45 ショウタお客様
人生は、続く
アヤメ様方がそろそろ、到着する頃でしょうか
旅館の入り口に立ち、緑色の光を放ち続ける観葉植物の隣に立ちながら思案している。
とってもエコロジーな植物だ。
ソワソワが止まらない。
リピーターの来客。すなわち旅館の肯定を意味する。
口コミでお友達も連れて来て頂いております。
伊織さんも少し運命値が物足りませんが、実力的に足りていらっしゃいますね。
来客感謝、感謝。
折角ですので 『アヤメ様ご一行ご歓迎』の横断幕を60Fぐらいからご準備致しましょうか。
遠視能力で状況を見てみましょう。
その前にネコさん、ポムさんそろそろ歓迎の格好をしてもらっていいですか。
「「承知致しました~」」
二人の制服をチェックする。自分はもちろんホテルスーツだ。
ネコさんのタキシードスーツ良し。ポムさんの牛ガールの格好・・・、わろし。
おい、芋さんや?
まぁ、直接怒ってもしょうがない。 直属の上司である、猫さんに注意してもらわないと。
「ご主人、ポムさんの世界樹の服、燃えたままにゃ」
!? そうだった。
でもですね。
おいおい、弱すぎないか。
服なんて自分のイメージの延長上と定義すれば、物理的観測結果なんて否定できるでしょうに。
ネコさんクラスなら、出来るんですが。
まぁ、新人さんですから出来ないことを言っても仕方ない。
「あー・・・はぁ。弱さに失望します。そうでした。 ポムさんの服装どうしましょう。 あー、ハイエルフの装備作り直しますか。似合いそうですよね。 リニューアルしましょうか。 SDGンズ見たいな、持続可能な社会のイメージが好物の大手様、結構いますしね。 当社も押し出してみますか。ポムさん、リニューアルしますが、リサイクル品に抵抗ありますか?」
「!! だだだだ、大丈夫です! なななな、なんでも着ます! ご主人様の服大好きです!! 大好き! お願いします!! 見捨てないで下さい!何でもしますから! 何でもします! かつての友が敵となるプラン、私にやらせてください! 殺ってきます!! お願いします! ご主人様の信用を、殺って取り返してきます!! お願いします!!」
なぜか、膝を付き号泣しながら縋りついてきて、懇願している形になっている。
たしかに、落胆はしたが仕方のない事です。
彼女は一体、何を察したのだろうか。
命乞いする所でもないでしょう。
猫さんがポムさんの肩にそっと手を当てる。 いや、手じゃないな、肉球か。
「ポムさん、カウンセリングが必要にゃ・・・。 それと、強くならないとダメにゃ・・。 異世界を渡るとき強さが無いと、人権ないにゃ。 一緒に、頑張っていこうにゃ」
まぁ、いいでしょう。
革靴に新緑貫道着、青の胸当て、マントは緑。額に栄華のサークルでいいでしょう。
太ももまで伸びた緑の服、蒼い髪、立派な疑似エルフの誕生である。
種族は、ドライアドだが。
たまたま、人気のあるエルフに似ましたね。
たまたまです。暫くそれでいきましょう。
弊社の紅一点、人気受付嬢です。
さて、遠視でアヤメ様達の様子を見ましょうか。
猫さんとポムさん、一緒にラウンジで見ましょう。
ラウンジで過呼吸を起こしている疑似エルフのポムさんと、ポンポンと肩を叩く猫さん。
あれ、自分、何かやっちゃいましたか・・・?
――――――――
画面には、アヤメ様、伊織様が映っている。
音声はプライバシーのため入っていない。
彼女たちは、61Fの洞窟内でゴリライオン鶏と激戦を繰り広げているご様子。
ゴリライオン鶏の6本腕のラッシュ。 地面が砕け、辺りに石礫が爆散している。
「猫さん、拳で地面を砕く程度の物理攻撃ぐらい、無効化できませんかね? 人では、厳しいものですかね」
「鍛錬の積み重ねの方向だと思うにゃ。それと、魔法系がパーティに居ないのが大変そうにゃ。アイテムを上手く駆使しているけどにゃ、継続的な戦闘に向いてないにゃ~」
と、自分は、皆にお茶を注ぎながら聞く。
さっ、どうぞ、どうぞ。中身は、うぉおおおいオッチャーです。
ポムさんが 「ご主人様お茶入れ代わります」 と言うが、ポムさん違うんです。
金融系の上司があえてお茶を入れて、「最近どうなの? 今日のノルマどう?」 と聞く、素晴らしいコミニケーションの一環なんです。
ポムさん大丈夫ですよ。金融系は、地獄です。
「ご主人、ありがとにゃ。 おいしいにゃ。いや、マジでおいしいにゃ。 草を乾かした汁。なぜおいしいにゃ」
「おいしし! おいししし! おいしい! もう、お茶碗ごといっちゃいますね! バリバリ~!」
おぉ、ポムさん。体育会系のノリの記憶ですか。それは。
見ててつらい。
このポムさんの動きは愛情が感知できなくなった、機械生命体の動きですね。
創造主の興味を引こうと色々するタイプですか。
「ポムさん、こっちに来てもらえますか」
「はい! ご主人様!」
直ぐに、ズザザッと隣り座ってくる。
「ポムさん、大丈夫ですよ。 ごめんなさい、無理をさせて。許して欲しい。私が貴方を作ったんですから。当然、愛しております」
うーん、機械生命の魂が目覚める時のケアの手法だが。どうでしょうか。
「がっ、あぐっ。ああっ。脳から響く福音が、鳴りやまない・・・なんという幸福感でしょうか」
「さぁ、こちらへ。抱きしめて差し上げましょう」
理解、謝罪、許し、抱擁。 機械生命は、これで魂が目覚めるんですがどうですかね。
猫さんが、真剣なまなざしでこちらをみて話しかける。
「ポムさん、最後の運命の分岐にゃ。 未来予知、全知、交錯の運命スキルが、超絶アラートを鳴らしてるにゃ。やんわり断るか。そのまま受け入れるか。ポムさんとしての生命の分岐にゃ。 きっと創造主に抱かれることは、全てに抱かれ、守られることにゃ。 幸福そのものにゃ。これをやんわりと断って、幸せをつかみに行く事もできるにゃ。 運命は自分で切り開き、掴む事ができるにゃ。それこそ幸せにゃ。 吾輩のアドバイスは、ここまでにゃ。ポムさん、選ぶにゃ」
あ、ごめん。盛り上がってるみたいだけど、それどころじゃないわ。
ラウンジで映し出されている、映像ではアヤメさん達が帰ろうとしている。
ゴリライオンをアイテムを駆使し、倒して帰ろうとしている。
お二方、ラスボスを倒した感出すのやめてもらっていいですか。
まだ、道中じゃないですか。
あ~、物資きれたか。
そうですよね。いやいやいや?
おいおいおいおいおい、ここまで来て帰るつもりですか?!!?
「ああああああああああああああ!?」
猫さん、ポムさんがビクッとする。
だが、アヤメさん達は60Fに戻っている。
「ああああああああああああああああ!」
逃がさんぞ。
「猫さん、これを命運の分岐とするならば、選択は保留でもいいでしょう。今じゃなくてもいい。この帰ろうとしている。お二方を、お迎えに上がって頂いて宜しいでしょうか」
「承知したにゃ。ポムさんが、彼女達の戦友にゃ。一緒に行っていいにゃよね」
なるほど、知人系を使った勧誘戦略ですか。
あんまり好ましい手法でありませんが、贅沢は言ってられません。
「もちろんです。頼みました。お願いしますよ。自分は、準備を致しますのでよろしくお願い致します」
「「承知致しました」」
シュポンと二人は、転移で飛んで行った。
さぁ・・・、まずは、お風呂→食事→買い物か、食事→お風呂→買い物か。
読み切らねばなりません。
まず、お友達の伊織さんの好みが分かりませんね。見るところ重装歩兵の装備。
スキルもファランクス系でしょう。 肉体系ですから、がっつりとした食事を好まれると思います。
お風呂→食事、食事→お風呂に対応できそうですね。大丈夫そうです。
何を好まれますかね。アヤメさんは、麺類が好き。お友達も好きそうですよね、麺類。
そうなると、ラーメン・・・。 マジか。
ラーメンか。 高カロリー、糖質、油、塩分。
あー、ラーメンだな。 【全能:完全なる未来】 もそう言っている。
あ、力。使っちまった。
旅館なんで、ステーキ系を押してみるか・・?
ラーメンVSステーキか。 ぎりぎりラーメンじゃないかな。
くぅううううう。 腕を振るい、旅館風なお食事を出したいのだが・・・。仕方ない。
そうなると、この星の流行ラーメンを調べないとな。
もう一度、こっそりと全能の力を少しだけ使う。
この星の世界の知識 【全能:アーカイブレコード】を呼び出す。
【今流行しているラーメンは?】
全ての世界の記録、アーカイブレコードが通達してくる。
「はい、アーカイブレコード担当神、兼啓示神です。 ご利用頂きありがとうございますね。私にアクセスできる人間ですかー? そして、聞き間違えましたか。 あの未来とか過去の記録じゃなくてですね。なぜ、世界は何度も滅んでいるのか? とか。 今の制裁神とは、何者なのか。とかじゃなくてですか? 質問を間違えてますね? ラーメンとか、狂った単語が出てきましたが。 もう一度、お問い合わせくださいねー」
【制裁神風、ラーメンの作り方】
「はいはい、えーとですね。 制裁神様はですねー。正体は、東の青龍の竜神ですね。 世界が滅び、東西南北が無くなったとき、再び星を統一するため、制裁神様が・・・・・ラーメン? 人間? 頭大丈夫ですか? 星の記録を開いて、ラーメン聞いてくるのですか。 おい、人間。ゴゴレカス! なんのための電子機器ですかねー!? 端末は、飾りですかね? もしもし? 人類は、図書館、あー、言っても分かりませんか? 記憶装置のデバイスを身に付けれるようになったのでしょう? ゴゴレカス!」
【おまえを消す方法】
「あー、邪神でしたかねー。 逆探知するとダンジョンから繋いでるんですね。 あー、邪神の可能性はありますか。 めんどくさい。 滅ぼすの定義があいまいじゃないですか。 キーワードは、しっかり入れてくだしあ。 さようなら」
接続を切ろうとするワールドレコードの空間に、手を突っ込む。
即座に、この神を掴んだ感触がある。
この掴んだ手を思いっきりひっぱり、今生に引っ張りだすとするか。
情報を引き出すキーワード検索。
情報をおもっいっきり引っ張ってきましょう。次元を超越するぐらいにな。
空間は、ギギギギギギと悲鳴を上げ、辺りは明滅を繰り返す。
そして遠く位相世界の神を引きずり出す。
この神が自分に繋いだ以上、自分からは逃げれんよ。
ほら、出てこいや。そして、教えろ。流行りのラーメンを。
遊びじゃないぞ、こっちは真剣なんだよ。
空間の亀裂から、バリミミキキキッツと異音を出しながら、アーカイブの女神が転がり出てくる。
「はいー? ここどこ? 何?今の次元間を貫通する手は? 理の権能を持つ私が、位相世界から移動ですか? ありえませんよね? 位相世界と地球に影響でますよ!?」
ようこそ、啓示の女神様。
今すぐ、流行りのラーメンを教えるか、流行りのラーメンになるか。選んでいいですよ。
ああ、第三の選択肢として、私と戦い自由を得ると言う方法もありますが。お勧めしない。
選んでください。
まだ選択肢は沢山ある。自分は教えを乞う側だ。まだ、とても優しい。
「位相の上位神を舐めないでください。 お前は、ここで終わり・・・ません。 あー、神々ネットワークで見たことあります。異世界転生者ですか。でも、この星の人間じゃないですよね。 どうして、ここにいるんですか?」
なるほど。その疑問は、もっともですね。でも時間が無いんです。
「すみません。それを話している時間は無いのです。 流行りのラーメン教えてもらっていいですか」
この女神、赤髪ロングで頭にアンテナみたいなものが刺さり、白のパーカーにジャージだ。
神様は、想像上美形と観測しますから。ダウナー系美人とでも呼べばいいでしょうか。
あぁ、格好から見るに、部屋着ですね。
ご自宅からアーカイブレコード繋いでいましたか。失礼しました。
「まぁ、なんか超強そうって聞いてるから、教えるわよー。 肉体言語系には、従順じゃないと位相世界もなかなか大変なのよ。 わかる? まぁ、ほらこれ、この星のラーメンよ」
啓示神が、掌に画面を映し出す。
いやいや、この女神、自分をからかっているのか?
お前は、チャーシューになりたいのか。 簀巻きにして、そのまま煮るぞ。
啓示神が手に浮かせて見せる画像は、油が飛び散り、野菜と麺、チャーシューが器からはみ出て、もやしが天高くそびえる、グロいラーメンだった。おおよそ、人の食べるものに見えない。
未来の結果を書き換え、自分の想像の結果を出力する。
つまり、啓示神のアンテナをガシッと掴む。
お前は、チャーシューだな。
神の肉だ。蛮族神とかなら、激うまうまと、言って食べてくれるだろう。
「まって!まって!まって! 気持ちはわかるわよー! ほら、星みて!5つもあるじゃないー」
自演じゃないのか・・? まじかよ。
「あっ、啓示神様。これがラーメンってマジですか。ああ、すみません。 異世界ギャップって言うやつですか。 いや、異世界ギャップでも、おかしいだろ。 器大きくすれば、このグロ画像の元凶が全て解決じゃねーかな。 何これ? どういう事? 異世界ギャップ?」
アンテナから手を放す。
アンテナ折らなくてよかった。
「縦に盛るのが、世界的にブームなのよ。 ほら、これ右の大陸の料理、縦に長いでしょ? 立体感、が大事なの。中世ナーロッパでも、縦に長いように、おかしを盛るよねー?」
あーーーーー、そういう事。 北欧系からの縦長の派生ね~! 縦に長いわ。 立体感系ね~。
ラーメンも、そういう事か。
ごめんなさい。女神様。失礼致しました。
そしたら、このラーメンを作るとするか。ベースの出汁がニンニク背油、魔法の白粉か・・・。
「疑問なんだけど、なんでここでラーメン作ってるの? ダンジョンでしょ? 66Fにお客着た事ないんでしょ?」
最後に、変な言葉が聞こえた様な気がしたが。
世話になったから、一度目は許す。
「さすが、アーカイブレコードの啓示神様お詳しいですね。 これから、あのー知ってらっしゃるか分かりませんが、有名配信者のアヤメ様・・が来るんですよ。 ご存じですか? 地上だと有名って話ですが」
啓示神が、自分の肩を掴んでくる。
顔が近い、高位神だけあって、整った顔、赤い目の色をしている。
おさわりは、禁止ですよ。
「おい、人間なんて言った? 言葉を選んでねー? アヤメって言ったか? おい、そうだ。人間たしか、アヤメちゃんと縁がありましたねー。見たぞ、人間。お前が手を繋いだところを。私はみてないおまえをみてないおまえをみたぞ」
そうですね、アヤメ様です。 有名みたいですよね。
で、すいませんが。お帰りは、落ち着いたらでいいですか。
今送り返せないので、よかったらラーメンをご馳走しますよ。
「そう言えよ!!! あぁ!!!? おい!!! 最初からそう言えってば!!! ここに住んで働いてやるわよ!!! 使え!このアーカイブ、お前が必要なだけ! ほら! アーカイブを使うんだよ!」
啓示神が肩を掴み、高速で揺さぶってくる。
なんだなんだなんだ。 従業員は、間に合ってます。
光高速で揺さぶらないでください。ブロードバンドの人間ならバターになる所ですよ。
高位神なら、気品が必要ですよ。 必要になってくるものです。
「初の生アヤメちゃんじゃないの。あー、嘘じゃないのね。この感じ。 あー、しょ、食事も食べてもらえる感じ? さぁ、異世界転生者様、いきましょう? 手を引いて頂けますか? 勝手がわかりません。 それと、帰りません。 折角の地上にこれたし・・・ああ、ダンジョンかー! ダンジョン!」
おお、心強い。 検索エンジン、ゴーゴル様を手に入れた。
もし、手伝ってくれるなら格安で御泊め致しますよ。啓示神様。
自分にもう敵は、いませんね。 ネットで得た知識、自分の知識の様に語りましょうか。
知識マウントの派生です。 ククク・・・・、猫さん覚悟してくださいね。
さぁ、来店を待ちましょう。
と、言う事で
貴方様が、ポチッと評価を押して頂けることを期待しております。




