63 続アヤメ戻れるか
もう少し早く切り上げたかった。
情事のもつれで、異界の門を燃やされた伊織とダンス中。
何の前触れも無くリュウナちゃんから、パリンパリンと窓ガラスが割れ光弾が闇夜に撃たれていく。
あ、やっぱり邪竜でしたか。
命を買う責任って、ついて回りますよね~。
うちの子は、大丈夫なんて事ありませんよ~。躾けなきゃいけませんね。
と、考えていると。
超級の気配が引っかかる。
って、ネコさんだ。 何となく来た理由が分かります。伊織の門の異変ですよね。
そして、リュウナちゃん。私より察知の反応が早いですね、持ってるじゃないですか。
さすが、新しい伊織! 上品さを兼ね備える、ニュー伊織です!
私とダンスを踊っている伊織に話しかける。
「そろそろ腰から手を放して下さい、伊織。ネコさんが来てますよ~。 そして、帰る支度ですかね~? 帰る以外でこの収集が着くと思いますか?」
「今日帰るのは、ちょっと・・・、約束が山の様に・・・だ・・な・・・、最後にちょっと・・・」
口をモゴモゴしている伊織を突き放し、即座にリュウナちゃんのドレスの襟首を掴みます。
「アヤメ殿、世界の危機であるぞ! この世界にこのような強大存在が来れる訳が無いのはずだ! 誰かの門を通じて、異界の通行に乗った邪悪な存在が来ているぞ!」
つまりどんどん、騒ぎが大きくなるって事ですか~?
新しい伊織、もといリュウナちゃんを掴んでネコさんの所に行こうとすると
『この世界住まいし生命よ。我ら、世界樹の管理者の声に答えよ』
なんか、脳に直接くる神託まで来ました。
「「「「おおおお! ご神託だ」」」」」
はい、そう来ましたか~。
『あ、アヤメさんと、伊織さんは、異世界からお越しでも大丈夫ですよ。浴衣の装備効果でここから、二人の現在と未来の映像を見てますけど、最高に楽しいですね~。そのままこの星に居続けて、性、いや生を続けてください。そして、享楽への感謝を・・・! えー、コホン』
『姫様! 異界からの強大な存在。敵対はしてないとは言え、油断はできません。全力で排除しますよ! でも、このネコモンスター、絶対、アヤメさんか伊織さんの門から来てますって。詳細聞いた方がいいですよね? この世界に来る前の状況、私達の装備では、わかりませんよね?』
『いえ、来れる訳の無い存在が来るわけがありません! 倒しましょう! 私達、今から戦闘衣装に着替えるので、10分程ですかね。時間稼いでください。 おお! 我らがかけがえのない世界の生命達よ! 脅威に立ち向かうのです! マゴット領の城近くに、邪悪なネコが来ています! 後、伊織さんの未来、最高です~。昼ドラどころじゃない、もう無茶苦茶です。こんな乱れた現在未来見たこと無い・・・』
この場に居る、全ての生命が一瞬私達をガン見してくる。
ちぃいいい、なんて恐ろしい神託ですか。常に私達は、監視されいたのですか。
結局は、伊織と帰らないといけませんか。
昔から腐れ縁と思いましたが、こうなりますか~!
「「「「「「神託は、降りた! 行くぞ!」」」」」
と、この広間は、王子様中心にまとまっています。
ネコさんを助けなければ!
そうです。ネコさんを倒せないと言う事、ここが絶対に問題になります。
ネコさんは、死なない様に手加減しますから無限に被害が広がります。
伊織の方を見ないで、リュウナちゃんに話しかける。
「さ、新しい伊織、行きましょうか。 ネコさんを助けなければなりません。って言うか帰りましょう」
「アヤメ? 怒っては無いのは、分るが。 本人を前にして別人に話しかけるのは、中々に傷つくな」
「当てつけにこの態度は、さすがにわらわも思う所があるぞ」
さて、いきましょうか!
――
「加速」 と、一節唱えリュウナちゃんの襟首を掴み、ダンスホールの窓から一瞬で飛び出る。
「あああああああああ! 帰りたくない! 私は絶好調だ! どうする?! だが、こんなマヨまみれの低文明な所で、一生は暮らしたくない! だが! あああああ! ちくしょおおおおぅうう! 加速うぅううううう!」
などと供述をしており、精神鑑定を含めて解明にあたる予定です。
伊織は、置いていきたいですね~。
とっても置いていきたいです~。
城下町、門を駆け抜け、城の外でネコさんの気配を探る。
と、ネコさんが球体の力場を張り、街道をフワフワと歩いていた。
私達に気づいたようだ。
「お、アヤメ殿~! 気づいてくれてよかったにゃ~。 討伐の号令がかかったせいで長居はできないにゃ~。吾輩はこの次元にとって招かざる異物そのものにゃ」
伊織が、ワンテンポ遅れて、男装スーツのまま隣に着く。
ポニーテールが、フサッと頬に垂れていて、凄く絵になっている。
「あのにゃ、二人の門が破壊されたのをこっちの方で確認したにゃ。 それと、今日は、夕食が早まりそうなのを含めて、迎えに来たにゃ。 二人とも帰還の門が破壊されるとか、どうしたにゃ? 異世界訪問者の帰り道を潰すのがこの星の流儀なのかにゃ?」
「ね、ネコさん。私の門も燃やされ・・・、破壊されたんですか?」
「視認系のスキルが無いと見つからないはずなんにゃけど、二人とも帰りの門が壊されてるにゃ。さっき、門の場所に寄って確認したにゃ」
背筋が凍ります。
微笑み寄り添いながら、私の帰り道を潰していたとは。
いつのまに・・・。
「なんだ、アヤメもやってたんじゃないか」
はい~! イライラします! 最高にイライラしますぅうう!
「ゴボッ、ゲホッ、グエッ、襟首を掴んで、高速移動とか、わらわ、死んでしまうぞ」
「それじゃ、この星と敵対する前に帰るかにゃ。 向こうに小雨殿が来ていて、会食にゃ。それで、夕食が早まったにゃ。 それで、その竜人族の方は、こっちに来るのかにゃ? アヤメ殿の世界は、この平和な世界と比べると凶悪にゃ」
「リュウナちゃん、どうします~? 地球に働き口は、小雨様にお願いしますか」
「労働とか平民のやるものじゃろ? 無理じゃ、働けん。あ、うそじゃ。働くのじゃ。連れてってたもれ」
まぁ、リュウナちゃんをダンジョンに突っ込めば、成果は上げられそうですし良しとしますか。
何より、帰りましょう。この星、怖いですし。
「「「「うおおおおおおおおおお」」」」
と、遠くから、喊声が聞こえてくる。
「ここまでにゃ。帰るにゃ。神託に導かれし軍勢が襲い掛かってくるにゃ。 飛ぶにゃ。吾輩を掴んでくれにゃ」
私、伊織、リュウナちゃんが、ネコさんを掴むその時。
激しい光が、目の前から出現する。
『『逃がしませんよ!!』』
『『どこへ行こうと言うのですか! 近年エルフの里で大ヒットの主演のアヤメさん、伊織さん。二人ともこの星から、逃がしませんよ! エルフの皆、この星の皆が、二人の展開する未来を楽しみにしているのです!』』
この星の銅像で見たことある、同じ姿のエルフさん二人が出現してきた。
つまり、この星が、あっちの意味で腐っているって事ですか?
「と言う事じゃ。素敵なネコ殿。わらわだけでも、連れてってくれんか。昔、この二人に封印されたんよな。 この二人強いんじゃ」
リュウナちゃん、節操がありませんね。
主は、ただ一人。この私じゃないんですか~?
「エルフは居たのか。帰りたくなくなったな。 そうか、ここでアヤメをエルフと協力して倒せば、帰れない訳だ。アヤメもエルフも手に入り、全て解決じゃないか?」
はい、ライン越えです。
刺します。 刺して、持ち帰ります。
『このインモラルな、男装女優たまりませんわね~。 ここで、裏切りますか。展開に驚きますね』
『姫様、まずはネコモンスターを撃退してからですよ。 あ、あの竜人見た事ありますね。 この星の未来だと幸が薄い、美人子役的な役回りでしたか。虐待の毎日を考えると泣けてきますね』
「ああああああ! 労働でも何でもするううう! 連れてってたもれええええええ!」
「やるしかないのかにゃ~。 そんなミスリル装備で吾輩に勝てる訳がないにゃ~」
さて、誰からやりますか。 まず、伊織から刺しますか。
リュウナちゃんの気配だと、エルフか、伊織に狙われたらすぐミンチになりそうですね~。
弱くは無いんですが、物足りません~。
そして、天が赤く染まり、流れ星が火球となり天から落ちて来る。
夜空を見ると世界をぶち壊して来る、隕石が群れを成して空から降ってきてます。
世界の終わりでもこんな大量の隕石は、降り注いで来ないと思いますよ。
このストーリは、バットエンドですね。ショウタさんが入ってきましたか。
門は、閉じてカギをかけた方がいいです。家だけに限らず、世界の常識でしたか。
まぁ、来世頑張りますか。異世界転移からの異世界転生宜しくお願いします。
目の前の神託者が、夜空を見上げ驚く。
『あれれ~? 全力じゃないと、この落星の攻撃とまりませんわね~? こんな世界終焉魔法、このネコ魔導師がやってますか?』
『姫様、防御魔法の大展開、お願いします。 これ、まずくないですか? 帰ってもらいましょう。 やっぱり、これから異世界来訪者を取り入れた瞬間に門を破壊しましょうよ。 これは、まずいですよ』
「あ~、ご主人の入場にゃ。 もうおしまいにゃ。異世界入場の初手、メテオストライクとか邪悪すぎにゃ。 にゃん? 吾輩が異世界門の呼び水にゃ? にゃ~ん」
ここで、ネコアニマルのふりしてもだめじゃないですかね。
もう遅いですよ。
『ぬあぁあああああん! 世界樹よ! 力を貸して! リフレクション(魔法偏光)』
空に緑のオーロラが展開され、世界を揺るがす轟音と共にド級の隕石群を弾き砕く。
そして、宙に私と伊織とネコさんの姿が浮かび上がり、声が天に響き渡る。
ショウタさんの声だ。
【この顔達を6時間以内に、自分の所に連れてこないと、この星を滅ぼします。 討伐のために勇者の差し向けは、歓迎しますがお勧めしません。命は大切に。はい、スタート!】
完全に異世界侵略者をやってますね~!
慈悲なき異世界侵略者始めました。ショウタ破壊神の次回作にご期待ください~。
人の星に来て、いきなり流星を落とすファーストコンタクト。
正気じゃ無いです、普通に出来る事じゃありませんよ!
「アヤメ、本当にすまない。 調子に乗っていた。 許して欲しい。愛している」
おや、伊織。 ここでこっちにくるんですか。妥当な判断ですね。
「ここでエルフを倒して。片方でも持って帰ろう。 囚われのエルフ騎士だ。名言が聞けそうだ」
さて、6時間ですか。意外と時間を見てますね~。
伊織を倒して、エルフさんを倒しても十分時間が余りますね。
バフと回復が出来て厄介なので伊織からやってしまって、後ろの導かれし軍勢が来るのが10分程度ですか。 それまでに、エルフのお二方を戦闘不能って感じですね。
「アヤメ殿、戦うのかにゃ? 確かに戦闘不能にしてから、向かった方が早そうにゃね」
ネコさんの周りに杖、魔道書が展開される。
「時の精霊様にゃ。かの者に、全ての法則と意思が観測を止めない様にお願いするにゃ」
蒼の力が私を包む。
あ~、ネコさんのバフ、凄いですね。時が私の味方をしています!
「では、倒して帰ります!」
構える私、そして、猫さんに縋りつくリュウナちゃん。
「お願いするのじゃあああ! お願いするのじゃああああ! 連れてってたもれぇええ!」
うるさいですね~。
「アヤメ、ネコアニマルのバフはずるく無いか? 『超加速』 」
『姫様、あの紫剣、私達の装備より強いですよ~』
『霊薬がまだありますから、どんな結果でも大丈夫ですよ。世界が壊れたぐらいなら治せますから。 そうしましたら盾役、頼みましたよ~。アヤメさんを後ろに抜かさないでくださいね~。縋りついてる竜人とネコちゃんをまとめてやっちゃいます~』
素敵なプロポ―ションの騎士エルフさんの前に、そのセリフと時間差なく着く。
伊織がスーツ姿なので予定変更です。騎士エルフさんからにしましょう。
一撃目を袈裟に切るが、青く光りを帯びたミスリルロングソードで受けられる。
『姫様~! 未来が5手で詰むのを見せてきます。やられてしまいます。あ、そうだ。伊織さん何でもします。主に姫様が。お願いします、助けて頂けませんか?』
ミスリルの大盾を構えたまま、爆速で伊織が私に突っ込んでくる。
はい、慈悲はありません。
あ、いや、でも聞いてみますか。
「伊織、何でもします~。もちろん叶えられる範囲で。味方になりますか?」
「なる」
これが、長年培った友情です。
そんじょそこらの誘惑で、敵になるわけがありません。
邪魔は、無くなりました。
二手目で、エルフ騎士は後ろに下がり、三手目で蹴りを防がせて体制を崩させます。
四手目で、手を前に出し魔法の行使を確認できますが。苦し紛れでしょう。
発動より早く、首筋に剣を添わせます。
『参った』
ネコさんは、杖を構えたまま、動かない。
この星の核を打ち抜いても不思議じゃない程の魔力が杖の先に溜まっている。
相手の魔導士エルフは、土下座していた。
さて、伊織ですね。
構えて、伊織の方を見る。
土下座している。
解決ですか。
「伊織。何でもは、その許しを請う形でいいですか?」
「ちっ」 と舌打ちした後、了承してくれた。
――
戦闘は、終わった。
「ネコさん急いで帰りましょう」
後ろから差し迫る大群のかがり火を見て、恐怖を覚える。
絶対にあの集団が、私達を全力で引き留めて来るだろう。
怖すぎます。帰りましょう。
「アヤメ殿、伊織殿、掴んでくれにゃ。飛ぶにゃ~!」
「わらわも!」
と、シュポンと空圧転送後、異世界門が浮いている平地に着いた。
そこには、ショウタさんが居た。
「おや、アヤメ様、伊織様。お帰りなさい。 おや、その竜人と、後ろのお二方は?」
いやいや、後ろを向きたくありません。増えてませんか?
凄い怖いです。 雪山で遭難した時、いつの間にか増えていた人影の話がフラッシュバックします。
悪霊退散! 浄化の力の行使もやむをえません。
「おお! ここは、サイリス様達の次元でしたか! アヤメ様、お客様を連れて来てくれたのですか! おぉ~、この次元に運よく繋がったのですか。 これはこれは、再訪を歓迎致します。ようこそ」
『これこそ、星のお導き。また再訪できることを心より感謝致します』
『姫様、運が良かっただけですよ。 分かってないのに姫ムーブやめてもらっていいですか。一歩間違ったら、邪神・・・、賢者様含めたフルメンバーと星をチップに対決でしたよ』
あ~、やっぱり、どこかでお二方来訪してたんですね~。
銅像が、ショウタさんの旅館の浴衣でしたし。
なんとか、平和的解決で大丈夫そうです。
いや、あそこに来れる異世界の方って、大丈夫でしょうか。
筋肉キノコとか、翡翠のゴリライオン倒せるわけですしね。
「アヤメ、全部の仕事旅館でするからな。地球に戻ったら忙しくなるな。エルフが居る旅館。エルフ旅館。全ての活力を惜しみなく行動に使える。私の脳もそう言っている」
エルフと旅館ですか。確かに夢がありますね。
そして、裾を引っ張ってくるリュウナちゃん。
「あ、なんじゃろ? わらわ、着いて行って大丈夫かの? わらわが一番、気配が弱いってどういうことじゃろ? この前の男が、挨拶代わりに隕石の火球降らしてきた邪神じゃろ? わらわ大丈夫かの」
もう、ここまで来たら置いていきません。
独り立ちできるまで、地球で働いてもらいますよ~。
「こちらが、以前来客のハイエルフさんだったのにゃ~。土下座させてしまったにゃ~。そしたら、お客様としてご案内するにゃ~」
そして、地球への異世界門が開く。




