23 続小雨様
アヤメの配信が再度始まる。その声を聞いたのか、舞が起きる。
マユミも、もしゃもしゃと、血が滴る様なレアの和牛ステーキを食べながらアヤメの配信を見ている。
うん? マユミ、お茶を飲む時でも小指を建てるのか。
意識高すぎないか。
配信では、恐ろしいほどの蒼い髪の美人が、映っている。
そして右下の伊織の小窓でも恐ろしい美人が、大きく映っている
こんな美人は、ハニートラップか何かだろう。罠だ。66Fの罠だろう。
美人すぎんか? 人間じゃないだろ。
アヤメの動画の説明が始まる。
「え~とですね。皆さま~。この先の道中の仲間になって頂きました。ポムさんですぅ~」
「アイドルとか、興味ない? とか聞かれたこと無いか? あ、あと踊れる? それと歌えるのか? 楽器は? 動画配信は? ソーシャル系は? もしもし? 高度なダンジョンの罠なのか? もししもし? 営業終了後空いてますね? 待っている。 お話だけでいいんだ。いいから、こっちに来るんだ」
「伊織、落ち着いて下さい~!? 狂気を感じますよぉ~。ポムさん自己紹介をお願い致しますぅ」
伊織が、蒼い髪の美人を、両手で捕まえようとしているが、アヤメが阻止している。
「ポム=セイノ と申します。 偉大なお二方に、命じられまして、アヤメ様と、伊織様の同伴を致します。よろしくお願い致します。」
「同伴だぞ!同伴! 同伴! 何が何でも66Fに行くしかないな!! あぁ!理性が罠だと分かっているのに。 心臓の脈動が止まらない! 私の脳よ!何とかしてくれ!」
「伊織、本当に黙ってくれませんかぁ???」
すっごい混沌でカオスだ。
だが、気持ちは、分からないでもない。このポムとは、何者だ?
しかし、この3人。アイドルグループか? と、言うくらいユニットが完成している。これは、ユニット結成だろうな。
もしも、歌出すのなら、全て協力するからな。
当然、売れるよ、売れる。世界を揺るがすぐらいに。
3人は、そのまま進んでいき、40Fのドラゴンと対峙する。
強そうだ。
紫雷を纏うドラゴンって、どうやって近接するんだろうか。
伊織が盾役で突貫、アヤメがアタッカーで踊るように切り付ける。
纏う紫雷で焼かれるアヤメたち。そして、ポム、と言う愛されフェイスが、回復役。
おいおい、どこのファンタジーの映像なのだろうか。画面に火炎、回避するアヤメ、燃えても突っ込む伊織、そして、伊織の後ろで回復魔法をかけ続けるポム。
そして、ドラゴンを紫剣で切っても、徐々に再生するのか。
画面には、紫雷と火炎の赤紫色が覆いつくす。ドラゴンの発狂した末の行動だろう。
燃やされ撃たれたが、ポムにより回復を終え、緑のオーラに包まれた伊織が燃えながら突貫する。
同時に、ドラゴンの頭上にアヤメが飛んでいる。
これで、決まる!! ドラゴンが纏っている、紫雷のダメージを気にせずアヤメが切り続けている。
そして伊織が、重槍で押し続けている。蒼いポムが、樹木の蔓を絡ませ、動きを封じている。
これは・・魔法・・? 我々と同じ力か・・・?
何者だろうか、この完成されている美人は。
ドラゴンがアイテムドロップに変わる。
蒼いポムが、片膝を付き、倒れ込むアヤメに駆け寄り、抱き寄せ回復を行っている。
配信では、映像主観により、ポムのアップが映されアヤメを抱き寄せ、回復をしている。
ポムの不安そうな、表情。聖母のような慈しさ。
そして、右下の伊織の画面は、微動だにしないで、アヤメを映している。
おいおいおい、映画化決定だろう。こんな物語。
「小雨様、映画化しないんですかー? これ、いけません。心揺さぶりまくりですー。絶対売れますよー」
マユミが相槌を入れる。
「ハハ!そうだな。売れるな。それと、舞、ステーキ二枚は少し重たいかもしれん。」
だろうね。だろうね?
この蒼い髪のポムの回復おかげで、アイテム消費無く、どんどんアヤメ達は、進んでいく。
そういえば、快癒の神も居たよな。ダンジョン産のポーションや、薬草の影で隠れているけど、あやつ、どうなっているのだろうか。
快癒スキルによるアイテム節約も馬鹿にならんな。
アヤメ達は、ドラゴン狩りにも慣れたのだろう。
進む足取りは、狩人達の重心だ。アヤメ、伊織の後ろ姿から、陽炎が揺らめいている。
アヤメ達は、狩る側に回ったのだ。
そして、転がるドラゴンの首と魔石も大きい。
我も幸せである。
激しい戦闘を乗り越え、ついに50Fだ。
世界よ。星よ。刮目するがいい。世界最深の50Fだ。
「あーついに、50Fですかー。小雨様、おめでとうございます!『あやぽんず』が、世界一位ですね! この調子だと私たちの待機も大丈夫そうですねー! 安心したら、お腹が減りましたー。ステーキ頼んでもいいですかー?」
「小雨様おめでとうございます。舞、ステーキは重いって、寿司にしないか?」
おぉ? 我の脳が、食事ループにより破壊される。
もう、好きに頼んで欲しい。今いい所なんだ。
・・・・そうか、双方妥協して、ピザにするのか。
我は、もう食べれんぞ・・?トマトとチーズは、野菜じゃない。気付いてくれ・・・。
そして、画面には、50Fに帰還用魔方陣が光っている。
辺りは、融解したような後が残り、ダンジョンの風景が、ガラスにコーティングされている。
何が起こっているのだ。
「私たち、先を越されましたかぁ~!? もう帰還用魔方陣が光ってますぅ~」
「おおぉ?! こんな所で、冒険が終わってしまって言い訳がないだろう!!ポムとの冒険は、まだ続くんだ!おい!!クソゲーか!! 金返してくれ!!」
「お金使ってませんよね?? って突っ込みそうになりました~?! 伊織ゴリラ~? ほんと黙ってぇ~?」
どうした、有頂天アイドルユニット。もう、解散か?
解散理由は、音楽性の違いだろうな。仕方ない事だ。
「あの、アヤメ様、伊織様、申し訳ございません。何か手違いが、ありました。少し、お待ちください。申し訳ございません」
「謝って、済むわけないだろう?! 補填が必要だ、補填が! こっちに来るんだ。ポム。 なぁに、少し体にお話するだけ・・・」
画面には、アヤメが伊織に、肉薄しボディブローを黒鉄の鎧の上から当てている。
そうだ、渾身の貫く振動だけを中身に当てる、鎧通しである。マユミが得意だった技だ。
コィイイイイン! 良い音が響く。伊織が一時置いて、膝から崩れる。
つまり、静かになった。 伊織ざまぁ。
「あぁ・・・今から、試練が来るそうです。ご主人様の試練が。アヤメ様たちは、試練を受けるに値すると見られているのでしょう。私は、嬉しいです。 アヤメ様、伊織様、試練が来ます。覚悟は、ありますか? ここで、帰ることもできます。 試練失敗すれば、あなた達の故郷に戻れないでしょう。でも、あなた達と、あって間もないですが、きっと、死闘を超えてきた私たちなら、この試練を乗り越えられると」
ポムの 「ご主人様」 と言う、パワーワードにより、脳が破壊された、ポムさんのファンも多くいる事だろう。
転生者の好みが従者プレイだろうか。転生者の業が深すぎる。
転生者は、本当に何でもありだな。
そう。神々が大好きなキーワードがきた。試練だ。
試練に、全ての好条件が整っている。
ポムの信じきれない信用。そして、アヤメ伊織だけの信用。
全力を賭ける事ができるのか?
おいおい、盛り上がってきたな。
最高のシュチュエーションじゃないか。
そして、なんだか我はお腹が減ってきた。そもそも、あんまり食べてないな。
まー、それはそれで、当然試練にごっついモンスターが来るんだろう?
このパーティ、堅実だからな。半端な試練じゃ簡単に超えてしまうぞ。
しかし、試練の天才だな。66Fの転生者は。
アヤメが、アイテムボックスから、ポーションを配り、話し出す。
「ポムさんには、回復の借りがありますしぃ~? まぐれなりにも66F到達者ですからぁ~? 舐めないでくださいねぇ。 そして、ドラゴン狩りでレベルも上がりましたぁ~! これを超えないと旅館に、たどりつけないのでしょう~? やりましょうかぁ!」
「やるぞ。ここで、その心に答える。そして。目標が見えている。66Fにまず辿り着く事だ」
「アヤメさん・・!伊織さん・・・!」
我の心臓が跳ねる。依り代の肉体だというのに。この脈動は、我の神の部分だろうか。
マユミ、舞、二人を見る。これは、感動なしで見れないだろう?
二人は、ピザを吸引しながら、動画の感動で涙を流している。凄い図だ。
マルゲリータピザは、吸引できる物なのか・・?
そうか、ピザ吸引は漫画の中だけの出来事じゃなかったのか。
コンコンンコンコン・・・・ 配信動画に、甲高い音が響いてくる。
洞窟内であるというのに、天上は明るく、3人を照らしている。そして3人は、構える。
さぁ。試練の登場だ。 我の足踏みが止まらない。 我が足踏み、いつ以来だろうか。
試練のモンスターは、洗練された、スマートな青く光る、銀のミスリルゴーレムだった。
書いたことの無い小説。追われる小節。執筆、推敲、投稿、超える失意、そして遂行、最後は投降。
感じる、ヒップポップ。
クォリティと時間の戦い。分かっているのですが、難しいです。
当たり前のことですが。
さて、良ければ評価を押していきませんか。
もしあなたが、上の層のキャッキャウフフに激しい怒りを覚えるなら。




