81 続アヤメ 世界の終わり
アヤメ。
只今、ショウタさんと戦闘中です。
剣の使い方が上手で、暗黒剣が紫剣の連撃を捌いてきます。
捌かれるたびに剣戟の火花が散り、私達の顔をストロボの様に照らす。
何度も踏み出し斬りつけますが、反応してショウタさんが私の膝と肘の剣の防御範囲から出た部分を切りつけてきます。達人の動きですね。
真剣の扱いが慣れすぎててエグイです~。
そして、距離を置くと手から 『無』 見たいな物を生成して空間事巻き込まれ、強制的に間合いに戻されます。
『無』 に巻き込まれても死にますね。
正直、遊ばれています。
そもそもですね~。
私、思い違いをしていたかもしれません。
ショウタさん、急所を刺したら死んでくれますか~??
そこの確認をしてなかったです~!
「視聴者の皆様~、66F旅館の支配人って、刺したら倒せると思いますか~?」
ショウタさんに連撃を浴びせながら、倒し方の知恵を皆様に借りて打開策を聞くとしましょうか。
【審議中】
【審議中】 (小雨神)
【切ったそばから再生しそう】
【刺し違えればあるいは・・・】
【頑張ってご主人様を倒しても、宙から新しいご主人様が100体ぐらい降ってきそうですよね】
【死にはしないかもしれないけどにゃ。動きは止まるにゃ。そのまま、次元の狭間に放り投げて封印するのにゃ!】
賢者の方は居なさそうです。
ダメそうですねぇ~。
「失礼な。死に・・・、あ~、程度によって普通に生き返りますね。 アヤメさんにまだ力が足りてません。そして、アヤメさん。この星の主幹者達より、よく先に着いたと思います。よくやりましたよ。本来存在しないエントロピー、この配信で星に希望と観測力が生まれてます。 より良い未来を掴んだと言っていいでしょう。配信の力、アイドルの求心力って凄いですよね」
ショウタさんの台詞が終わる前に思いっきり地面を蹴り、手を交差させ屈みながら斬り傷覚悟で間合いに入る。
・・・? 上段からの斬撃が来ません。これは、まずいです。
会話で誘われましたか~。くやしいです~!
ショウタさんが突きの構えです。
この状態では、心臓と首しか守れません。
正中線の直撃は体を捻るしかない!
刹那の心臓の部分の突きを紫剣で弾き、暗黒剣が肩を貫通しました。
異物が肩を通過し、腕に通じる魔力やスキルを破壊していきます。
直後にショウタさんの蹴りが腕へ飛んできました。
ゴッと音と脳が揺れる感覚と共に吹き飛ばされます。
私の視界に地面が近づいてきた。
体を捻じり、無事な右腕で地面を叩き上げ受け身を取った。
左腕があがりません。痛みも感じません。
流血はしていますが、致命傷は避けれました。
剣術なら分があると思いましたが、これはピンチです。
「予想はしているかと思いますが、回復は出来ません。さぁ、空間操作で、間合いへ呼び込みます」
ショウタさんが 『無』 の操作で私を引き寄せてきます。
体が宙に浮く感覚を覚えます。
【これはまずい。達人の動きだ。 ハハハ! 囲んで叩くしかない。今行く!】
【アヤメさん、時間を稼いで! 今向かっています!】
【耐えろ!人間! 今全員で向かっている! これならショウタ殿に届くだろう!】
【すぐにいくでおりゃんす! 逃がしてくれるかは、命運にゆだねるでおりゃんす!】
【アヤメ殿、違うにゃ! 運命値でしか勝てないにゃ! 剣で無く、己が命運で戦うのにゃ!】
【ホラーすぎて見てられないわね、啓示の接続切っていい?】
も~、全員バラバラな意見で好き放題言ってます~。
でも悪く無いですね。
まだ、いきますよ!
直後、黒い塊が突っ込んできて、ショウタさんの間合いに入る。
そして、その塊の大盾がバターを切るように暗黒剣にスゥウウーっと裂かれた。
「ガホッ、ガホッ・・・。 アヤメ。助けに来たぞ。 まさかモンスターより、身内にやられるとはな・・・。話だけでも聞いて欲しいと、茂みに連れ込んで押し倒したところを撃たれた・・・」
満身創痍のパーティメンバーの伊織がやってきました。
私より重症ですけど、なんとかなりますかね? 早く回復してください~。
「・・・ここで、伊織さんが間に合いますか。高い運命値ですね。ですが余計です。ここでお休み下さい」
いきなりに伊織の前にショウタさんが沸き、暗黒剣を振りかざす。
ミスリル程度ではあの剣は、受けれない。
間に合わない!! 「「伊織ぃいいいいいい!」」
この重なる二つの声。
突如波動レーザーが伊織を吹き飛ばし、伊織の一巻の終わりを繋ぎとめる。
この力は、舞ちゃんだ。
「舞ィイイイ!? 行くんじゃない! こっちに来るのだ。 昔の女なんて忘れて、我の方に来い! 我の近くに居るんだ!」
小雨様も舞ちゃんを引き留めに走ってきました。
そうですね。ここは、凄い危ないです。
舞ちゃん可愛いですから、小雨様の気持ちも分かります。
戦闘中のショウタさんの目の前で超危険ですもんね。戦闘もどう転ぶかわかりませんし。
でも、小雨様の言葉のニュアンスが変ですね。昔の女って何ですか?
私は体に今一度、戦意を燃やす。
片腕でもまだ、いけますよ。
ショウタさん、よそ見してて次の一撃防げますか?
即座に、ショウタさんの間合いへ入る。
右腕だけで逆手に紫剣を持ち、低く間合いを詰めてスーツの上から心臓を突く。
インパクトの瞬間、素手で手首を叩かれ、目標をずらされてショウタさんの肺に突き刺さる。
すぐに反撃の暗黒剣の袈裟切りを警戒し、紫剣を肺から引き抜き距離を取る。
「ゴフッ、久しぶりの肉体的苦痛ですね。 皆様、良くこの場に来れましたね。運命の流れがおかしい。まだ、来れないはずですが・・・。アヤメさんの運命が激しく交差し、未来を読み違えましたよ」
効いてなさそうです、どうしたら倒せるのでしょうか。
あれ、倒す必要ありましたっけ? 分からせるのが目的でしたよね。
目的は達成しました気もします。
さて、ここから激高したショウタさんが本気を出して私達を消しに来るでしょうか。
地上筆頭管理神でショウタさんもお世話になっている小雨様がいます。
無茶は出来ないハズです。
さて、このままだと決まりがついていませんね~。
運命を変えてみましょうか。
私が思うにこれが運命値や観測力だと思うのです。
「視聴者の皆様、祈ってくれませんか? そうですね。何でもしますから~。そんな企画立ち上げます。そうです。 祈ってください~! 今を奪われた人たちの未来を!」
【は~い】
【今、何でもって言った?】
【黙祷】
【黙祷】
【黙祷】
【皆よく戦いました。これが狙いだと分かっていても! お父様が憎い】
【たとえそうだとしても、絶対帰しません。ショウタ様】
二つの星分の祈りの観測力です。
実際よく分からない力ですが、ショウタさんの決定通りに行かない事が決まったと思います。
ショウタさんの表情が余裕から、焦燥へ変化する。
運命値。これが、ショウタさんのフェイタル(致命)でしたか。
ショウタさんが、話を続けます。
「さて、アヤメさん。見事です。参りました。このアイテムボックス禁止状態で主幹者達に来られると、さすがに負けて拘束されてしまいます。 この行動に意味がなくなる。風来坊ダンジョンで言う、武器装備アイテム使用禁止ぐらい無理レギュです。 どうします? 地球からのご一行様、帰りますか? 目的は達成できたので、自分もそろそろ帰ってもいいんですが。そして、おかげ様でより良い未来が勝ち取れました」
そうですか。
私は、聞きたい事があります。
「ショウタさん。聞きたいことがあります」
「どうぞどうぞ。 蘇生を断ったアヤメさんを倒してアンデットとして弊社にお迎えしたかったのですが、運命値が半端ないですね。渾身の突きを防がれました」
人間的倫理観仕事してますか~?
でも、苦痛も悩みも無く、永遠の安息の中でお仕事ですか。
う~ん? いいかも?
いやいや、話を続けましょう。
「ショウタさんこんなに、ここの人たちの 『今』 を奪ってどういう感じなんですか? ショウタさんの選択が大勢を奪いましたよね? 私も私なので正義感とかで憎いとか言うわけではなく、ちょっと横暴すぎませんか? 」
ショウタさんが肺に穴が開いたまま答えてくれました。
「啓示神に、いや啓示神様に聞くと答えてくれると思いますが。 沢山〇すと、古今東西英雄になるのは、分かりますよね」
「ショウタさん、全国放送されてる事分かってますよね? そんな頭の悪い言い方って言ったら、まずいかもしれませんけど、そう答える方じゃないじゃないですか~?」
「ああ、すみません。続きがありまして。そういう合理的な面があるのですが。 ですが、反面、荒廃の地で人が心の底から助けを求めたら人ってのは、余裕があれば助けるものですね。 人は携帯型記憶装置を付ける様になったんですよね。 調べてみてください。人は関係ない殺戮を喜ぶ。そして、実際に助けを求められると慈悲を持つケースの方が多いはずです。理屈より、母数がこの回答を出してると思いますよ。 つまり、自分のしていることは英雄ケース。よりよい未来が得られるなら多くの死は、関係ないですよ。そうですね、日々、少数の決断で沢山の 『今』 を奪う争いが起こってませんか? 我関せずと外から見てますよね? 自分の今の活動と違いはないですよ」
長文です。良く分かりません。
小雨様に聞きますか。
「小雨様、そうなんですか?」
「割とそうだな。 余裕があると人は人を助けるぞ。 歴史を紡ぐ者の立場を考慮しても沢山コロすと英雄だな。昔から小を殺し大を生かすのは、為政者の務めではある。そして当事者なら、今のアヤメの様に怒るのが当たり前だと思うぞ。・・・そうだな。アヤメ。舞が自分で伊織を撃っておいて、伊織の所にいくのだが?? なぜだ?? 慈悲と殺戮は、人間の理屈だが。この行動は、説明できないよな?? なぁ?? なぁ、舞。どうしてだ・・・? 何だが、立場と金に価値が見いだせなくなってきたな」
何か、小雨様に大変な変化が起きてます。
そうなんですか。
悔しいですが、ショウタさんに剣一本分しか届きませんでした。
力の差が何となく分かりました。
私がしたかった事、この星と私の怒りの落とし前。それだけだったんですか。
代弁できましたかね。
う~ん、そうですね。刺せたしよしとしますか。
何となく分かりました、ショウタさんの考え方が。
為政者の立場の虐殺と、ここの主幹者を助けていた理由が。
「ショウタさん。もう主幹者の方から逃げてはいけませんよ~。 おそらくですね~、相対する運命が待っています~。もう主幹者の方達が来ます! 後、沢山地球の神々がなんか色々こられると思います。そしてリュウナちゃん。絶対許しません」
「そうだな、もう主幹者達が来るぞ。そう段取りしてある。 そして、ショウタ殿、己と主幹者でよく話し合え。 ・・・所でアヤメ、我の何が悪いのだ。なぜ、オリジナル舞の心を掴めないのだ。我は、お金をもっていて、無駄な口出しをしないし、契約だって守る。 ギャンブルタバコ暴力なんて振るわないし、休日はサービス精神の塊だ。そして、触るとほのかに温かいと言うのに! 舞と趣味も合うし。理想の神様のはずだ!」
さすが、小雨様。
そして、その舞ちゃんの回答は持ち合わせていませんが。
私と結婚しませんか~? 私で良ければ巫女になりますよ~。
――
黒く渦巻くゲートを背景に、続々と神様達が到着してくる。
まずは、鬼の形相でリュウナちゃんを捕まえる。
世界の事より、ここ一番の所に居なかったリュウナちゃんを問い詰めるのが先だ。
「アヤメ。言いたいことは分るのじゃ。 ここ一番の所で居れなくてすまぬ。でもな? よく考えて欲しいのじゃ? 小型終焉すらも、わらわ倒せないのじゃぞ? 無理じゃよ?? 来れぬよ、来れぬ。 努力とかじゃないと思うのじゃ。 それとも、ぬおおおおと叫んで、無理やり来て足手まといになれば満足だったかの? 無理じゃよ?? わらわ思うのじゃ。悲しき事にわらわ、この世界でもきっと脇役じゃよ」
ぐぬぬぬぬ、口が達者で困ります。
気合とか、根性とかヒーロー気質が足りていません。
「伊織来てください~。リュウナちゃんがまたわがまま言ってます~」
先ほど吹き飛ばされた、伊織の方を見る。
伊織が構えている舞ちゃんの銃を胸に当てながら、何かを話している。
私の呼ぶ声は聞こえていないようだ。
「舞、私の心臓はここだ。後は引き金を引くだけだな。どうした・・? このままだと、私の手が舞の手をグイッと掴んで抱き寄せてしまうな? おっと、心臓から銃口をずらすなよ? ここだ。 ほら、もう舞の手を掴んで引き寄せてしまうぞ? 撃たなくていいのか? まだ好きって事でいいんだな?」
完全に女の敵です。駆け引きに命を懸けてます。
脳がバグってきます。 伊織のレベルが上がりすぎてます。
舞ちゃん大丈夫ですか? 女の敵に引っかかってますよ。
ハニートラップとか掛かりやすそうですよね。
ここで、鍛えておくのもいいかもしれません。夜の街の遊び方大丈夫ですか?
そして小雨様が、袖の裾を噛んで何かくやしがってます。
そして、運命が変わったのでしょう。
地球ご一行が集まり、最後の主幹者達との結末を待っているようです。
異世界侵攻が起こったのですけども、どこか旅行感覚ですよね。
神様って破壊と再生をこんな感覚で見ているのでしょうか。
黒く渦巻くゲートを背景に胸に穴の開いたショウタさんが、話しかけてきました。
「アヤメさん、アイテムボックス封印の宝珠解除してもらっていいですか? 装備なしで相手をすると、拘束されて魔王ショウタ編がこの星でまた繰り返します。 ここから先は、まもなく来る主幹者達が女神と共に私をこの星から追い出す。そらく、ミリサリ、ミリュネーは、自分を倒せないでしょう。 自分がこの星から出て行ってこれでめでたしめでたしです。 それには、装備アイテムが必要です」
う~ん。どうしましょう。
「時間がかかると、大型終焉が出て来て、世界が半壊しながらの必死の戦闘となります。私も全力で戦わないといけなくなります。本来は、この世界半壊ルートで行きたかったのですか。アヤメさんが立ちふさがった事により、上手くはいかなかったですね、見事な手腕です」
なるほど。アイテムボックスを戻しましょう。
「承知しました~。 皆様、アイテムボックスを使えるようになりました~!」
腰につけていた宝珠に力を籠めると蒼の力の効果が消えた。
消えると同時にショウタさんが魔王っぽい見たことあるようなコスプレをしている。
めちゃ強そうで、黒を基調とした荘厳でゴツイ。超強そうな作りだ。
「アヤメさん。ありがとうございます」
スッと魔王がスマートな礼をして、地球ご一行様に話を続ける。
「あの、地球関係者の皆様。もうまもなく、この格好で魔王ぽく振る舞い、この星と決別をする所なのですが。 あのですね、まだここに居るんですかね? 皆様、地球に帰りませんか? 凄くやりにくいと言うか。あの~。黒歴史と言うか。 流れとしてはこの星の唯一神の女神含めた主幹者と軽く戦う感じになるんですよ」
全員がゲートから、少し離れる。
誰もが無言で帰る様子は、無い。
「あの~ 『もはや、語る事は無い」とか、『来たか。導かれし者達よ』 とか。恥ずかしい言葉を投げかけまくりますので・・・。あの~、ここでなくて、ちゃんと帰りは送りますのでどっかで待機して欲しいと言うか。 見られると凄い恥ずかしいですね。 いや、たしかに皆様、結末をみる権利はありますが。 あの~、戦闘には、参加はお勧めしません。参加してもらっても構いませんが。 ここから先は、手加減しませんからね。主幹者以外の戦闘員は、消します。大人しくしていてくださいね」
「「「「結末を見るまで帰りません~!!」」」」
さぁ、どうなるでしょうか。
また霊薬で世界復元ですかね? 霊薬残ってましたか?