70 小雨異世界
世の中のお父さん方の話。
妖怪の監視者の映画に連れて行ってくれるのかと思ったら、ドラゴン玉に連れていかれる事件が多発。
まったく分からなくても戦闘描写が、激しいので
子供ながらにウォオオオオオオ!と、大満足でめでたしめでたし。
我は、小雨の命。
異世界大好きな、神である。
昔の異世界と言えば本だった。有名なのは、一つのリングか。中身は、ほぼ異世界設定集よな。
評価は高いが、今読むとキツイってやつだ。初代ガンドム、宇宙戦艦ヤマモト見たいに。
そして、娯楽がテレビやゲームになり、異世界の移行。
テレビや映画そしてテレビゲームに異世界が移行した。
ゲームも流れとしても昔の小説の世界感を引き継いであったか。
やがて、人類に記憶容量デバイスが与えられ、動画時代となった。
それがもう一度、異世界が文字に戻るとは。世の中、分らんものだな。
たしかに、コスパが良い。
異世界の旅、ゆとりを持って過ごしてみようか。
――
悪魔モンスターを駆除し、ご領主のマプラ殿の知己を得た。
会食中、地球組の二人が凄く大人しい。
ショウタ殿はいつもの礼服だが、アヤメのドレス、黒と赤の基調で紫の髪が映えるな。
とても、異世界っぽい。扇子でも持てば悪役令嬢がやれそうだ。
逆に、我がはしゃぎすぎているのだろうか?
異世界だぞ? 大人気異世界転移。 分かっているのか。
斜陽の人気コンテンツだぞ。次のジャンルを流行させ無くて大丈夫だろうか。
どう考えても、もう持たんぞ。人がついているうちに次のジャンルやらなきゃいかん。
まぁ、栓無き事か。
会食中、給仕たちが次々と目の間に出して来る料理。
牛っぽいステーキに、チキンの中華風揚げだ。
トマトと芋のサラダに大盛のライス。 ライスだ、異世界でも米か。
日本風ヨーロッパ。良くあることだ。
なんだろう。味も地球にそっくりだ。
チキンが噛むと皮がパリッとして、中はジューシー。
何か、経験値の味がする。 例えるなら、なんか元気が出る感じだ。
肉っていいよな。力が湧いてくる。
異世界の事を、聞きながらステーキにナイフを入れるところ、マプラ殿から質問される。
「小雨様。こちらからも質問よろしいでしょうか。それで、どうやって異世界から来られたんですか?」
あれ、一言も異世界なんて口に出しておらんが。
びっくりして、ステーキが喉に詰まった。
「小雨様~? 子供でも知っているような、この世界の事を聞いておいて 『異世界人って何ですか?』 って装うのは、無理じゃないですか?」
そういう事か。
でもアヤメ、我がゴホゴホしてるんだから、背中叩いて欲しいぞ。
ショウタ殿でもいいぞ。 背中叩いてくれないか。
「異世界人ってまだこっちに来てます? 勇者達は、今どうなってるんでしょうか。そして、自分達の世界のダンジョンを踏破してここに来ました」
ゴホッ、ゴホ。
ショウタ殿、それ我が説明するところでは、ないか?
「誰か、水を。 小雨様大丈夫ですか? ええ、なるほど。ダンジョンから、来られたのですね。 勇者様の事をご存じでしたか。この世界の来訪が初めてでは無いのですね。今、ダンジョンから来られる異世界の方は、とても珍しいです。 かつて昔、異世界転生者、転移者であふれていたようですが」
我は、給仕から水を貰い、事なきを得る。
「その転生者から始まった世界を二つに割った神魔戦争が。2年前に奇跡的に収束を見せたのです。 女神代行の勇者クロエ様がついに魔族の王子と和平を結んだのです。 もちろん、まだまだ問題が残っております。 人間にも魔族にも、和平に納得が行かない反乱分子、不穏分子。統一しきれておりません。総力戦の神魔戦争状態は、激しく心を、世界を消耗しました。私達も、争う理由が分からないまま戦っておりました。血が血を呼び。恨み、殺し合う。理由も分からないまま。 ですが、ついに休戦と和平となったのです。これも束の間の平和かもしれません。もちろん、戦う準備も日々しています。私達は、ただ今を喜びたい」
ショウタ殿が震え、ステーキを食べていたフォークをカチャリと落とした。
そうか、世界と対立した男が震える程の事なのか。
「おっと、大変失礼致しました。マプラ様、興味深いお話をありがとうございます」
アヤメが我に椅子ごとギギッと近づいてきて、こっそりと話始める。
「小雨様、異世界の物語が始まりましたね~。 反乱分子と不穏分子を鎮圧してこいとか言われそうですね~。 やっちゃいます? ショウタさんに調べてもらえばすぐ解決できそうですね」
アヤメ、ゲーム脳か。 今話してる内容、かなり深刻な内容だぞ。
ゲーム感覚でモンスター倒してたのだろうか。
我と一緒だな。
突如、カランカランカランカランと大鐘の音がする。
城の外から、大声で、「敵襲~! 敵襲~!」 と、大声が聞こえてきた
敵襲という言葉に反応したのか、アヤメのテンションが急に上がってきた。
「小雨様、イベントです! イベント始まりました~。私はどこにいればいいでしょうか。量子電波が入る。快適な主戦場に置いて下さい~」
「簀巻きの魔族アリエノールのゲームのネタやめようよ。アヤメは、主戦場の真ん中に決まって居るだろう。 この様な頻度で、城塞都市が敵襲を受けるのか。異世界やばすぎだな」
ショウタ殿が会話に驚いたのかこっちを見て来た。
「小雨様、落ち着きすぎじゃないですかね。自分が初めて異世界に来た時は、もっとこう。慌てたものですが。 一応、この城塞都市の行く末がかかってるんです。ですが今回、お二人に補助スキルだけお渡しいたします。自分は、ちょっと様子見させてください。干渉するとなると肩入れするバランスが方が難しくて。昔、この世界で勇者の後、魔王をやって・・・」
バン! と扉が開き、伝令が飛び込んできた。
今、なんて言おうとしたのだろうか、勇者と魔王が合わさり最強? そうかもしれぬな。
伝令、ナイスタイミングだ。 聞きたくないな。
「アークデーモンの軍団が、城めがけて進軍しております! 数はおよそ300! アークデーモンとデーモンの混合部隊です! 進軍の奥に大規模なゲートが開いていると予想されます! 防衛で守るか、城の外で開戦かご決断を!」
マプラ殿が顎に手を当て考えている。
昼の悪魔と戦闘の様子だと、きつそうだよな。我もこの剣が無いと超苦戦すると思う。
属性魔石の効果が薄そうだ。
「3000の兵では、厳しいな・・・籠城だ。 直ちに援軍を要請しろ。ゲートからこれ以上湧かないように祈るしかないな・・・」
アヤメが普通にショウタ殿に聞いてくる。
こういう時のアヤメのフランクな所がいいよな。
我の前に立った時もフランクに立ってたもんな~。メンタル強いよな。
「ショウタさん、そうなんですか?」
「その数だと勇者が居ないと、ちょっと厳しいですね。 って、アヤメさんいるじゃないですか。100体ぐらいは、なんとかなりそうですね。それと、小雨様が城から剣ビーム打ってれば何とかしのげそうですが。 防御結界の魔導士もいるでしょうし。 自分は、参加できませんが。小雨様、マプラ様に助太刀の許可を頂いてもらえたら、補助スキルおかけいたします」
ふむ、承知した。
我は、立ち上がりマプラ殿の前に立ち、胸に手を当てて話す。
礼と同じで、敬意を持って話すときのこの星の仕草のようだ。
「請求は、後としてだ。我らを臨時の傭兵として雇わないか? 我らで100体ぐらいやれると思う。後、ポーションなどの物資も出せるぞ。最初のつゆ払いぐらいは、出来るだろう。 残りは、宜しく頼みたいのだが、どうだろうか」
「!! 是非ともお願いしたい。100減るならば、開戦と行こうか。よし、打って出るぞ! 伝令通達せよ! 開戦だ!」
慌ただしく、伝令が部屋から飛び出していく。
「準備が、出来ましたら私の指揮の場所へ! では、一度失礼致します!」
そして、マプラ殿が会食場から飛び出していく。
アヤメが、品の良い黒赤ドレスをここで脱ごうとしている。
昔から、気が早い所があるよな。
「さて、着替えて向かいますか~。小雨様、私の後ろお願いしていいですか? 戦った感じ、アークデーモンに囲まれたらキツイ所があります」
「アヤメ様、一大事と言えど、男性が居る事を考慮して頂いて宜しいでしょうか。 性格的に、有事を優先するのは分かりますが。 さてアヤメ様、付与してしまいますね。 手を貸してください」
スパッツ、スポブラ姿のアヤメにショウタ殿が手を握る。
アヤメから、黄色い闘気が噴き出して来た。
全体が黄色く輝き、シュィンシュインシュインと音がする。
「アヤメ様、感覚で分かりますね? スーパーなアヤメ様です。 この状態は、2時間しか持ちません。闘気を使って、飛べますし。内なる力を使って武道スキルが使えるのが分かりますよね。 魔導書なんて目じゃないくらいの力が湧いているはずです」
どうみても、あれだよな。
アヤメ、めちゃくちゃ強そうだ。
いいな、これ。カッコイイな。
「おぉ、カッコいいな! 我も、スーパーな小雨になれたりするか?」
「えぇ! えぇ! 小雨様! もちろんです! スーパーと言わず超スーパーで如何ですか? いや、小雨様にスケールが小さすぎますね。 超ハイパースーパーエクセレントギャラクシーぐらいでいきましょう。ささ、こちらへ。大事な取引先の会長の方を、優先して見栄え良くしなければ。社会のマナーとして常識ですから」
おい、なんかショウタ殿、調子出て来たな。勘弁してほしい。
超スーパーハイパーってなんだ? 銀河一つ破壊できそうな強さ表記だな。
無限の力何ていらん。 あつかいきれん。 絶対良くないことが起こるだろ?
アヤメ強化で十分だろう。
「ああ・・・、すまない。 大丈夫だ。 身の丈に合うのが一番かな。 ありがとうショウタ殿。 そうしたら、ショウタ殿は、この星のしらがみで参加しないって事か。分かった。ちょっと行ってくるよ」
「小雨様~、そうしましたら。おっす、いっちょ、やってみます~」
アヤメ? その元ネタ知ってるのか。世代ちがくないか?
そうだよな。
アヤメの親世代が、子供が知らないのに映画館へ家族サービスついでに連れてく現象が多発しているもんな。
まず、親をターゲットにする事が今の時代のセオリーか。
我は魔道書を瞬時に出し、「浮遊」 と唱える。
高い魔道書だが、一大事の出来事だ。こういう時に使うべきだろう。
「アヤメ、いくぞ~」 「承知致しました~」
会食場の窓から飛び出ていく。
外に出ると、異世界の星月が輝き、地上にには大量のかがり火が焚かれていた。
城の外に、マプラ殿の家紋の山ぶどうの旗を掲げている所があった。
この旗本が本陣だろう。
我は、そこに空から地面に降りて行く。
そして、アヤメが金色のオーラを出して夜空に浮いている。
超目立っている。
遠くから、悪魔の遠吠えの様な喊声が聞こえてくる
そして、遠くの方から、邪悪な気配も感じ取れる。
人ならざる者と言うやつか。
悪魔軍団の紫色のかがり火が、悪魔たちを照らしている。
もう数分で遠距離の間合いだ。人側の陣形も出来上がりつつある。
そろそろ遠距離攻撃の防御結界でも張ろうかなと考えていた所に
アヤメが、空から 「ちぇりゃああああああああ!」 と、腰を捻り闘気を両手で溜めて、一気に解き放つ。
悪魔のかがり火を目標とし、流れ星の様な、レーザービームが魔族側に飛んでいく。
気のエネルギーの爆散が衝撃破となり周囲の空間を揺らした。
ドゴオォオオオオオン! と爆音が、響き渡る。
格ゲーとアニメで見たことある。
あれじゃないか? あれだろ? いいなぁ。我も撃ってみたい。
まだ、ショウタ殿に頼めば、まだ間に合うか・・?
いやいやいや、調子に乗るのは、良くない。力には必ず相反する負荷がついてくる。
使いこなすのは、難しそうだ。
金色の尾を引く、破壊の光。開戦の狼煙にしては、派手すぎるだろう。
「ウォオオオオオオオオオ!」
人側の戦意は、最高潮だ。
「アヤメ、我より目立っておるな。 まぁ、よい。やるとするか」
我は、鉄壁の魔導書を周囲にばらまく。
城と兵士たちの陣形を囲み、敵の遠距離攻撃を阻害するように魔導書を展開し、一節となえる。
「大鉄壁!」
青い力場が城と、人側の兵を包む。
これでしばらく遠距離魔法を防ぐとしようか。
さて、後方の憂いは大丈夫そうだな。
アヤメが囲まれないように、立ち回るとしよう。
――
兵士達が突撃し、人の波が魔族にぶつかる。 矢、光弾、剣戟。すべてのエネルギーが光に変換される。
夜空を飛び交う、金色の光。
地面から飛び交う、我の緑色の剣戟。
悪魔の火炎や光弾で激しく狙われるが、遠距離攻撃は全て鉄壁の魔導書で防ぐ。
時間と共に紫の炎が消えていき、そして引いていく。
人側は、悪魔を撃退することに成功した。
さて、アヤメばかり、目立たせるわけにはいかない。
アイテムボックスの空間を空に展開し、戦場の地に、ポーションをばら撒く。
久しぶりに大声を出すか。
小雨カンパニーを統べる、新入社員挨拶で使う時の声量を聞くがいい。
「拡声」と、こっそり唱える。
「怪我をしている者! 状態が危ない者がいる場合は、落ちているポーションをすぐ使え! 異界のポーションだ! 救助支援部隊は、我の元に来い! 回復アイテム、補助物資を出すぞ!」
よし、アヤメ。隣に来てくれ。そのオーラ目立つからな。
アヤメが空から降りて来て、我もアヤメのオーラで金色に照らされる。
戦場後の焼けた平地で、立っていると、戦場の人々が集まり、感謝の言葉を述べる。
「おお! 勇者よ! 感謝を! 」
「あああっ、勇者さまぁあああああ!! 」
「おお、勇者よ! 神様ぁああああ! 有難うございます!」
「勇者様、なんとお礼を言ったらいいのか。あなたに最大の敬意を」
全員が、片膝をつく。 戦場の焔が我々を照らす。
アヤメのスーパーモードが切れたのだ。
我は、回復アイテム、魔法回復アイテムをを担当者たちに渡す。
すぐに治療の作業に当たるといいだろう。
そして、戦場から城門をくぐり町に帰ると、夜だというのに勝利の祝福と大歓迎の嵐だ。
鳴りやまぬ感謝の言葉。この嵐は、今日中に収まるのだろうか。
だが、ここの領主がマプラ殿だ。
結果的に花を持たせるように、もっていかないとな。
マプラ殿の勝どきのイベント時、礼を取るとするか。
異世界の者が、大きく取り上げられるのは宜しい事では無い。
どこでもそうだが、上手くやるにはこのバランスが大事だと思う。
褒めたたえなければ。
見事だ、素晴らしい不屈の兵たちだ! ご領主のマプラ殿あっての勇士であろう!
こんな所だろうか。 これなら、勝どきイベントの歓声の大きさも想像できる。
隣を歩くアヤメに話しかける。
「異世界楽しすぎじゃないか? これ、金で買えない物だな」
「ですねぇ~、私も前回、こういう異世界を期待していたのですが・・・」
そんな話をしつつ、町の住人の歓声の中、前からショウタ殿がてくてくと歩いてくる。
同時に、歓声が静寂に変わり、町を照らしている夜空が暗黒に飲み込まれる。
見えていた星々が隠れ、巨大な暗黒の渦が逆巻く。
空がひび割れている。ガラスのひびの様に。
巨大な紫色の触手が、空間と言うガラスを砕き、超ド級な触手が星空だった所から出現した。
月を隠す程の、タコの様な巨大な頭。
山よりデカい触手の群れが、着地と同時に大地を砕く。
時が止まったかの様に、静寂が訪れ。
我とアヤメは、顔を見合わせる。
マジに、何だ?
「ショショ、ショウタさん、あれは、なんですか?」
この異常な状況を作り出したのが、ショウタ殿だろうと読んだのだろう。
アヤメが話を切り出す。
「やってしまいました。中型の終焉の眷属です。 そうですね。悪魔ゲートを閉じようとゲートを視認したら、出てきてしまいました。 一定以下の観測力の方だと、精神と観測力と肉体が保てなくなるので、ここで守りながら戦います」
また世界の終わりか。
月1ぐらいで起こってないか? 世界の終わりが。
これが、ショウタ殿の制約か。
これは、ちょっとショウタ殿が地球に来てほしくないと言うか。
万が一にこれが、地球に来るんだろ? 強さが星一つの総力と同じぐらいじゃないか。
ネコ殿が前言っていた、『ご主人をどっかに封印したいにゃ~』 と言う気持ちが分るな。
だが忘れない
妖怪の監視者の映画に連れてってくれる約束はどうなったのだろう。
やっぱりマーケットは、親から狙うのが一番近道だって話。
ごくたまに、日曜の更新スキップでお願いします。




