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『グニャグニャ女』【怖さ★☆☆】

「まったく!なんで団長の私がこんな女の子らしい格好で町を歩かねばならん!これも副団長のあやつのせいで……ブツブツ」


 フロラディーテは夜道をヒラヒラのワンピース姿で歩いていた。というのも最近、若い女性ばかりを狙った連続殺人事件が多発しており、オヤジーノ副団長の提言で「団長がヒラヒラの服を、着て返り討ちにしてやりましょうよ!」とふざけたこと提言し、今に至る。


「この件が解決したら、あやつを侮辱罪で訴えてやる!」


 コツコツコツ……。


(は!?……つけられている!?)


 フロラディーテは足音で自分に近づいてくる人物を察知する。


 フロラディーテはワンピースを少し捲り、太ももに隠しておいた短剣を手に取る。


(短剣だろうが剣で私に並ぶ者はいない!返り討ちにしてやる!!)


 フロラディーテは振り向き、短剣を構える。


「誰だ!?いるのはわかっているぞ!!」


 フロラディーテの叫んだ方向に一人の女の姿が月明かりに照らされる。


 次の瞬間、女の体があり得ないほどグニャグニャに曲がって見えた!


「――!!?」


 あまりの出来事にフロラディーテは声も出せない!


 グニャグニャに曲がった女はユラユラと揺れながらゆっくりとフロラディーテに近づく。


「ひっ!!」

 フロラディーテは声を上げるが、立ち尽くして短剣を握ったまま動けない!


 カタカタカタカタ……!!


 フロラディーテは固まったまま、足がものすごい勢いで震え、手に持った短剣が鉄の篭手こてとぶつかり、カタカタと音を立てる。


 少しずつ、少しずつ近づくグニャグニャ女。


「こ、来ないで……」

 フロラディーテは決死の思いで、震えた声を絞り出す。


 目の前まで近づいた女はフロラディーテの前で、顔が裂けるほど口を大きく「ニタァ~」と開けた!


「い、いやぁ――!!!!!!!!」


「危ない!!ライトニング!!」

 突如、光が辺りを包む!!


『ギャァァ……』

 グニャグニャの女は光を浴びて消え去った。


「た……助かった……!?」

 フロラディーテはその場で腰を抜かしてしゃがみこむ。


「大丈夫ですか!?え……フローラ……さん?」


 駆け寄って来たのは怪談師のマスキだった。


「たまたま飲んだ帰りに涼んでいたら、女性の叫び声が聞こえたんで。たぶん魔術師団の嫌がらせでしょうか?最近、良からぬ噂も耳にしますので……あ、すいません。勝手にベラベラ喋ってしまいました。立てますか?」


 それだけ言うと、マスキは手を私に差し出す。


「……ありがと」

 私は照れながらも素直にマスキの手を握った。


 ピチャ……。


「……え!?」


 私がマスキに手を引かれ、立ち上がると、私の座っていた場所に小さな水溜まりができていた。


「これって……」


 マスキが水溜まりを覗き込む。


「い……いやぁ――!!!!!!!!」


 私は叫びなから走り出した!


(終わった!私の人生終わった!!怪談小屋どころかお嫁さんにも行けなくなった!!もうダメだ!!そうだ!マスキを殺して私も死のう!!)


「あは……あはは!!あはははははは――!!」


 不気味に笑いながら走り去るフロラディーテ。


 次の日、『夜道を笑いながら疾走する女』という都市伝説が民の間で話題となった。


「……ん?」

 マスキはフローラが落としていった手帳を拾った。


 ペラペラペラ……パタン。


 マスキは彼女の行先に何か手掛かりがないかと手帳を開き、少しだけ眺めてから手帳を勢いよく閉じた。


「……明日、届けないとな。それにしても、先ほどのはまさか……」


 ギュ!


 マスキの手帳を握る手に少し力が入った――。


 <つづく!>

 

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