表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/42

『やっぱり、見えてた』【怖さ★★☆】

 ひょんなことからギオン騎士団怨霊対策部隊長に就任した俺は、団長フロラディーテに連れられ王への謁見を余儀なくされた。


「怪談師マスキよ。此度の旧アルバート邸の怪奇現象の解決、見事であった」

 跪く俺とフロラディーテに向けて、王が威厳のある声で話した。


「勿体なきお言葉!」

 フロラディーテがすぐさま答える。


 完全に場違いな俺は跪いたまま微動だにできない! 


「はっはっは、マスキよ、そう緊張するでない」


「そうだ!マスキ殿!王に得意の怪談話を披露してはどうだろう?」

 フロラディーテがとんでもない提案をする。


「王の前で無礼であるぞ!」

 ほら、重厚な鎧を着た女騎士がすごい睨んでるよ!


「よいよい、面白そうだ。是非、噂の怪談話とやらを世に聞かせてくれぬか?」

 

「え――!?」

 王の言葉に俺は思わず顔を上げる。


「私も聞きたいぞ!」

 フロラディーテが目を輝かせる。


 王の前で怪談話?聞いたことないよ!


 だが、やるしかないか……。


「で、では……恐れ多くも、昔のとある王国のお話を……」

 俺は観念して話し始めた――。


 【やっぱり、見えてた】

 とある王国の王は気に入らない者をすぐに処刑することで有名だった。


 この日もお茶をこぼしたメイド、口に合わない食事を出した料理長などが公開処刑された。


「王様!お許しください!お茶を溢したのは謝ります!昨日から体調が優れず……申し訳ございません!!」


「王!王がオトギリ草が嫌いだとは知らず……申し訳ございません!!」


「ええ~い!言い訳は聞かぬ!!首をはねぇ!!」


 ザッ!!ザッ!!


『おおお……』

 群衆は、はねられた首を見てどよめいた。


 そんな傍若無人な態度を続けた王はある日、不可解なことに気づく。


 お茶を持ってきたメイドの首がないのだ。


「ひっ!」


「どうなさいました?王様」

 メイドは王様の方へ首を回すが、首から上がない。 

「ごほん……んん」

 王様は平静を装った。


 次に運ばれてきた料理に王様は激怒する。


「誰だ!これを作ったやつは!ワシの嫌いなオトギリ草が入っておるぞ!連れてまいれ!!」


 首のないメイドが連れてきたのは首のない料理長であった。


「ひぃ!」

「王様、大変申し訳ございませんでした。すぐに作り直します」

 驚く王様の前で跪いた首のない料理長は料理を持って部屋を出た。


「……気のせい……なのか?」


 それからというもの、すれ違う執事、大臣、近衛兵まで全員、首がないことに気づく。全て王様が首をはねた人物だ。


「どうなっておる!」

 王様は城中を走り回るが、会う者、会う者、全員、首がなかった……。


「ワシは……ワシは……」

 王様はいつの間にか部下を全員処刑してしまったようだ。


 廊下で立ち尽くす王様の前から、メイドが歩いてきた。


「あのメイド……顔がある!」


 メイドには見覚えのある顔がついていた。


 トコトコトコトコトコトコトコ……。


 メイドが近づく。


「お、おい!お前!これはいったい、どういう――」


 しかし、メイドは王様の前で止まらず、そのまますれ違って歩き去る。


「お、おい!」

 王様が振り返ると、そこには首のないメイドが立ち止まっていた。


「え…………」


 王様が恐る恐る下を向くと、足元に血だらけのメイドの首が転がっていて、こちらを向いて、こう言った――。

 

  ――――ヤッパリ、ミエテタ。


「うおぉ!」

 王が王座から転げ落ちる。


「きゃぁ――!!!!!!!!!!」

 フロラディーテは人目を気にせず俺に抱きつく。


「こ、こら!王の前だぞ!!」

 俺は彼女を引き剥がす。


「す、すまぬ!!」

 痴態を晒し、顔を赤らめながら、王へ跪く。


「はっはっは!歴代の剣聖の中でも最強と言われるフロラディーテも怖い話は苦手か!しかし、おもしろい。世も民の声は聞くようにせぬとな。大変貴重な時間を過ごせた。感謝する。怨霊対策部隊長の件、よろしく頼むぞ」

 ご満悦の王様のとなりで俺を睨み付ける人物がいた。


 …………チッ!


 俺は気になり、帰り際にフロラディーテに聞いてみることにした。


「なぁ、フローラ。王様の隣で俺を睨み付けてたのって、もしかして……」


「ああ!そうだ!魔術師団長で大臣のアシヤドウマンだ」


「やっぱり……」

 転生前の日本人の名前のようだったので名前は覚えていた。


 面倒な事が起きなければいいが……。

 

 俺は「ふぅ」という小さな溜め息をついて城を出た。

 <つづく!>


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ