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68 ショウタ異世界へ

ショウタ


異世界の門を直接見るのは、危険だ。

次元の狭間が観測されるまで『終焉』が自分に会いたくて待ち構えている。

お前の観測を絶対に許さんマン。


ダンジョンと地球のつなぎ目もそうだ。自分が異世界のつなぎ目を観測してしまうと

「おっ開いてるじゃん~。そっちいくわ~」 と、窓を隔てた家が隣同士の幼馴染ぐらいの軽い感覚で 『終焉』が乗り込んでくるだろう。

乗り込まれたら世界がひび割れ、砕かれ、無に帰る。


自分も大人しく異界の移動もしないで、星で大人しく暮らしていればいいとは思う。

だが永遠の対価として、暇の苦痛がスローライフを許してくれない。

古き神々の様に星が壊れるまで寝てるとか、意識を銀河に飛ばし永遠をやり過ごしたり。

永遠の存在は、永遠なりの上手な暮らし方があるんだなぁと、最近思う。

タイムスケールが人間の感覚ってのは、無理があるかな。


さ、相談しにいこか? 永遠の窓口へ

永遠の暇を持て余した先輩方が沢山いるしな。


――


そんな事を考えていると、小雨様とアヤメ様が99Fの階段から速足で戻って来た。

異世界の門の観測をして戻って来たのだろう。


さて、どんな門だったのでしょうか。


「ショウタさん~、黄金のなんか神々しい門でしたよ~! この前の伊織の観測次元とは、全然違いますねぇ~!」


アヤメ様、貴方も観測したじゃないですか。

諦めて認めましょうよ。 貴方と波長が合った次元ですよ。


「おお~!あれが次元の門か。何か金色で神々っぽかったぞ。唯一神系のデザインの扉ってあんな感じだよな」


そうでしたか。

小雨様の波長と合う次元ですか。神系の次元でしょうね。

品格もありますから、格式ある次元ですか。


では、いきましょうか。


「承知しました。すみません、一応手を引いてもらっていいですか」


「「承知~」」


全員で手を繋ぎ星の海が背景の中、古代神殿の列柱を越え観測された門を見るとそこには、金を基調とした見覚えのある女神をモチーフとした黄金の門があった。


思わず叫んでしまう。


「ああああああああああああああ! この女神モチーフ、女神ダリアじゃねーか!」


「はいはい、ショウタさん。何かですね~? 最近、絶叫に驚かなくなりまして~。どうしました? 話ききましょうか~?」


「いやいや、驚くぞ。 察するに知り合いの次元って事じゃないのか?」


おおっ? さすがですね。話が早い。


「あ~、そうですね。知り合いの次元です。昔、この女神にトラック転生させられましてね。 ああああああ! 思い出すと、イライラしまして。 復讐は果たしたのですが、なぜ心に平穏が訪れないのでしょうか。 神様の小雨様なぜ自分の心が晴れないのですかぁあ?」


「そういう事か。うちの星の転生者、復讐しに戻ってこないよな? ショウタ殿クラスが来たら、ハルマゲドンなんだが。いや、すまんな。 セラピーの神じゃなくてな。上手く答えられんが、ひと時だけなんじゃないか、復讐で心が埋まるのは? 憎しみを乗り越えて、幸せになる事が、最高の復讐だと思う。 と長い間、理不尽の嵐を乗り越えた、とある付喪神の経験だがな~。復讐って時間かからないか? 計画からだろう。 力と権力を手に入れ、見返すのが一番生産的だぞ。復讐の名作もそんなストーリーだ」


小雨様、苦労人でしたか。凄い良い答えを頂けました。

そうですね、復讐に数万年かかりました。


「あ~、つまりなぜイライラするかと言う事だが。 それだけの力があるのに、お主、今幸せか?」


おぉ、さすが神様。

祈ったら答えてくれる神様。なんと尊いのでしょうか。


「お恥ずかしながら、その通りですね。ですがおかげ様で、ここに来ての暮らしで少し幸せを感じていますね」


小雨様は、静かに目をつぶり頷く。


「良き事だ。共栄を」


尊い星だ。

中々に波長が合う星だよな。


そうか、ダリアの方から次元を開いたとき、自分の波長が合う次元が開いたのか。

つまり、ダリアの波長も入ってるって事? 認めたくないんだが。


あ~! アヤメ様。そういう事でしたか。

次元の波長に関して、認めたくない訳ですね。

確かにこれは、腹が立つ。


アヤメ様を見ると、なんか泣いている。


「何か感動しましたぁあああ~!」


安心してください。アヤメ様も自分みたいに、こうなりますよ。

このまま行くと、現地神まっしぐらですから。そろそろ人間の枠組みでは、無いですよね。

悩んでも小雨様と言う、超大先輩がいるから心強いし、大丈夫ですよね。


――


星海の中、階段を上り、ネコさんのきらめく杖を出し門を次元に固定する。

これで、飽きるまでダリア次元に居ても時はさほど流れないだろう。


ダリア次元の暮らしを思い出す。

あの女神、真面目にやってんだろうな。

もう、あそこの次元の住人じゃないから干渉はしたくないのだが。

また転生者集めてたら、処すわ。

そもそも、転生者がいなくてもダリアの力なら余裕で運営できるだろうが。

まぁ、ダリアの次元を見てみようか。どのくらい真面目に運営しているのか。


そして、ここでの暮らしは数か月だが、向こうの時間はどのくらい経過してるだろうか。


「準備、オッケーです。 えーとですね。説明いりますか? 取り合えず入ります? まずは、入りましょうか。モンスター、地球より強いですから。小雨様とアヤメ様、少し武器防具強化しますね」


返答を待たず、時間を凍結する。

世界がコマ送りになり、透明の様な板、時の障壁が観測により展開され行動に制限を与えて来る。


自分に制限など関係ありませんが。

さて、神鉄オリハルコンを混ぜてしまいましょう。

超強度と、思うがままの魔力伝導性。アヤメ様には、防具に。

小雨様は特別です。全身、形はそのままに衣服と武器に混ぜちゃいましょう。


ばれないように強化しておきましょう。彼女らに何かあってはいけません。

なにせ、自分の推しの神様と未来の現地神アイドルですから。


自分は、時の凍結を解除し。時は流れ動き出す。


「さて!いきましょうか! はぐれないように手を繋いでください!」


二人とも、獲物を取り出していろんな角度から見つめ、訝しんだ後手を繋いでくれた。

光り輝く黄金の扉を押し開き、自分たちは次元を超えた。


――


空に浮かぶ薄く光る砕かれた月。

あたりは魔素で少し薄暗く、土の匂いが濃い。

少しだけ、懐かしさを感じる。


相変わらず、意思の薄い精霊達が周囲に漂っている。そして、後ろには不可視の門が立っていた。

隣を見ると、小雨様のテンションが高い。


「ザ! 剣と魔法の西洋って感じだな! 世界に漂う魔素が凄いな~。 スキルも魔法も標準が高そうだ。我のアイテムボックスは・・・、使えるな! よし! そうだな・・・、道中歩いて、唐突も無く馬車がモンスターに襲われている所を助けたり、ダンジョン入って追放された聖女とかを助けるとしようか。あ、異世界の食事も食べてみたいぞ」


そうだと思います。そういうの期待しますよね。さすが小雨様、分かってらっしゃる。

その発想を商売用のプランにしようとしたら、あまり上手くいきませんでしたが。


アヤメ様の顔を見ると、顔面蒼白です。具合が悪いのでしょうか。

十分強いですから。この世界の魔素酔いなんてしないと思うのですが。


「あの、小雨様~。干渉は出来るだけ避けた方が良いかと~? 例えばですけど~、代わりに魔王を倒してと言われましたら~、魔王倒してしまう感じですか? 私の隣に魔人大魔王みたいな方がいるんですが。あの~、伝わりませんよね。圧倒的な力で干渉するのは良くないと言うか、あのですね~。 干渉は、良く無いですよ~。力の反動って怖いですぅ~。私の経験が語り掛けてきます!」


「確かに、そうだな。無茶な干渉はやめよう。地球で言う、武力の行使は侵略者みたいな物か」


おお、小雨様。多少の無茶をして、女神ダリアか勇者関係を呼び寄せて欲しかったのですが。

たしかに過度な干渉は、良く無いですよね。もう少し様子を見ましょうか。


この星のどの辺に飛んだか見当がつかない。

力を使えば、全てが容易いことだが。異世界ツアーにそぐわないだろう。

この場所は、気候から行って少し北の大陸だろう。


「まずは街道目指して進み、第一村人発見と参りましょうか」


「「承知~」」


「そうだな、焦るのは良くないな。異世界ライフは、第一村人からが基本だよな」


小雨様いいですね~。

自分も、そのくらいの気持ちで異世界が体験出来たら幸せだったんでしょうか。

でも、女神ダリアにトラックで直に引かれてますからね。

当時の心の中は、憎しみで溢れてました。


――


草原を抜け街道とも思えない、あぜ道に足を運ぶ。

森が深く、右にも左にも人家の様子は見られない。


転移でどっかの町に飛んでみるか? と、思ったがどうだろうか。

そんな時、森のから悲鳴が上がる。


「「「きゃああああああああああ」」」


そうですよね。異世界は、こうでなくては。

ですが昔、この星のモンスター被害が凄いので、定期的にモンスター駆除の構築システムをギルドと国で組んで、定期的に人間系の領土で実施しましたが。あれからどうなってますかね。

機能しているのでしょうか。


さて、どんな現場の様子どうでしょうか。


「ぬぬ、異世界とは、こうでなくてはな! さぁ、急いで向かおうか!」


テンションが上がる小雨様。


そして 「あああああああああああ! 何かまた始まりましたああああ~! 行くんですか~?!  いや、行くしかないですね~?!」


アヤメ様、叫び散らかしてどうしましたか。

前回の異世界で何かありましたか。


全員で声の方に走り、森が開けた辺りで馬車数台が横転していた。


「いやいや、馬車襲われすぎです。馬さん可哀そうです。ぷっりぷりダービーも真っ青ですね~。あのですね。前の世界で、いきなり人前にポップする都合のいいドラゴンがですね、毎秒湧いてくる感じで・・・」


アヤメ様が、うるさいですね。

これが、異世界のデフォルトです。異世界の暮らしと治安は地獄ですよ。


騎士装備の女性を中心に、兵士達が巨大な4本腕の悪魔種族を囲んでいる。

見るからにアークデーモンだ。 こんな所に出ないはずだが。


「くっ、アークデーモンが出て来るとは! 陣形を組み、魔力の出し惜しみは無しだ!」


「ニンゲン、ワレニ苦痛ヲササゲ、糧トナルガヨイ」


見るところ、人間側が苦戦しそうですね。勝率が3割程度ですか。

さて、どうしましょうか。


「どっちに加勢します? ここで人間側か、悪魔か加勢するかで異世界の暮らしが大きく変わりそうですね。悪魔サイドも面白いと思いますよ。ですが、まずは治安で女神ダリアにマイナス1ポイント。10溜まったらミンチにしましょう」


アヤメ様がこの状況で空を見つめ、手を顔に当てている。


「えっ。助けるんですか? 異世界スローライフ、スローライフはどこですか? いや、スローライフなんて望んでいませんが、なんでしょう。この運命の流れに流される感じが嫌なんですけども~? そもそもですね、外部の人間に任せようとするその性根がですね、なっていないと思いませんか・・・」


あ、その気持ち分かります。

自分も異世界転生された時、同じ気持ちになりましたよ。

いずれ慣れますよ。アヤメ様なら大丈夫です。


「いやいや、待て待て。助けるんだよ。アヤメ、ショウタ殿! 遺伝子に記憶が無いか? 人間だよ人間。人間助けるんだよ。 サンタクロースってわかるよな。 トナカイが上に搭乗して、サンタが鞭を打たれてそりを引いてたら。やばい、やばいよな? やばいって感覚で分かるな? 人間を助けるんだ。神の存在も同じなんだ。我、人の神なの。わかってくれ」


「いや、待ってください。本当に人なんですか? 上が人間で下半身が魚だから、人魚って成り立って、頭が魚で下半身の足だけ人間だったら、いやですもん。あ、すみません~、私、この展開に少し鬱になって、錯乱しています!」


仕方ありません。

小雨様いますし、人間側の味方ですかね。

あまり自分は、干渉したくないですね。 


アークデーモンを見ると気配が膨れ上がり魔力を体に纏っている。

人間側が悪魔の魔力を溜めるモーションを貫けず、アークデーモンの強力な攻撃が繰り出される。


アヤメ様が縮地と思われる程の一瞬で移動し、アークデーモンの間に割り込むと同時に剣戟の火花が飛び散る。


「思ったより、重いですね~。これがショウタさんの言う、地球との違いですか~」


動きが止まった所を、小雨様が七節剣から多数の剣風サーベルレーザーが射出されて宙をなぞり、悪魔を細切れにした。


一瞬の出来事にあっけを取られたのか、静寂の後、周囲の兵士から歓声が沸いた。


「おおおおおおおおおお! アークデーモンを一瞬で倒すとは!」


チートの様なものですよね。どう思います?

もっと、こう異世界の戦闘をですね。楽しんで頂きたいというか。


「加勢ですか! 助太刀感謝致します。助かりました。見たところ高名な冒険者の方でしょうか」


女性騎士装備の方が、アヤメ様の所に駆けていく。

隣で遠距離攻撃を行った小雨様に 「小雨様が功労者ですから。行って下さい」 と、促す。

「ああ、そうか。そういう事かと」 小雨様もアヤメ様の所に歩いていく。


そして、アヤメ様の様子がおかしい。


「わ、私、虹の根本とか。ピンクのチュパカブラ見た事あるんですよね~。もうハッピーハッピーですぅ。歯磨きは握りつぶして使用しますしぃ~? エレベーターで全部のボタンを押します~ああああああ!」


女性騎士との会話を拒否り、錯乱しているふりをしています。

ゆるふわ系の少女を無理やり演出しているようです。

どうしたのでしょうか。

干渉した以上、無関係を装うなど許されることではありませんよ。



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