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49 アヤメどっちに

紙製品ですので、水漏れにご注意下さい



アヤメ



小雨様、舞ちゃん、マユミさん、剣神様、着物女子、パーティピーポー、魔族が怒涛の様にダンジョンを突き進む様子がラウンジの壁に写されている。


友好的にここへ向かう様子でも、配信が途切れた私たちを救出する様子でもない。


戦闘画面から吹き出る怒りを感じますねぇ~。

ショウタさん何したんですか? 


私達はラウンジのやわらかいソファーに座り、浮き出ている画面を見ている。

床は、ガラス張りで小川の様な水がチョロチョロと流れている。


そしてラウンジの奥の観葉植物の横には、アンテナが生えている赤髪の美人でダウナーな感じのパーカー姿のお姉さんが、瞬きをせずにこちらを見つめている。


私のスキル気配察知を感じるに・・・、ポムちゃんぐらいでしょうか。

でも何か姿と気配の差異が引っかかります。 多分変身を残してますね~。


この謎の空気を裂くように、ショウタさんが話始める。


「本日は、ありがとうございます。お疲れでしょう。今、お飲み物をお持ちしますね」


それどころでは無いですよ、ショウタさん。

画面では神々が侵攻してきてますが、大丈夫ですか~?


画面に写されている舞ちゃんの銃から、螺旋を描く波動砲が出ている。


舞ちゃん強くなりましたねぇ、ついに伊織に制裁する時ですか?


そして、マユミさんと剣神様が背を合わせ戦い、小雨様が剣戟を飛ばしまくっている。

後のパーティピーポーみたいなのと、着物美人、魔族さんは、援護しながら後ろから着いてくるだけだ。


「お待たせしましたにゃ~。 オッチャーにゃ」


目の前の机にコトリと湯呑を置かれる、湯気から清々しい香りが漂ってくる。


ポムちゃんは、伊織にお茶を出しそのままスッと横に座った。


「はいはいはい。 なるほど、今日は100万やられるな。 これでシャンパンタワーお願いできるか? ポム、激しくコールを入れて欲しい」


伊織が収納空間から、現金を取り出しポムちゃんに握らせようとしている。


ポムちゃん、それを受け取ったらいけませんよ。人はお金が絡むと豹変しますからねぇ~。


そして、ショウタさんが奥のパーカー美人さんの所へ行く。


「クソ啓示・・・、ではなくて、失礼しました。 お客様。 お茶です。飲め」


さらに奥に隠れる。赤髪のお姉さん。


そろそろ、その方の説明を聞いておきましょうかぁ~? うーん、どうしましょ~


「ご、ご主人様! そ、その女は! あ、失礼しました! そちらの女性は?」


「ポム、そっちはいいから。こっちに集中して欲しい。 ほら、お茶だ。今、果物が来るからな。後何か欲しい物あるか? 何でも言うんだ。 金ならある」


伊織からカオスの場が派生してきました。

混沌とする前に、聞いておきましょう。


「ショウタさん、そちら方はどなたですかぁ~?」


言葉に反応したパーカー美人さんがニチャっと笑い、隠れた。

所を、ショウタさんが掴み引きずり出す。


「さっきから自分の脳に狂ったように、直接叫び散らかしやがってらああああああ!? 言いたい事あるなら、直接喋れやあああああ!」


キレ散らかしたショウタさんが、パーカー美人さんを目の前にズザザザザッツと引きずり投げてくる。


「ぁっ、ぁ・・・・」


目の前に来た、パーカーさんがニチャっと笑い沈黙した。

そして、ショウタさんが手で頭を押さえながら話始める。


「アヤメさん。こちらファンの方みたいですね! あー、嫌じゃなければ握手とかお願いできませんかね? サインでも会話でもいいです! この客マジにうるさい。 格安で泊まりつつ、文句だけ多い客ですね。 あー滅したい、滅したい」


ショウタさん、で、誰なんですか~。

ファンって言ってもファンのお客がここまでこれませんよ?!


うーん、でも、分かりました。 営業モードでいきますよぉ~。


「こんなダンジョン奥にファンの方ですか~!? ありがとうございます。声かけて頂き嬉しいです~! 今日は、どこからきたのですか~? あっ、答えずらかったら大丈夫です。 今日、ここの旅館で一緒なんですね~。宜しくお願いします~!」


と、満面の笑みを浮かべ、握手の手を出す。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 と、手を握り返してきた。


突如目の前のパーカーさんが七色に輝き、アンテナがぶんぶんと振れる。


「もういい超うるさい。脳に直接、話しかけるのをやめろ。まず部屋にご案内だ。喜びでエントロピーを超えて小宇宙を心の中に宿した存在を部屋にご案内!」


黒い空間が、物言わぬ目の前のパーカーさんを飲み込んでいく。

目の前から消え去ってしまった。


「はぁ~、苦手です。あのタイプ。転生前の元カノ達を思い出しますね。一人にしても自傷は、しなさそうなので安心ですが。 うん、なぜだ・・・? あ、気づきを得ました」


ショウタさんが、何かに気づき話を続ける。


「ああ、そうか。動画社会になって、完全に孤独に包まれると言うケースが減ったんですね。啓示神タイプが依存するわけですか。そうなると、アヤメさんの立場と身分って凄い高いですね。多く与える側ですから。なるほど、そういうこの星の社会形態ですか」


そうなんですか~?

そうかもしれません。でも、ダンジョン探索者のパイオニアだからの立場だと思いたいのですが。

その延長上の有頂天アイドルやらせてもらってます!


そして、ショウタさん、でも何かDVバイオレーンスの気質ありますねぇ。

パーカーの方とどっちもどっちな気がしますが~。


さて、話を続けますか。


「所でショウタさん、画面の小雨様方が侵攻してくる理由ってなんですか~? 何かやっちゃいましたか?」


「そうですね、位相世界の権能を引っ張り出してしまったんですよ。 今、地上だとワールドレコードの権能と啓示の権能、それに伴う権能が全て使えないかもしれません。 まぁ、明後日には戻りますよ。 あ、今部屋に送ったのが。その啓示神様です」


「いきさつを聞いただけで分るにゃ。リアルにご主人、狂ってるにゃ。どうする気にゃ」


あ、私の配信が出来なくなったのもそれでしたか。

ショウタさん、ついに人類の敵になってしまいましたか。

出会ったその日から、その気配ありましたもんね。


そしてあの方が啓示神様でしたか~。監視型のファンじゃないですか~。


さて、ガチ侵攻の小雨様と、サイコパス入ってるショウタさん。どっちに付きましょうか。


「伊織~、どうします? 人類の存続をかけた戦いになりそうですが~。どっちに付きます?」


「決まっている。アヤメ、ポムが居る陣営だ。そして、強い方だ。当然、ショウタさんの方につく」


「あー、そういう感じですか。自分との戦闘は止めはしませんが、お勧めしませんよ。力を制限されている神々が勝てるわけが無い」


そうですねぇ。確かに。

ここに居る全員で、地上で迎え撃ってなんとかなりますかね?

うーん、ショウタさんの底がみえないんですよねぇ!


まずは、話し合いをしてみましょうか。


「ショウタさん、取引しませんか~? 今映っている全員をお客さんとして連れてきたら、装備新調してくれますか~? あ、ほどほどの装備で~!」


「おぉ、なるほど。 一番丸い選択ですね。未来を観測して結末を見たい所ですが、無粋ですね。 いいでしょう。 取引と参りましょうか」


伊織の方を見る。

さっきからポムちゃんを組み伏せようとしていた伊織が、ソファーにうつ伏せに倒され手をねじりあげられている。

ポムちゃんが捕縛している。


「と言うわけで、アヤメ済まない。私の手が逝った。アヤメ、ここでポムと待っているからな。 そもそも、これを口実に軽くやり合うつもりだろ? 説得が通じる小雨様やマユミさんじゃない。はいはい、いってらっしゃい」


そうですね、伊織。

戦闘は、免れないでしょうね~。


「アヤメ殿、ついて行こうかにゃ~?」


ネコさん大丈夫です。

私、大分LV上がりましたし。ご一行を相手にしてみたいですね~。


さて準備をしませんと、小雨様が初手アイテムボックス封印してくるのが予想できますからね。

直ぐに、マユミさんが近接を仕掛けてくるでしょう。

舞ちゃんは、撃つのに躊躇しそうですね。

魔族は、光弾を連射。後の二人が未知数ですね。

さて、お客様として連れてくるのに説得が出来なかった場合、強硬手段をとりましょうか。


盛り上がってきました~! アイテムを取り出し、準備をしなければ。

使える個数は、決まってますね。スパッツの太もも回り、腰のベルトに装着しましょう。


私は、カチャカチャとご一行と邂逅の準備をすすめる。


「準備できました! 50F辺りへ送って頂けますか~」


「承知致しました。 お亡くなりになっても、ここに沸くようにしますね。ダンジョン特有のリポップ付けておきます。 それでは、いい報告を期待しています」


ショウタさんが一礼して、シュポンと飛ばしてくれた。


――


50Fのハイドラモンスターを、縦横無尽に切り伏せる。

トカゲの首が5つ、ごろりと目の前に転がる。そして、帰還陣が光り輝く。


ハイドラなんて、超ゴリライオンに比べたら可愛いものです。

おやすみなさい。


そして私は、今か今かと小雨様達の到着を待ちます。

ふと思うと、試練の時のショウタさんもこんな気持ちだったのでしょうか。


何となく分かってきました。

ショウタさん、お客がくる可能性だけでこんなワクワクしてたんですね。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


と、奥から声が聞こえてくる。


来ましたか。

滾ってきました。


一先ず、言葉は通じないでしょうね。ご一行のテンション上がり切ってますし。


さて、やりますか。戦意が無くなれば、言葉は通じるようになるでしょう。




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