1 プロローグ アヤメ
耳に痛い静寂の中、地下世界のドーム部屋に月が輝き二人の少女を照らしている。
片膝をつきながら残心を怠らず、今か今かと勝利の瞬間を待ち望み、帰還ゲートの開放を待っていた。
強大なネズミに見えるモンスターを包んでいる、紫炎が消えようとしている。
残心を構え、静寂が通り過ぎたのは一瞬だっただろうか?
心臓の音も息遣いも聞こえない中、地面に紫色に丸い鳥を連想させる対象模様が浮かぶ。
そして、素材、ドロップアイテムたちが地面にドサッと落ちる。
日本史上初、埼玉ダンジョン異空間30Fを攻略した証が地面に刻まれたのだ。
髪留めの黒のヘアバンドにつけた撮影器具に手を添え、コメントを確認する。
烈火の如くコメントが流れる。読み切れないほどだ。
【30F攻略 おめでとうございます!!!!】
【あやぽんんんんんんん!!!!!やった、やりました!!!!】
【ああああああああああああ!!あやめさん、伊織さん!!やりましたね!!】
【おめでとう・・。よくやったぞ・・・!!】(小雨神)
【小雨様ぁあああああ!!!】
【うおおぉおおお人類の夜明だぁああああ!!】
【「生きていた( ;∀;)」
【死ぬほど感動した!!ケガ大丈夫?早く回復薬を・・・!】
【映画化決定!!!】
【二人がバーベキューミンチになる姿も見たかったゾ?】
【↑アンチ?? ニキは帰ってもらって。】
【これで未踏の31Fですねぇ~正直先が見たい!!!】
様々な賞賛のコメントが流れる。
当人である少女アヤメは、カメラ入りの黒ヘアバンドを外し自分の方に向ける。
ショートヘアー紫色の髪、黒の目、セーラー服に似たような少し煤けたベージュの上着ジャケット。
スカートと黒のスパッツが切れているのは、戦闘の激しさを物語っていた。
「みんな・・!関係者の皆様!! 応援してくれたみんな!! ありがとうぅうう!! 小雨様もありがとうございます!!!」
深々と頭を下げ言葉を続ける。
「色々ありましたが、ついに30F到達!!! 私、あやぽんことアヤメ!そして相棒の伊織とともに、成し遂げましたよぉ!! 伊織~やったよぉ~!!! そして、このアイテムの量ですぅ!! 魔導書、素材、剣、盾、指輪、装飾具!!大きい魔石! 埼玉30Fのこれからの希望、いわゆる現金が! 見込めますね! そうです、帰ったら鑑定かけましょうね!! 伊織!!」
伊織と呼ばれカメラが映す姿は、重装アーマーの兜を空間に収納している、黒ポニーテールの女性の姿だ。
伊織は盾役なので、直近まで敵の攻撃を受け止めていた。
動悸、息切れ、めまいがしている事だろう。
「はぁはぁ・・、そうだなやったんだな!! 運にも恵まれ道中の敵ドロップが戦えるアイテムを落としてくれたもんな!! しかし、命をかけた挑戦に勝ったのか・・・! 現実味が湧かないな!! 報告はどうする。ああ、配信して30Fボスの特徴が分かるから報告はいらないか・・。さて、この中に呪いに関する治療薬の手がかりがあればいいのだが・・・。」
コメントのお祭り騒ぎは、やむことが無く。賞賛として画面に降り注いでいる。
コメントの中にスパッツが切れてると注意してくれている者、【●REC】 が混じっているが太ももを隠している暇はない。貴重なドロップがそこには、あるからだ。
何よりアイテムドロップに注視じゃなくて、私の内太ももの方が珍しいのは配信ではよくあることだ。録画勢、成仏して? とは思う。
ひとまず落ちているアイテムを亜空間に収納し伊織に問いかける。
「伊織どうしますぅ? 10階毎、ゲートは24時間セーフゾーンとして開きますね、30Fの帰還の紋章も、共通で同じみたいですね。31Fを少しみますかぁ? ここで帰ってもいいですが、正直また30Fに到達するには、正直少しLV上げと準備が必要ですよねぇ。ボスドロップは、効果が不明なのと未鑑定な物もあるのでドロップは、鑑定終わるまで使いたく無いですよぉ」
「そうだな、少し休憩して考えようか。31F~のモンスター、MAP特徴は何よりもの価値があるからな。無理そうだったら即撤退だ、セーフゾーンに私も走れるように少し軽装に代えよう。」
動画のコメントには
【無理しないで。戻っておいで・・・】
【出口はそっちじゃないよ・・・】の心配する声。
しかし、ボス戦での勝利。掴んだ名声。
激しい高揚の後で緊張感がゆるみ、安堵がある。
そして、振りそぐ賞賛の声。まさに有頂天である。
休憩しながら、配信の反応を見ていると動画のコメントは、「行けるところまで行ってみて欲しい」 との声の方が多かった。
正直私も、この先が見てみたい。
私に、撮影用ヘアバンドを向け美少女の笑顔を見せる。
「それでは、31F少し覗いてみますよぉ~? チャンネルはそのままで~気にったら高評価とチャンネル登録お願いしますぅ~! あなたの心と~ダンジョンに 隠密、忍び足からのアンブッシュ(不意打ち)!!」
「あ、あんブッシュ~」
テンション低めな伊織の声、こういう配信事に慣れるのはいつでしょうか。
亜空間収納(小)の加護、残り収納スペースが少ない。
アイテムを使い回復と、ドロップを持って帰るために少し空きを作る必要がある。
31Fを覗くため、少し過剰な戦闘アイテムと日用品を置いていく必要があった。
ヘアバンドカメラをかぶり直して動画状態を 「ただいま休憩中」 とし、帰還の魔法陣が浮かぶ中、簡単な食事と休憩、着替えなどをした。
「アヤメ、埼玉ダンジョンじゃなかったら、30Fは無理だったな・・・。」
「だよねぇ~! のダンジョン加護の1人気ナンバー1の小雨様の収納の加護は半端ないよねぇ~!!試験も大変でしたけどぉ!!」
「何度も挑戦したが、ほんとここのダンジョンはやりやすいよなぁ。攻撃力全振りの筋肉系のモンスターが中心。何より罠が無い」
「ですよねぇ、小雨様のアイテムボックスの加護無しだとこの紅茶セットもまず持っていけませんからねぇ!! 鞄に詰めても、水!!固形物!!終了!!もしくは、命をかけてキャリー(荷物運び)をやってもらわないと行けませんからねー! モンスターの範囲攻撃が多い中、深度が深くなると厳しくなりますよねー!! 代替えとして異空間の壺がありますが、そうそう出ませんからねぇ。つまり小雨様所属最高ですよぉ~」
そんな話をしていて、再度配信時間になった。荷物を整理し、ここに食料など日用品は置いていく。
後は、ドロップを収納するのに、かさばり邪魔になるだろう。どんなドロップアイテムがこの先あるのだろうか。
ドキドキが止まらない。
地面の魔法陣は、時間を示している。
現代の解読、翻訳スキルがある人が解読したみたいだ。
うねうねしているのが文字みたいだが、よくわからない。およそ24時間、セーフゾーンとして大丈夫なのとの事だ。
この先の初見のMAP。未探索で激しく危険と言うことは、分かっている。
しかし、危険信号を発する脳からの信号より、この深淵の先を見たいという好奇心がテンションを激しくあげてくる。
「さて~31Fの配信を始めますよぉ! モンスターの種類をみて倒せそうだったらドロップ確認!やばそうでしたら、逃げましょう! 命ある内が華、乙女が華! ですねぇ!!」
「命と乙女は、関係ないと思うが。この先も敵をひきつける盾役でやるぞ、ポジションは変わらずのアヤメの不意打ちで行こうか。単機でターゲットをとっていつもの様にアヤメのアンブッシュで畳みかけよう。まずいと感じたら即逃げよう。その際、殿をやるからな。その場合、加速の魔導書や属性魔石を遠慮なく使う。アヤメの判断でサポートしてくれ」
「わかりましたぁ~それでいきましょう! 配信はじめますよぉ~」
ヘアバンドの横につける広角撮影器を取り出し、配信開始の準備のため自分たちを映す。
開放型の階層のためダンジョンの空の月は、明るく輝きセミロングの紫の髪が神秘的とも言える色で反射している。
隣の伊織は、月が黒のアーマーを不気味とも呼べる色に静かに照らしている。
「まぎれも無く美少女達! 異界月に照らされる二人姿。取れ高がいいですねぇ~。 ワクワクしてきます!」
「神秘的な美少女とは、聞こえがいいが不気味ではないか?? 美少女よりか捕食系少女にみえるが・・・。」
「よくわかりませんね!・・・では!いきます!!テンションあげてまいりましょう~ 配信開始!!」
「あなたの心にアンブッシュ! 加虐系配信者あやぽん事、アヤメです~。こんあやめ~!」
「あ、うん?こん伊織~!!」
「日本初、31F~貴重な配信の瞬間となりました~!皆様テンションあげてまいりましょう~! 今回は、少しだけ31Fを見て、MAP地形を映し、階の特性を掴むこと! モンスターの様子の観察ですぅ! モンスターとの戦闘で伊織か、私がミンチになりそうでしたら、即撤退系、回復のアイテムを惜しまず使い撤退しますよ~」
配信には、万単位の視聴者のコメントが流れている。
【まってたぁあああああ!!!! ミンチだけは、やめてくださいよ!!】(ダンジョン管理埼玉支部)
【無理せずに、帰ってくるんだぞ・・・】(小雨神)
【おかえりなさい!!待ってました!!】
【小雨様、意外にも配信をご覧になられるんですね。】
【ほんとすごいです! 日本の宝や~!】
【あああああああ、しかし物凄い雰囲気ですね、めちゃくちゃ美しく見えます・・・。】
【お二人とも、月を後ろにする姿、すごくいいです・・・。】
【今、ミンチって言った?】
二人の配信を、期待していた声に溢れている。
「それでは、進みましょうか~、伊織準備いいですか?」
「そしたら、行こうか」
階段を下る。31Fの壁は石で出来ており、地面はレンガの様に見える。
先ほどの30Fとは違い天井はぼんやり暗い。壁は高く幅は対象の様に見える。通路は狭く、横に3人並べるかどうかだ。
ダンジョンの10Fごとに、特徴が出る。世界のダンジョンで共通しているみたいだ。
31F~は、日本で言うレンガ造りの古墳のようだ。
これからの未知の領域への期待感に思わず手を強く握り、足を進めた。
「伊織、私の気配察知にモンスター補足です。うーん魔力ポイントで感じるとかなり強いですよぉ。でも1体です。勝てそうですね。こっちに来てます正面からです。補足はされてません。このまま進むと当たります。初戦ですしモンスター特性の確認、行動回数増やすため加速の魔導書を使いましょうか。」
「了解した、視認したら突っ込んでモンスターの攻撃を受けるぞ。横に周り連撃を叩き込んでくれ。初の敵の回復の安全マージンは十分にとるからな。」
伊織が大盾を正面に構える。槍を強く握り遭遇に備えているのが分かる。
「承知です」
自分の横腹の当たりに手を入れ収納空間から魔導書を取り出し、「加速」 と1節の呪文を唱える。
魔導書は、塵となり一瞬だけ体が青く光る。
腰回りのベルトから黒光りする刃の短剣を引き抜き、二本握り占める。そのまま息を深く吸い込み、ダンジョンの壁、地面に同化するように気配を薄くする。
10秒後 カシャカシャと音が反響してくる。 モンスターだろう。
少し暗めの壁の見えた、四本腕の灰色のマネキン鉄人形のようだ。銀色に光る等身大の剣をそれぞれの腕に装備している。
モンスターも伊織に気づいたようだ、ガシャガシャキンキンと走りながら近接してくる!
伊織その場を動かず、最初の攻撃を受ける! 二本の大剣が風を殴りつけ伊織に叩きつけてくる。
伊織が、大盾で受ける。グギャァン! と金属の叫びと火花が散る。衝撃の余波か、特殊攻撃が分からないが真空刃の衝撃で後ろの壁がえぐり取られる。
そのままモンスターは反対側のもう2本の腕の剣で再度剣を叩きつける!
伊織の大盾がグギャアンと弾かれた。
この瞬間を待っていた。追撃の瞬間は、隙だらけだ。
この階でも今までの戦法は使えるだろう。このまま懐にもぐりこみ連撃を加えるのだ。
今は、加速の魔導書を使っている。
伊織、見ててください! このまま6連撃は、決めて見せる!
私の黒い短剣とマネキンの身体が接触し、ガギギッと不協な音が鳴る。左右、左右、左右、踏み込んで左右左右左右、マネキンの体制が崩れる。追撃を加える。
加虐の時こそ、至福の時。
時間が、全ての世界がスローに見える。
遅い、遅すぎる。
モンスターは、驚いたように多数の腕で反撃を試みるが、連撃を叩き込む!
鉄人形のバランスが崩れる。その瞬間、伊織の両手持ちにした槍がマネキンを突き倒す。
まだマネキンは立とうとするが、反撃の準備ができるまで左右で切り付ける。
身体が軽い。魔導書の効果だ。だが魔導書の時間がもうない、そろそろ効果が切れるだろう。
効果は3分だったか。
伊織が槍を両手持ちに切り替え攻撃に切り替える。
伊織の雄たけびと同時に突き刺す。私は、突きに呼応し、頭と思われる部分に二本突き刺す。
ガシャッ・・と音と同時に、鉄マネキンは消え去り30Fボス同等の大きい魔石ドロップが落ちる。
「や、やりましたか!? なーんて!! こんなセリフ、復活フラグですよねぇ。 さてドロップは、魔石だけですねぇ、大きい魔石ですぅ」
伊織がフルフェイスの兜を収納し、黒髪のポニーテールがフサッと出てくる。
黒目のロングの髪、端正な顔立ち。
とても重装のジェネラルアーマーを装備しているとは、思えない。
「ふぅ~、薬草薬草・・・。かなり30Fの攻撃を受けるのしんどいな。 魔導書で強化して、安全マージンが取れると言った所か。再度返しの攻撃食らっていたら、即 魔導書かポーション使用だ。だいぶ今回の攻略でアイテムを使ったし、一度20F当たりで暫くLv上げとアイテムを集めた方がよさそうだ」
「そうですねぇ~ 少し鍛えた方がよさそうですねぇ~! あ、でも膨れ上がる筋肉は乙女的にNGですねぇ。 伊織、筋肉系なのに筋肉膨れませんもんね~」
「乙女力で抑えているんだ」
乙女って凄いですね。何と言う価値と価値観でしょうか。
動画配信中のコメントは見る暇が無いが、賞賛の言葉であふれている事だろう。
エゴサーチ(ログ確認)は、後でもいい。
だが攻略がうまくいった日の寝る前分エゴサーチは明日への躍進力だ。
後で、存分に賞賛を浴びるとしましょう。
未知数のダンジョンフロアの奥にいきすぎても危ない。
強化アイテムも十分な量では無いので、次のモンスターの遭遇か開けた場所のMAPの様子の確認して帰ろう。
伊織と二人で宮殿風の石畳を、踏み進める。
「開けた場所にでましたねぇ、ゴシック風、お墓の風景ですかぁ。お、アイテム落ちてますねぇ!」
「おぉ、謎の草と、魔導書、ローブか?!これは、良いな。アヤメのスカート部分の素材にできるか? 持って帰り鑑定だ」
目の前にアイテムが存在感を出し、落ちている。
これを取って帰りましょうか。無理はいけない。
落ちているアイテムに向かう。墓の前からかがみアイテムを取る。
そして、墓の床が光り輝く。不気味な光だ。
罠なわけが無い。このダンジョンは敵が近接系のモンスターが多い代わりに罠がないので有名だった。
光が私を包む。
ーーーーーーーーーーーーーー
そして、私を包んでいた、光が収まる
周りは古代神殿の様な広場だ。
空の月が大きく見え、不気味に輝いている。
辺りを見るが、先ほどと風景が変っている。隣に居た伊織が見当たらない。
脳のキャパシティを現状理解に回す。
まずい、飛ばされたのか?! 転移の罠か!! 完全に頭から抜け落ちていた!!
ここは?! 落ち着けまずは、確認だ!! 場所、状態、持ち物!! 体に異常は、無いか!?
罠には、数分間体の精神の接続を乱すのもある。とにかく自分の状態の確認を!! 周囲のモンスターの気配は大丈夫だ。
ダンジョンステータスオープン!!
埼玉ダンジョン(仮) 36F
向原 アヤメ LV28: 状態 良好
スキル:短剣2刀流 気配察知 忍び足 隠形 加虐Lv2 加速 飛脚
E:黒鉄の短剣
E:黒鉄の短剣
E:白馬系ブレザー(付与加速)
E:黒糸のスカート(付与加速)
E:1角魔獣のブーヅ(変性錬金)
E:配信連絡用ヘアバンド
E:ポーション 薬草x3(スパッツ部分装備)
アイテム収納(小雨神の加護) 魔石【中】 3所持
未鑑定 白銀の指輪
未鑑定 透き通った指輪
未鑑定 金色の剣
未鑑定 魔導書
加速の魔導書
剛力の魔導書
毒消し草
雷の杖x5
火炎の石
ポーションLV2
ポーションLV3
私の、身体は大丈夫だ。
だが、階層が5Fも飛んでいる?!
エグすぎだろう。転移は、1Fがお決まり事じゃないかぁ!
ヘアバンドに手を掛け通信を試みる、魔力電波の異常は無いみたいだ。
配信のコメントは、イレギュラーが生じた事に心配するコメントが濁流の様に流れている。
【大丈夫ですか・・!?】
【埼玉ダンジョン30F以降は、罠か・・!】
【はぐれましたか!!!!?!?!?】
【エグいなぁ・・ピンチじゃないか。】
【気つけて!!!!!!】
正直焦る。
だが配信者たるものメガティブなコメントは出来ない。
「焦っては、いけませんよぉ! 加虐系美少女のスキルは、スニーキングが得意なんです。転移ではくれる事は、ダンジョンでもよくありますよぉ~。大丈夫です~! このままミンチはごめんです!!」
【そういえば・・他のダンジョンで前も飛ばされてたな】 とのコメントが見える。
今は、5階層を飛ばされたとは言っていない。
まさか5階層を飛ぶ罠があるなんて思いもしなかった。非常にまずい。
配信を止めるか悩んだがこのまま配信を続ける。
左手でヘアバンドを触り通信を続ける。
そうです。ピンチですねぇ~。
「伊織、聞こえますか~?」 「あぁ大丈夫、聞こえる」
「今ほどですね。ステータス開いたら階層を飛ばされてますねぇ。36Fになってますぅ」
「ううん?!!他ダンジョンの罠で1F飛ぶ事があるが・・。5F飛ぶのは、まずすぎるな、初MAPでこれは、まずい。 アヤメのスキルなら、5階層走ってくるにも、なんとかなるだろうが。MAPを探り探り進まないと危険だ・・。」
「そうですねぇ。伊織。私がそこに戻れそうな頃。アイテム出し惜しみ無しで、31F合流、確保できますか?30Fに置いた予備用、アイテム全部使っちゃって下さい~」
不安を隠し、声の抑揚を高めに話す。
「私、ゆっくり隠れながら戻ります。 私のスキルが物凄いスニーキングミッションに愛されてるので、まぁー楽勝でしょう!! 乙女はミンチにならないのがお約束ですぅ!!」
「わかった・・・、そうだな、美少女とミンチとは無縁だしな? とにかく!! アヤメの配信を見て私は、行動するからな。」
「承知ぃ~」
配信コメントは後で見よう。『36Fにすでに飛ばされていたのか!』 と言う動画の反応は、予想できる。
今はそれどころでは、無い。ここは危険すぎる。MAPもモンスターの全容も掴めていない。
そろそろ動かなければ。気配に大きな魔力ポイントが引っかかる。
先ほどの戦闘感覚だと。一人で倒すには、1つ以上のダンジョンアイテムの消費が必衰になる。
安全マージンを大きく取らなければならない。回復アイテムは、最後まで取っておかなければ。 私の足回りがやられたら詰む。
そして、残りのアイテムも心元ない。
だけど大丈夫、大丈夫。私の努力の結晶。気配察知と隠密スキルの種類。
このスキルに目覚めた私、才能と運。そして努力は、いつも私を裏切らない。
いつも私を、信じてきた。