表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/95

7 アヤメダンジョン中

貴方をクスッと笑わしてみたいですが、それがいかに難しい事か。

アヤメ 


ある時、この星にダンジョンが出来た。それと同時にこの星の神々が顕現した。

人々は喜び、そして恐怖した。

人の信心が生み出した神。上位存在の実在が社会体系を大きく変えた。

それと同時に魔法、魔力の力が文明を書き換えた。

炭素を空気中にばらまく化石燃料から、クリーンなエネルギーの魔力が取って代わった。

魔石は、ダンジョンから採掘やドロップから取れた。これこそ魔法のエネルギーだった。


人々は、ダンジョンに潜り魔石を取りに行った。

そしてダンジョンの素材は、ダンジョンや文明の進歩に役に立つというサイクルが出来上がった。


神々は、願うなら力を与えた。

また、神と人類はダンジョンが溢れた時、力を合わせ脅威に立ち向かった。


ダンジョンは、人々を誘った。

ダンジョンは、知っているのだ。名声、富、そして好奇心が死へ人を誘う事を。

勝手に人が中に入って死んで行く、ということを。


そう、死にたくなければ入らなければいいだけなのに。

しかし、人はダンジョンに入ることをやめられない。


私は、憧れた。ダンジョンと言うものに。

名声、富、好奇心を満たす全てを手に入れてみたかった。

小さい頃から、ダンジョン探索者になりたかった。

走り、鍛え、いくつもの試験を超え。スキルが開花し始めた。 

この辺りから、ムクムクと湧き上がる認証欲求、そして力の解放の快楽と、モンスターの加虐の快感に目覚める。

ダンジョンに潜りながら、モンスターを狩りLVを上げまくった。

そして小雨神に認められ、アイテムボックスの加護をもらった。 もはや、有頂天だ。


死なんて、ほど遠いと所にある思ってたけど。

ダンジョンである限り、死が隣にある事をすっかり忘れていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私、ダンジョンステータスオープン!!


埼玉ダンジョン(仮) 66F


向原 アヤメ  LV28: 状態 普通

スキル:短剣2刀流 気配察知 忍び足 隠形 加虐Lv2 加速 飛脚


E:黒鉄の短剣

E:黒鉄の短剣

E:白馬系ブレザー(付与加速)

E:黒糸のスカート(付与加速) 状態:炭化

E:1角魔獣のブーツ(変性錬金)

E:配信連絡用ヘアバンド

E:炭(スパッツ部分装備)


この階は、洞窟壁が明るく光っていた。


私は、転移罠で65F深層に飛ばされ詰んでしまった。

もう、戻ることも出来ない。

会敵、戦闘となるだろう。 私の隠密スキルが通用していない。


配信でお別れを伝え、最後の時を伸ばすために少しでも足を進める。


「いざ、最後のお別れとなると、あんまり言葉で上手く伝えられませんでしたねぇ~・・・」


先ほどの別れの会話を思い出す。

私の決意、伝わりましたかねぇ。


モンスターにグシャッと潰される姿は、見せたくないのだ。

見たくもない、ハズ・・・ですよねぇ。


後ろから追ってくる気配、大型ゴリラコカトリスライオン。

暴力の化身だ。装備やスキル技能だけではどうにもならないだろう。

もう支援アイテムは、もう無い。あるのはドロップの素材だけだ。

魔導書、属性石は、使い切ってしまった。


後ろから追ってくる、ゴリライオンの気配、前方右奥の全てを飲み込むような異常な気配。


だが、前右奥の巨大な気配は、気づいていない様子だ。


「今からでも、最後のお別れの挨拶、もう一度やりなおせますかねぇ~。 でもイメージが壊れますよね~。 あっ!これから肉体壊れちゃうのに、壊れる関係ありませんよ~・・ね、ふふっ」


よくないイメージが足を重くする。

何かを考えないと鬱すぎて足が止まってしまう。 死にたくないのに。


気配察知の動きを見るに、気付かれてないと思われる右通路の方向に進む。

隠密が効くかもしれない。だが、逃げてもどうすれば。


「ちぃい~」


やはり後ろのモンスターは、魔力探知にひっかかる。後ろから確実に追ってきている。

30Fボスを100匹くらい詰め込んだ様な、魔力気配が、追って来ている。


ほんとやめてくださいよぉ。気配が大き過ぎるでしょう。


後ろはだめだ。スキル隠密、気配隠蔽、スキルを駆使しても追跡が途切れない。

やっぱり生命探知してやがりますね。


そして、これを最後に気配察知はもうしない。

頭がおかしくなりそうだ。そう、おかしいのだ。右前方に感じた魔力がおかしいのだ。ダンジョンのモンスターが出していい魔力じゃかった。狂っている。 もう一つ奥の気配も感じるが、虚空だ。虚空を感じる? ヴォイドだ。

 

あぁもう、逃がして~頂けませんかねぇ~? 逃げ切ったら最後の様子、この狂った気配のモンスターを配信しましょうかね。


気配を消し、部屋手前の通路に入る。 フワフワ浮いた、猫が居る。


これが、あの狂った魔力の持ち主か。そうか猫かぁ。


猫は、フワフワと浮び、星を引き絞った様な光る杖を周囲に展開している。

猫モンスターは、私に気づいた様子でその杖を私に向けた。


ああ、これ死んだ。このモンスター、世の理を超越している。

私の存在価値で最高の相棒、足がついに止まってしまった。


「ニンゲンニャーァアアアキャクダニャアアアアアアアアアア」  


猫モンスターの、獲物を見つけ興奮した叫び声だ。汚い。


「ヒトカヒトゾク、ヒトニャアア」 これは、詠唱だろうか。


「ご主人!!!! 人間にゃ!!!! お客さん候補にゃ!!」 


あっぁあああ?!


「ぁああああああ!!!?猫さんがしゃべったぁ!!! ああああああ?!」


そして、もう一つの声が聞こえる。最後に感じた、虚空。気配が虚空の持ち主だろう。


気配が空洞って事ですよねぇ。 どういう事です?


「ネコさん、虚数空間から出てくる黒い人間の様な物は、モンスターですよ。間違えてはいけません。おかしいな、時空改変、未来改変、時空停止使わないのに出てくるのかあああああああああああああああ?!!?!」


人のような何かが、叫声を上げる。


「人間だあああああああああ!!!!客じゃあぁあああ!!!!!!!!!!!!!」


また、人間の形をした何かが叫んでいる。 66Fに人間なんているわけないのに。


「お嬢さん。ここには、お店があるにゃ~。寄ってってくれないかにゃ~」


猫さんが、何かを言っている。分からない。脳が言っている意味の理解出来ない。


すぐに、洞窟が揺れる。ドスドスドスと、後ろのモンスターが追ってきたのだろう。

目の前にいた、人間の形をした何かが消えた。


後ろを振り向く、その刹那。

凶悪な凶相の大型の筋肉ダルマ、ゴリライオンコカトリスが一緒になった生物が、人のような何かに触れられパリンと砕け落ちた。 


パリンって何?? ガラスの様に砕け落ちましたが、この巨体の中身はどこ行きましたか?

この人の形をした何かがやったのですかぁ?! 


目の前の猫さんが、へたり込み座り叫ぶ。


「にゃあああああああ?! 凄すぎるにゃああ! 存在を砕き、魔力に変換される所を禁じて、魂の存在を縛り上げたのかにゃ??! なんという魔道の極地にゃ?!!? ご主人?!!?」 


もう何がなんだか、分からない。私もへたり込み


「ああああああ?! 実は、私もう死んだですかぁ!? ここがあの世?!!? 何がどうなってるの?!!? あの世はこの世!?! あああああ!!!?」


「あああああ!!!!お客様!!!ああああ!!!お客様すみません!!お騒がせしてしまって!!! 失礼致しました!!!!」


人の形をした何かが、丁寧に礼をして、話を続ける。


分けが分らない。私は、恐怖の虜だ。


「あっ、あのここで、店をやっているものでして、良かったら見に来て頂けませんか? お店を始めたばかりでして、オープン記念やってます。お客様が一人目となります。心尽くしました、サービス致しますので、よろしければ、お越しになって頂けますか」


店?!店って何?! そうだ、ショップ! ショップって何?!


フワフワと浮いた猫さんを見る。笑顔だ。

動物の笑顔って怖い。怖くて聞けない。


もう、言われるがままが、いいだろう。

ここで断る選択は、無いだろう。先き程の、砕けたゴリライオンの様な死に方は、したくない。

少しだけ命を伸ばしたと前向きに考えよう。

この人の形をした何かが、どうするのか。分からいなけど。


ーーーーーーーーーーーー



猫モンスターと人の形をした何かに、連れられる。

洞窟を少し進み通路を曲り、開けた部屋に入る。


大きなドーム型の部屋に、旅館が立っている。そう、ダンジョンに旅館が立っている。

どうみても、おばあちゃんが生きていた頃、一緒に行ったことがあるような旅館だ。

屋根付きの扉を前に水車がカラカラしている。水もなく回る水車は、終末を感じさせる風景だ。


ここダンジョンですよねぇ。旅館に見えるけど、中身は人間精肉工場だったりしますかね?

隣にいる猫さんは、人間をマテリアルか何かに加工する、従業員さんだろうか?


この展開は、本で読んだことがある。

ダンジョンで店を経営する振りをして、人間を加工しようとするストーリーだ。

【注文が多すぎる料理店店長。~店を燃やす炎上商法~】 だったでしょうか。


考えるのも疲れてきた。


ドアの前に立つ、「ウィィィィン」と、開く。そして「ピロポロピローピロポロポー」 謎の電子音。


あぁ~、自動ドアですねぇ~。


ダンジョンで場違いな異様な建物、そして電子音が脳を蝕む。

日本風旅館に修学旅行の記憶が蘇る。 私の最後の走馬灯の様な物だろうか。


「~~の様にですね、ここが宿泊施設で魔温泉100%かけ流しのお風呂でございます。美容、重度の呪い、状態異常など入るだけで治ってしまいます。 売店では、ラストエリクサ~~・・レストランでは~~~」


人の形をした何かは、この旅館の中を説明している、様だ・・・。

時折チラチラと人の形をした何かが、私の顔を覗いてくる。

まるで、獲物を見る目だ。

なるほど、私は、ここのレストランの食材になるのでしょうか。

まるで本のストーリーの様な展開です。


「あ、あのお気に召しませんか・・? 商品のラインナップが古すぎますかね・・・、お客様の様なご年代の方には、温泉旅館風がやっぱりブームではない・・・あっアッア。」


人の様な何がが、喋っている。 もう、どうでも良くなってきた。


「あ!! そう、そうだ!! そう!! せっかくですので。せっかくの開店イベントお客様のために、レストランをぜひ、試してください!! 本日、お客様第一号セールにて、無料にございます!!  ネコさん!!! ご案内してあげて!!!! まったくお待たせ致しません。すぐにご用意できますので!!」


レストランかぁ。やっぱり私が、食材じゃないですかぁ。

脳がやっと恐怖を思い出した。


連れられるままに進む。

部屋の上に落ち着いたランプが光り、漆塗りの机が規則的に並んでいる。

ここに座るようにと、指示される。

お水とおしぼりを出された。


私は、耳を澄ます。厨房から声が聞こえる。

「ネコさん、どうしよう。あの世代の方って何がいい!! やっぱマーケットが違ったかもしんない!! ほんとに焦る!!温泉旅館もうブームじゃないかも!! ラーメン?チャーハン安易でためだよね。刺身の船盛りいこうよ!! ガレオン船を模した船盛りどう? あああああ、ダメ? そうだよね、生もの苦手な方もいるもんね!!!さすがネコさん! ありがとうありがとう、国際基準大事だよね!!ああああああああじゃああ、ソバ、ソバしよう!」


ああ、そばにされるのか。

もうこれまでです。命乞いの時ですね。全力で命乞いをしてみましょうか。

無駄だとは、思いますがぁ。


「お待たせ致しましたにゃ~」


「あ、あの~殺しでもなんでもしますぅ。な、なんとか命だけは・・・な」


目の前に フワフワッと、配膳され。そばが出てきた。天ぷらもある。

ランプの光を照らし、そばがプリズム的に光っている。


「天ぷらーぬ、ソバーニュにゃ。 お客様、鑑定はLvは・・おっと失礼しましたにゃ。鑑定は、無粋なので、説明させて頂くにゃ。天ぷらーぬの右から 巨大エビが支配する大地アクアヌスのエビの天ぷらーぬにゃ、このエビ鋏で無を作り、物理特性に左右されない攻撃で獲物を狩る特性があるにゃ。真ん中のきのこが、時空龍ドラグヌスの住みかでしか取れない、時空矛盾キノコ。時間停止やパラドックスによる時空矛盾の耐性が獲得できるにゃ。 最後のは、世界樹の葉の天ぷらーぬにゃ。」


いやいや、怖すぎるよぉ!! 食べていいやつなのコレ?!


「そばが、不毛の大地冬月で100年に一度、生命の雨が降った時1時間だけ生えるそばの実を引いた物にゃ。ほんとこのソバーニュ。おいしいにゃ。この、おつゆは、秘伝みたいにゃ」


ここで食べないと言う、選択肢は無い。直感が言っている。機嫌を損ねると、食材に早変わりだろう。

震える手で、お箸を持ち、そばをなんとか掴む。つゆにつけ、口にいれる・・!



「あ、おいしい・・!」



思わず声が出た。


そして、厨房の方を見る、笑顔のご主人がこちらを見ている。凄い人間っぽい。

表情が分かる。ご主人は、ホッとし安堵した顔を見せた。


その表情を見た私の脳に、雷が落ちたかのような衝撃に見舞われた。

ああ、そうか。そうだよね。私、どうしたんだろう。人間だあの人は人間だ!!!

伝えなければ。


「あの! ご主人さん、凄いおいしいです!すみませんでした!! ごめんなさい!勘違いをして!」


助けてくれた感謝など、色々と伝えたい事があったが、口に出たのがコレだった。



「ご主人さん人間だったんですね!!」



「ハッ、、、ハハッハ!!ハハハハハ!!!! ハハハハハ!!!」


凄い笑いますねぇ。 思わず口に出た言葉ですが。コレ失礼ですよねぇ。ごめんなさい。


「そうですとも!人間ですとも!!! そうです。人間ですね!! ハハハッハ!!! そうです!!いやいや、うんうん。 人間ですとも」


男は、満足そうに頷く。


「ハハハッ、そうですね。今日、良かったら、こちらに泊っていってください。 あー、そうですね。お金なんていらないですよ。お代は結構です。 正直におほめに頂いたことで、喜びで身体が活力に満ち溢れました。 早い話、ここは、温泉旅館です。 お客様は、貴方様一人。お好きに泊ってください。あぁ、お名前を聞いてもよろしいですか?」


「アヤメと言います。

冒険者です。助けてくれてありがとうございます。」


「助けた?? いえいえ?? まずは、改めてご挨拶を。」


先ほどまで、虚無のスーツに見えましたが、改めてみるとホテルスーツだろうか。その男の人が足をスッと引きながら礼をする。


「アヤメ様、ようこそ 秘密の宿屋へ。 自分は、アヤメ様を心から歓迎いたします」


「何は、ともあれ、まずは、お部屋へどうぞ。一先ず、お休み下さい。冒険でお疲れでしょう。それから、明日でもよろしければ、お話を致しましょう。アヤメ様も何か事情がある様子に見られます。 ネコさんご案内してあげて下さい。」


「かしこまりました。にゃー」


私の有無の返事の前に、一瞬で転移し、旅館の部屋に入る。和室だ・・・。畳の匂いがする・・。

そして、奥に見える謎の椅子スペース。

お茶とお布団がもう、準備されてます。


猫さんが話しかける。

「凄いにゃー。アヤメ殿、荒人神様に好かれる才能あるにゃー。飾りのない真実の言葉が、荒神の性質を持つご主人の心を撃ちぬいたにゃー」


ネコさんが、ひげを触りながら話を続ける。


「あっ、分からないことがあったら、遠慮なく呼んでくれにゃ。でもアヤメ殿もお疲れみたいにゃ。難しいことは気にせず、まず休んでくれにゃ。 質問疑問、全部明日でいいにゃ。それと、いつでもご飯だせるようにしておくにゃ。 お風呂は24時間入れるにゃ」


そして、猫さんは、シュポンと音を出し目の前から消えた。


あぁ、私、今日を生きることに成功したようです。

もう動けない。眠い。精神的に、疲れが襲ってきた。眠ろう。装備を脱ぎ捨て布団へダイブする。


私のBカップの肢体が目に入る。身体の状態を見る。傷は、全てきれいに治っている?! 古傷さえも・・・。もういい、寝よう。

でも最後に、意識を手放す前にこれは、やらなければ。眠い、眠すぎる。

横になった状態でアイテムボックスを開き生活用品から、通信スマホを取り出す・・。


【私、まだ生きることができてますぅ!】


一言だけ打って、意識を手放した。


もし気が向きまして下の星を押して頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ