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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

猫の地縛霊

作者: 月守夜猫

 あるところにサラリーマンをしている一人の男がおりました。その男は神社の息子であり兄が1人いました。

 男は昔から霊感と呼ばれるものをもち霊を見ることができました。男は生きているものと霊を判別でき、霊は透けて見えていました。小さい頃は透けているものが霊だとは知らずよく霊に話しかけたりして、その結果付き纏われたり怪奇現象を起こされたりし大変迷惑していました。霊には反応してはいけないことを自ら経験したのです。そのお陰か、今では全く反応を示しません。

 そんなある日、男は大きなプロジェクトのリーダーに任命されました。初めて任された大きな仕事に男は気合を入れて取り組んでいました。リーダーということもあり毎日残業をしていました。

 そんな日々の中で男には癒やしがありました。それは帰宅時に路地の塀の上でくつろいでいる黒猫を見ることでした。実家で黒猫を飼っていたことがあったので、その時のことを思い出し癒やされているのです。しかし、塀の上でくつろいでいるその黒猫は霊でした。毎日ほぼ同じところにいるので男は地縛霊なんだなと考えていました。

 霊に反応してはいけないというのは基本的に人型のものに対してであり、そうでないものは見る分には無害であることは、小さい頃の経験から男は理解していました。

 そうして数日が経ちました。プロジェクトも終盤帰りがさらに遅くなっていき、男はかなり疲弊している様子でした。帰り道変わらずくつろいでいる黒猫を見て癒やされていると、その時、急に触りたいなという感情が男の中に浮かび上がりました。しかし、理性がそれを良しとせず、男はその場から逃げるように家に帰宅しました。

 そうしてまた数日が経ちプロジェクトが成功しました。成功を祝して、プロジェクトのメンバーと打ち上げをし男はその日珍しくお酒を飲みました。かなり飲んだので男は千鳥足になりながら家に向かって歩いていました。路地に入り歩いていると、いつものように塀の上でくつろいでいる黒猫を見つけます。この猫がいたから自分は頑張ってこれたんだとしみじみと感じていると、何を思ったのか男はその黒猫に手を伸ばしてしまいました。お酒のせいで判断が鈍っていたのでしょう、見るだけなら平気であるということを完全に忘れているようです。見るだけなら平気ということは、もちろん、見る以外のことをするのはまずいということの裏返しであるのです。

そのことを忘れ男が撫でようと手を伸ばした瞬間、男の後ろから車のクラクションが聞こえてきました。そして、男が反応する間もなく、壁と車に挟まれました。とても痛いそうです。本当に挟まれただけなのでしょうか。手や足がグシャグシャになり体の至る所から血がたくさん出ています。少しして、壁と車の間に血溜まりができ、それがどんどん大きくなっていきます。車の運転手が出てきて男に声をかけますがその声は届いていないのでしょう。男は一点を見つめ続けています。ぼんやりとした視界で黒猫を見ているのです。

 黒猫の表情は不気味そのものでした。口をまるで人間のように開けて笑っているのです。まるで、男を馬鹿にしているかのような不愉快な笑みを浮かべています。黒猫はきっとこの日を待っていたのでしょう。男が自分に心を許し、油断するか疲れで正常な判断ができないその一瞬を狙っていたのでしょう。

 そして、男を轢いた車の運転手は男の兄でありました。プロジェクト成功祝いにと駆けつけた兄の車を使って男を殺したのです。霊は生きている人間を直接殺すことはできませんが、車や家具などを使って関わった人を自分たちと同じところに引きずり込もうしてくるのです。

 なんとも残忍で狡猾なのでしょうか。男の兄が救急に連絡したり必死に声をかけていますが男にはそれがわかっていないのでしょう。男は黒猫を睨みつけています。依然変わらず笑みを浮かべている黒猫に男はくそったれ。と、そのようなことを思っているのでしょう。

 兄の健闘も虚しく男は猫を睨みつけたまま息を引き取ってしまいました。


 皆さんもくれぐれも霊に関わらないように。でないとこの男性のような目に遭ってしまうかもしれません。


 大事なことなのでもう一度だけ。霊には絶対に関わらないように。もし、それがいくら可愛らしい見た目をしていても。

読んでいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませて頂きました。 サラリーマンの主人公と路地の塀の上に居座る黒い猫の霊との出会い。あるとき仕事にてプロジェクトを任され、日々の残業により成功を収める。そして成功祝いとして居酒屋で飲み、…
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