11 アヤメ地上へ
ショウタさんと手を繋ぎ一緒に、地上にでた。
だけど、後悔している。
荒人を地上に出しては、いけなかった。
この人を外に出してはいけなかったのだ。
ーーー
私、生きて帰ってこれたんだぁ。
ダンジョン前の街灯に照らされ、ケミカル臭を感じる。
ダンジョンゲート前のテンションの冒険者たちの喧騒、そして地上の匂いだ。
生きて帰ってきたと実感する。
ダンジョンゲートを後ろにし、入口の冒険者準備の繁華街に足を踏み出す。
冒険者たちの喧噪で騒めいていた入り口で、守衛と冒険者たちの動きが止まる。
「あやめさん#$%&?!!!!」
「あやぽん!?!?!?あああああ?!!!!」
「生きてるよ!!!本物のあやぽぉおんじゃないかあぁあ!?!?!?!?」
「信じててええええぇえええましたよぉおお!!!!!」
「あれは、やらせだったんですか!?!!」
歓迎? 私の生存による反応がすごい!
周りの方々が生存を祝福しようと集まってきた。
「やかましいなぁ?! アヤメ様に危害が加わったらどうする気だ??」
隣のショウタさんが、いきなり手のひらから、青い光の玉を上へ放り投げる。
突如、静寂が支配する。
ほとんどの人が、口を開けその青い光を見続けている。
人がその場に立ちすくんだまま。
数人の声が聞こえる。
「えっ? 何が、記憶が・・おかしい・・この光は・・?! みんな何してるの・・・?」
この光を見続けない人もいるみたいだ、スキル耐性だろうか。
「魂の記憶を消すのも手間だから、カエルにおなりなさい。その間の記憶は、曖昧ですむからね。大丈夫だ。直ちに影響は無い。」
ショウタさんが手を振る。 人の音が消える。
「ケロケロケロ・・」 「ブウブブブブブ」 「ケロケロケロケロ」 数名が、カエルの様な何かに変化し、大合唱を繰り出している。
ほかの人々は、空中の青い光を静かに見続けている。
地上に出て数秒でディストピアを形成している!
この世の地獄みたいな何かが現れている。
無茶苦茶すぎるだろぅ!! 何をしたか聞くのもよくない!! 否定的な言葉は、だめだ!肯定しろ!!
第六感の感覚が告げている。
まずは・・・
「コッコココココ、コレ、元に、戻りますぅ~?」
「10分ぐらいで元に戻ります」
そうですか、そうですか・・・。やばすぎます。やばすぎます。
なんて人を地底から、持ってきてしまったんだ・・・・。
「では、自分は仮の戸籍の所にいきます。ネコさんが行き来できる魔法陣を作りまして、そのまま本買って帰ります。あやめさん、認知への耐性スキルお付けいたしましょうか? これだと帰るのが大変じゃないですか? なんか凄い人気ですね」
だめだ!! ここで、この人を野放しにできない!! ダメすぎる!!
だめだ!! だめダメダメダメ!!!!
「そうですね・・・身バレ防止スキルですか。半日効果とかできますかぁ・・・? あのショウタさん良かったら、一緒にいきませんか? この地球に慣れるまでアドバイスなんて必要でしょう。 一緒に行きましょうよぉ」
「!! 承知しました。それと、すみません。この星に慣れてないなんて、恥ずかしくて言い出せませんでした・・・。正直、助かります」
よし!!!! 言質とったよぉ!!!
次は、正直にわけわかんない事をやり出したら、止めよう!!
「ではでは、スキル付与を」
黒い線の入った光が私を包む。
ひとまず、ステータスオープン(心の中)
あやめちゃんへ:ダンジョンスキルシステムの管理の啓示神より
権能獲得おめでとう!!推しが現地神への力を手に入れるとは凄いうれしいですねー。
いつも、配信を見てた神からすると、いつか権能を手に入れてこういう風に直接やりとり出来ることを夢見ておりました。
つまり権能を持つことにより、位相世界に居る神と人とのやり取りが許される様になりますー。
どうやって権能を得たのか分かりませんが動画が40Fを超えた辺りだったけど。
魂の強いあやめちゃんなら、限りない絶望を切り抜けてついに権能一端を得たのですね!!!!
推せるっ!!!超推せるっ!!! 終わりの運命から、定命の魂を燃やし切り抜ける。神たちが大好きなシチュエーションです!!
あっ、スキルは今までのままですよー。権能:認知。権能が付きました。現地神への一歩へようこそー!。 あやめちゃん。 あなたの事を好いている神々が多いんです。いつでも顕現代行巫女になれますよー。小雨より私の巫女になりませんかー? 次の配信待ってます。動画で生存報告まだですー?
あああああ!? ステータスがバグってるよぉ!! なんかお便りがきてるじゃあぁああん?!
思わず、めまいがする。でも、瞬時になんか治った。 ショウタさん、なんかしたでしょう?
「あっ、ああ・・・。ショウタさん、いきましょうか・・・」
「いきましょう、いきましょう。すぐ、転移しますね」
目の前が空き地に景色が変わり飛ぶ。
どこでしょうね。ここは。
「いやー、お恥ずかしい話ですが、後払いで、戸籍と土地を買ってしまいまして・・・」
土地は、買えますが、戸籍はお金で買えませんよぉ・・・。
ぬぬぬぬ、頭を回せ!! 私!!会話を誘導するんだ!!
「よし、これでネコさんをこちらに送れるようになります。」
いきなり、ボロアパートが目の前にスッと立った。
もう、わけわかりませんね?
心の中で突っ込むのをやめよう。
「じゃじゃじゃ、じゃあ、次は本屋ですねぇ~。 ダンジョンの入口100m歩いた辺りに、に本屋があります。いきましょうかぁ~」
「ああ、なんとなく分かります、飛びます」
シュポンと本屋前にポップする。
黄色いネオンが照らす入口、明るい店内に入る。
「ショウタさん、どんな本、買うんですか?やっぱり商業本ですか・・・?」
本屋で黒髪ホテルスーツのショウタさんだが、誰も気にしてない。誰も私たちを見ていなかった。
ショウタさんが、商材コーナーで立ち止まっている。
【あなただけに教える、ヒット商品の錬金術。~貴方を60日で成功者へ導きます~】
【その商品! 暗黒神様ならこう売ります! ~無限増殖する黄金召喚術~】
【闇企業戦士に学べ!!新規企業の作りかた。~闇バイト式 成功方法~】
いけませんねぇ!! いきなりこの星の命運の分岐点だ!!
こんなの手に取らせてたまるかぁ!!
「ダメですよ!! ショウタさん! だめです!! これ、絶対良くない情報商材ですって! さぁ! まず、この星の社会体系からいきましょうかぁ!! ショウタさんの所との社会的なズレありますから歴史書からいきましょうか!!!」
「!!! あっ、ああ、そうですね。いや、昔からこの手の商材があったのですが、今一度改めて見ると魅力的というか・・。あっ、そうですね。 この地球の理解から入りましょうか。 流通通貨システムから、学びなおしですから」
ジャンル別に連れていき、歴史書、商業所中心に、マンガ、図鑑、小説、買うみたいだ。
「お客様の会計、30万になります~!」
あっ!って顔をしたショウタさんが、右手を広げる。
「・・・・・店員のお姉さん、こちらの光の玉を見て頂け・・・」
「はーい! ショウタさん、支払いは支払いですよねぇ! 人として支払いはしっかりしなければですよねぇ?! 今日は、ショウタさんに色々頂きました!! 今、旅館事の商売関係なしですよね! あそこで、一旦お客さんとオーナーの関係は切れたはずですよね? なので! ここは、私がお支払いします! 大丈夫ですよ!! 人と人としてのお返しですからぁ!!!!」
もう、やけくそだ。スマホを取り出し、POYPOY(電子魔力支払い)でピッと支払う。
ショウタさんが、一歩後ずさる。
「う、お、お 道理・・・!! ですね。 あ、あの。いや、すいません。ありがとうございます」
無事に私の稟議は通ったようだ。
会計を終え、店を出る。
「今日は、ネコさんも待っていると思うので、これで帰ります。お客が来た時の、指示をだしておりませんでしたし。今日は、ありがとうございました。なんだか、借りが出来てしまいましたね。またよろしくお願い致します。待ってますから。」
「いえ!私こそ、頑張ってまたいけるようにしますね!次は、お金たくさん持っていきます!!」
「ははは、その装備とスキルなら大丈夫ですよ。では、これで失礼します。」
「はい! ありがとうぅうう!!! ございました!!」
ダンジョンの方にショウタさんが帰っていく。もう、大丈夫でしょう!
というか、いや、もう知らない!! 体は物凄い絶好調だけど。疲れました!
もう世界がどなろうと知らないよ!!
さて!! やっと帰れるんだ!!家に!!! 疲れたぁあああ!!!
家に帰ったら、スキルのオフ・・・! そして生存報告を各人々に報告。動画配信でやりましょうか・・?
連絡が送れた事に、伊織怒りますよねぇ。
あまりの情報の多さに。
そして、これまでの顛末をどう報告しようかと、やる事リストが脳を破壊してくる。
私の家は、ここから数百メートルの豪華マンションだ。
ダンジョン探索者、配信者として、お金には困っていない。もう、お金はダンジョンドロップと配信の副産物となっている。
オートロックを空け、ロビーに入る。この照明の光に安堵を感じる。
マンションに入り、私の家に入る。
白と黒で統一しているカーペットそして、紫の毛布。
帰ってきたんだ・・! 私、帰ってきたんだ!!!!
まず、この謎スキルの認知のスキルオフを強く願う。
そして、スマホを出し伊織に電話する。
「こちらは~です、現在、この電話をお使いすることができません。」
スマホの通話が使えない。 ネットーワクも切れている?!
「ネットーワクに繋がっていません」
さっきまで使えてたじゃないか?! これで、本屋の代金を支払ったはずだ!!
ヘアバントの動画配信サービスは? どうだ?
ヘアバンドを髪から外し、輪の所に画面を出す。
【このアカウントは、凍結されています】
なっ?! どうなってますかぁ?!
家の電波部分を調べる。電波は繋がっているみたいだが。
システムが遮断されているのか!!
騒音・・? と赤い光が窓から漏れている。ババッババ!と外からヘリの音も聞こえる。
窓の黒のカーテンをシャアアアッと開けて外を見る。黒塗りの車、それと装甲車がマンションの周りに集まっていた。
突如、部屋のブレーカーの電源が落ちる。
外の赤い光が点滅する中、私はただ、暗闇の中に佇んでいた。
玄関ドアの方から声が聞こえる。
「アヤメなら大丈夫なはずだ!!! 乗っ取られてなんていない!! いきなり手荒な真似はよせ!! 私が見れば、見れば乗っ取られてるか分かるはずだ!!!」
「ハハハハ、分かっているぞ! だが伊織は、下がっていろ。中々に強いからなアヤメは! もし全スキルを駆使して、暴れられたら、相当な肉体のぶつかり合いになるからな!!ハハハ、武錬で中々に、熱い戦いになるからなぁ!! このダンジョン対策エキスパートのマユミに任せておくのだ!」
玄関ドアが、激しい物理音と共に、破られる。
黒い大きい人影が、飛び込んでくる。
「アヤメぇえええええ、動くなよおぉおお?!」
伊織と・・・? この声、・・あぁ、マユミさんかぁ。
「アヤメ! お前には、まずモンスター乗り移り疑惑、ダンジョン洗脳、コピー人形、器物破損、公文章偽造、あとなんかあったか? まぁいい! やってないと否定してもお前は連れていく!! ハハハ! 乗っ取られたり、洗脳された奴は、みんなそういうからな!! 知らない!やってないってな!!ハハハ!」
取り合えず、私は、うなずく。
「よし、言葉は、分かるみたいだな! そのまま手を後ろにして、座れ。優しくするから。」
私は、おとなしく座る。
こういう未来も、ダンジョンから出た時なんとなく予想していた。
もう、なんだろう。普通の日常で暮らすのは、無理なんですかねぇ。
あ~あ。切ないなぁ。




