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『源氏物語』【怖さ★★☆】

 【あなたは知っているでしょうか

生まれ変わって世界が変わっても空気は変わらないことを

あなたは知っているでしょうか

常闇のモノが姿を現す時、空気がひんやりと冷えることを

ほら、今宵もまた足音が聞こえてきたよ……

ひたり、ひたひた……ひたり、ひたひた……


キャァ――――――!!!!】 


【騎士団と陰陽師団の模擬戦が決まる3日前】


道満(ドウマン)!これはどういうことだ!お前は播磨国(今の兵庫県)で死んだと聞いていたぞ!」


 陰陽師団長アシヤドウマンは魔方陣の上に立つ青年に怒鳴られながらも、驚いた顔を見せる。


 「これは驚いた。呪力の強い者を異世界召喚したはいいが、まさか安倍晴明、貴様が釣れるとは思わなんだ」


 アシヤドウマンは一条天皇の頃の陰陽家、芦屋道満その人であった。 安倍晴明と陰陽の術を争ったが、藤原道長を呪詛じゅそし晴明に破れたため播磨国に放逐されたのち、自らに呪術を用いてこちらの世界に渡っていたのだ!


「まぁ、よい。晴明、昔のよしみでお主の力を借りたいのだが」


「ふん!どうせ姑息な貴様のことだ、協力しなければ帰さぬつもりであろう。道長のようにはなりたくないからな。協力してやる。その代わり、終わったらすぐ帰せ。いいな!」

 晴明はその場で胡座を組み道満を睨み付ける。


「ファハッハッハ!さすが晴明!話が早くて助かる!ワシが殺った道長が!懐かしいのう!」


 高笑いする道満に晴明は「やれやれ」と首を横に振り、真相を話し始めた。


「確かに道長は呪いによって殺されたが、奴を殺ったのはお前ではない……紫式部だ」


「な、なに!?」


 【源氏物語の真実】


 源氏物語の作者、紫式部は、藤原道長の娘、彰子の家庭教師だった。つまり紫式部は、道長から雇われてた。


 そして、源氏物語の愛憎渦巻く主人公、光源氏は藤原道長がモデルと言われている。


「そんなバカな!確かに藤原氏の勢力は凄まじい勢いで拡大していたが、それでは主人公は源氏ではなく、藤原氏でないとおかしいだろう!」

 道満は呆れた口調で晴明をバカにする。


「まさに、そこだ!おおっぴらに藤原の名を小説に書くわけにはいかん。だから過去の栄光の源氏を主人公にしたのだ」


「だ、だが、道長は呪い殺されておる!あれはワシが……」


「道長の亡骸は見たか?」


「い、いや……」


 ……ゴクリ。

 道満を唾を飲み込む。


「体中に数えきれないほどの『呪』の文字が浮かび上がり、もがき苦しみ生き絶えたようだ……」

 晴明は視線を地面に落とす。


「そのような酷い仕打ち……よほどの呪詛を使えないと不可能だ!紫式部のような物書きに出来るわけがなかろう!」


「それがな、道長の死後、紫式部はすぐに後を追うように亡くなってしまったのだ、体中に数えきれないほどの『妬』という文字が浮かんだ状態でな……」


「ひぃ!!紫式部は……道長のことが……」


「ああ……そういうことだ」


 晴明と道満は無言で星空を眺めた――。


 【3日後 騎士団総本部】


「団長!!どこに行ってたのですか!!どうせマスキ殿の怪談小屋ですな!!緊急事態ですぞ!!緊!急!事!態!ほら!言ってみてくだされ!緊急事態!!」

 オヤジーノ副団長は興奮しながらフロラディーテをまくし立てる。


「だから、謝っておろ~が、そう、目くじら立てるではない。で、これが模擬戦の案内か……何を企んでいるのやら」

 フロラディーテが五日後に開催されるという騎士団と陰陽師団の模擬戦の用紙を見る。


「ハァ~、どうやら、失脚させられたアシヤドウマンが国王に持ちかけ、騎士団との戦いに勝って、再び地位を取り戻そうとしているらしいのだ。なにやら怪しい助っ人も用意したとか……」

 蛇のようにしつこいアシヤドウマンにオヤジーノは溜め息しかでなかった。


「なら、返り討ちにしてやろうではないか!」

 フロラディーテは剣を掲げる!


「では、五人対五人で先に3勝したほうが勝ちらしいので、マスキ殿に大将を頼んでおいてくだされ」


「マスキ殿が大将!?ダメに決まっておろう!!」

 フロラディーテが机を叩きながら異を唱える。


「それが、奴からの指名でな。なぁ~に、最初に3連勝して終わりだ。マスキ殿まで回らんよ。それとも何か?我らが負けるとでも!?」


「負けるわけなかろ~が!!」

 フロラディーテは再び机を叩いて大声を上げる。


「なら決まりだな。どうせ、明日も怪談小屋に行くのだろ?その時に伝えておいてくれ」

 オヤジーノはそれだけ言うと!やっかいごとにならないよう、逃げるように部屋から出ていった。


「あ、こら!オヤジーノ!!……まったく、あやつは都合が悪くなるとすぐにいなくなる……」 

 

 フロラディーテはもう一度、模擬戦の用紙を眺めた――。


 <つづく!>

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