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2 プロローグ アヤメ


ダンジョン36Fに飛ばされた私、可哀そうです~。


カシャカシャと歩く鉄人形モンスターを古代宮殿風の柱の陰に隠れてやり過ごす。


ヘアバントからの配信映像では、どのように見えているだろうか。


自分の息使いが、よく聞こえる。心拍数のせいだろうか。

コメントを見る余裕がない。当然リアルタイムでコメントが荒ぶっているだろう。

なぜなら、世間では未知の領域、そして乙女の大ピンチだ。


臆病になってはいけない。恐怖は足を重くする。

前向きに行こう。ピンチなんていつもある事だ。物事は前向きに考えなければ。


ダンジョンを進みつつ、気配察知で距離を置きつつモンスターを遠目で見る。

鉄人形の弓、剣を持つモンスターが多く、白く光る鎧を着こんだ大きいオークが出現している。


これは、ガチ戦闘では勝てないでしょう。見るからに強すぎませんか~?


モンスターとすれ違いながら、距離の安全マージンを十分に取りつつ、時間をかけ35Fの上り階段を見つけた。階段の部分にモンスターは、いなかった。

アイテムボックスから携帯食料を取りだし、噛みしめる。

一度、伊織と連絡を取った方がいいだろう。


気配察知をしつつ、報告とコメントと報告ですねぇ。


「ふうぅうううう!! 35F到達です!!いやー!!きついですね!!あのオークさんと戦闘になったら加速の魔導書で逃げるか先制で火系の石を使い、そこから速攻で片付けないとダメそうですねぇ~」


私は、明るく言葉を繋ぐ。


「みんなには、残念ながらオークVS美少女、果たしてミンチに成るのはどっちだ?!は、発売停止となりました~」


嵐のようなコメントが流れる。


【おおおぉおおおお!!!!!!】


【頑張って!!!!】


【そう言う冗談はいいから、まじめに戻ってきてください!!!】


【今後の攻略の礎だ。戻ってこい。】

【後5階・・、アヤメならできる。いつだって無理と言う言葉を跳ね返してきたんだ。】 伊織

伊織、いいこといいますねぇ~!

コメントでなくて普通に通信で伝えてもらってもいいんですよぉ?


さて、進みましょうかぁ。


「では、参りますぅ」


広間に出た、かなりのモンスターが居る。そして、モンスターで寝ているのもいる。

今だかつて、誰も来たことないフロア。

そもそもモンスターが、起きている方がおかしいんだ。


人類初到達でしょうに。普通に寝ててくださいよぉ。

でもなぜ、モンスターは徘徊するのだろうか。


私は、私に祈る。 神に祈る所では無い。

私の忍び足、隠形、スキルに頼るしかない・・・。


祈りながら部屋を大回りして隅を通り、墓と思われる後ろに隠れながらレンガの道を進む。


この状態で戦いたくないですね~、危険なモンスター達です~。

宮殿の壁にめり込むように部屋の端を通り、安全マージンを大きく取りましょうか。


息を殺し、スキルに祈りながら歩き続ける。

モンスターの視線を外し、構造物の影を上手く使いながら。


広間の出口までもう少しだ。急いではいけない、ゆっくりと歩こう。

突如、ザクッザクッ、足元のレンガから異音がする。

まさか!?


墓後ろの床が白く輝きだす・・・。


ウソ!!!ウソウソウソ!!!!

だめだ、だめだよぉ! そんなのダメダメダメダメ!!!

こんなのだめ!!


光は、無慈悲に私を包む。


--------


ちぃいい、どうなりましたぁ!!?


現状の確認をしなければ!!

辺りは、洞窟エリアに切り替わっている。

月は消え、洞窟内がぼんやり光っているエリアだ。


「ステータスオープン・・・!」


埼玉ダンジョン(仮) 46F


向原 アヤメ  LV28: 状態 疲労 

スキル:短剣2刀流 気配察知 忍び足 隠形 加虐Lv2 加速 飛脚

・・・・


ステータスの現在階層に目を疑う。嘘であってほしい。

まず思考したのは、40Fボスフロア。ボスは、まず抜けられない。


抜けられないんだよ。40Fの戦闘に勝たないといけない。まず不可能だ。アイテムが無い。

この辺の敵では、ドロップ目当てで狩ることは出来ないだろう。


ごめん、伊織。ごめん。これは厳しい。

伊織に、ヘアバンドで連絡だ。


魔力電波は届く。よかった。


「アヤメ!!大丈夫か!!? 今どうなっている!!何Fにいる!!?」


なんでだろう。少し笑ってしまう。


「・・・フフッ、言わないとだめなやつ?・・・だよね・・・。」


「おい!ふざけるな!どこだ!どこにいるんだ!!!」


「・・・46F、伊織ごめん。モンスターが来てる」


気配察知に物凄い大きな魔力ポイントが引っかかる、向かってきているのか・・?

気配は、開戦すなわち死。感覚でそう思う。


そもそも人が来なくても。モンスターは、なぜ徘徊しているのか?

この深層で何かが分りそうだ。ダンジョン経験からうすうす思っていた。何かの思考ルーチンで動いているのではと。


私の感知スキルから、モンスターがもう来るのが分る。そして、遠く目にその姿が見える。


やり過ごせるか・・? あれは、ドラゴン・・? 私が好きだったゲームで見たことあるような・・・。

ドラゴンは、紫色の電流、紫電を纏っている。


これは、ソロじゃ勝てないって。

息をひそめ潜伏しよう。


煌びやかな宮殿とも思えるフロア。通路ではなく部屋の隅でやり過ごす。


すれ違いで通路に入ろう。隠密スキルだよりだ。上手くやり過ごすしかないだろう。


部屋に入ったドラゴンは、足を止め辺りを見回す。部屋全体に圧倒的業火を盛大に吹いた。

さらに角から紫電が荒れ狂い、部屋の地面へ降り注ぐ。


「ああぁああぅううう!! 焼けるぅう!! ちぃい、緊急用ポーションが割れ、薬草が燃えましたぁ!服、ヘアバンド、まだありますね!! 錬金品は丈夫ですねぇ~!!」


服の中の肉が、熱と電流で焼けただれる。

熱のダメージで、肌を削ぐような痛みが脳へ突き刺さる。


即座に空間からポーションと魔導書を取り出しポーションを体にまき散らし、「加速」と一節唱える。

ドラゴンから距離を取り、ポーションで体は癒えはじめた。


痛みでひるむようでは、ダンジョン探索なんて向いていない。

すでに塵となった加速の魔導書の効果で走る。

気配感じ取りながら、逃げる。振り返るとドラゴンが追って来ている。

完全に補足は、されていないようだ。ドラゴンの気配の進む方向に迷いがある。

でも何かを探知し、確実に追って来ているのだ。


直接の戦闘は、無理だろう。

こっちからの先制攻撃は、リスクが高すぎる。反撃で消し炭になるのが予想できる。


走り抜けるが、MAPがわからない。

上がるにも下がるにもフロア移動が出来れば、一息つけるのだが。


目の前に気配を感知、同じ魔力だ。ドラゴンだ。

前から来る2匹目で、このままだと挟まれる。


あぁ、だめだ。こっちに来る。


ドラゴンめ、気配を感じてるんじゃない、気配以外の何かを察知しているのか。


逃げないと。


広がった空間、洞窟部屋に入る。

間もなく、前にいるドラコンと遭遇戦だ。ドラゴンの気配が近い。

もう逃走系のアイテムは無い。ドラゴンは見逃してくれるだろうか。


何か無いでしょうか・・?! 辺りの宮殿的な地形的特色で使えるところは無いだろうか。

この部屋は、・・・墓だ。 墓!!? あからさまな墓! 古代墳墓がある。


どうする! あからさまな転移罠を探すか?! 早く決めないと!!

ドラゴンをすり抜けるか? 2匹のドラゴンに挟まれる前に決めなければ!!

回復薬はもうないんだよ!! ダメージで足回りを低下させられたら追撃で即詰む!

頼む罠よ!!罠であってほしい!起動して!!

とにかく考える時間が欲しいんだ!!


墓の後ろを、猛ダッシュで走り回る。


床が白く光り輝く


光が包む


――――――――


洞窟の上が明るく光っている。眩しさすら覚える。


ああぁ、気が乗らない、今私が何Fにいるのか。見たくない。

恐怖やテンションの下がりは、思考と行動が遅れる。気持ちを変えないと。

腰の空間に手を伸ばし

最後の支援アイテム。スタミナポーションを飲む。


ステータスオープン


埼玉ダンジョン(仮) 65F


向原 アヤメ  LV28: 状態 良好 

スキル:短剣2刀流 気配察知 忍び足 隠形 加虐Lv2 加速 飛脚


ーーーーーー


目の前にすぐに下層へ続く下り通路がある。


後方に感じるモンスターの気配。大きさを察するだけ、絶望してしまう。


後ろをチラリと見る。遠目に見えるのは合成生物か?

大型のゴリラとライオンと鶏の混合筋肉のモンスターだ。

モンスターの動きは、当然の様に何かを手探りしながら追ってきている様だ。


・・・前に進もう。


あぁ、そうだ、伊織に連絡しなきゃ。

配信を見ている皆は、心配してくれてるだろうか。



66Fの階段を下り。私は、下に進んだ。

ヘアバンドを触る。なぜか、配信用ヘアバンドに温かみを感じる。

伊織に連絡をする。


「伊織、みてましたぁ?」


「ふぐっ、見てたに決まっているだろう!! 諦めるな、あやめ!! 諦めないでくれ!! 今何階なんだ?! 今から、そこにいく!! 待っているんだ!!」


「だめです。無茶しないでください。いつも、どちらかが倒れる時について。さんざん納得するまで話し合ったじゃないですかぁ!」


「前に話した通り、財産は伊織がもらってください~。 弟さんの呪いが治るような関連するアイテムが出品したとき買えるようになりますから。かなりの財産ですよぉ。あ、あと、お母さんに分けてあげてくださいね~。お母さんそんなお金使わないと思うので、気持ちで結構ですよぉ~」


言葉を続ける。


「あぁ、伊織ありがとう。本当に楽しかった。そうそう。知ってたと思うけど、ダンジョン踏破より、モンスターに過剰な攻撃を加える事が、何よりすきだったんだんですぅ!! そしたら、またね」


「ぐふぐうぅう、知ってたわ!!バカぁあああ!通信を切るなぁああ!!」


伊織との通話を切り、ヘアバンドを外して、自分を映す。


「えー、という事でですねぇ、66Fです。この先、もの凄い気配があります! 一つは、左側に猛烈な気配。30F100匹分ぐらいありますねぇ~。右は・・・・・・、意味が分かりません。意味が分かりません。感じた事のない空白?? と、あー魔力のなんでしょうねぇ。ボス?? より強烈な気配。こんなのが出るなら、この先、人類挑んで勝てますね????? あーーーー、この話は、やめましょう」


上を見上げると紫色に煌々と輝く月が出ている。

30F攻略後のテンションが有頂天だった時、こんな月だったっけ。


あーぁ、ここまでかぁ。

ゴリライオン、確実に追ってきてますねぇ。


深層のモンスターは、なぜ気配探知で防げなかったのか。疑問が浮かぶ。

冷静になり、ダンジョン踏破者としての感覚が気づく。なぜか、皆に伝えたくなった。


「あぁ!多分、生命探知してきてますね! なんとなくわかりました、この辺のモンスター生命探知してますね。多分臭い探知じゃないと思いますよ。乙女はフローラルの香りですからぁ? 装備開発の見地にしてみてください~。多分生命探知してきてます。」


こうなってしまっては、もはやどうでもいい情報ですかね。

さてと。覚悟を決めないと。


「さて、御覧頂いてる皆様・・・。ごめんなさい。今まで強がってましたけどもぉ。バーベキューミンチになる姿は、お見せしたくありません~。よって、今回の配信で少しお休みをもらいます~。ふふふっ、この場に及んでバーベーキューミンチって言葉が口に出たことに、笑っちゃいました」


泣くな、明るく行こう。


「後続の人たちのためにできる限りの情報を集めたかったし、逃げれると思ったけど。この配信で少し、お休みを頂く事になりそうです。あぁ、左のモンスターが気づいたようです。 右が気づいてないのでそれに賭けます。でも・・・・。結末を見られたくないので、ここで配信を消したいと思います」


「グスッ・・・みんな応援ありがとう。面白いと思ったらチャンエン登録・・・ またね・・・」


コメントはとても見れない。精神的に苦しすぎる。

どちらにせよ、時間がない。左の気配の超大きいモンスターがこちら向かって来ている。


やっぱり生命探知してやがりますね。 


では、行きますか!


気配察知は、もうしない。頭がおかしくなりそうだ。そう、おかしいのだ。右前方に感じた魔力がおかしいのだ。ダンジョンのモンスターが出していい魔力じゃなかった。

だめだ。恐怖は足を止める。前に進もう。


ーーー


気配を消し部屋手前の通路に入る


フワフワ浮いた猫が居る。


これが、あの魔力の持ち主か。そうか、猫モンスターかぁ。

猫はフワフワと浮び、星を引き絞った様なキラキラと降り注ぐ光りの杖をまとっている。

その杖を私に向けた。


ああ、これ死んだ。このモンスター、世の理を超越している


「モンスターも学習しないにゃ。なぜ死にに来るのかにゃ。それでも来るモンスター減った方だにゃぁ・・・あきらめずにきっちり除去して行くしかニャ・・い?え?」


構えていたネコが、きらめく様な絶望の杖を下げる。


「は??人間にゃ?! 人間!?人科人族にゃ?!」


「うわぁあああ!!?しゃべったぁああ!!」


しゃべった。猫さんがしゃべった????


「うわぁあああ!!!しゃべったにゃあああぁあ!!!


「人間だ!?! ご主人?!?? 客だにゃああぁあああああ!!!! ご主人、お客様だにあぁああああああ!!!!」



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