62 アヤメ戻れるか
異世界のダンジョンから、ルナさんと、そして!
水晶の封印から解かれし邪竜を引き連れて地上へ帰還しました!
きっと、竜神様のお名前はルナさんが、名つけて養ってくれると思います。
こういう時の契約は、この世界どうなってるんでしょうかねぇ~?
ーー
と、帰還の水晶を使用して洞窟の前に出たら、魔石のかがり火が焚かれてとても明るい。
豪華な馬車が3台と、朝のギルドマスター、御用メイドのユキさんとマゴット様の兵隊さんが集団で帰還ポイントに整列していました。
「お! 来たようだな!」 「あれ? ルナ様も?」 「あ! 手配書がいた!何か連れて来てる!」
この状況の 「あ!」 の反応にイラッとしながら、ここで一番偉いギルドマスターに話しかける。
「戻りました~! さて、この大がかりな感じ、なんでしょうか?」
大柄な女性ギルドマスターが顔を引きつらせて、続けてくれる。
「えー、確認だ。入り口付近に出てきたアースドラコンを一瞬で切り身にして、30Fで仲間とはぐれた補助魔導士のルナと一緒に何階まで行ってきたんだ? 後、あのちっこい竜人タイプなんだ?」
そういう、報告の感じですか。
「アースドラゴン出すぎです~! 瞬間移動する生態の生物じゃなかったんですね~。 はい、斬りました。 切り身にしました。そして30Fの広間ボスから、ルナさんの仲間が見捨てて逃げようとしたので、通りすがりついでに刺しました。状況は本人に聞いて下さい~。 60Fの広間ボスを倒したら、竜人さんがついてきました。 私は、養えません。 契約とか分かりませんが、すべてルナさんに任せたいと思います」
後は、特にめぼしいドロップアイテムも無いので、証拠に60Fのリッチの魔石を見せる。
「全部買取に回してもらいたいのですが、いいですか~?」
「おぉお・・・、なんて美しく力を感じる魔石か! 間違いない、60F到達者か。喜んで買い取らせてもらおう! 今日は、凄いな。ゴルゴ山のワイバーン討伐と紫電竜ゲルガニムの打ち取り。明日は、この国の総力を挙げて到達と討伐パーティだ!」
と、ガラガラと魔石とドロップ関係を地面に山積みにして盛り上がっている所、ユキさんとルナさんが私の左右にピタッとついて来た。
「アヤメさんが、マゴット様の客人だったんですね! これも運命です! 私、従妹なんですよ! 私も今日泊まります! さぁ、いきましょう! 報告終わったらいきますからね! 後、私がやっておきますから!」
「ささっ! アヤメ様、お帰りになりましょう! マゴット様がお待ちです。 担当メイドのユキが、お世話致しますから、後は下々に任せて、さぁ帰りましょう!」
何か、固められて逃げれなさそうです。 ここで、イイエと言えない雰囲気ですね。
物凄い、気を使われています。
私は、大人しく馬車に乗る。
竜人巫女ちゃんも馬車に乗ってくる。
「ここで、わらわを捨てるとか言わんよな? そうなったら、金銭目的で絶対にわらわ悪事に走る自信があるぞ。 せめて独り立ち出来るぐらいに、世話してくれんか」
う~ん! 突っ込み所ばかりです!
お金も沢山入る事ですし、お金で解決しましょう~!
――
昨日は、外で蠢く性モンスター達を締め出して、根なし竜のリュウナちゃんと一緒に寝た。
そんな事で、討伐の夜会のパーティが行われる事となった。
マゴット様の城で夜会のパーティを国を挙げて行う事に。
主役は 『黒曜様』 の伊織。
ワイバーンついでの紫電竜の打ち取りが、国を挙げての誉との事。
次に私の到達記念パーティ。 深層の魔石がもたらす富の返礼と言う事だ。
私の二つ名となった 『切り身』 あまり格好良くありませんね。
この通称は、マゴット様とルナさんの猛抗議ですぐに変わる予定です~。
「「「アヤメ様のご到達を国中に知らせるパーティです!! ご出席をお願いします!!」」」
と、朝から足を狙ってダイビングしてくる、縦ロール令嬢、ピンクウイッチ、メイドのユキさん。
避けても、何度でも足にしがみ付こうとトライして来る根性に押されました。
分かりました。参加すればいいんでしょう。
――
夜会に向けて、私、黒と白の超ゴスロリ衣装に身を包んでいます。
「「「似合いすぎです! あひぃいいいい~」」」
と、着せ替え人形の様に、あれよこれよとドレスを選ばれました。
只今、マゴット様が一番上の段に、私、ルナさんが客人席の3人でパーティ会場で座っています。
この国の王子様も参加されると言う事で、王子様もご出席されるそうです。
到着と同時に王子様から、たった今 「マゴット! お前との婚約を破棄させてもらう!」 と、なんだか私の隣の席で始まりました。
「アヤメさん、マゴット様と王子様とは、幼馴染の婚約者で・・・」
ルナさんから説明が入りますが。
心は、無にします。無、私は無。 無心に剣を振るときの無の境地。今ここに。
「紫電竜ゲルガニム討伐の時、『黒曜』 に助けられて、本当の愛の真実を知った。 一度の人生、自分で選択して掴みたいのだ!」
ああああああああああ!
「真実の愛ですか。確かに。王子様、婚約破棄の件を承知しました。しかし、我がマゴット領の支持なくして・・・」
ここに居ると脳が焼かれます。食事に逃げましょう。
私が軽食が置いてあるテーブルの方に足を進めると、ドレス姿のルナさんも着いて来た。
私の手を取ろうとしエスコートしようとしてくるが、当然避ける。
そのまま、タックルのポーズをしてきたので大人しく手を握られる。
ルナさんは、満足そうにエスコートしてくれた。
私達が、食事が豪華に盛られているテーブルに向かうと
「あれが、ドラゴンの生き血をすすると言う 『切り身』 か」 「あのゴスロリ服、マゴット様の趣味じゃありませんか? 最高に似合ってますね」 「生きたまま肺を切り身にするそうだ」
と、囁きが聞こえてくる。
困ったことに、半分ぐらい当たってますね~。
食事のテーブルのスィーツコーナーには、リュウナちゃんがドレス姿でいた。
子供の様な身長で白と金の髪、そして尻尾と角。 めちゃくちゃ可愛い。
「おのれ、マヨネーズがかかってない食事が、スイーツしかないとは・・・。あの時のチート異世界転生者め許さんぞ・・・」
私と味覚も似ているようですね~。愛されポイントが高いです。
「おお、アヤメ殿か。そろそろ、あのな。 聞かんのか? なぜわらわが封印されていたとか、何者なのかとか。聞いて欲しいと言うか。その、お主がわらわに気を使い思慮深く、聞かない感じとは思えんのだ」
「あ! うんうん! 今は、改心して綺麗なドラゴンって事ですよね! うんうん! 大丈夫です!」
リュウナちゃんは、少し考えた様子を見せ、納得いってくれたみたいだ。
そして、つねに横に居て顔をのぞき込んでくるナさんをスッと外し、スイーツを取っているとメインイベントが始まる。
「皆様! 『黒曜』 様の お越しにございます~」
広間の大扉がガチャッと、開けられそこには、執事服の様なスーツを着ている、黒ポニテの髪型と美形の顔が完璧にマッチしている伊織が立っていた。
犯罪的にカッコよく。脳がバグってくる。
伊織の男装は、初めて見ましたが。これかっこよすぎですね。
伊織のドレス姿も、凄く綺麗だと思いましたか。これは・・・、まさに流麗な黒曜です。
この姿の伊織に、詰め寄られたら、断る自信がありません~。脳がバグってきます。
会場ホールの視線が全て伊織に向いている。
「なんと美しい」 「本当に同じ世界の人なのか」 「あああああ!格差が憎いいいい!」
隣には、受付嬢のマホさんと猫獣人のリームさんがいた。
伊織がお腹の辺りに手を当て、礼をすると歓声が沸いた。
会場のご令嬢たちが、正気を忘れたかのように突撃していく。
すごい人気です。これは、今日は主役を譲りましょうか。
そして、いつの間にか隣にマゴット様がいる。
「黒曜様より、アヤメ様の方が圧倒的可愛いく。光り輝く芯を持っているのを知っております」
黒曜様、私の相棒ですけども~。
――
さて、ダンスタイムがあると言っていましたが。
私あんまり踊れませんし、どうしましょうか。
リュウナちゃんを膝に乗せて考えています。
「それで、アヤメ殿。異世界の門通って来たのか。帰りはどうするんじゃ? そして、連れてってくれんか。わらわ、天候の操作が得意だぞ」
「家事はもちろん。動画用の通信機器の操作、音響、動画作成など出来たりしますか?」
「ハハハハ! 一切できぬ。 異世界ギャップ激しすぎるぞぉおおお!?」
は~い、お疲れ様でした~。
膝からポイッと、降ろす。
「ああああああ! 捨てた! わらわを捨てたあああああ!」
そんな話をしていると、伊織が女性陣を引き連れて、こちらへ向かってくる。
ルナさんとマゴット様が、私の前にグィッと出る。
「「アヤメさん、黒曜様は危険です! 絶対遊び歩いているタイプですわよ!」」
なんだって言うんですか、も~。
そして、男装の伊織が近づいてきて言うには
「素敵なお嬢様達だ。アヤメがお世話になっているみたいだな。礼を言わせてもらう。明日にでも良かったら、アヤメと出かけないか? お嬢様達のお話が聞きたい」
「「きゃああああああああ!」」
そうなりますよね。
まさに、『黒曜』 です。服装とキャラがハマりすぎています。
そして、目の前に来た伊織。
「すまない、アヤメ。少しいいか。踊りながら話そう。ゴスロリ衣装昔好きだったよな。凄い似合うぞ」
私の手を引いてて、腰への腕でギュッ引き寄せて、耳元に口を寄せてきた。
うーん、これは、ドキッとしますね。男装は、ずるいと思います。
「大変だ。私の異世界の門が燃やされた。主にリームの獣人の一族中心にだ。調子に乗って、ギルド嬢達とリームの妹、姉、従妹にやらかしすぎた・・・いや、つまり、望まない永久居住を迫られている。いや、すまない。マジに帰れん。明日、アヤメの門から一緒に帰ろう」
あっ、これダメですね。置いてっていいですか。
置いていきましょう。
伊織は稼ぎますから、お嫁さん10人ぐらい大丈夫じゃないですか?
そして、リュウナちゃんが新しい伊織です。この世界と交換しましょう。
そういう事にして帰りましょう。
伊織はさらに、ダンスの要領でグイッと足を出して来た。
さらに、腰を引き寄せたまま。不自然な様子も無く、会話を続ける。
「やられた・・・、ギルド令嬢達の招集で霊視スキル持ちを集められて、門を狙い撃ちにされた。彼女達は、門の存在を知っていたんだ。リームの村総出で、門を発見され燃やされた。アヤメは大丈夫か? こんなに、女性の質の高いご令嬢を抱えて・・・」
おおう!? 私!? 大丈夫ですよね!? 何もしてませんし?
不可抗力~! とか言って、命の恩人の私の帰り道を燃やして来る輩は居ないと思いますよ?!
最高にイカれていると思います。
思わず周りを見渡すと、メイドのユキさんと目が合う。
胸に手を当て、ニコッと微笑んでくれた。
よし、大丈夫そうですね。
伊織とは違うんです。伊織とは。
そして、リュウナちゃんを見ると、窓に手を向け光弾を連射していた。
――
何の前触れも無く、リュウナちゃんから、パリンパリンと窓ガラスが割れ光弾が闇夜に撃たれていく。
何してますか? あ、やっぱり邪竜でしたか。
命を買う責任って、ついて回りますよね~。
うちの子は、大丈夫なんて事ありませんよ~。躾けなきゃいけませんね。
と、考えていると。
超級の気配が引っかかる。
って、ネコさんだ。 何となく来た理由が分かります。伊織の門の異変ですよね~
目標は35万字~40万字




