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48 小雨様の立場あってこそ

コピーロボット



我は、小雨の命。


ゲームは、一日一時間。

そして、ゲームのダンジョンは平気で三時間以上あるのだ。

理不尽だよな。 昔のゲームはエンカウントが激しすぎる。


途中で消えたらどうするんだ? ブレーカーが落ちたら? ご飯に呼ばれたら?

ゲーム難易度以外の敵が多すぎるのだ。 そう思うであろう?


そして、今、全ての通信機器の画面が映らなくなったら?


あああああああああああああああああああああああああああ?!


フォンフォン3のクリスタルタワーRTA中なんだが!!!!!!


ーーー



なんだなんだ、スマホが使えんぞ。画面が映らない。


即座に部屋の電話機がプルルルルルと鳴る。


お、電話は使えてるのか? 電話だ。


我は、黒電話を取りに椅子から立ち上がる。


「我だ」


「マユミです。音声通話以外、ありとあらゆる物が画面に出力が出来なくなりました。今そちらに伺います」


トントントン。 部屋のドアが叩かれる。


部屋に来るの、早すぎんか。 緊急事態だしな。まぁ、入れ入れ。


「失礼します、テレビ、パソコン、スマホなどの画面が世見ることができなくなりました。現象は世界に波及しております。その画面では、ザーザーとなぜか、アナログテレビの画面が映ってます。 ハハハ! 今の若いのは、分かりませんかね? ザーザーのアナログ画面より、謎の船の航行映像で 『この動画は、削除されました!』 ですかね!」


マユミ、ニコチン動画中毒者だったのか。意外だな。

剣術しかしてないと思ったが。 人はわからんものだ。


「後、ステータスカードもザーザー画面となってます」


どうなっているのだ??


位相世界で何かあるとは、思えんが。

制裁神が居るし、位相世界に異物なんて入ってこれるわけがない。


あー。異物って・・・・あー、いやな予感がするな。


「マユミ、いやな予感しないか? 異世界からの訪問者。やっぱり、世界の終末のサインだったんだなぁ」


「ハハハ! ご想像の通りだと思いますよ! 滅びの時は、近づいてますかね!」


その笑えない冗談も、これが最後となるか。


そしてマユミの顔、部屋すべてが赤く染まる。

我は、窓の外を見る。

赤く染まった月が地上に落ちるぐらいの大きさで、地上を赤く染め上ている。


世界の終わりの合図だ。

位相世界の理の権能が止まったのだ。


さて、この度の世界も終わりか。

我の独壇場だったんだが。悲しいな。


世界が赤い。赤く染まっている。

全てが赤く染まり、赤く染まる影。

赤い光の影となった黒の部分から何か邪悪な者がはい出そうとしている。


どこからともなく、外国の天使たちが鳴らす終末サイレンも聞こえる。

魑魅魍魎達が、現実世界に跋扈する終末の権能のサイレンだ。


あぁ、星の終わりか。理の権能が動かず、世界が終わるのか。

まさかメンテナンス神を始めとした神々達に強固に守られている、位相世界の権能神達がやられるとは。


次も頑張るとしようか。

我々は、世界が崩壊しても次の世界が構築されるまで無に漂うだけだ。


最後の瞬間は、誰と居ようか。

暫く感じられぬ、人のぬくもりが欲しい気がする。


我はザーザーと映らぬテレビの画面を見ながら、思案する。


なぜ、赤黒メッシュの舞が。頭に浮かぶのだろうか。

あの未熟な年若い、舞がなぜ頭に浮かぶのだろうか。


巫女システム。

神と人の永遠を誓う結婚システムだったか。

まったく興味がなかったが。稀に、最高の幸福を掴む神がうらやましく思ったものだ。

もはや、栓無き事か。


最後は、頂点になった我が戦いで証明するとしよう。

最高神、小雨の命だったと言う事を。


「マユミ。外に出ようか。 我は、最後までここを守らせてもらうぞ。そして、マユミご苦労だった。これで、お前の仕事は、もうないぞ。 剣神の所へ走れ。 そして、お前の気持ちを伝えろ。 最後ぐらい仮面を外して素直になれ。私は、もう行くぞ」


「なっ?! 小雨様!!!!」


マユミ、お前も行け。


そろそろ生物は、動けなくなる。

そして、破壊の獣たちが刻に向け顕現するであろう。

全ての理が乱れているのだ。人は生きていけない。終わりの刻だ。

皆が苦しまない、最後を迎えてくれればいいのだが。


獲物の七節剣を取り出し、風呂敷を羽織る。

さて、世界最高神小雨の命をご覧あれ。


「超加速」 一節唱え、マユミを置き去りにし部屋を飛び出る。


拝殿を駆け抜け、本社の流通課の扉を開ける。

部屋は赤く染まっているが、電子機器のケミカル臭は残っていた。


辺りを見渡すと社員は、机床にうつ伏せになり転がっている。

人を染める赤色が死を連想させる。


その中を歩き、舞の机へ向かう。

机は、アヤメのクリアホルダーと、アヤメのブリーブケースで溢れていた。

舞も机の上に、うつ伏せに倒れている。

我の足音に気づいたのか、舞が固まりながら、奇跡的に首を上げる。


「あ、小雨様。何か凄い眠くて。すいません。 今、報告書を上げますねー」


舞は、そのままコトンと机の上に、うつ伏せに倒れた。


おやすみ。

お前たちが安らかに眠れるようにしよう。

破壊の魑魅魍魎達になぞ、ここを破壊させたりしない。


赤く染まる部屋に静寂が貫く、部屋から生物の気配が消えた。


・・・・・おしまいか。


ガチャリと扉が開く音がする。

もう破壊の獣が来たのか!? 我は、驚き音の方を見る。

そして、そこには。


舞だ!? 舞! 無事なのか!?


舞が、我に一直線に走り、飛び込み抱き着いてきた。

小柄な舞を受け止める。


「小雨様ぁああああ! これは、一体何が起こりましたかー?! やっぱり、ドッペルちゃんに、仕事任した弊害ですかー!? ごめんなさい、小雨様! ごめんなさい、小雨様! まさかこんな事になるなんてー!! だって、誰もがやりませんかー?? ドッペルゲンガーちゃんにお仕事のお任せを! ああああ! ごめんなさい、小雨様!」


我の方が驚きだよ、舞。

まさか誰もが想像はするが実行には移さない、ドッペルゲンガーに仕事を任す行動を平気でやるとは。

社会的モラルは、持っておらぬのか。

あ、いや、すまぬ。世界も終わる。

もはや、栓無き事か。


「無事なのか?!」


我は、抱きしめた舞の体をぺたぺたと触る。

ほんとにペタペタだ。なんてことだ。

すまぬ、セクハラでの裁判は勘弁して欲しい。これは、スキンシップだ。


「全然無事ですよー?? 小雨様! 何がどうなってますかー? ドッペルちゃんが寝てますよ! ドッペルちゃん、寝なくていいはずですよね?! ほら起きてくださいー!? まだ、仕事が残ってますよ!」


こいつは、いかん。 モラルがゼロだ。

あの鏡石の銃を法的効力で取り上げよう。

舞は、力を与えると制限なしに使うタイプだ。


あ、いや、もう力も意味がないのか。世界は終わるのだ。


そして、ドッペル関係が出てくると、聞かねばなるまい。

なあ、今の舞。本物の舞なのか?


おっと返事はいらぬ。 取りつかれたり、複製者は、皆「本物です」 と言うからな。

マユミが見分けるのを得意としていたな。 皆、例外なく一度捕まえるからな。


我は舞に赤い月の説明をかいつまんでする。


舞、どうする? 世界の終わりなんだが。

後は、最後の瞬間まで破壊を止めるぐらいしかできない。


「小雨様、いきましょうー、私の銃と小雨様の剣があれば、大体暴力で解決できますよー」


舞はドッペルの体を漁り、ポケットから魔銃を取り出す。


待て、なぜ、ドッペルがドッペル本体を制御できる銃を持っているんだ。

ねぇ、この舞本物だよな?

まぁ、世界が終われば、この疑問も栓無き事。


二人で、戦いながらの最後か。最高の結末だ。

舞。何が何でも指一本、何者にもお前には触れさせんぞ。


さぁ、行こうか。



―――


我と、舞は外へ出た。


異常なまでに大きく、星に近づき赤く染まる月が世界を照らしている。

不協和音のサイレンの権能が、鳴りやむことが無く狂ったように吹かれている。


世界の終わりにやってくる破壊神が星を破壊しにくる。

我で倒せるかな。

破壊神に勝ったとしても、明日から星は機能しない。

権能が一つでも落ちたら、世界の終わりであろうが。


異常なまでに、赤く大きい月。

赤い月が、闇に包まれる。日食の様に月が闇に食われる。


そして闇が、通り過ぎる。


破壊神と破壊の獣たちのご登場だ。

これは、その演出みたいな物だ。


世界に血染めの赤い光が戻る。


目の前には、制裁神、韋駄天、そして、破壊神がいた。


黒髪ロングの制裁神が、顔を上げゆっくりと近づいてくる。


「啓示の権能は、まだ生きています。取り返さねば」


「小雨っち、禁薬の霊薬もってますよね~。話が出来すぎてるきがおりゃんすが、啓示の権能さえ取り返せば、全てを戻すことができるでおりゃんす」


「明日は週末だってのに、まさか終末が来るとはな~。 終末は3000年後だ。 今日は、働く訳がないだろう。俺たちみたいなのは、働かない方が良いのだ。そうだろ?」


我と舞は、赤く染まった顔を見合わせる。

まぁ、話を聞こうか。

そうだ、破壊神以外の話を聞こう。不労所得系の話は、なんか腹が立つからな。


――


制裁神が事の顛末を説明してくれた。

世界の隔たりを通り抜けて、神域にアクセスした何者かが啓示神を異界に引きずりこんだ。

位相世界の神々が確認していたそうだ。


繋がりを見るに埼玉ダンジョンに連れ去られているとの事だ。


異世界転生者を相手に全力で啓示神を取り返さなければ。


「異世界転生者、やはり世界の敵だったか。 制裁神、横流しで転生させてた魂3柱の処分マジ頼んだぞ」


「仕方ないわね~。 あぁ、これ終わったら仕事3倍与えるわ。 神だし、人権ないからいいわよね。 24時間働かせましょ。私も、もう我慢しないわよ~」


うむ、それがいい。


「小雨っち、剣神はこの月に負けないはずですが、来てないでおりゃんすか?」


「剣神とマユミの邪魔をするな、今いい所だろう。・・・マユミに暇を出した。 上手くいったら、婚姻の祝詞の準備をしておこうか」


「おー! ついにマユミが素直になったのでおりゃんすか! 世界の終わりが来て初めて、定命の短さを理解したでおりゃんすね~。 詩的な事で」


我々も行こうか。


「俺もいくのか? マジに? ダンジョンだろ? 力でないって。 そもそも労働指定時間外なんだけど? わかる? 次の終末は、3000年後なわけ」


チャラ男の話を聞くな。労働は尊い、社会の根底だ。


破壊神。3000年に一度しか働かない、位相世界のヒモ(収入にぶら下がる存在)である。

毎日、破壊神がやることと言えば自分磨きと称した何か。

そして破壊神は、顔が良い。ヒモ生活が成り立つわけだな。

顔が良ければ大体オッケー。位相世界も地上世界と同じだな。


さて、準備と覚悟は終えた。

ダンジョン入り口へ向かおうか。


――


赤く染まる、物々しいダンジョンゲートの前についた。


ゲートの前に、剣神とマユミが居る。そして魔族アリエノールもだ。


剣神とマユミが、仲睦まじく、手を繋いでいる。恋人つなぎだ。


そうか、そうか。


我の前に、剣神とマユミが跪いてくる。


「「この御恩、生涯忘れません。」」


世界が救える可能性がある今、正直惜しいが。

よかったな、マユミ、剣神。


「何、剣神の巫女にするわけ? 祝詞あげちゃうよ。 破壊神の祝福凄いわけ。 どんな苦難の道のりも、二人なら乗り越えられる祝福をあげちゃうよ」


「折角ですので、私も祝詞を上げますね。肉体的メンテナンスの祝福を。どっちか浮気したら、発動できますわよ」


うわ、めっちゃいい祝福じゃないか。もらっとけ、もらっとけ?


そして、アリエノール。よく来てくれた。


「義によって、助太刀致します」


どうなってるんだ、お前の所に来た転生者。江戸からなのか。


「わー、剣神様のお相手、マユミ統括でしたかー。 まぁ・・・、知ってましたけどねー」


だよな。

ま、行こうか。イチャラブながら自分たちの世界を形成しそうな輩はほっとけ。

見てるだけでイライラする。


さぁ、ダンジョン攻略だ。

我と、マユミ、舞、アリエノールが中心になるな。

神々は、能力が激しく制限されるからな。


「あ、中には、わっちは行けないでおりゃんす。高位神でも、付喪神でも無いからダンジョンでほとんど力出せないのでぇ~。こっちの方を見てるから、後は宜しく頼むでありんすね~。小雨の帰還を首をながーくしてまっておりゃんす」


韋駄天がダンジョン前で、別れる。

ダンジョンゲート前で、見送ってくれるのか。


さて、この星のフィナーレだ。



閲覧者の人数を日別で確認できるシステムが画期的だよなぁ。と思いました。

ここだけ凄いと思います。


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