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56 アヤメ異世界転移

アヤメ 旅館からダンジョン深部へ探索中




「あああああああ!!」


と、叫び声と共に、伊織が共に視界外に飛ばされていく。

二足歩行の筋肉スタイリッシュな巨大キノコの一撃を受け切ったのだ。


その間に筋肉キノコの懐に潜り込み、連撃を加え細切れにする。


光となり消えたキノコから私達の体に一筋の光が吸収され、レベルが上がったのを感じる。


後ろを見ると、吹き飛ばされた伊織が戻ってきた。


「LV差によりダメージはもう無いが、受ける度に重量が足りないからポンポン飛んで行ってしまうな」


ですよね~。

地面を砕き亀裂を走らせ、その衝撃波が天を突くような様な一撃ですよ。

よく受け切りましたよね~。

私達どれだけ強くなったんでしょうか。


あれから、ネコさんと一緒にどんどんとダンジョンを進んでいる。


旅館を出る時に 「いってらっしゃいませ~。ラウンジで様子を見てますね」


と、ポムちゃんが見送ってくれました。

う~ん、お仕事してますでしょうか。心配です。


そして私達は順調に進み、ボスフロアとなった。


「90Fにゃ~。ここから敵の様子が変わるにゃ。異界への扉を守護する存在達にゃ~。強くなってくるにゃ。簡単に異界へは渡れないにゃ~」


と、ネコさんが説明をしてくる。


奥の大部屋には、翡翠で体を覆っている大狼がこちらを見ていた。


――


大狼の気配で強いのは分かりますので、アイテムボックスの中身を使ってしまいましょう。


今の私達には、過剰な力です。

こんなにも戦闘アイテムって凄かったんですね。

10を2倍しても20、1000を2倍にしたら2000ですよ。その差1980です。

もはや、過ぎた代物です。


「超加速」と唱える。


伊織が「加速」だけで突っ込む。


伊織が大狼と近接し、大狼の凶悪とも思える腕を振るう直前 「鉄壁」 と唱え、発生する力場が大狼を弾き飛ばす。


どがああああんんぎゃ と、聞いたことの無い音が壁面から出ているが既に戦闘は終わっている。


超加速による、時が止まったかのように全ての風景が遅くなる感覚。

大狼が壁面に叩きつけられる間、縦横無尽に壁を蹴り、直線で10往復は立体的に切りつけた。


残心は怠らないが、翡翠の大狼の存在に届いたのを私の紫剣の感触で分っている。


コトンと音と共にアイテムドロップが落ち、存在の光が私達に吸収された。


「二人とも強くなったにゃ~。 これは、内緒にして欲しいのにゃけど、ポムさんにもこの積み重ねがあれば、強くなるのにゃ~。そこそこ強い状態で、生まれてくると努力を怠るダメな例にゃ~」


「私はその性格に早く気づいていたぞ。そこに隙があると言っていた」


伊織、凄いですね~。

でも、何でしょうか。ポムちゃん、本気になると、物凄い頭が回りますよ。

スペックが凄い高いですから。

伊織、一度負けてますからね。甘く見たらダメですよ~。


その後、翡翠の鱗で覆われた地龍、翡翠のワームなどを受け止め切り捨てていく。


「ネコさん~。この翡翠で体を覆う必要って何でしょうか~?」


「妨害系を妨害する役目にゃ~。 早い話、より強い力で対抗すればいいだけにゃ~」


なるほど~。分かりやすい説明ですね。


――


そのまま、進む私達。

ついに、人類の究極到達点99Fに到着です。


「ついに99Fにゃ~。 さて、どんな扉かにゃ~」


星海が背景となる99Fの大広間に、古代神殿の規則正しく並ぶ列柱。

その中央に大理石の階段の上に、緑青色が上下半々の引き戸が見える。


引き戸とは、意外ですねぇ~!

カラカラカラと開ける感じですか~。


「近くに行ってみようにゃ~。 凄い綺麗な扉にゃ~。 アヤメ殿と、伊織殿の業が意外と低いのに驚いたにゃ。 観測者の業と言うかモラルゲージによって扉の形が変るにゃ」


私達は階段を上り、扉に近づく。

異世界の扉が透き通り、緑と青に染まっている。


ネコさんが、扉に触りながら説明を始める。


「扉の奥は、普通に暮らしと文明がある異世界にゃ。大丈夫にゃ。 破滅が差し迫ってる可能性や、侵略され息も絶え絶えみたいな次元じゃ無いにゃ。 伊織殿、意外に良い人間だったにゃ? 信じられ無いにゃ」


伊織は、芯があり裏切らないですからね。

芯が強すぎる事がありますが。

どちらかと言うと、人間関係でいつか刺されるタイプですね。

あれ? ウソですね。伊織、刺されて撃たれてますね?

もしかして、刺されることにより業の清算してましたか~?


「吾輩は、ここで扉を固定しておくにゃ。よかったら、異世界を見て来てみてはどうかにゃ? 時間の流れがここと違うにゃ。 どんなに長くても旅館の夕食には帰ってこれるハズにゃ」


おおおっ!? 異世界体験ですかぁ~!!


「エ、ル、フに会えると言う事か? 私の人生は、絵本の女性エルフを見た時から始まったんだ。それまで、私は世の中の違いに苦悩を感じていた。でも、気づかせてくれたんだ。こんな素晴らしい世界があることに。そして、その本能のまま身を任せていたら、それは間違いなかった。私は知っている。自分自身にウソをつくことが一番の間違いだと」


伊織、凄く良い風に聞こえます~! でも本能の下りの所がなんかダメです~。


「ネコさん、異世界を少し見て来て、無事に戻れるんですよね~?」


「ここで固定してるから、大丈夫にゃ~。無理はしないでにゃ。吾輩が迎えに行く事になるにゃ~。あ、伊織殿、エルフはいるか分からないにゃ」


「ぬか喜びか?! ネコアニマル、そういう事は早く言ってほしかったな・・・」


「伊織、行ってみましょうよ」


転移後に、転生者のショウタさんみたいな存在居たら、即帰りましょう。

今なら分かります。転生者は星の害悪です~。

無限の力を連発してくるチートです~。


さて、異世界ですか~。


扉に手をかけ、カラカラと戸を引くと、その先は白かった。


「そこを跨ぐと異世界にゃ~。二人なら大丈夫だと思うけどにゃ。危ないと思ったらすぐ戻ってきてにゃ」


「「承知~」」


私達は、扉へ一歩を踏み出す。


― ― 


新鮮な風が肌を通り抜ける。

草木の香り、酸素が凄く濃いのを肺で感じる。


空気がおいしいです~。そして隣に伊織がいません。


後ろを見ると、引き戸の扉が浮いている。

扉には、猫の肉球マークが取っ手の上に押されている。


ここから戻ればいいいのでしょうか。


辺りを見回すと、草原が見え、その先に石畳の道が見える。

街道の様だ。


その街道から喧騒が聞こえ、中世の様な軽装備の人達数名が高級そうな馬車を守るように大きいトカゲと交戦していた。


おおぅ?? いきなりどうなってますか~?


同時に、大トカゲのしっぽの振り払いで二人程吹き飛んでいる。


「「「なぜ、アースドラゴンがこんな所に!!!」」」 と、集団が叫び散らしている。


「「お嬢様!! お逃げ下さい!!」」 とも聞こえる。


いやいやいや、ネコさんのプランか何かですよね??

いきなり、なぜこんな状況が?? これやってますよね?

この展開が世の中にありすぎて、何の話か覚えてないぐらいみてますが??


このまま、トカゲをスパッと切り飛ばしたら、『おぉ!! まさかアースドラゴンを一撃で!!』 とかになりますよね?? こんなチープな賞賛は、嫌なんですがぁ~??


ネコさんどうなってますか? 正直に言ってください。

コレ、やってますよね?


私は後ろに戻り、引き戸をカラカラと開けて首だけ突っ込む。


先ほどの空間が見え、その先にネコさんが驚いたように立ちすくんで居た。


「アヤメ殿!? そんな危険な次元だったにゃ!? このダンジョンの99Fに到達した実力者が瞬間で帰ってくるような星だったにゃ?! 普通に探索してると思われる、伊織殿が危ない感じにゃ?!」


「いやいやいや、ネコさん。いきなり大トカゲの出現に、高級そうな馬車と襲われている方々がいるんですが~?! ネコさんの差し金ですよね?? やってますよね? かつての山賊プランでしたか?? それですよね?? それと、伊織は、別の所に飛びました?」


「やってないにゃ、アヤメ殿。それ普通に襲われているにゃ。助けてあげた方がいいと思うにゃ?! 伊織殿は、その星の他の所に飛んでるにゃ~。近くに居ると思うにゃ。お互いに扉を開けるだけで帰れるにゃ。異世界に満足したら、帰ってくると思うにゃ? そっちに2週間いても、旅館の夕食に間に合うように扉をいじっている所にゃ~」


考えすぎでしたか~!?

早く馬車を助けないと、いわゆるピンチじゃないですか。


首を引っ込めて、ぴしゃりと戸を閉め街道に向き直る。


火の玉や、氷の礫が大トカゲに飛んでいるがさしたる効果は無いようだ。

大トカゲのしっぽの振り払いでさらに兵士達が吹き飛んでいる。


これは、いけませんね~。

少し遠くに見えますが、今の私なら一息で着けるでしょうか。


フッと息を吸い、足を貯めこみ大地を蹴る。

草原の景色が高速で流れ、高級そうな馬車の前へ着地した。


「「お嬢様を守れ~!」」


と、槍を持ち吶喊する兵士の皆様。

辺りから魔法スキルを撃つ数名の方々。

それを、横目に馬車の中にスッと入るとその中に金髪タテロールのパーティドレスの令嬢が居た。


何ですかこれは? パーティドレスのご令嬢? 話が出来すぎてませんか?

タテロールの令嬢? 異世界レディコミですよね? 

いや、私が疑い深くなりましたか? 考えすぎですか?

金髪タテロール、これが異世界のデフォルトでしょうか。

ですよね? よし、やりましょう!!


「あの~、すいません~。え~と? 手伝いましょうか?」


令嬢は口を開けたまま、手に持っていた扇子を落とした。


「えっ、どちらから? えっ? お逃げ下さい。外にアースドラゴンです。私はおそらく嵌められたのでしょう。 マイルセン公爵領を抜ける前に何か仕掛けてくるとは思ってましたが・・・」


これ以上は、踏み込んではいけません。聞いてもいけません。

巻き込まれて逃げれなくなってしまいます~。話を聞く前にとっとと倒して、しまいましょう。


即座に馬車を飛び降り、大トカゲを見る。 気配は特に感じない。


デカいだけの肉塊ですね~


魔力やスキルと言われる力を体に循環させ、紫剣を抜刀し地面を蹴り、瞬きをする間もなく大トカゲの頭上を取る。


さてと、その首を落してから、まだ動くかどうか考えますか~。


体を回転させ、遠心力で太い首筋を2本の紫剣が通り抜ける。もう一度回転し、刃先が足りない部分は、もう一度刃を振り抜き、首の内部から剣戟を飛ばす。


スタッと地面に着地し。大トカゲの首がズレ落ち、ゴロンゴロンと転がっていく。

そして、トカゲの首から鮮血が噴水の様に吹き出し、バタンバタンと最後のもがきをしながら、血の海を作る。


自身の血の海に沈み、首の無い大トカゲは動かなくなった。


あああああ~!

そういえば異世界ですから、ドロップアイテムに成らずに、死体は残るんでしたねぇ~!

返り血を思いっきり浴びてしまいました~。


掌で顔にかかった返り血を拭い、兵士さん達の無事を確認していく。

金髪の令嬢が、馬車から降り、回復魔法らしきものを吹き飛ばされた兵士たちに掛けている。

もう、大丈夫だろう。


私は、令嬢さんに声をかける。


「大丈夫でしたか?」


その時の、令嬢と兵士達の表情を私は、忘れない。

恐怖と戦慄を覚えた顔だ。


「「あの~、何でも差し上げます。 命だけは、お助け下さい!!」」


全員が片膝を付き、かしずきだした。


私が想像していた展開と、まったく違います。

どうなってますか? 惜しみない賞賛は、どうしましたか?

「「おぉ! アースドラゴンを倒すとは!」」 とか、どうなりましたか。


そして、「異世界」、「エルフ」 「伊織」 

この三語だけで、伊織が戻ってこない気がします。絶対、単独で探しに行ってるでしょうね。


伊織を探して捕まえて、ひとまず地球に戻りましょう



ようやく異世界転移物です。

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