21 ショウタ3
ショウタ
たまに、夢に見る。
クレーム処理の帰りに、更になるクレーム。鳴る電話。
どうでもいい。
難しいことは、人生にいらない。
つまり、家に帰り趣味に没頭している。
その時が至福である。
ストレスがゲームを面白くする要素なら、きっとお仕事のストレスは、人生を面白くする可能性があるのだろうか。
人生は、長い。何か、幸せになる事を見つけよう。その方が幸せになる。
なんだっていい。幸せになれるなら。
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さてさて、アヤメ様のリピートですね。
つまりは常連客。本当にありがたい事です。
長かった。ついに常連様です。
いや~、流石ですね自分。転生前、そして異世界で成功を収めてきただけあります。
自分が監修した旅館です。繁盛、間違いありません。
異世界で、経営していた旅館も大繁盛でした。
その繁盛の反面、マヨラーと言う、なんでもマヨネーズをかける闇落ちした、反社会的現象がおこりましたが。
やっぱり、マヨネーズをそのまま吸うのは犯罪じゃないかな。
今思い出せば、勇者権力でマヨネーズ信奉者を牢屋にぶち込めばよかったかな。
さて、そろそろ、猫さんが転移で飛んで戻ってくるだろうか。
準備に不備はないだろうか。同じ失敗は、繰り返さない。当然だ。
前回、アヤメ様は 『そば』 を好まれた。人には、統一性の好みがある。
つまりは、麺系で行くのがいいだろう
。
うどん、うどん・・・。どうだ・・?
コシが命。 口の中に入れて噛むと、反動で、プルルルルルと弾けるコシだ・・・。
すまん。なんだか、安易な気がする。大丈夫か・・? うどん? 高級感イメージがいまいちだろうか・・・?
いや、いける。同じ麺でも旅館でラーメンを選ぶことは、無いだろう。
「ラーメンありますか?」 本当に勘弁してくれないか。来月には、メニューに載るぞ・・・?
シュワーンと、謎の音と発光と共に、猫さんが帰ってくる。
お帰りなさい。
おやおや、ポムさんと、アヤメさんが足りませんが。
「ご主人、帰ったにゃ。報告するにゃ~」
報告が、待ちきれない。
「アヤメ殿は、旅館に行きたいけど、実力が足りなくて、鍛えながら旅館に向かうそうにゃ。で、お友達も連れてきてくれたんにゃけど。道中、危ないかもしれないので、ポムさん付けてきてもらう事にしたにゃ。いいかにゃ?」
「アヤメ様が、口コミ!! 口コミでお客様を連れてきてくれたのですね!! なななな、なんと!!! ふむふむ、素晴らしい提案です。自分の足でここに来たいと。その通りです。お迎えは、過度なサービスでしたか。そして、初仕事のポムさん大丈夫でしょうか。心配です。やっぱり、世界樹とは、言わず、悲嘆の木星ぐらい攻撃性があった方がよかったですか」
「よくわかんにゃいけど、大丈夫だと思うにゃ。
上の者は、奉公人を信じる事が大切にゃ」
おっ、心打たれた。
そして、信じているが、一応聞かねばなるまい。
右手を首に当て、コキコキと柔軟運動をする。
「猫さん、信じておりますが、一応、すみません。聞かねばなりません。初仕事のポムさんもいますから。 悪質な強制で来ていただくとか。お願いによる、客引きで来てもらう事は、しましたか?」
「大丈夫にゃ。真偽鑑定をかけてもらっても、魂の色を見てもらっていいにゃ。彼女たちは、自らここに来ると言ったにゃ」
あ、これは、大丈夫なやつだ。
「猫さん、すみません、すみません!疑ってるわけではないんですよ! でもですね、初めてのポムさんも居ますから、無理やり、実績を取りに行くケースもあるわけですよ、すみません! そういう意味でいったのでは、ないんですよ! いやはや、怒らないでくださいね? 次回から、お任せ致します。今後とも、宜しくお願いしますね。」
あー、何て自分は、いやな事をしてしまったんだ。あぁ、申し訳ない。
『人を見る目を持て』 金言だ。
「大丈夫にゃ、新米は、そういわれるのが、普通にゃ」
出来る猫さんですね。貴族なのにリベラルな考え方を持っていますね、名君です。
「自分は、心配です。ポムさん。火力足りてないかもしれません。」
「ご主人の作った、アヤメ殿の剣でもこれそうにゃ。そして、永続的な回復スキルをポムさんに付与したにゃ。大丈夫にゃ」
ふむ、一応、安全策として、50Fからモンスターがもう沸きたくありませんと言うまで、自分と存在を同化してきますかね。今日は、生存を許可しない。
「猫さん、ちょっと出てきます。 一応、ここへ着いた時のお食事は、暖かいうどんを考えてます。うどんの上に上質な暴君カッツーオの削り節をかけて、上品な味に仕立ててます。副菜は、90Fのキノコの肉と、超ゴリライオンの鳥の部分のとり天ですね。どうですか? 地産地消です」
「!!カッツーオ! よだれが、止まらんにゃ。絶対おいしいって言ってくれるにゃ」
では、では、少し離れますよ。後はお願いします。
50Fに飛ぶ、ボスモンスターの超大型のキマイラだ。
あたりには、神殿の柱が無数に立っている。古代を連想されるかの風景だ。
背筋を伸ばしスタスタを歩いていく。
気づいたキマイラは、口と目、見開き、後ろに猛ダッシュを始める。即座に壁にめりこもうとする。
・・・哀れな。逃げる場所など無いというのに。
空間から、白と黒の斧を出す、闇と光にあたりが包まれる。
キマイラは、まだ壁にめり込もうとしている。
斧を、一閃する。 光と闇の本流が、キマイラの存在を消し去る。
一筋の光が自分に吸収される。
さて、次だ。
51Fの石畳で、足を軽く踏み鳴らす。空間を捻じ曲げ、モンスターを一度に目の前に引き寄せる。
とっさに、武装したゴリラみたいなモンスター達が逃げようとするが、斧を振る。そして、かき消える。
1Fづつの処理は、めんどくさいな。
少し力を入れ、地面を拳で叩く。ダンジョンに振動が走り、時空震を引き起こす。
ダンジョンが少し揺れますが。ご注意下さい。
目の前に来たモンスター。
こいつは、60Fのボスモンスターだったか? その60Fのモンスター以下、全てが51入り口に引き寄せられ、モンスターが達が所狭しと蠢いている。
即座に、壁にめり込もうとしたり、モンスターを押し合いへし合い逃げようとする。
そう慌てるな。その逃げたいと言う本能もすぐ忘れる。
少し、派手に行こうか。位相空間から、星座の槍を出す。
7つの恒星を、槍にしたエネルギーの集合体だ。
右手に、光と闇を、左手に圧倒的な熱エネルギー。
60Fまで、熱によるインフラ整備を進めようか。
ダンジョンの通路は、超高熱による歩きやすいガラス質になるだろう。ダンジョンの地殻再生は、光と闇により再生出来ない。 2本の光と闇と熱分解の圧倒的奔流がダンジョンを駆け巡る。
地面に煮えたぎる溶岩があふれかえる。
そして、闇が熱エネルギーを取り込んでダンジョンをガラス質に変化させていく。
さて、インフラが整いました。
後のモンスターも処理しようか。
このダンジョンの全モンスターを呼ぶと猫さん、ポムさん、その辺のテイマーの使い魔まで来そうだもんな。
なんかモンスターっぽいし、巻き込んでしまいそうだ。
しかたない、時空震の呼び寄せは自重しよう。
後の階層は、丁寧にお話していきましょう。
我々には、言葉がありますから。まずは、話し合いを。
「最後の瞬間まで、生を諦めて、首を垂れて頂けますか?」
モンスターは、ひたすら壁に向かってめり込もうとしている。
ダメなようですね。綺麗に80Fまで掃除しましょう。
これで50Fから80Fまで暫く、モンスターは、沸かないだろう。
よし、66Fに戻ろう。 転移しましょうか。
ーーー
戻りましたよ。猫さん、早めに私たちお食事にしましょう。
接客入ったら、いつ食べれるか分かりませんから。検食して、評価を下してみてください。
「お帰りにゃ!了解にゃ!」
うどんを出し、カツッーオを振りかける。削り節がチリチリと、蒸気を吸い踊る。
「「頂きます」にゃ」
猫さんが、うどんをすする。そして、とり天をカシュッとかじる。
そして、うどんに戻り、おつゆをすする。そして、猫さんが天井を向いた。
「うどんから、・・・・宇宙開百からの銀河の生成を見せられたにゃ。銀河の成り立ちとは、そうだったのかにゃ・・・。うますぎるにゃ。吾輩の好みに合っているかもしれにゃいが、それを、差し引いてもうますぎにゃ」
よし、大丈夫そうだ。
でも、彼女たち、・・・ラーメンとか言わないよね? 言われたら、作るけど。
少し、休憩を入れつつ。アヤメさんと、そのお友達が来るシュミレーションをする。
温泉利用だけで帰ることは、ないと思うのですが。一応色々用意しておきましょうか・・・。
あの年代何が喜びますかね・・。
ふっと金言が、頭に浮かぶ、「女性には、パスタ」
あああああああああああああああああ!? ラーメンじゃないのか?! パスタだと!?
和風旅館でも、映えがいい、パスタを出す必要に迫られるというのか。馬鹿な。
そういえば、昔、五大銀河の天使軍団の食事を、バイキング形式にしたときパスタが超好評だった。
「はい、キューピットの恋矢をショウタさんに、あてれば永遠に恋の奴隷にする事ができますですよ~。恋の矢と昼食のパスタと交換します~。 上手くいけば毎日パスタを食べれる可能性があるわけですね~。さぁ、交換しましょう~?」
このキューピットのぼろ儲け宝くじ商法は、天使長から規制が入った。
毎日が、心臓に向けて矢が飛んでくる地獄だったな。
なぁ、なんで宝くじは、ギャンブルじゃないんだ?
記憶が脳を焼いてくる。
まぁ生きていく上で仕方のないコストだ。誰もが過去の記憶がフラッシュバックするものだ。
一応、パスタメニューを作っておくか・・・。万が一があるしな。気まぐれパスタなら、様子を見て作れるし、最強の文言だろう・・・。
転生前なぜ、メニューが増加する飲食店があるのか心で理解した。
そして、旅館のフロント電話に、プルルルルルと連絡が入る。
ぬっ、これは業務用連絡。ポムさんだろうか。
受話器を取ると、直接脳に、自分と猫さんの脳に通話が入る。
よく脳内通話の使い方知ってましたね。
「あの~ご主人様、猫様、すみません。全員で頑張って50Fに到達したのですが、50Fのモンスターが居なくてですね。51F~と歩いていますが、モンスターが居なくてですね。アヤメ様の動画配信の見せ場が無くなりまして・・・、若干といいますか、クレーム・・・、失礼。お客様のご指摘がございます。」
ヒュッ! 喉から空気が漏れる。冷や汗が流れる。このやっちまった感、何万年ぶりだろうか
「ご主人、まさか、離れた時、瞬く間にモンスターの存在抹消をしてたのかにゃ・・・」
「ご主人様、定命の試練(非日常的体験アトラクション)と言う言葉を、貴方様の昔の記憶から頂いております。旅館に試練要素も必要なのでは無いでしょうか。ダンジョンは、モンスターが売りですよね・・?」
「あーーー!ハイハイ! アトラクションね!! うんうん、ダンジョンはアトラクションではない様な気もしますが。いや、ダンジョンという物を、アトラクションとしてとらえると、旅館は、そのアトラクションを利用して、非日常的体験を売りにしている・・? あああああああああああああ、なるほど、うんうん。芋さん、どこで君は、その言葉を・・・?」
「あ、あの、ですからご主人様の昔の記憶ベースから・・」
「ああああああああああ!!! なるほど、試練。旅館に来るに値する、試練と言うアトラクションが必要だとおっしゃいましたか。今日は、丁度、51FFにボスモンスターがいるんですよ! アヤメ様達にも、お伝えください そのままこっちに向かってくれれば、遭遇するはずです。 こちらでお待ちしておりますよ! 一度、通話きります!」
これは、いけない。
ただ歩いてきて、風景と設備が良いだけの旅館、これでは、話題にもならないだろう・・。
アトラクション(試練)が、必要であろう。お友達も来ている。口コミを広げなければ。
挽回せねば。
ネコさんに話しかけ、知恵を乞おう。
「不壊属性のアダマンタイトと、ヒヒイロカネの幻想属性の合成金属のハニカム(ハチの巣型吸衝撃分散形態)複合装甲のゴーレムなら、試練として、楽しんで頂けるでしょうか?」
「・・・・ご主人、もう一つ下。いや、3個ぐらい下の性能ゴーレムでいいと思うにゃ。難しすぎてもだめにゃ。 彼女たちがミンチになってからは、全てが遅くないかにゃ・・・」
「?? 蘇生させれば、いいだけでしょう。次も頑張ってくれるでしょう。しかし、言わんとしている事は、わかりました。見栄えのいい銀のゴーレム(聖銀ミスリル)にしましょうか」
「銀ぐらいなら、行けるかにゃ・・・。アヤメ殿のパーティは、物理と回復のバランスがいいパーティだからにゃ」
ミスリルを出し、立体魔方陣を起動させる。神の炉と呼ばれる術式だ。
火を入れろ!万物の創造! 我の意のまま、形となせ。そして己の命を全うせよ!
火花と炎が溢れ出し、辺りを激しく輝かせる。
炎と火花と魔方陣が収縮し、見上げるぐらいに大きい青く光る銀のゴーレムが出来上がった。
「あ、これ勝てるか分からん奴にゃ。まぁ、蘇生してくれるにゃ。大丈夫にゃ」
このぐらいのゆるい難易度の方が、楽しめるでしょう。
膝をついていた、巨躯のゴーレムが起き上がる。
「えーと、ゴーレム、一応、お前の目から、様子を見てます。試練を開始したら、コンプライアンスに乗っ取り、説明して下さい。撮影すると言う事。後、なんだったかな・・・。あぁ、ダンジョンの試練の一環なので、万が一の事態の場合、旅館は責任を負いかねます・・・とお伝えください。」
それでは、51Fにいってらっしゃい。
「猫さん、それでは、試練のフィードバック(様子確認後、改善案の検討)もありますから、一緒に見る事としましょうか。試練が気に入られる様なら。60Fのボスと入れ替えますね」
「承知したにゃ。出来るにゃ出来る、3人なら超えられるにゃ。信じてるにゃ」
さぁ、この試練アトラクションが、名物となりますかね。
お読みいただきありがとうございます。




