69 アヤメ再度異世界
アヤメ
息をするように馬車が襲われてます~!
馬車は乗り物では無くて、襲われるものでしたか?
ショウタさん、異世界が日常的にモンスター被害ってまずくないです?
でも、たしかにですね?
レディコミ異世界で少年がお姉さんや、幼馴染と平穏に暮らしていたら、オークの集団か魔王の配下みたいな存在が主人公に絶対襲い掛かってきます。
そんな少年が織りなす成長ストーリですか? 虐待の疑いがあります。そろそろ異世界の人権について考えたいものです~。
そして、目の前には屈強な兵士さん達と、リーダーが煌びやかな女騎士さんです。
レディコミでみた、凛々しい女騎士様。
くっ・・・ころ・・・ 系なんて言うと思いましたか? もしもし~? ポリコレクション~。
配慮してください~、異世界に染まりすぎではありませんか~?
――
巨大な悪魔に襲われた馬車の残骸。
立ちはだかる悪魔は筋肉二足歩行ヤギ顔に四本の手ですか。邪悪そうです。
と言う事で、仕方がありません~。人間助けましょう。
小雨様が、人間助けると言うなら間違いないでしょう。
瞬時に兵士達の間に割って入り、悪魔の剛腕を振るう攻撃を受け止める。
悪魔の爪の硬さに火花が散りますが、少し重く感じる程度ですね。
受け止めてる間、小雨様が斬撃型ビームをバンバン飛ばして来て、悪魔が細切れになりました。
「「おお! アークデーモンを難なく倒すとは!」」
そして、駆け寄ってくる女性騎士様。
絶対身分が高い方です。お召し物がミスリルプレートですし。
小雨様、早く来てください! 功績を全部、なすりつけますから!
私、もうこのパターンお腹いっぱいです。裸足で逃げ出したくなります。
「助太刀感謝致します。高名な冒険者の方でしょうか? 立ち振る舞いから、武名が溢れ出ているのを感じます。 この状況ですので、お互い状況を把握できてないのでは? 宜しければ、城まで来てもらいたいのだが」
端正な女騎士様が城までご同行の選択肢を出してきました。QTEです。
答えるのが遅ければ遅いほど、不利になりそうですね。
助けを求め、チラリと小雨様の方を見ると、こっちに歩いてきている。
もう少し急いで来て欲しいです。
「ああ、失礼した。自己紹介が遅れたな。 ネルフェ=マプラ 男爵だ。ご存じだろうか、この領地の領主をやっている」
早くぅううううう! 小雨様ぁあああ! イベント始まってますよぉおお!
小雨様が一番偉いですから、私の代わりにご判断を~!
この世界に干渉したくないですぅうう! 小雨様が始めた物語ですよ! 早く~!
危ない冒険者のふりをして、小雨様の到着を待つ。
「これは、失礼致しました~。 私は、あの方の護衛にございます! あのお方に下知を頂きまして、この度助太刀致しましたぁあ! 感謝の言葉は、あのお方にお願い致します!」
と、小雨様の登場と同時に片膝を付き、敬意深く殉教の意を示す。
「うん? アヤメ、そんな信心深くないだろう? 何してるんだ? もしもし? いつも顔を上げたままで、形式的な感じじゃないか。いきなりどうしたんだ?」
ぎゃあああ! 小雨様、私の日頃の行いが悪いのですかぁああ!
「こちらが、的確な助成の指示を行いました。尊い恩方にございます~」
女騎士マプラ様の興味が、私から小雨様へ行くのを感じる。
小雨様、後はお願いします~。
小雨様が始めた物語ですよね?
「この方の主でございますか。この度は、助太刀感謝致します。私は、ネルフェ=マプラ 男爵だ。ここの領主をしております」
「丁寧な挨拶ありがとう。小雨の命だ。うむ、怪我は無いか? 勝手な助太刀で矜持を傷つけた様なら謝る。 すまない。苦戦の様子が見られたので、つい手を出してしまった。 それと、・・・ここの文化が分からないので身分は伏せさせて欲しい」
女性騎士様は、胸に手を当てる仕草を取る。
敬意を表す意味だろう。
私にもわかる。相手の立場に合った言葉遣い。
自然と敬意も沸くものでしょう。
「いえ、お気遣いありがとうございます! 私たちは大丈夫です。なるほど、お忍びですか。その高貴な服装から品位が分るという物です」
マプラ様は、深くうなずく。
羽織っている風呂敷以外、ゴシック貴族服ですもんね。
この世界の波長と合うと言うやつでしょうか。
後ろから、遅れてショウタさんがやってくる。
「あちらは?」
マプラ様が視線を送った先に、ショウタさんが答える。
「高貴な小雨様の従者でございます」
その設定でいきましょう。
小雨様が、話を上手く運んでくださってます。流石、世界一の企業神様です。
「戦闘要員の従者です~!」
「いや、なんで従順なんだ? アヤメ、何してるんだ? そういうロールプレイか? いいなそれ。 まぁ、後で聞こうか。我も設定持つぞ。邪眼設定なんてどうだろうか? あ、うそごめん。目を埋め込み増やさんでくれよ」
テンションが高い小雨様を放置しつつ、ショウタさんがいつもの気配を消して質問をする。
「地獄のゲートが開かないと湧かない種族ですが、どうしてここに悪魔種族が湧いたんですか?」
マプラ様が、ウンウンと頷き話しを続ける。
「それが、魔族がゲートを開いたのでは無いかと情報がありまして。この度調査に来たら、出現したのです。沸いたのが1体だけの様子だと、察知されるまえにすぐに扉を閉めたのでは無いかと推測するのだが、ゲートを空ける存在の尻尾を掴めず感知できないのが現状でして」
ショウタさんもウンウンと頷く。
始まりましたね、小雨様の物語が?
でもショウタさん、とっとと本拠地に乗り込んで悪魔やっちゃいませんか~?
秒でこの物語終わりますよね。
たまにホラーゲームの配信をする時、この屋敷に火つけて終わりにしません? とか、ガチで思ってしまうタイプなんですよね~。 怖さより、まどろっこしさが勝って楽しめないんです~。
でも、もう少し様子を見てみましょう。
「悪魔種族にゲート、なんだその興味を引くパワーワードのオンパレードは。所で町はこの近くなのか? ああ、失礼した。領主殿と言ったな。城下町は、この辺なのだろうか」
と、領主マプラ様と話している小雨様。
上の人同士のお話は、話が早くて助かります。
決まったら、お下知を聞くだけですね。干渉せずに護衛要因として立ち振る舞いましょう。
ショウタさんの方を見ると、破壊された馬車が浮かび上がり、散乱した部品が次々と集まり修復されていく。
お馬さんも浮かび上がり、飛び散った肉片が修復されていく。
その修理の魔法スキル。生命体には、出来ないハズですよ。
直しても魂が抜けてますから、生きる屍です。禁呪なのですが~。
訝しんでる私を見た、ショウタさんが言葉をかけてくる。
「木材とは植物の肉片ですね? なぜ、禁忌を感じないのかと言う事ですよね。そして、人間や動物の修理は、禁忌となるのでは? と、訝しんでるんですよね。 その通りです、生き物を直しても中に魂がありませんからね。人の認識だと禁忌ですね。 でも、パソコンも車とかコア部分を変えても、外面が一緒だったら同じ認識ですよね。 これは、機械馬としておきましょうか。つまり、ポップでコミカルに可愛いく表現できるなら、禁忌なんてありませんよ。 そう考えると、SDGンズ、資源の再利用。社会模範に沿っていると思いませんか」
なるほど、つまり死霊術スキルですか。
ネクロマンサーの思考ですね~、生き物は資源・・・? あれ、SDGンズじゃないですか。
異世界生活が、長いとこうなってしまうのでしょうか。
馬車とお馬さんが綺麗に元に戻った。
魂が無いと言う機械馬を見ると、非常に生き生きとしている。
ときおり鳴き声が、「コロシテ」
何でしょうか。極めて何か、生命に対する侮辱を感じます~。
「「おお、高度なレストレーション(修復)のスキルをお持ちとは!!」」
あたりは、賞賛の声で包まれる。
そうきましたか。全てを利用するぐらいの気持ちじゃないと、この強力なモンスターが居る世界で生きていけないと言う事ですかね。 細かい事は気にしないのは、良い事ですよね。異世界ですし。
いそいそと、デーモンの破片を回収し帰宅準備をしている兵士さん達。
小雨様と領主マプラ様が、こちらに来てこれからの流れを話してくれる。
「町まで案内してくれるそうだ。マプラ殿の城に泊まって欲しいそうだが、どうする? 何かを換金するまで路銀も無いしな。でも宿屋にも止まってみたいし、酒場にも行ってみたい。 ダンジョンもあるみたいだが、踏破済みだそうだ」
小雨様。何だか、楽しそうですね~?
ショウタさんに、確認だけ取る。
「いいですか?」 「いいんじゃないでしょうか。興味があります」
「「小雨様の仰せのままに」」
「さっきから、どうしたんだ? そういう設定か? マジに異世界ロールプレイ?? いや、すまん。無粋だな。 ここは確かにそういう会場だ。異世界コスプレは、会場までお控え下さいってやつだな! ワハハ!」
うわ~、テンションが上がり切ってます。 ジェネレーションギャップも感じます。
ここで諫めるのも良く無いですね。
大人しく、はいはい。と返事しておきましょう。
周囲の皆様が撤収準備をし、綺麗な馬車に大人しく乗る。
ショウタさんに転移でスパッと連れて行って欲しい所ですが、風情無いですかね。
普段、小雨様に超お世話になってますから。
下手な事は言わずに、なすがままに異世界体験しましょうか~。
カラカラと馬車に引かれる中、ショウタさんがずーっと外を眺めていた。
「ショウタさん、どうしましたか~? 何かいつもと雰囲気が違いますね~」
言葉に反応したのか優しく微笑み返してきた。
「悪魔のゲートは、こっちから開かないといけないんですよね。 昔は、人間側がゲートを開いて魔族側に当ててた事もあったなって思い出しまして。ちょっと、情報収集に当たりたいと考えてました。 ああ、アヤメさん。 会社で罪を裁くときや、いわゆる犯罪者って最初なんて言うと思いますか? 『俺は、やってない』 って言うんですよ」
あ、なんか聞きたくありません。
「あ、うん、すみません。大丈夫です~」
「いえ、だめです。 つまりですね。このまま、ここの統治者のダリアの目の前に行って、『ちゃんとやってる?』 と聞いてもまったく意味が無いと言う事ですね。 証拠を集めてから、聞かないと意味が無いって事です。つまりですね。不備を指摘して、女神ミンチにしたい」
はい、ありがとうございます。
ここの料理は、どんな夕食でしょうか。
ショウタさんが居たことある星ですよね。
期待できそうです~。
―――
馬車は、そのまま城壁に入った。
小雨様が、楽しそうに領主マプラ様と会話をしている。
赤髪の無造作ショートヘアー、ミスリル装備の山ぶどうの意匠がカッコいいですね。
モンスターの襲来が前提で町が城壁で囲まれ、厳重に出来てます。
地球のダンジョン前も、がちがちに固めればいいのにとは思いますが。
『城塞化して実力者を常駐させて、いつ来るかもわからない多数のダンジョン溢れのために金は使えん』 とか、小雨様に言われそうですよね。
おっしゃっていることは、分かります。
でも、常に駆けつける、私たちの命のお値段はプライスレスでしたか。
そのまま、お城に入り馬車から降りる。庭園の様で、バラが見事に咲いていた。
小雨様が好きそうな庭園だ。
そのまま、執事さんの案内で部屋に案内される。
「後々、夕食会だ。ゴシックタイプな、正装持ってきたか? 最新モデルの礼服でもいいな。どんな異世界の反応だろうか。そしたら、着替えたら夕食会場に案内してくれるみたいだぞ~、また後でな~!」
小雨様が赤い絨毯の廊下をトコトコと歩いていき、案内されるがまま部屋に入って行った。
残されたショウタさんと私。
もちろん、言葉をかける。
「ショウタさん、いつごろまでコレやるんですか?」
「当然、小雨様が満足されるまでですよ。自分も、少しやる事があります。この星でやる事聞きたいですか?」
「はい、大丈夫です~。あ! ウソですぅ~! この星壊したりしませんよね!? その触りだけちょっと聞きたいです!」
「大丈夫ですよ、自分をなんだと・・・、いや、すいません。この星で魔王してました。 この星で結構長く魔王してましたから。世界の様子が気になるんですよ。さて、話を変えましょうか、夜会のドレス、お作りましょうか?」
ああ、そうでしたか。
やっぱり、魔王経験者だったんですね~。そうじゃないかと思ってました。
ショウタさん作成のドレスですか~?! そっちの方が興味があります。
どんなセンスをしているのでしょう。
旅館の浴衣やポムちゃんの服、ショウタさんが作ったんですよね。
欲しいです~。 ナイトパーティ用のオーダーメイドのドレス欲しいです~!
「ショウタさん! 欲しいです! 多少高くても買います~!」
「ですが、主役の小雨様より目立ってはいけない。赤と黒の基調のドレス。アヤメ様の髪に似合うと思いますよ。さぁ、どうぞ。アイテムボックスに入れておきました。部屋で御着替えください。赤と紫のアクセサリー類も入れておきましたよ。組み合わせて見てください」
ひゃああああ! 異世界に来てよかったですぅううう!」
さぁ! 着替えて、夕食会場へ行きましょう!
テンションが上がってます!




