66 小雨飲み会
進まない物語。
小雨飲み会
皆でダンジョンに入り、ショウタ殿が転移で地下農園まで転移をしてくれた。
「少し準備がありますので、5分程、庭歩きながらお時間を潰してて下さい」
転移後、スッとショウタ殿が消えていった。
準備に5分は、早いな。流石だと思う。
我、韋駄天、制裁信、啓示神でゆっくりと歩きながら、壮大な農園を歩き旅館へ向かってく途中、酒の席の前に通信機器を確認すると剣神とマユミから連絡が入っていた。
通信機器を取り出し、確認をする
『今、松島五大堂でかわちぃやってます』 と、新婚旅行張りの伊達なシャツとサングラスをかけており、幸せアピールの二人でチュッチュしているチェチェキキ写真を、これでもかと送られてきた。
なんだろう。松島五大堂の荘厳な風景のレ〇プだろうか。
本とかで言ったら、風景のネタバレじゃないか? なぜ人は、写真を送るのだろう。
我が、写真を撮って見せると言う気持ちがイマイチ分からないからそう思うのだろうか。
まぁ、幸せなのはいい事だ。
一緒に歩いている韋駄天にも写真が送られてきたようだ。
「小雨っち、剣神の写真がめちゃ幸せそうでありんすね~。楽しそうで何よりです。定命の人生、まるで一瞬の火花。 その証拠を残す事、永劫の時の中で剣神の思い出になるでありましょう」
むっ、韋駄天、尊敬できる思考だな。お前が正しいと思う。
だが寛容は、相手方の増長を招かないか。これ以上、幸せの写真を送られ続けられたら、さすがに我もイラッとするんだが。
むむう、我の徳が足らんか。
そんな会話の中農園を歩き、旅館が見えて来た辺りで韋駄天が会話を変えてきた。
「所で小雨っち、わっちも初めて旅館いくでありんすが、タイプ的に宴会場系で飲み会でいいですよね。お勧めってなんでありんしょ?」
そうだな、ショウタ殿のウィスキーは凄いぞ。
飛ぶぞ。 誇張表現じゃなく、飛ぶ。意識がフライアウェイだ。
「そうしましたら駆けつけで、ウィスキー1本でおりゃんすね。景気づけに制裁神、1本いっきにいくでありんす?」
「そうですわね、ショウタ殿にも飲ませましょうよ。 そ~れ、いっき~、いっき~」
入る前から既に、いっきのコール。
ウキウキ感が溢れ出ているが、ちょっと待って欲しい。
今の時代、それはダメだ。
「待て待て待て、位相世界の感覚なのか? 穴の開いたコップを指で止めていっきに飲むまで置くことが出来ない謎アイテムを好んで使う、四国地方の一部の風習って言えば許されるものじゃないなんだってば。ほんと、今の時代ダメなんだって。お酒で景気を図るとかダメなんだってば、分かってくれ。 あれ? ダンジョンはいいのか? いや、よくないと思うのだ」
いまだに、韋駄天の所は体育会系だから困るな。
ダメだぞ? 通算打率で見ると酒は沢山の人を〇してるんだぞ。正月の餅なんて目じゃない。
だからと言って、禁酒にすると全体消費量が増える、削除不可能の謎の飲み物だ。
そうなのだ、禁酒法の歴史が証明している。
――
庭園から、歩いていくと古風と近代が入り混じる旅館が見える。
和風でありながら、近代コンクリート。ルーツと言う物が宿の形を作っているのが分る。
そして我先にと、先ほどから一言も話していない啓示神が旅館に入っていく。
凄く感じが悪い。
まぁ、我は元付喪神だしな。上位存在に直接言うのは、止そうか。
これからの苦情は、上位神の制裁神にたっぷりと届けよう。
覚悟しておくんだな。神々を諫めるのは、お主の仕事だよな。
ウィィンと自動ドアから入ると、ショウタ殿、ネコ殿が出迎えてくれた。
「「いらっしゃいませ!」」
「今日はお世話になるな。ご厚意に甘えさせてもらおうか。宜しく頼む」
ショウタ殿がニコッと笑い、礼をしてくる。
背後に後光がわずかに漏れている。
おぉ? ショウタ殿の纏う雰囲気が良い感じだな。
何か気づきを得たのか? 新たな、荒神様の誕生だな。
「・・・思えば、遠くまで来たものです。時が許すなら、いくらでも人生なんて取り返せると思いまして。 ささ! 取引先の皆様、まずはラウンジにどうぞ」
案内されるがまま、受付を抜け奥のラウンジに一度座ろうとすると、浴衣姿のアヤメがこっちに駆けてきた。
アヤメの浴衣で歩く姿は、まるで牡丹。
とても可憐な姿をしているが、騙されてはいけない。
対立したら我の首を取ろうとする、神を恐れない人間である。
そういえば、ここに滞在しているのだったな。調子はどうだろうか。
「小雨様、お久しぶりですぅ~! お聞きしましたよ~、宴会するんですか?」
「おぉ、アヤメか。調子はどうだ? 相変わらず見た目は、可憐だな。 あ、セクハラじゃないぞ。そうそう、世界も戻ったし、そろそろ配信の方を頼む」
「アヤメっち~! 久しぶりでありんすね~!元気しておりましたか~、聞いたでありんす。神々相手に立ち回ったとか。さすが権威に屈しない闘志と言う事でありんすか~」
「おぉ~! 韋駄天様お久しぶりです~!相変わらず元気そうですね~!」
そんな会話の中、あたりを見渡すと啓示神が居ない。
気になり、後ろを見ると受付に立っていた。
本当に、集団行動しないタイプだな。
そうだ、アヤメ達も宴会参加どうだろうか。
会社の経費で代金落とすから無料でどうぞ。無理にとは言わないが。
「そうだ、アヤメ達も来るか? もちろん無理にとは言わないからな。やる事もあるだろうし」
「ちょうど、参加できますか~! と聞こうと思ってました。それと、小雨様と少しお仕事の話したいです~。小雨様、厚かましいお願いですが、異界の方も参加できたりしますか? 奥にいる方々ですが」
『小雨神! ナイス! 超ナイスですわ!』
いきなり啓示で脳を攻撃してきた。
お主、我と会話しようとしたのが。今日、初なのを分っているのか。
上位神は、どれもクセが強くて困ってしまう。
アヤメが奥に指したラウンジの方を見ると、どう見てもエルフが居た。
映画で見たことあるぞ。エルフだ。異界人か?
伊織と話している様だ。
伊織がこちらに気づくが、そのままエルフとの会話を続けている。
「制裁神、良いか?」
「向こうが良ければ、いいんじゃないでしょうか。 こっちも異世界人みたいなモノですし。位相世界の住人達と違いなんて特にないでしょうし。人型の分、食が似たものでしょうから助かりますわね」
なるほどな。世界基準と言うやつか。
下位神は見下すが、グローバルな視点を持っているのだな。
まさか、見下すのは制裁神の性格か? 元が格式高いからか。
「あ、小雨さん。費用の建て替え、お願いしますね。位相世界で返しますから」
いいぞ。
制裁神に働いてもらうから。これから、制裁関係で忙しくなるだろうし。
地上の制裁神は、指一本で山を吹き飛ばせるからな。最高の抑止力だ。
「アヤメ、皆で宴会だ。異界の方にも良ければ来てもらってくれ。 代金は会社持ちで良い。 向こうが無料に気兼ねするようだったら、そうだな・・・。後日改めて、異界の話を聞かせて欲しいと伝えてくれるか」
アヤメがニコッと笑い 「承知しました~」 と、エルフ達の方に向かっていく。
同時にアヤメの隣に部屋用の黒いゲートが開き、小さい竜神がトテトテと出てきた。
「あれ? 制裁神、韋駄天、あの神、知り合いか?」
我は、あの様な神を見たことが無い。
特にあの服、我が付喪神の時に流行った服装だ。
「いや? 分からないでありんすね。でも形と服装が竜神っぽいでおりゃんす」
我らは竜神の確認のため、アヤメの方に近づくと会話が聞こえる。
「アヤメ。わらわも宴会に参加したいんじゃが。そもそも、動画編集とか無理じゃよ。音声調整とかも、無理じゃ。 冷静に考えて欲しいのじゃ。異界人にパソコンとか無理じゃろ? 初めて触るのじゃよ? 何、この光る箱? とか、リアクションすれば良いのか? 無理じゃよ。何か他に仕事ないのか? いや、表現とかじゃなくてな? わらわ、天候の管理とか得意なんじゃが。 後、回復のお札も作れるぞ」
「ううん、リュナちゃん。無理と言うから無理なんですぅ~。私も、伊織も無理を超えてここに居る訳ですよ。 無理と言うのはですね。自分にウソを付いてるんです。 リュウナちゃんの中の怠惰がそう言っているんですよね? 出来る。やるんです。 そうやって、私はこの世界を駆け抜けてきたんです。 さぁ、動画編集に戻ってください~。 異世界動画の編集してくださいね~。そもそも、リュウナちゃん、ここの滞在のお金がどこから出ていると・・・」
あ、天才の教え方だな。
『なんで出来ないんだ? 出来ないことが分らない』 って言われても困るよな。
名選手は、名監督になれないケースだ。
アヤメの小言から逃げ出し、小さい竜神が我の方に駆けてきた。
そして、ヘッドスライディングしながら足に縋りつかれた。
「あああああああ! 名のある神様とお見受けするのじゃ! 身請けしてくれんか~! アヤメが実は精神病質じゃった! 普通の神の気持ちが分からんのじゃ!」
「伊織~! ちょっと来てください~! また、リュウナちゃんが楽な方に逃げようとしてます」
ソファーでエルフと話してた伊織が、「少し失礼します」 と、頭を下げた後、こっちに来た。
そして、我に一礼し、足を掴んでいた竜神を引きはがす。
「リュウナ。私達は、パーティなんだ。分かるな? 出来無いじゃない。やるしかないのだ。 そもそもゴリライオンぐらいソロで倒して欲しい所だが、まぁ、慣れないうちは、無理はさせられないからな。 動画関連の仕事しかやる事ないだろう?」
「そこの神様ぁああああああ! わらわを助けたもれえええええ」
地獄の様な職場だな。
能力溢れた天才しか居ないとこうなるのか。
「あ、小雨様、先ほどの仕事の話って、このリュウナちゃんの事なんです。 異界から拾ってきたのは、いいいのですが。 生活基盤がなくてですね。この星で暮らそうとしているのですが、思った通り大変でして、向いてる仕事の斡旋とかできませんか? と、言うお話でした~」
伊織から地面に降ろされた竜神を見る。
角と尻尾が生えている。そして巫女服、まさに竜神。
あざといな。これだけ可愛くて、ご利益があれば、楽に人々の信心を稼げてしまうだろう。
仕事の斡旋をしてもいいが。
いくつか質問をしなければ。
「長い時の中、神様以外で労働経験は、おありですか?」
「した事ないのじゃ。 わらわは、人に祈られたら雨を降らす。そういうのならやっていたのじゃ。それだけで暮らせてたのじゃ。前の世界では、人が言う事を聞かないから、雨を降らさず干ばつを起こしていたら、やられたのじゃ」
考え方が、石器時代だ。人事評価マイナスだ。
「この階のゴリライオンを見てどう思いましたか? どのくらいまでこのダンジョンでやれますか?」
「激やば極悪諸悪の根源、あんなの絡むだけ無駄じゃろ。 倒そうとする事が理解できないのじゃ。 なぜ人は、こんな巨悪のゴリライオンなんて挑むのじゃ? ダンジョンにいるんだから放置でええじゃろ? 魔石なんて浅い階で稼げばよく無いか? 一攫千金を考えるから、あんなのと相対するんじゃぞ。 そうじゃな、モンスターを倒せるとしたらダンジョンの30階かの? 火ネズミがなんとか倒せるかもしれん」
ふむ。ダンジョンで30F 人類で言う上位クラスだな。
いい所だが、パーティが人間やめているアヤメ達とか、実力差が厳しいよな。
「身元保証人は、アヤメと伊織か?」
「えっ、出来るなら、身元保証を抜けたいのじゃ。だって、あの二人サイコパスじゃぞ。自由にしてくれんのか? 心優しき乙女とかおらんのか? わらわもアヤメの可憐な見た目に騙されたんじゃ。そもそも、ヤマタノオロチみたいなモンスターを弱体なしでソロで倒す輩たちだぞ。勇者もびっくりじゃろ。ドン引きじゃ。心優しき乙女に身請けさせてほしいのじゃ」
二人がガシッと、竜神の肩を掴む。
「「リュウナちゃんダメですよ。逃がしませんよ」」
「あれ? アヤメ、伊織、それ前のエルフ世界の常套句じゃな? あれ? 嫌な思い出が記憶に残り人格を形成しておらんか? 大丈夫かの?」
制裁神が我の隣にスッとつき話して来た。
「竜神なら、私の所でやっていきません? 水関係の統治が得意ですよね。神としての仕事があるわよ。 この竜神の力なら、地上でも位相世界でもやってけそうだわ」
巫女服のリュウナと呼ばれていたのが、制裁神をみて話す。
「なんじゃ? この気配が弱い貧弱な竜神は。 よくここまでこれたのじゃ。 ああ、使者系の斡旋タイプか。 そうじゃの、神の仕事か~。やってもいいぞよ。動画編集よりましじゃ」
おい、煽るな。
ダンジョンの外の気配みたら、お主絶対後悔するから。
元祖、方位の概念を固定する神だぞ。そして、位相世界の管理者だ。
中身が高位の龍だから、地上最強だぞ。 倒すには、数が必要になる。
「そしたら、アヤメさん、伊織さん少し預けてもらっていいかしら? 立派な龍にしてみせますわ」
立派な龍と言う言葉に反応したのか
「「よろしくお願いします! リュウナちゃん、休日はダンジョンでレベルあげますからね~!」」
安請け合いして大丈夫だろうか。 軽く考えていると制裁神にボコボコにされるぞ。
位相世界は、ゴリゴリの原理主義。神に人権ないからな。 神権、つまり階位による強さが正義だ。
アヤメ達の引き受けの方がマシだと思うが・・・。
まぁ、引き受けたんだ。承知の内だろう。
話が終わった所でポムが、空圧転移で出現してきた。
ラウンジの皆に宴会の案内を始める。
「お待たせ致しました~。ご主人様の意向で大宴会会場のゲートが開かれました。今日は、ご主人様の気合の入り方が凄いですね、何かあったんでしょうか。 もはや、神ですよね。信じてついてきて良かったです。 良かったですか? さて、目の前に開いたゲートへお勧みください。会場に着きます」
目の前に転送ゲートが開き、皆がゲートに足を運ぶ。
さぁ、打ち上げ宴会だ。思えば、色々あった。
ほんとに少しだが希望が見える世界に進んでいる気がする。
うむ、悪くないな。これから、忙しくなりそうだ。
そうだな。
今日は、酔い潰れたらここに泊まろう。
ゲートに足を踏み出す。
転移の光が我らを包む。
飛ばしてください。感想みたいなものです。
なんとな~く
文章のハイエンドと、概念を考えた時。
平安時代がピークでしょうか?
誰もが文字という物を使える時代になった時、過去に価値あるものは、ほとんど消えていった。
今の動画時代を見ている貴方様なら、何となく分かって頂けるとおもいますが、悪銭が良貨を駆逐するのと同じで、投稿母数が良動画を隠している様に。
と、気づきを得てなんか調べてたら、やっぱりそうだった。
と言う事は、色々小説の書き方で言われているけども
層を絞って書く。事が王道でしょうか。
貴族サロンから始まった小説文化ですもんね。




