18 ショウタ2
ショウタ
ネコさんが、連休を終えて帰ってきた。
休みは、大事だ。
労働条件は、守る事が大事だ。労働者の権利である。
だが、根本を勘違いしてはならい。本来休みとは、人をより効率よく働かせる方法なのだから。
覚えておくといい。
そして、困ったことがあったら、なんでも言いなさい。
君たちは、大事な労働力なのだから。
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しかし、あれから、客が来ません。
女神ダリアの中世の異世界では、自分の店が流行ったはずなのに。
マヨネーズでキャッキャウフフ。異世界に降り立った時、異世界チョロイと思ったもんだ。
まぁ、一番の成功の理由は、交易所を作り流通を支配した事だが。
交易所のモンスター防衛は、勇者パワーで楽勝よ。
そして、ダリアへの納税搾取は、マジの殺意を覚えたが。
「お前のものは、私の物。そうよね?」
名言すぎる。
旅館内の床の透き通ったガラスの下に、玉石の砂利にチョロチョロと水が流れている。
そこのラウンジで本を読みふける、猫さん。
旅館の辺りを一通り、モンスター討伐をした後の休憩中だ。
「猫さんの、お土産の 『芋まんじゅう』 に感動しました。
我々には、ですね。旅館名物が足りなかった。旅館と言ったら、おまんじゅうですよね。 長い異世界生活で和風と言うものを、大分忘れておりました。 一つ下の階で、品種改良した芋を育てています」
猫さんは、本から顔を上に上げ、こちらを見る。
「ああ、あれかにゃ。 二足歩行で歩き、芋ドリル攻撃をしてくる、プラントモンスターにゃよね。暴れるから、適度に痛めつけておいたにゃ」
今なんて??
「ゴリライオンを、芋ドリルとの激闘の末、魔石の苗床にしてる、二足歩行のプラントモンスター芋の話にゃよね??」
「いえ、あれ、育てているのですが・・・?」
「にゃん?! ご主人の侵略用の邪悪な合成生物かと思ったにゃ」
「あの芋を材料に名物にして、おまんじゅうを作ろうと思ってます。 お客が居ないのは、話題による集客性。たしか、今の言葉で言うと・・・、そう。バズる。つまり、客寄せの名物ですね。」
「ご主人、どんな経済の本を読んでも、母数と言う 『人』 の数がだにゃ、全てで・・、母数が一番「あー! あー! 猫さん、猫さんの、お土産の『芋まんじゅう』に感動しました。 我々には、ですね。旅館名物が足りなかった。旅館と言ったら、おまんじゅうですよね。 長い異世界生活で和風と言うものを、大分忘れておりました。 一つ下の階で、品種改良した芋を育てています。」」
「?! ご主人今、不可逆性の理論を無視して、時間を繰り返しいるのかにゃ? 吾輩、気付かぬ内に、同じ時を繰り返しているのかにゃ??」
「名物のおまんじゅうを作り、客を呼びたいと思っています。」
「・・・・・。素晴らしい発想にゃ。 ああ、育てるってそういう事かにゃ。でも、あの芋、節操なしに襲うけども、客や人間は、襲わないのかにゃ?」
な、ん、だ、と・・・。あー、だめだ。襲うわ。
そうか、やっぱ、安易なまんじゅうなんてだめか。
何より若い発信力がある子達に受けないしな。バズらないってやつか。まんじゅうなんぞ、取り上げるのはMHHKの夕方ニュースぐらいなものだしな。
今の時代の流行りをみると、
店内は、キレイ、写真映りがいい。 自演で3年計画で★5つ。コメントも、まずは自演。
いつも時代もパッケージ買いか・・・。
はー、クソ。 本質がどこにもない。
こんな世界になんでなってしまったんだ?
映り映えの良い、スポンジケーキなんて本当に食べたいものなのか?
おいしそうなパッケージに何度騙されればいいんだ?自己顕示欲を満たすのは、結構。
だが、食事の本質は、そこにあるのか・・?
おいしんンゴ! 助けて!おいしンゴ! おいしさの本質漫画!
まて、いや、人に出されたものをカス扱いだと・・・?
あ、やっぱりだめだな、自分の感覚こそがやっぱり一番よ。
ああああああああ!!!!!!
うむ、襲う芋は良くないな。
バイオハザードか。仕方がないな。
「・・・芋を、塵に変えてきます。」
「あーーー、そうなのかにゃ・・・。」
すぐに下の階に、飛ぶ。同じ空間内なら、移動は、自由に出来る。地上でもだ。
飛んだ瞬間、ガサササっと音を立てながら、洞窟内の広間に、芋が集まってくる。
素晴らしい。さすが、自分が作った芋。
最後の瞬間が来るまで、頭をたれ、終わりが来るのを待つのか。
だが、ザワザワとそれぞれ芋の蔓が絡まり女性の姿、形を取る。
膝を付き、祈っている女性の姿だ。
「コロ・・サナイデ・・ ゴ主人サマ・・・ オネガイ・・オネガイ・・」
?? 命ごいが効くとでも? 草、木、動物。全てが命乞いをしているんですよ。お分かりですか。だが、人は殺さねば生きていけない。 それが業と言うものです。 つまりだ、消え失せろ・・・。
自分は、手を掲げる。存在を塵に変えるにも、もちろん苦痛や痛みを与えない、業を無駄に重ねない。
これこそ慈悲であろう。
「にゃああああああああああああああ! だめにゃ!やめるにゃ!」
猫さんが転移で突っ込んでくる。
「ご主人が作ったのにゃ?! 生命を! なら好きに刈り取っていい理由があるかにゃ?! ご主人! その神の行動が嫌いじゃなかったかにゃ?! 神の傲慢と言って! なら、ご主人が作ったからと言って、好きに消していい理由があるかにゃ?!そして、その決定的な違いはにゃ! 間違いなくこの生物は、生存を願ったにゃ! ご主人!! ダメにゃ、ここで消したら! 人間であるならこそにゃ!!」
・・・素晴らしい。猫さん。心に届いた。だが、忘れないで欲しい。
その思考を押し付ける、迷惑な人間がいることを。
でも、どうしたもんか。
猫さんが何かを、猫語で芋に話しかけている。
芋が、頷き聞いている。
「ワカリマシタ。ゴリライオン、タオシマス。ゴリライオンタオシマシタ。オヤクニタチマス」
ふむ、生存を願うか。
「ありがとう。猫さん。真摯な言葉が、心に届きました。宜しい、生を許します。芋よ、あれだ。猫さんに感謝するんだな。」
位相空間から、青いひし形の宝石を取り出す。
蒼の宝石だ。赤い賢者の石が物質の高位としたら、蒼の宝石は、観測の極地を決定する力だ。
そのまま、芋の額に埋め込む。蒼の光が芋を包む。
渇望する望み願い、つまりエントロピーを超えないとそのまま塵になるだろう。
願ったからこの形になった、この形になるのを願った。
願いの観測結果がその形を作る。
光が収束する。芋の願いは届いたようだ。
「ほぼ人型になったか。いいじゃないか。これで、言葉と立場はわかるな? なぜ、その形を願った?」
美しさと可愛さ。相反しない妖しい魅力、そしてスレンダーな肉体。青いオーラが漏れている。
青いロング髪で足の先が若干蔓のドライアドだ。 愛されスタイルってやつか。大分階位が上がったな。
「言葉は通じるのに、命乞いはだめだでした。だから、あなた達と形が似ていれば。意思疎通が出来き、愛される形となれば生存を願えると思いました」
「宜しい。お前は猫さんの下につけ。そして働き次第では、雇うとしよう」
「芋さん良かったにゃー。」
「・・・ありがとうございます。猫様。この御恩決して忘れません。」
―――
猫さんと芋が、造園の本を片手に旅館の周りを造園している。
なんという事でしょう。水車しか無い旅館の周りに、庭園が出来ている。
なんとなく付けた水車の周りに、静謐を兼ね備えた神社の様な樹木。
むき出しの岩、ダンジョンの洞窟の壁が何千年と時が立った様に、苔むしている。
木々の騒めき。敷石の連なりが、歩くままに、旅館へいざなう・・。大自然の庭園。まさに神威。
時折、鹿威しのチャポチャポチャポ、コーン、コーン! と言う音が、完全に外観にマッチしている。
でも、うるせぇな。この竹のぶつかる音。
しかし、超有能!
和テイスト!! 何で、静謐とわびさび、分かってるんだ? 芋よ。
神威さえ感じる旅館に早変わり。
自己意識を得るに、思い願いが足りた。蒼の力に目覚めたドライアド。
地形と植物操作は、得意中の得意だろうが。
あれ、凄い美的感覚じゃない? 元が芋なのに超有能だ。
「いや~芋さん。 あの、お、おすごいですね~。ど、どこでこんな美的感覚を・・?」
「私の知識ベースとなる。ご主人様の記憶の断片でからです。時の流れによる絶対的な畏怖を人は、ありがたがる。金銭価値が付けれない様ですね。私も芋の時の記憶に結び合わせて、猫様の監修で、庭園を作らせて頂きました。ご主人様、いかがでしょうか。お気に召して頂けましたか」
青髪のめちゃくちゃな整った美女(芋)が、少し身をかがめて下から、顔を覗き込んでくる。なるほど、愛されムーブか。
どうしよう。雇いたい。
「猫さん、部下欲しい?」
「欲しいにゃ~!」
ドライアドを見つめる。転生前の感覚でいったら、男女から好かれる美女か。
昔、神々が作り上げた完璧な人の造形を見てるからなぁ。今考えるとそんな美人でも無いな。
美的感覚おかしくなっちゃうよね。
でも、完璧超人天使は、性格が鬼畜だったなぁ。
「はい私の勝ちです。そして試練失敗です。もう一度スタート地点からどうぞ。そろそろ諦めたら如何です? 何が不満なんですか、不満なんて無いはずです。あなたを囲む完璧な淑女達。そして私は、完全な存在。ショウタなぜなのです? なぜ行こうとするのです?」
の、やり取りを1万回以上繰り返したのを覚えてる。サイコパスもびっくりするだろう。
さて、ポムさんを雇いましょうか。
言葉に力を込める。 言葉を言霊に。
「お名前を与えよう。 ポム=セイノ ポム=セイノに役割を与える。庭園での労働。旅館の管理」
ポムの体の周りの蒼のオーラが収束し体の中に入る。全体がうっすら蒼い。
そして、恐ろしく整った肉体に赤身が差す。
「付随、以下労働条件。お前は条件に守られます。労働や指示に背くことなくば、自由と休みと有給と、生命維持、つまり食事がつきます。 労働時間は、8時間。場合によって残業あり。休憩は、1時時間。一息に15分つきます。制服と言う装備支給。 給与あり、休みの時に階位を上げるなりして下さい」
ポムが ロングの髪で、放映出来ない部分が隠れている、大き目の胸を抑え、跪き、敬意を示す。
「ようこそ、ポムさん。私はあなたと働けることを嬉しく思います。そして、困ったことがあったら、なんでもいいなさい・・・、あなたは大事な労働力だ・・・」
「芋さん良かったにゃ~。ああ~ポムさん、一緒にやっていこうにゃ~」
「ご主人様と猫様に与えられた、この魂。必ずや務めてまいりましょう・・」
よし、では。
「服や、装備を支給致します。 造園管理はお手の物でしょう。一つ上の階の農園で芋でも作りながら、猫さんについていてください。猫さん、業務の一環であります、モンスター除去に、ポムさんを付けて、ポムさんの階位上げをしてください。」
「「承知致しました」にゃ~」
直後・・・・・旅館にけたたましくサイレンがなる。
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フォンフォンフォンフォンフォン 旅館からサイレンがなる。 辺りが赤色に包まれる。
客だ!!無駄に付けた機能!ブレスレットで来客が分かる、無駄に付けた機能だ!!
うおおおおおおおお!!!! 客は、来るんだよ!! 分かりますか?!客が来ると言うことは
、客がくると言うことです!!!!客が来ると言うことは、客が来ると言う事なんです。分かりますか? 客です。客が来るんです。客が来ると言う事は、客が来ると・・・・・・
「つまり、この音は!客だあああああ!!!! この機能、アヤメさんしか使えないしな!!! つまり、アヤメさんがリピーターになってくれたって事です。分かりますか!事の重大さが!リピーター!評価してくれたってことですよ!!」
「クーポン使ってくれるのかにゃ~。ブレスレットを装備してくれたにゃ~」
この状況についていけない、ポムは、パニくっているのかその緑の瞳をグルグルと回し、人差し指を顎に当てて。キョロキョロとしている。 仕草があざといな。
「迎えにいってくるにゃ~。ポムさんもついてくるにゃ~」
ポムさんは、理解していない美人顔をしている。
ここは、新人のポムさんに丁寧に教えなければ。
「いいですか・・・、ポムさんお客さんです。知識はありますね? 制服を出します。 猫さんについて、失礼の無いように接客をお願い致します。」
さてさて、ポムさんに似合う制服はと・・・
銀河に一つしか存在しない、生命のアーカイブ。
星の瞬きの瞬間を凝縮させた様な、銀河世界樹の葉で作った。合わせ葉の服を位相空間から出す。
辺りには、星屑のこぼれた光が漏れ、洞窟、旅館の建物を激しく照らす。空間は静寂を忘れ、ただキラキラと瞬いている。
「あーご主人、もっと階位が下のやつと言うかにゃ・・・。もっと、フォーマルと言ったらいいかにゃ・・。その接客にふさわしい服装と言うのがあると思うにゃ。 そのご主人のホテルスーツもそういう事にゃよね?」
猫さんの的を得た言葉に、思わず肉体がぐらつく。その通りだ・・。
「失礼・・しました。 こちら、普通の世界樹の葉を基準にした。女性タイプのホテルスーツです。普通の力では、変化と言う状態にする事はできません。不可侵の葉ですから」
銀河世界樹の葉を、即座にしまい。普通の世界樹のスーツを出す。ついでに世界樹の杖も。
萎れ翡翠の緑の耳飾りも似合いそうだ。髪留めもいるだろう。世界樹材料で統一しようか。
「ポムさん、着て付けて、アヤメさんの接客の程をお願い致します。お得意様なので失礼の無いようにお願い致します」
「あ、あの、あの。こんな格式が高い制服でいいんでしょうか・・?」
「ポムさん、考えるより行動にゃ~。付けたら即、転移するにゃ。待たせてもよくないにゃー」
「は、はい!」
ポムさんは、即座に着替える。前髪だけを出し、後は後ろでまとめている。そして、萎れ翡翠の耳飾りが、緑の瞳とあっている。
あれ? 転生前の地球で、こんな凄い美人見たことあったか?? まぁ、いいだろう、芋だし。
「では、いってくるにゃ~」
猫さんと、どうみても人気受付嬢ポムさんがシュポンと飛んだ。
もし、クスッとお笑い頂けたら。
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