたぞ。

お主はどうだ?


「よし、分かった。皆の者下がれ。敵対的な行動だぞ。 そして、ありがとう。皆のその戦意、ありがたく頂こうと思う」


我は、手をスッと横に振ると皆が矛を収める。

この手腕を見ておくのだ、アヤメ、舞。そしてアリエノール、う~ん、伊織もか。


矛を収めると龍人が笑いながら言葉を話す。


「フフッ。この力の差を知っていて私に挑もうとしますか。そして、貴方がリーダーか?」


「黙れ。 ショウタ殿の知人にしては敵対的だな。そうだ、品が無い。あの男は、まだ品があったな。暴力の圧力の前に和の選択があったぞ」


この存在が友好的でも敵対的だとしてもショウタ殿と比べられたのだ。

何かの感情のアクションがあるだろう。


「何だと? 星ごと消されたいのか? この星もどうせショウタ様の通った道に過ぎないのだろう。 教えろショウタ様は、どこだ? 答えぬならこの星の最後の一人まで消し飛ばしてから聞いてもいいのだぞ」


なるほど、ショウタ殿と知人的な人物か。

だが、その態度は解せぬぞ。


「よそ者がその態度は、何ですか!! ここは私の次元ですよ!」


この星の唯一神が嚙みついて来た。


あ、すまぬ。破壊神。

唯一神と一緒にこの星の破壊を止めた仲として、唯一神の激情を押さえてくれ。


我は、破壊神の方を見て頷く。


破壊神は察しがいい男神だ。

そうでないと3000年間働かないでヒモ生活なんて送っていられない。


「唯一神ちゃん、その気持ち分るわけ。 ごめん、俺っちに免じで少し様子を見て欲しいのさ、きっと上手くいくからさ」


破壊神に会話を振られた唯一神がスッスッと髪を整え髪を撫でている。

なんだが、まんざらでもない様子だ。


「まぁ、そうね。 破壊神様がそう言うなら大人しく見ておこうかしら?」


後、実力があり顔が良くて話術が上手だ。

月の直撃を防いでくれたイケメンな立役者だ。

不労は、不労の苦労があるのが伺いしれる。


話を続けよう。


「ショウタ殿は、この星の様子に心を痛め、育て親であり妻であった者達の縁終わらせ、代償にこの星を導いて。居るべきところに帰った。そうだ私達の星にだ」


「そうですか! 相変わらずショウタ様は、星を救っているのですか・・・。人の気持ちを置き去りにしながら・・・。そこはどこですか! 教えろ!」


龍神の力に呼応するように八角形の時の仕切りがホログラムの様に、蒼く周囲に顕現してきた。


これはショウタ殿より、強いな。

だが、引く訳にはいかん。我の立場がかかっている。

我は、小雨の命。地球の最高な神である。


「お主、それで教えると思っているのか。 なんと言うかな。品が無い。 もちろん馬鹿にしているぞ。 ショウタ殿は、強者としての立場がありながら礼はあったな。ビジネスマナーか? いや。人と人が顔を合わせたとき、波風立てない方法と言おうか。礼、敬意だ。かしこまらずに、相手と折り合いをつける方法だ。お主、ショウタ殿の何だ? 知り合いと言っても信じられないぞ」


神々が 「えっ、ここでこの龍人を怒らすの?」 見たいな顔をしているが気にしないぞ。

アヤメも再び剣を抜き、舞が銃を抜き。

いつのまにかアヤメの隣に居るリュウナがオロオロとしている。


そうだ。

我は、小雨の命。

神である前に、我は地上筆頭と言う立場。

たとえ嫌われたとしても、リーダーは周囲から敬意を持たれなければならぬ。

ここは、存在を賭けても譲れない。


そうであろう?

自分中心の実力者をまとめ上げるには、これしかない。

我は、知っている。なぜ、先ほど皆が我を助けたのか。


さて、こじれたら撤退戦かな。

非戦闘員の舞だけは絶対に逃がすぞ。


「良く言い切ったな。雑魚が」


周囲の時が遅延し気が膨れ上がる。


この者を見誤ったか。撤退だ。

アヤメ、伊織、アリエノール。普通の神々達よ、少しの間、命を貸して欲しい。

何が何でも権能持ちの神を地球に返さなければならない。

わがままを言うようだが、非戦闘員の舞も連れて無事戻して欲しい。


「・・・。だが、塵にするにはおしい。チッ、最高の手がかりか。 私は、リザ。ショウタ様の娘であり、私の次元の為政者の一人。そしてショウタ様が王配だ。私の夫だ。夫にした」


この場の雰囲気が少し収まった。

ふむ、話を聞く気にはなったか。


だが、ショウタ殿の妻が多すぎだ。急激なNTRで脳が破壊されそうだ。

娘達がこの星に3人居て、息子1人。

このリザをショウタ殿の所に連れて行って大丈夫か?

娘多すぎ、何やってんだ?

だが、下半身がだらしない男には見えない。

意外にも紳士であるのは、分かっている。


まずは、啓示神に繋いで聞いてみるか。

こんな龍人が来ているが、どうするのか。ショウタ殿になんとかしてもらいたいのだが。

一歩間違えると、星が塵にされる。


ダンジョンに帰ったショウタ殿と、啓示神は連絡を取っているだろう。


と、いうか啓示神、旅館にいるよな。早く啓示を欲しいのだが。


【もしもし~? 啓示神~?】


我は、念じる。


【あ、小雨様、大変お世話になっております。ショウタです~。今、啓示神から見させて頂いております。 先ほどの戦闘などで流石に疲れました。 実はですね、リザの次元から逃げるようにして出て来たので、正直会いたくないのが本音と言う所ですね。今さら、啖呵をきったのでそっちの星に戻るのも難しいので。そこで、リザにお帰り頂く事ってできませんかね】


あ、クソ営業だな。この問題処理の方法は、営業としてもレベルが低いぞ。

我を誰だと思っている。 お主のダンジョン、我の権限で封鎖するぞ。


【あ? 舐めてるのか?? ショウタ殿、ここに今すぐ来い。 我は、来るまで待ってるからな】


【え? ショウタ。私を掴んでどうする気? 何なの? 異世界なんて行かないってば。 えっ? 何でもする? え? なんでもするからついて来て欲しいって? 何でもって言ったわね? いいわよ~】


キィイイイイインと脳内に異音がした後、再度ショウタ殿から言葉が紡がれる。


【小雨様、そういう意味では無いんですよ!! 怒らしてしまいました? すみません! 違うんですよ、あの~、言葉が少なくて、勘違いさせてしまい申し訳ない! えぇ! もちろんです、今すぐ向かいます。 連絡が途切れないように、啓示神様と一緒にいきますので! えぇ! もちろんすぐに向かいます、お待たせしません! ええ、リザを旅館に一度引き取りますから! えぇ!】


そうだな? とっとと来い。


幕は降りて、確かにまたここに来づらいと言うのは分る。

そして、まだ、お主の義理の娘のミリサリ、ミリュネー殿が居る。

世界は救われた後のアフターストーリーでショウタ殿の再登場と、新たな娘妻リザの関係性、脳が破壊されてしまいそうだ。


まぁ、再び幕が上がり大根役者のカーテンコールを聞くのもよしとしよう。

まもなく、ショウタ殿が来るしな。


一歩前に出て、リザと呼ばれる龍人の前に立つ。

我との身長差が凄い。

大きいな、龍人を比べる対象がリュウナと制裁神だが。


だが、その支配的な行為の代償を払ってもらおうか。


「さて、こう見えても地球筆頭の神でな。 えらく強いからと言って威圧をしてくる輩と話すことは無いのだ。意外にも心が狭くて、勘弁願いたい。 さて、一応聞きたいのだが。この男だろうか」


舞とアリエノールの方をチラッと見る。

舞がすぐさま携帯機器を取り出し、操作してショウタ殿の画像を取り出して見せた。


もちろん舞の反応も事務的で冷たい。この龍人にかける情は無いだろう。

仕事とは言え、この我のための反応は、何か嬉しい物がある。

そして、アリエノールがビシッと後ろに手を組み、我の前に無言の圧力を出してたたずんでいる。


映し出された画面を見た、龍人の目が縦方向に見開かれる


「おぉ、ショウタ様だ! この次元から近いのだな。どこだ、どこにいる!」


先ほどと打って変わり、表情の緩和が見られる。


「・・・」


「なぜ答えんのだ? 聞いているのだぞ。 この全員でかかってきても私を倒すことは出来ないだろう。 どうした? 教えてくれれば星ごと破壊したり、危害を加えないぞ? なぜ答えん?」


我は、首をコキコキとする。礼が無い、呆れたやつだ。

ここで答える訳が無い。


「近くに居るのでは無いか? 姿形も見せた、十分な情報だろう。失礼する」


「なっ?!」


アリエノールと舞が間に入る。

アリエノールの整った顔の冷たそうな表情の口角が上がっている。

立場的加虐が大好物だ。流石の嗅覚だ。


「おっとここまでです。ろくな! 挨拶もせ・ず・に! 大変失礼致しました。アリエノールと申します。このお方は、地球と言う星の筆頭管理者であり、流通の祖であり、貴方の探している、ショウタ殿と懇意にしていて、ショウタ殿と契約で上の立場にあるお方です」


そして、舞が冷たく龍人当たる。 

我には、そんな目を向けないで欲しいな。怖いぞ。


「小雨様、こんな方に情報を出すなんてとてもお優しいですねー。 あ、これ名刺です。分かりますかー? 何かあったら連絡しますから、それでは失礼します」


さて、お主も為政者と言ったな。

ならば、それぞれに立場あるのが分るよな。


龍人からは、歴戦の猛者の雰囲気が出ている。

為政者なのは、間違いないだろう。

ショウタ殿より強いとか、イカれ具合もなかなかだろうか。


それぞれに立場や理由、方針がある。上手くいかないのは当たり前である。

初対面なら、なおさらだ。それでも上手くやってみようとする礼儀。

ビジネスマナーだ。 形骸化したものでは無いと思う。


敬意が無いとこの様に、敵対的なスタートだ。

チャンスを逃したのだ、マイナスの状況から始まるんだぞ。

龍人の目標達成は、どれほどハードルが上ったか。

これからを想像すると、悲惨である。


「待て待て待て! 落ち着いてくれ! ショウタ様の行き先を教えてくれるだけでいいのだ。どこにいるかだけでもでいい!」


「そのショウタ様の上の立場の方に敵対的な暴力で解決ですか。 そのショウタ殿、非礼に悲しみ大変な事になるでしょうね。 ま、関係ない方だったら、何の問題も起きないでしょうが。普通に考えて、教えるわけには行かないでしょう。万が一関係者の方だったら、これは問題ですよね」


「すみませんー。これから忙しくなるのでおとといきてくださいー」


回りは、冷ややかな目、懐疑的で敵対的である。


意外にもアリエノールがニッコとしている。

立場的にボコボコにしたいと言う、サディストが出ている。


何か気づきを得たのか、龍人が一歩下がる。


関係者の集団圧力だ。溜まったものではないだろう。

こうならないためにビジネスマナーはあるのだぞ。


――


直後、シュポンと空気転圧でショウタ殿と腕に抱えられた啓示神が沸いてきた。


【【小雨様、大変お待たせ致しました~。】】


「ああ、ショウタ殿。来てくれてありがとう。それと、もう脳内啓示やめてくれ」


「ショウタ様ァアアアアア!」


と龍人が叫ぶが、我は続ける。


「ショウタ殿、すまぬ。知り合いか? 皆がこの者に害されそうになった。 それとも関係ない者か?看過できない。 ショウタ殿は、どっちの話を聞くのだ?」


ショウタ殿が啓示神を降ろし、我に礼の形を取る。

龍人もこれで分かっただろう。もう、勝ち目がない事が。


「リザ? お前マジか? これは、許せんわ。あ~、小雨様、もしかしてこれ、大変な事になってましたか?」


龍人が大剣を落とし胸を押さえ、3歩後ずさりをした。

目の光が消え、絶望の表情だ。


やりすぎる前に許してやるか。十分だろう。

我々にもう頭が、上がる事はないだろうしな。わきまえてくれただろう。

叩きすぎて逆上されキレても困るしな。


だが、そういう事だったのか。

ショウタ殿が異世界を転々としながらビジネスマナーでやっていたと言う事、一つの生存方法だったのかな。

決定的な対立を避ける事に長けていたのか。

ショウタ殿とは、何だかんだで上手くやっている。

異世界経験者ショウタ殿、辣腕な営業職だったか。


ん、この星の唯一神とは決定的だったな。

何事も上手くいくものでは無いか。


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