41 小雨様接待される
果たして、一か月走り切れるか。
我は、小雨の命。
小雨。
風呂敷であり、付喪神の時の名前である。
風呂敷の柄が小雨模様だったからだろうな。
剣神も別の名前がある。『雨の村雲』 と呼ぶと、凄い恥ずかしがるので呼んでないだけだ。
昔使った、二つ名だしな。『振れば命散る氷の刃』 か。最高に恥ずかしいだろう。
誰もが抜き身の刃の様なやんちゃな時もあったものだ。
そして、韋駄天は、韋駄天だ。あいつ、元から由緒ある神だしな。
少し時が戻るが、引き取った魔族と一緒に結界内で食事をして。朝一番に行う魔族の契約まで、監視する事にした。
暴れられても我なら勝てるし。
大人しく待っていても、朝まで暇なので魔族とゲームでもしようと思ったが、やった事が無いとの事。
そして魔族の簡単な、紹介を聞いた。
アリエノール=ポレット 青い目をした、銀髪の露出度が高い蝙蝠っぽい服。
少し背が高い。ザ・魔族って感じだ。まぁ、契約後は、我が社の制服着てもらうが。
彼女の星は戦いと侵攻を主とすると言う事だ。
戦って奪えと。蛮族帝国じゃないか、和平より従属が望ましいと。
ぬ? この星も大して変わらんか?? まぁ、栓無き事か。
彼女に一先ず、安全策を取り魔法とかスキルを一時的に封印したので、拘束を解き食事をしてもらうおう。
先ほど収納した、中華の余りを小分けにして取っておいた中華を机の上に並べる。
アリエノールは、皿に盛られたエビチリを取り、箸を使い口に入れていく。
口を少し反対の手で押さえ、青い目を見開く。驚きの表情が伺える。
「こっちの食事、凄いおいしいですね。驚きました。 エビチリって言うんですか。凄いおいしいですね。後、あのサイコパスの女から守ってくれて助かりました」
おいしいよな。エビチリ。 そして、世の中大体がサイコパスだ。気にすることでもないぞ。
ゲームの攻略を詳しく語っても、良いね! がもらえん社会だ。世の中がおかしいのだ。
RTAの短縮って凄いんだぞ。分かってくれ。
そしてアリエノールが中華を食べながら、我のゲーム保管棚を見て言ってきた。
「ファ無コンぷーたーは、できませんが、将棋ならできます」
「いや、まて。お主の世界に転生者来てただろ。将棋出来るのはおかしいだろ。
そもそも、ファ無コンってセリフどっからでてきた」
我は驚くが、棚から将棋セットを持ってくる。
そして、将棋を取り出し机に並べる。
まぁ、久々にやってみるか。
普通に将棋で時間を潰す。
アリエノールお主中々、強いな。
「書記官ですから、将棋が強くないと務まりません」
どういう事だ。仕事に将棋関係ないだろ。
ここは、接待将棋で我に勝たせる所では無いか。
「将棋で手加減は、不作法と言うもの。 いざ、尋常に」
お主、西洋魔族と違うのか・・、何者だ。
――
そして、朝になりアリエノールは、管理課に連れていかれた。
普通に将棋に負けた。 「その手待たぬか?」 と言ったら、「戦場で敵はまってくれません、お覚悟を」 って言われた。
エンジョイとガチ勢は、常にすれ違う運命なのか?
そう上手くいかないのが世の中か。
さて、アリエノールと契約後、物流課の課長の下にでも付けるか。
新人を仕事量が多い営業ダンジョン課でめんどうを見てもらうには酷だろう。
後は、任せたぞ。
アリエノールの連行を見守ったのち、プルルルと連絡がはいり、マユミからショウタ殿との取引が終わり契約をした事の報告を聞く。
取引が終わり、ポーションLV8と、「超加速の魔導書」 の納入が決まった様だ。
韋駄天の上級加護と似たような能力のレアドロップじゃないか。
おいおい、ショウタ殿。
今後とも宜しくお願いします。
そして、舞が商品受け取りと、現地視察にいくとの事だ。
ダンジョンか。強力な護衛が約束されたダンジョンか。
我も行きたい。 ショウタ殿、猫殿、ポムだろ? ダンジョンには、過剰戦力じゃないか。
ショウタ殿は、転移も出来るはず。
ダンジョン行きたい。 奴らと接して分かった、契約を重視するタイプだ。
サイコパスだと思うが。人の部分として信用できると思う。
電話口のマユミは、何か言いたそうだ。
おっと、マユミ 『御立場をお考え下さい』 は、無しだ。
取引の成立を機として、上の者が挨拶へ赴けば、舞の顔も立つと言うもの。そうだろう? そうだな?
よし、舞に電話だ。
後、マユミ、魔族のアリエノールは、物流課の課長に任すから、様子は報告で確認してくれ。
「・・・おおせのままに」
棒読みやめてくれないか・・。怖いわ。
マユミとの連絡を切る。
さぁ、そして、舞に電話だ電話。
ダンジョン深部にいけるかもしれないとか、ワクワクしてきた。
プルルルル、プルルルル ガチャリ。
「舞か? 主任おめでとう、今後の一層の働きを期待します。 給料大幅に上がります。上がってなかったら直で言って欲しい。総務課もどっかで監査入れないとな。 失望されるようで申し訳ないが、全体の会社の把握って不可能なんだわ。すまんな。 それと、今どこだ? 我もショウタ殿と行きたい。待っててくれるか? 今からいくから。うんうん。すぐ行く。すまんな。頼む。そしたらまた後で」
我は、通話を切り、ダンジョンへ入る準備をする。
我の送迎などいらん。数百メートルぐらいダッシュで行くわ。神なめるなよ。
ーーーーーー
シュタタタタと小雨カンパニーからダンジョン前に着く。
風を置き去りにして。 冒険者と通行人の視線も置き去りにして。
物々しいダンジョン入り口に着く。
黒髪スーツのショウタ殿がいる。
なぜ皆、この男を異常に感じないのだろう、黒髪スーツの男が、ダンジョン入り口に立っているんだぞ。
登山を半袖短パンで行くぐらいの、軽装だろう。
まぁ、いいか。この度、世話にならせてもらおう。
そして舞もご苦労様。
その腕を組んで待つ不満を表す姿勢、どうかと思うが。
無茶言ってるのは我だが・・我、神ぞ。
まぁ、よい。
ショウタ殿。ダンジョンでは、宜しく頼む。我、ダンジョン内で力が使えないしな。
「使えるようにします」
うんうん、そうか使えるのか。 つまり・・・なんでだ?
ショウタ殿から、髪留めを貰う。素朴な髪留めだ。太古を彷彿とさせる懐かしい感じがする。
前髪に刺し、髪を後ろに持っていく。似合うだろうか。
こう見えても、女性の神なのだ。贈り物にアクセサリーは、少し重たい気もするのだが。
付けた方が相手も喜ぶだろう。折角見繕ってくれたものを断るのも悪い気がするしな。
そして、ショウタ殿の制約だろう。
皆で仲良く手を繋ぎ、ダンジョンに入る。
ダンジョンでは、信心が届かない。人以下の力しか出せない。
神の力が無いと、運動不足のただの付喪神だしな。どうにもならん。
ダンジョンに入る。体が重い。
ショウタ殿が、謎の信心の繋がりを作りアイテムボックスの力を使えるようにしてくれた。
髪留めの効果らしいが。
おいおいおいおい、落ち着け。何納得しているんだ。 出来ないものは出来ないはずなんだが?
まぁ、異世界転生って凄いって事か。なんでもありだな。
洞窟内のダンジョンで、アイテムを出し入れする事が出来ている。
最高にテンションが上がる。
舞どうだ~? 我凄くないか~?
「小雨様、出来ないってことは出来ないはずなんですー。つまり、出来るってことは出来ない事ですー?」
そうだよな。 分らん。
ショウタ殿が、連絡を入れているようで、接待の段取りをしてくれている。
ダンジョン接待。アヤメが言う事には、66Fは旅館の様だが・・?
ショウタ殿が武器を確認したいと言ってきた。
必要な事だろう。我々はお荷物であるがパーティメンバーだ。
武器の確認をショウタ殿がやり終わる。そして、何かめまいがする。
そして、ショウタ殿の店に着く前に、舞のLVを上げたいみたいだ。
「LV上げないと死ぬので、さ、LVを上げましょう」
いきなり、目の前が暗転する。
シュポン!と言う圧と共に、視界が宮殿の様な場所に切り替わる。
目の前には、ドラゴンだ。体に紫電を纏うトカゲ、見るからに勝てそうにないモンスター。
視界の暗転後、謎に我らはドラゴンに対面させられた。クレイジーすぎる。
なぜか、一目散にドラゴンが逃げ出す。
そして、我々も一目散に逃げ出そうとする。
無理に決まってる、パワーレベリングでも、場所を選んで欲しい。
ショウタ殿、ドラゴンはボスクラスなのは、常識だろう。我らは逃げるぞ。
謎の力でドラゴンの方に、グィッと体を向かされる。
なんだなんだなんだ
「はい! 打つ! 今ですよ! 打つ!」
体が、構えを取らされる。「おおお!?」 「わああああ!?」 と、もう訳が分らん。
剣を振りぬけばいいんだろう。
隣の舞は、銃から波動砲を打つようになっていた。
なぜか、舞が何か増えてる。いや舞が増えてる。増えた舞が、何か2発撃っている。
増殖バグは、レギュレーション違反じゃないのか。
大丈夫か、ロムのスタックは、フリーズに繋がるぞ? リアルタイムアタックでは、危険な行為だ。
そして、我の剣からビームが出てる。ビームだぞビーム。
7本ある角みたいな剣の部分から、ビームが出てる。ビームだ。しつこいだろうが、ビームなんだって。
そして、ドラゴンが滅した。 面白いアトラクションだった。
ショウタ殿、さすが異世界転生者。
「ナイス! ショット! いやー、今の300ヤード出てましたよね! おみごとです!」
今日は、ゴルフの接待か何かだったか? ゴルフ感覚で、転生者はドラゴン倒すのか?
ドラゴンの首は、300ヤードぐらい飛んだかもしれんが。
「お見事な実力ですね!」
あ、違うのか。これ、我々の実力なのか。そうなのか。
いつの間にか、舞が増え、剣からビームが出るものなのか。
異世界やばいな。
そして、武器に何かしたな。
対価無い力は、相反する何かが帰ってくるぞ。
そして、逃げ惑うモンスター達を刈っていくとなんか階位がめちゃめちゃ上がった。
舞もなんか強くなってる。 魔力の気配が凄い上がってるな。
「あぁー、私消えろ、私消えろ。 こっち向くな・・、こっち向くな・・、あっ。私が向いてるから向いているのか。 いや、そっち向かないで。 意志あるみたいじゃないですかー? 虚像ですよねー? あっ、今、イラっとした顔しましたね。 頭おかしくなりそうですー」
舞の虚像と話している。楽しそうだ。
あぁ、そいつ地上には、持ってこないで。
地上に出ても、虚像が消えるまで監禁生活だよ。
それ、イレギュラーだよ。もちろん、監禁部屋で仕事もしてもらうが。
「舞さん、装備をしまって見てください。ドッペルゲンガ・・、じゃなくて虚像は消えますよ。」
「今、ドッペルっていいましたかー?? つまるところ、もう一人の私ですよねー。 あぁ、良かった。消えるんですねー」
舞は、装備をしまう。 舞のドッペルゲンガーは、いやいやと首を振りながら消えていった。
良かった良かった。 さて、我のこのチート剣どうしようか。捨てるには、惜しくなってきた。
一度手に入れた、力。何と手放したくないものか。
ガンガンとダンジョンを進んでいくとショウタ殿が、声をかけてくる。
辺りは、一面芋畑のダンジョンだ。
「そろそろ、着きます。 この芋畑でポーションと、魔道書を作ってます。 見てください地産地消を目指してるんですよ。 ほら、異世界転生って無限力を引き出す的な所ありますでしょう? それに頼らずですね・・・やってみようと。 そうなると出資となるわけじゃないですか・・・。 アジェンダーが、テレポログラムでして・・・・。 パットでリコールな・・・」
あれ、おかしいな。我この話題に、興味がない。
お主の力、こんなもんじゃないよね? もっと自由にしたら良くない?
でも、自由すぎたら、この星が拒絶し侵略者に対し全力で戦うわけだが。
まあ・・・、好きにさせようか。 神の力を持ちながら、人で居たいとは難儀な性格だと思う。
神側で暮らせば、その苦悩からある程度解放されるぞ。
「ショウタさん。多分こんなもんじゃないですよねー。どうして制限してるんですかー? 自重しない神様沢山いますよー? もちろん小雨様の人気があるのは、物凄い貧乏性っていうか、節制がきくからですがー」
舞? 舞? 今、我の事ディスった? そして、この転生者のヤバさわからんか?
我は、少しフランクに接しすぎたか・・・?
と言うか、よく転生者のデリケートな所を聞けるな。うーん、若さか。
ショウタ殿は、笑いながら答える。
「舞さん。テレビゲームやった事あります? ゲームで例えると・・・、あー、今、テレビゲームって言わないですよね。 あー、ファ無コン、違うな。 プッレステェ? セゴ信者に呪われるか。 お? ソーシャルゲームか! いや、コスパ悪いな。今ゲームの事、なんて言うんでしょう」
「今の子は、スゥエッチ、プッレステで通じるな。セゴ関連は、パチン子で頑張ってる」
「地獄の様なクソ次元ですね。 こんな星滅びてしまえばいいのに。出来たら、元の全てが正しい次元、セゴの世界線に戻りたい。 セゴランドがマスコットの夢の国へ行きたいものです。そうです。全てのガンドムが、バーチョロンの世界線へ」
無いぞ。多分。
思い返せば、あそこは意外とユーザー置いてけぼりだったよな。革新的で面白いゲームこそが至高。素晴らしい話だ。
だが、マーケティングが重要視される前の話だ。今となっては、栓無き事よ・・・。
今は、同じものを味が出なくなるまでこすり続ける事がマーケティングだ。
大陸用のマーケティングの波は、もう止まらんよ。 仕方のない事なんだ。
それぞれのクリエイターに生活がある。安定してお金を稼がないといけないんだ。
誰だってそうだろう? 非難される言われは無い・・・。
あぁ、ショウタ殿。 我も、お主の次元渡りについていきたいな。
「おーっと! 舞さん、失礼しました! LV99が限界の世界でLV9999で遊んで楽しいと思いますか? 暮らしに制約が必要です。 確実に。 じゃないと、人の感覚が保てないんですよ。 異世界転生、思ったほど楽じゃないんですよ。 つまり、世の中の煌びやかに見える仕事、全てが意外に大変だと思います」
「おぉー、何か感動しましたよー」
―――
我々は、歩く。
そして、旅館を見つけたが。何か、ネオン色、でピカピカ館が光ってる。
『ウエルカム』 魔法の炎で高々と掲げられ、辺りに花火が打ち上げられている。
色とりどりの光線が地面から打ち上げられ、光り輝き洞窟の天井を照らす。
まるで、昔のネオン街じゃないか。
「おぉ?! ショウタ殿、接待と言うと、そういう事だったか。 夜の街な感じか? 地上ではちょっと、こういうの今厳しいからな! こういうのは、ショウタ殿の感覚で作られたのだろう。モーテル風のパーティナイトじゃないか。 少し昔、ネオン街、流行ったよなぁ。 我も良く昔、接待されに行ったぞ。今は、色々とうるさく厳しいが」
「なんかいやらしい、雰囲気ですねー。 あっ、ショウタさん。ポムさん中にいるんですよね。動画のあの、美人なおっぱいヒーラーの! いやー、今人気凄いんですよ! あのミスリルゴーレムの動画。 凄い反響だったんですよー! このパーティナイト風の館の中にいらっしゃるんですかー! 早くはいりましょうよー!」
ショウタ殿が、頭を激しく上下に振りヘットバンキンクしている。
あまりの速さで、残像が見える。
「ああああああ!? ああああ?! 接待ってこう言うことじゃねーから! どーいうことだよ! いや、確かに転生前、接待ってコレだったけど! ああああ??! いや、コンプラ的にまずいだろ! 政治家とか、社会的公人でこれやったら、今、即BANじゃねーかな?! 大丈夫か? いや、大丈夫じゃねーだろ!」
そうか、大丈夫じゃないのか。
ワクワクしてくるな。さて、中身は。
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