57 続アヤメ異世界転移
いつもありがとうございます。
昔、伊織の実家の部屋に行ったことがある。
伊織部屋は、意外にもピンクを基本とした乙女チックで
ドンケーホーテーで買ったエルフのコスプレ服が何着か飾られていたぐらいだった。
後、私の肌着の薄い写真が何枚も飾られていた。
そうです。異世界で伊織が私を探さずに、単独行動をする理由とは。
これは、本気でエルフを探しにいってませんか?
夕飯までには、戻らないとお迎えが来ますよ~?
――
大トカゲに襲われているご令嬢ご一行を助けた、私。
もちろん~! 襲われていたご令嬢を助けたのはいい事だと思いますが。
異世界テンプレートみたいな感じでモヤッとします~。いえ、人の命がかかってるのは分かりますが。
なぜそう思うのでしょうか~。
まず、単独行動をしている伊織を捕まえなければなりません。
やつは、女性エルフを探しに行ってます。なんだか、許せません。
旅館の夕食までに戻ってこない場合、ネコさんにご迷惑をおかけして申し訳ないと思うと同時に、私のスキルが語りかけてきます。
ショウタさんが、心配してここに乗り込んでくる可能性があると。
絶対にそれだけは避けなければなりません。
世界をかけたトラブルに発展します。絶対に。
アークドラゴンの首を切り落として、返り血で赤く染まった私の所に兵士の皆様とご令嬢様が集まってきました。
「「浄化」」 と、すぐに血糊を落として頂きました。
魔法最高ですね~。
「ありがとうございます。聞きたいことがあります~。町はどっちの方向にありますか~?」
「まずはご挨拶を・・・・」
続きを言わせたら絶対に巻き込まれます~! ダメです~!!
「あっ、すいません。そういうの大丈夫です~。 あのですね、近くの町を教えて欲しいのですぅ~。 後、少し行くと、敵意を持った5名が囲んでます。 お友達じゃないですよね? 殺意があります。この襲撃失敗の後の始末を企ててると思います~。お気をつけて~! では、町の場所を教えてもらったら去ります~、さよなら~」
と、令嬢様にガシッと足に縋りつかれました。
後、兵士さん達に足首をズザザザと滑り込まれながら掴まれました。
「「お待ちください!!」」
令嬢様、お立場は、どうなってますか~?!
見知らずの人に、そんな事をしていい立場では無いと思います~!
「あの! 助けて頂けませんか! お金なら、いくらでも払います! 後、我が領地での取り計らいを行いますから! あっ、ご挨拶が遅れました。 レイモンズ=マゴット と申します。 レイモンズ王家の伯爵家です!」
足に縋りついた令嬢様から、自己紹介です。
ああああ~。 イベントが何か始まっちゃいました。
ネコさん本当に、やってないんですよね!?
信じますよ?! いきますね?!
「あ~、マゴット様。まずは、田舎者ゆえ礼儀が無いのをお許しください~。 えーとですね、背中から肺に剣を貫通させた場合、マゴットさんの回復魔法で治りますか?」
「はい? えーと、あの? 話の脈絡が無いので凄い怖いですが、肺の貫通ぐらいならいけます。 あ、ああののの、お名前を聞いても宜しいでしょうか」
名乗るほどの者ではありませんが 「アヤメ」 です~。
「アヤメ様、素敵なお名前・・・」
「ああああああ! ご令嬢様! これ以上は、いけません~! と、先に敵意を処してきますね」
何かが始まろうとしていますが、フラグをポキポキ折っていきしょう。
殺意が5人ですか。 このまま行くと囲まれますね。
やっちゃいましょう。
両足に力を練り、地面を蹴る。
フォン・・・と景色を置き去りにして、相手の気配を手繰り、木の上にいる斥候の後ろに一息もしないうちにつく。
斥候の方への降伏勧告を一応しましょうか。
「降伏する気なんて無いですよね? 刺しますね~」
「な!? なんだ!? なぜここに人が?!」
後ろから喉を掴み、紫剣で背中から刺す。
本人の視界では、胸から剣が飛び手てくる、衝撃映像だろう。
斥候の襟首を掴み、木からおろす。
肺なら、直ちにお亡くなりになることも無いでしょう。
さて~、後4人も同じ目に合わせましょう。
気配察知のスキルレベルが上がり、精度が別物になってます。分かります。
でも、ステータスカードは怖いので開きません。
ドスッ、タタタタタタ、ドスッと、岩陰に隠れていた者達、平民のふりをしていた者達を後ろから刺します。
襟首を持って、街道横に投げ捨てておきますね。
もちろん、息はあります。 回復と尋問をご令嬢様にお任せしましょう。
処理は終わりました。
一息で、スタッと馬車に戻りマゴット様と周りに聞こえるようにお話します。
「マゴット様を狙っていた斥候達の肺を刺して、転がしてきました。ここから様子を視認できますよ。見てください~、それと尋問をしてみては?」
「肺ってそういう事でしたか? この一瞬で斥候の肺を? 肺って、あの体の肺ですよね。はい?」
「は~い」
と、言いたくなりました。
マゴット様、私の貧相な発想の脳をお笑いください。
馬車の中のマゴット様は、先ほどまで髪を振り乱して縋りついていた姿とは思えない程、服と髪が綺麗に戻っていた。
ご令嬢様も一瞬で平常心を取り戻すメンタル。なんだが凄いですね。
そのまま、馬車で乗り進んで、斥候達を転がした場所にすぐに着く。
そこには血だまりが出来ていて、「ゴフッ、ガフッ」 と、息も絶え絶えな様子がうかがえた。
なんだか、見た目が宜しくありません。
令嬢の危機を助けた、ヒーローのハズなんですが・・・。
どよめきながら囲んでいる兵士たちを横目に、マゴット様の手を引き馬車をおりる。
転がっている者達の中にポケットからポーションの様な物を取り出す者もいるが、私はその手を軽く蹴ると、コロンコロンと道端に瓶が転がった。
「さて、後はお任せ致します。町は、こっちですね~?」
「あの~、申し訳ありませんが、ここで逃がすわけにはいきません・・・、いえ!申し訳ございません。私のスキルが 『ここに転がってる者達の様になりたくなければ、絶対にこの者を逃がすな』 と シグナルを発しております、お願いします! もう少しだけご一緒できませんか?!」
こっちのスキルは、大分人間味がある運命アラートなんですね~。
「ここから先は、私の領地です。城下町もすぐそこですから! 色々本当に便宜や、何でもしますから! 何でもします! お願いします! アヤメ様、もう少しだけお願いできませんか!!」
再び、ガシッと足に縋りついてくる。
う~ん、ここで、別れるのも薄情ですか。
ご令嬢様のの足の動きを固めてくる行動、効果的ですよね~?
まあ、もう少しだけで付き合います~。町までですよ~。
まずは、斥候の自白を促しましょう。
こんな時は、知ってる風に装うのが一番ですから。
「生にしがみつきたい方いますか~? 正直に話せば命は、助かります。マゴット様が治してくれますよ~。 マゴット様は、心が広いお方。そして、貴方達はまだ何もしてないわけですからね~。さて、マゴット様、この方を治して下さいますか~?」
目を見開き口を開けたまま、私を見てくるマゴット様。
何かに気づいたのか、私が指した斥候に駆け出し、回復魔法をかける。
「ヒール」 と、淡い緑色の光が斥候を包む。
「正直に話してくれれば、このように助かります~。後ろの方々も助かりたいですね~?」
治った斥候の人は、恐怖で震えていますが、正直に喋ってくれるでしょう。
――
結論から言うと、マイルセン公爵と言う人の差し金らしかった。
私には良くわからない。それでいい。
このまま兵士数名がこの斥候達を連行すると言う事だけで十分だ。
では、いきましょう。
この状況の説明は、ほんとに大丈夫ですから。
「アヤメ様が、居るから後は大丈夫です。参りましょう」
私は、何事も無かったように馬車に揺られながら、この世界で人が一番集まる場所や、この世界の確認をいくつかしながら、町へ向かった。
異世界から来たとは、一言も言っていない。
これ以上騒ぎを大きくしたくないのが本音だ。あと、アイテムボックスも見せたくない。
「ま、まさか アイテムボックスをお持ちで」 とかの展開ほんといいですから~!
そういうマウント取った瞬間に囲い込まれる展開は、間に合ってます~!
半時程、馬車に揺られただろうか。大きな、石作りの城下町が見えてきた。
城下町の門に着くと衛兵が敬礼を取る。馬車は、そのまま門内に入っていく。
そのまま進んでいくと、広場にエルフの銅像が2体、煌びやかに立っていた。
エルフの二人の像は、浴衣を着ています。
ショウタさんの旅館の紺の帯と、足の裾の金魚の浴衣の意匠と同じデザインですね。
旅館の浴衣を着ている女性エルフ二人です。そして、凄く美しいです。
この浴衣デザインが同じとか、ありえません。もう既に帰りたいです。
でも絶対に何か関係があります。
聞いておかなければなりません。何かを見落とすと、即ゲームオーバーになりそうです。
「マゴット様! あのの、あのですね、あの素敵な像は何ですか~? 事細かに歴史から教えてください!」
マゴット様は驚いた様子で、何度も頷き説明をしてくれた。
「・・・よく分かりました。 この星の守護者サイリス様と、カルニェ様ですね。髪が長い方が上位のサイリス様です。アヤメ様の所で言う、世界の神様だと思います。40年ほど前に、世界が滅びかけていた時、星の導きに従い異世界の旅に出て、霊薬を持ち帰り世界樹を再生させ、世界を救ったと聞いております」
なるほど、異世界の旅ですか~。
あれ、私の所ってどういうことですか?
「そして、アヤメ様、本日のお泊りの場所は決まってないですね? 私の家へお泊り下さい。 他の宿は、今から満杯で空室は一切なくなります。 お願いします! 泊まってください、お礼とか、異世界の旅人とか一切言いませんし、お聞きませんから!! 何かご理由がおありのご様子です! だって、この星で生きていて、世界救世主のサイリス様とカルニェ様を知らないとかありえませんよ!! お願いしますぅうううう!! ああああああああ!」
と、髪を振り乱し、馬車の床に転がり足首を掴んでくるご令嬢。
足に縋りつくのは、この国の文化か何かですか?
こんな、タテロールのご令嬢は見たくありませんでしたが、泊まるべきでしょうか。
そのまま前を通ると、銅像の前が騒がしい。
軽装備の兵士の方々が、3名程倒れていた。
護衛の兵士同士が、慌てて近くにより確認している。
軽い打ち合わせの後、マゴット様に報告をしてきた。
「銅像の前で狂ったように叫び散らかしていたミスリル重装備の黒髪の女を捕えようとしたら、返り討ちにあったそうです。行方は、今追っている所です」
偶然ですね。私の親友に人相が似ています。
異世界エルフの存在に気づかれてしまいましたか。
「マゴット様、お願いがあります。いいですか?」
「はい! なんでも聞きます! 今日は泊って下さるって事でいいですね!」
えぇ・・、泊まりますが。
明日からやる事があるのでそれで、この馬車連行は終わりにしましょうよ~。
「あの~、マゴット様の領内で、この狼藉を働いた重装黒髪を指名手配してもらっていいですか~。今、詳細な画像出しますね。 写生スキル持ちの方いらっしゃいます? 手配書回してもらっていいですか~。 これで、助けた貸し借りチャラっでいいでしょうか~」
「「「ダメです」」」
そうですか、ダメですか。
そして、マゴット様が、取り巻きの兵士さん達に指示をバンバン出している。
「アヤメ様、すぐに手配書きスキル持ちが来ますから、後、お望みの物とかございますか? 明日は、一緒に領内を見て回りませんか? 何かお気づきの事がありましたら、遠慮なく言って下さいね」
明日は、冒険者ギルドと、奴隷市場。最寄りのダンジョンに行きたいのですが~。
「う~ん、この星にダンジョンありますか~? 奴隷市場とかはありますか? あった場合、私はそこに張り込みます」
「えっと、奴隷市場はございません。サラッと人権的に恐ろしい事をおっしゃるのですね。そして、ダンジョンは、ございます。領地のダンジョンは、帰らずの迷宮と言って、30F以降に行った冒険者は、まだ戻ってきた事がありません」
あ、説明ありがとうございます。
ダンジョンがあるんですね。何か異世界を堪能したくなってきました。
ダンジョン行きたいですね。この世界のダンジョンに。
意外とこういう活動が面白く感じてくると言う。
発見。