39 続ショウタ楽しいお取引
うーん、走るより、時間かけた方が作品としては、いい物になるなぁ。
来世上手くやるさ。
ウーマンスーツにオレンジの髪、少し長いショートカットだろうか。
と、言う印象ですか。女性の髪のカットなんて、詳しくないから分りません。
そして悲しい事に、男ってそういう事に無頓着な生き物なんですよ。
なんか色々気を使って美人ですね!
と、言う語呂が少ない表現になってしまう。
おっと、言葉に出してはいけないぞ。いいから褒めとけ、キモくならない程度に。
ウーマンスーツをバリッと着こなしている。襟が立ってるような印象のマユミさん。
そんな印象の裏腹に、彼女が重心と間合いを考えて動いている。
武を収めているのが感じられる。
そして、小柄な、黒髪赤メッシュ、赤メガネの舞さんだ。
目の奥に光る知性が印象的だ。そして、小柄な肉体、胸のポケットに付けている、アヤメさんに似たデフォルメストラップ。 足幅の間合いは、素人。戦闘能力は皆無なのが伺える。
男って、戦闘能力になぜ敏感なのだろう。
習性と遺伝子に人は、逆らえないのですかね。
ーーーー
「ショウタ殿。 取引の商談ですか。いいでしょう、やりますか」
突如、マユミさんの後ろに 赤くオレンジ色のオーラが立ち上る。
炎の虎をイメージさせる気炎だ。後ろには、巨大企業の壁が幻影で浮かんでいる。
炎の虎が咆哮を叫び、空間に亀裂が入ったかのようだ。
「ハハハ! そのポーションを卸すことにより、弊社に何の利益がありますか? 御社と取引をするメリットを説明をしてください! ポーションは、割と世の中に流通してますよね? 他社の取引より優れている点はどこですか? ハハハ!」
幻影の炎の虎が膨れ上がり、圧力と言葉の牙を飛ばしてくる。 優位的圧迫営業だ。
正直、強そう。 マジ強そうだ。
「なるほど。良いでしょう。商談、宜しくお願い致します」
取引のテーブルだ。太古から存在する人類が作る商売の異空間。取引場である。
「僭越ながら、ポーションが世界的に不足していると思われます。 定期的な納入は、お互い取っていい話では無いでしょうか。回復薬の向上は、事故を減らし冒険者の全体的な底上げ、ダンジョンの活発的な流動に繋がるかと思われます。 弊社との取引のメリット、地産地消のポーションを作りました。 物は、良いはずです。 ポーションのサンプル。ご確認を願えますか」
自分の後ろでは、虎の咆哮に負けないような、荒波で荒れ狂ったように岩に打ち付ける波のオーラが出ている事だろう。
そして、空間からポーションを取り出し、黒色のテーブルにコトリと置く。
「・・・随分と色が濃いポーションですね。物は良さそうですね。 ハハハ! 瓶のデザイン性が古い。これが、冒険者用のポーションと並んだ時、売れると思いますか?」
マユミさんが、ポーションを手に取りこちらを、見つめている。
後ろの炎の虎の眼光が、光り輝き射貫いてくる。 強烈な攻撃だ。
思わず、眼光の圧力に自分のスーツが破けたかのように錯覚する。
グアアアアアアア! 切り返せ! まだいける!
「本当に良いものは着飾らない物です。 15Fのお店に並んでるよりずーっと品質が高いはずです。 試飲して、効力を確認して頂ければわかると思います」
炎の虎が考えるそぶりをし、隣の舞さんに話しかける。
「舞、このポーションを見てくれ。流通課の直轄商品になりそうか? そして、鑑定してみてくれ」
ポーションを手に取る舞さん。
ポーションを手に取り、机でくるくると転がしながら自分の目を見てくる。
突如、舞さんの後ろに、緑の雄大な若い鹿がオーラとして現出し、高みから悠然と見下ろしていた。
これが、大企業エリートの力か!! 主任クラスでとてつもない力だ。
「効果が高いと言う事は、値段も高いですよねー。仕入れの物を売るわけですから。末端価格は、大丈夫ですかー? ご存じかと思いますが、効果が高くても売れなきゃゴミ当然なわけですー。 プレミアでの売り方ありますがプレミアで売る高級ポーション関係は、弊社の流通で間に合ってますからー」
舐るように、自分の目を見つめてくる。
舞さんの後ろの雄大な若鹿が、首を持ち上げ床をドンと踏みつける。
空間が揺れ辺りがひび割れたのでは無いかと錯覚する振動が、自分を襲う。
何と言う、冷淡な気炎だ。
おい、異世界マヨネーズ! おい! 異世界のマヨネーズは、手放しで賞賛だっただろうが!
この星は、どうなってるんだ? ポーションで現実無双させろや!
しかし、こいつら強ぇえええええ!! 転生前に、こんな強敵と戦ったことないんだが?!
転生後の商談がぬるすぎたのか?! 商売で異世界無双していた弊害か!?!?!
つまり、おい! マヨネーズ! マヨネーズが悪いんだな! 楽して儲けようとした弊害だ。
「・・・まずは、鑑定を。仕切値は、もちろん ご相談致します。ええ、ご相談致します」
ご相談と言う言葉に、炎虎と雄大な鹿は頷く。
「鑑定・・・・?!」
舞さんが手のひらで転がしていた、ポーションが、『ポゥ』 と光る。
低レベルの鑑定だ。もう少しまともに鑑定してほしい。馬鹿にしてるのか?
「マユミ統括。これ、あれですー!! 回復ポーションLv8ですー!!」
「おぉ、凄いな! でも・・、あれだな。 LV5以上って必要だったか? どちらにしても直ぐ回復するよな。 ショウタ殿。人の身でLV5以上使うメリットってあるのでしょうか? そうなると価格帯が高い設定になりますよね? その辺り大丈夫でしょうか」
マユミさんが、肉食獣の笑顔でこちらに微笑んでくる。
炎の虎と大鹿が、グルグルと自分の周りを闊歩している。
好意的に、進んでいるようだが。冷汗が止まらない。
あ・・・、ストレス? 汗? おいおい、人間っぽいじゃないか。
大いに、このひと時を楽しむとしよう。
「ええ、マユミさん。大丈夫です。 まずは試飲頂けますか? もう一本どうぞ。 失礼ながら、マユミさんも、舞さんもお疲れの様子だ。ささ、どうぞどうぞ」
もう一つのポーションを取り出しマユミさんに手渡す。
虎と鹿は、キュポンと栓を抜きポーションをごくごくと飲む。
「!? うまい!? スポーツドリンク味なのか!? おぉ?! この味でポーションの効果あるのか??」
「マユミ統括、二日酔い、眼精疲労、肩こり、頭痛、腰痛、全部感じなくなりました。LV8ポーション、やばいですね。治ったんですかねー」
概ね好評と言った所ですか、畳みかけましょう。
「肉体回復と、肉体疲労回復。その様な効果を実現しております。これなら、売れますよね。後は、値段ですか・・・」
「ハハハ!舞、お前。二日酔いの状態で仕事してるのか? ん? おい。私の目を見ろ」
「ぴぃ・・・。今、治りました。ノーカンでお願いしま。」
あれ? 炎の虎が、大鹿に襲い掛かりそうだ。
なんか、統括やべーな。転生前の上司を思い出す。
「ショウタ殿、十分わかりました。 素晴らしい商品と提案ですね。 この取引が流れて、他の所でプレミア売りされたら、弊社も困る所がありますからね! ハハハ! さて、お値段ですが・・。舞。ポーション5の平均値段は、どんなもんだ?」
「3で10万、5で100万ですねー。 LV5は、致命傷の時使う感じですから。LV8となると200万では、うれませんよねー。Lv5以上必要ないですもんねー。 健康志向の人には、売れるかもですが。 商品の流動は、遅いですよねー」
ぐあああああああああ。 ここでLV8は、10万と言ったら吊るしあげられるな。
『価格破壊は、困る。相場がある』 って来るよな~。どうする、どどど、どうする。
「ハハハ! では、ポーションの仕入れ、いくらになりますか?」
きたああああ、クロージングだ! 商談のまとめがきたぁあああああ!
大体の相場の金額をすんなり提示してきて、値段を決めろと言って来てる!
こいつらビースト! 商売の獣かよ! 後ろの動物オーラ本物だな!!
「納入50万でどうでしょうか。3割掛けをしても十分元が取れ・・・」
炎虎と大鹿が舌なめずりをしている。ぺろぺろ状態だ。
「ハハハ! それでは、ショウタ殿の儲けが少ない。 店頭価格が120~140で出せば売れるでしょう。 LV5は、売れなくなるかもしれませんがね? LV5もそんなに出るもんじゃない。 いい価格だと思いますよ。 70万で仕入れいかがでしょうか。 地産地消なら、納品数月100以上いけますね?」
はー、叩き上げの近代エリートこんな強いのか。
しかし、ここの世界の、楽しみが出来た。手腕を学ぼうか。
「1000個はいけますね」
「「1000個?!?!」」
ああああ! 少なすぎたか・・!? いやー、農園の芋の成長促進させないとな。原料アレだしな。
「あっ、2000個いけます。」
「ハハハ・・・。相場もあります。1000個でいきましょうか。」
よぉおおおし、クリアーしたぞ!!!
「ああ、これもサービスでお付けします。 動画でアヤメさん伊織さんを見させて頂きました。加速の魔導書ですか。 失礼ながら雀の涙程度の付与の魔道書使ってましたでしょう? このポーションと似たような原料で「超加速の書」 が作れたんですよ。全然あれでは、アヤメさんの特色も生かせてませんでしたよね。 サービスです。100個使ってみてください」
突如、虎のマユミさんと鹿の舞さんの目の色が変わる。
「あー、すみませんー。 えっ、超加速の魔導書作れるんですかー? 月100個?」
「あっ、舞。 高級お茶と高級お菓子遅いって。事務応接に怒鳴り込んできてもらっていいか。 ハハハ! 急いで、マジ急いで」
あれ? 二人の後ろの気配が、猫と小鹿になったぞ。どうなっているんだ。
舞さんが、返事もおろそかに高速で部屋を飛び出す様にダッシュで出ていく。
「ハハハ! すみません。ショウタ殿。 『超加速の魔導書』 月100個作れるんですか?」
「出来ますね。 こっちの方が需要ありましたか? こんな紙の様な魔導書に頼らずに、そもそもLVを上げて物理で殴れば・・」
「はいー、お待たせしましたー! ショウタ様―!! お茶と契約書です! 宜しくお願いしますねー!」
「ハハハ! 話を詰めましょうか!!! まずは・・・」
ーーーー
色々あり商談がまとまった。
超加速の魔導書が200万で納品が決まった。 そして、本当に勉強になった。
異世界の成功の驕りを捨てないと、常に前に向いている定命の彼女たちに追いつかなそうだ。
商談のクロージング後の今後の展開の話に入る。
「取引も兼ねて弊社に一度、視察などに来ていただきたいのですが。 マユミさん、舞さんこの後どうですか? 弊社で昼食でもどうですか?」
「ショウタ殿すまない。 この後、昨日の魔族の契約の件の立ち合いがあってですね・・。行きたいのだが、舞を同行の形でいいだろうか。 ハハハ!魔族の契約、そして、魔族誰が面倒を見るんですかね!? 会社ですかね?! あれを生かしておくと、長野ダンジョンからクレームがきますよね?! 当然ですよね! つまり、仕事が山積みですよね!! 」
うーん、責任感が強く、修羅場をくぐった素敵な人だな。バリっとした服装もカッコいい。
「えっ? えっ? そしたら、私が、ダンジョン深部に行くんですかー?! 生きて帰ってこれますかねー?!」
「ハハハ! 舞。 君の主任の役職は飾りか? 仕事だ。流通鑑定課主任の仕事だ」
「ぴぃいいいい」
うーん、これが大手企業か。すばらしい。 マユミさんお優しいですね。なんてホワイトだ。
時代が時代だが、転生前は、直撃即入院コースのフリスビーの灰皿、窓から投げ捨てられる書類とゴミ箱。木刀でリズムを取る机のデスメタルビート。今思うと狂気だが、現代は、コンプライアンスがしっかりしている様に思える。
「舞さん、そしたら一度弊社の方へお願いします。 大丈夫です。今の倍に強さとスキル能力を上げて地上に返しますから。」
「あー、それ、大丈夫なんですかー? ショウタさん、破壊神ミスリルゴーレム作るんですよねー。 アヤメさん達、半壊してましたけど。 ショウタさん、あのですね、私そんなに強くないんですよー」
舞さんが、慌てふためき、手と、赤メッシュのロング髪をブンブンと振っている。
強くなるために、ダンジョンにいくんでしょう? 何言ってるんですか、理由になりませんよ。
「それは、良かった。良かった。 では、舞さん。ダンジョン飛びますね。 マユミさん、今日はありがとうございました。今後とも。宜しくお願い致します・・・。 弊社に取って貴方達は、大切な取引先ですから・・・。 さぁ舞さんいきましょうか。」
ゴネる客先に対して、時に強引さも必要だ。その方が意外と上手く行く事の方が多い。
「あのですねー、話を聞いて頂けますかー? 弊社と取引すると言う事は・・・。」
取り合えず、シュポンとダンジョン前に飛んだ。
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