53 続アヤメようやくお店へ
右の大陸のコップのサイズがデカすぎて絶望した。
勝てるわけが無い。このサイズで飲んだら体の血液が全てコーヒーにならないか。
アヤメ
食事も終わりまして、お部屋にもどり寝る支度を始めました。
伊織が再び部屋のシャワーと歯磨きを終えてウキウキしながら言ってきました。
「少し舞の部屋に遊びに行ってくる。アヤメも、もし良かったら来てみると良い、舞が喜ぶ」
そうですねぇ~、小雨様もいますし。レディコミの流れにはならないでしょう。
「承知~」
そして、伊織は扉をギギッと開けて消えていった。
私は美肌霊薬でペチペチとお肌の手入れをしながら、どうしようかと考える。
通信機器も使えませんし私もやることありませんから、いきましょうか~。
ガールズトークで夜を過ごしましょう!
と、考えていたら部屋の扉の外に強い気配がする。
扉を伝って、魔力が部屋の椅子、畳、引き戸に。
自然由来の構造物に魔力が満たされ込められている。
この魔力の感じポムちゃんですね。
いいですねぇ~、部屋の自然構築物に魔力を込める必要ってありますか~?
戦闘をご所望ですか? それとも私をレディコミの様にしようとしてますか?
ここまで下準備をして、部屋の模様替えなんて事は無いでしょう。
トントントントンと、扉を叩く音がする。
ポムちゃんばれてますよ~、下準備で魔力を込めているの気づいてますよ~。
取り合えず、火の魔石を取り出して懐に入れてっと。
いざと言う時の炎で拘束の解除用です。
準備オッケーです。
「はーい」 と、迎え入れましょう~!!
「アヤメさん? ポムです。 本日のお仕事終わりまして、良かったら少しお話してくれませんか?」
どうぞどうぞ~、ようこそ~。
ガチャリと開けると、Tシャツ姿の蒼い髪、緑の目。
誰もが目を奪われるように胸を強調し、肉体に自信を持っている様子のポムちゃんが居た。
あ~、気づきを得ていますね。この世の中の力となる武器に。
種族格差ずるいです~。
「お仕事終わったんですか~? お疲れ様です~!」
「ありがとうございます。残業を申し出たのですが、ご主人様が発狂しはじめまして」
『あああああああ! 契約が旅館用の契約じゃない!!! 8時間連続労働で、旅館の勤務が務まる訳ないじゃんんんああああああ?! ピカアアアアアアアア!!? ポムさん! ネコさん! 契約は、契約です! すでに残業をしてもらってます! もう十分です。 後は、自分がやります! 自分が、一番働いて当たり前! 貴方達は労働者ですから! 役職者はですね、時間無制限一本勝負、責任がちがいますからあああああああああああ!!!』
ポムちゃんが、ニカッと笑う。
「ご主人様に似てましたか? アヤメさん」
凄い似てました。
なんでしょう、今のポムちゃん魅力的ですね。
「お邪魔します」 と、スタスタと、奥の謎ルームの椅子に座る。
ポムちゃんの魔力が、込められている自然構造物の木の椅子だ。
う~ん、撤退するか、戦うか微妙なラインですね~。
まず、お茶をいれましょうか。 いや、アルコールですかね?
でもお茶はあってもいいですね。取り合えず、淹れましょうか。
机の急須の蓋をとり、お茶を代えようとする。 「あ、私が淹れます」
と、ポムちゃんが、奥の椅子からスッと立ち上がり、隣に座る。
そして、私の急須を持ってる手を握ってくる。
「えっ?」 っと、思わず口に出してしまいました。
そのまま、ポムちゃんが緑の瞳で目をジーッと覗きこんできます。
あ~、これ、伊織から学びましたか~!? 口説きに来てますか~??
考えすぎですよね~、私、乙女ですから~。 お互いに乙女同士、何するって言うんですかぁ。
「へぇ、アヤメさんも動揺するんですね。嬉しいです」
伊織~、ヘルプ~! 伊織ヘルプ~!
懐柔しにきてます。
私は手をスッと離して、そのまま布団に座りギュッと枕を持つ。
枕の触感が何となく温かい。
そのまま、ポムちゃんが布団の横に座ってきます。
お茶は、どうしましたか!? お茶は、どうしましたか~? 淹れないんですか?
間違いなく、強敵です。戦略の下準備と、余裕が見て取れます。
まずは、向こうの出方を見ますか。
「アヤメさん、そのギャップ。私の脳を破壊しに来てますか? 伊織さんの気持ちが良く分かります。さて、お話の内容ですか。どうしましょう」
突如、椅子、畳、天上の板がミキミキと異音を上げてくる。
魔法発動の前兆だ。
良かったです~。分かりやすい方法を取ってきましたね。
このまま自然な会話で時が流れて、必死に懇願されたら、私、危なかったですね~。
さてやりますか。
と、ここまでしておいて、拘束の魔法を発動せずに、さらに肩と腕を密着してくるポムちゃん。
「キープ、最低で最高の言葉だと思います。きっと伊織さんの中でもそうなのでしょう。 素敵な保険です。 お互いどこかに一番を探す事、決して咎めることは出来ない。そう思いませんか? アヤメさん。ご主人様の記憶を見ると、情事でいつも後悔の連続です。私は、後悔したくない」
部屋に私の殺気と魔力の衝突が渦を巻くその時。
トントントン
ビクッ! と、ポムちゃんの体が震える。
「どうして・・・、運命は味方してくれないのでしょうか。後10分あれば・・・、口惜しいです」
「アヤメ殿、開けてくれにゃ~。仕事終わったにゃ~。 チェスで遊ぼうにゃ~」
あ~、この先の命運を見ることができない運命なんですね~。
良しとしましょうか~。
――
その後ポムちゃん、ネコさんと遊びお互い寝ると言って別れた後、伊織がアリエノールさんに手を繋いで連れてこられた。
「邪悪な気配の人間だ。寝静まるのを待っていた様子だ。小雨様、舞主任に夜這いしに来ていたぞ、人間。神様にそういう事するのか? 普通逆じゃないか? この星ではそうなのか? 神の怒りを買わないか? いや、失礼した。私は負けたのだ。多くは語りません」
はいはい、すみません。ありがとうございます。
そのまま、預かり。大人しく寝ました。
――
そして、朝が来た。
それぞれが朝の支度をして、おいしい朝食を会場でとっていると小雨様が説明しに来てくれた。
「今日で、全員帰るぞ。まもなく啓示の権能も戻るだろうな。アヤメ達は残るのだろう? うらやましい限りだ。後始末でショウタ殿を借りて行く事となった。 世界も元通りになるし、誰も世界の終末の事なんて覚えてもいないだろう。ここには、ネコ殿とポムが残るはずだ。後は、いつも通りで頼むぞ」
すでに段取りが組まれています~!
流石、小雨様。一生ついていきます~。
「正直、疲れた。 全て終わったら、ここで2、3日過ごすからな。 制裁神の気持ちが分る。位相世界と地球なんて見てられない。この地上ひとつ見るにもこのあり様だ」
そして、横にいたメンテナンス神様が相槌をうつ。
「小雨さん。その時私も同行しますからね~。ここと地上の代金の建て替えお願いします~。位相世界で小雨さんの黄金宮殿立てさせますから、それで余裕でチャラですよね。階位爆上がりです」
小雨様! 朝食会場で刃物を出すのはいけませんよ~!
メンテナンス神様の理屈は、何となく通っています! まだ、話し合いはできますよ!
ネコさん! ポムちゃん! 止めに来て下さい~!
神々の黄昏が起こってます、ラグナロクですよ~!
――
さて、チェックアウトの時間です。
伊織と、私で見送りをしましょうか。
本当に、ご一行様と色々ありすぎましたし~。
ロビーでショウタさんが、ネコさん、ポムちゃんに説明の様な話をしている。
「後は、頼みました。啓示神から比べると、超上客の二人です。宜しくお願いします。では、地上をもとに戻してきます」
「「承知致しました~」」
後は、神様と地上の小雨様がやってくれるでしょう。
そしてショウタさんは、仲良くなれば話きいてくれますし・・・・?
あ、気づきを得ました。
啓示神様、見抜いてたのですね。ショウタさんの性格を!
中に入れば切り捨てられないって知ってたんですか。
凄いですね~、神様だからですか?
そして、ご本人の啓示神様は、メンテナンス神様と破壊神様に両手を持ち上げられ、宇宙人を捕獲した時の様に捕獲されてます。 これは、逃げられません。
最後に勇者ご一行が、別れていきます。
ラウンジで全員が集まり、全員が手を振っております。
全員が、「忘れ物ないですかー」 「残ったお茶パック、全部回収するのを忘れました」とか、わちゃわちゃとしてますが、私も手を振り返します。
「またすぐに会いましょう~」
と、お別れの挨拶の後、シュポンとショウタさんとご一行が飛んで行った。
そして、見送った名残の後にネコさんが話しかけてくる
「行ったのにゃ~。あのまま神々の世界に引き取られてくれないかにゃ~。 そもそもご主人が永遠の存在にゃ。人でありたいとか片腹痛いにゃ~。吾輩、気づいたにゃ。無理な物は無理にゃ」
「ネコ様?!」
「そうなると、ここの旅館のネコ社長か、それ間違いなくバズるな。ずるくないか、キャラを押し出す視聴者数の集め方。そもそも・・・、」
伊織、自己矛盾起こしてますよ。
私達、この格好ですから、探索者の中でもキャラ系で売っているんです。
そこを狙ってるんですよ。
伊織、この話題やめませんか?
「さて、アヤメ殿、今日も探索にゃ? よかったら99Fまで行ってみないかにゃ。おそらく観測者によって異界の扉が変るはずなのにゃ。 どんな扉になるか吾輩もみてみたいにゃ。99Fツアーしてみようかにゃ」
伊織と顔を見合わせる。
それ凄い面白そうですね。 あ、でも戦闘は私達が引き受けます。
やばそうだったら、手伝ってもらっていいですか~。
それと、高額のドロップ品、ここでお預かり願えますか。
「「承知致しました~」」
私達も準備を終えています。66F以降へ向かいましょうか。
「ポムさんは、ここのお仕事お願いするにゃ」
「えっ? お客様のが来る可能性皆無じゃないですか? 私、着いて行かなくていいのでしたら、寝ててもいいですか」
ポムちゃん、ダンジョン現場、つまりお仕事って慣れたときが一番危険なんですよ~。
ショウタさんに見つかったら、どうなりますかね。カエルにされませんか?
伊織なら、それでも愛してくれそうですが~。
いつもありがとうございます。




